2009年05月

Der Ring

こんにちは。

最近バレンシアも夏日や真夏日になる日が多く、すっかり初夏といった暑さです。
とはいえ、日陰に入ると涼しく感じられるので、まだまだ過ごしやすいですが。

さて、5月の訪れと共に、バレンシア歌劇場にマエストロ、ズービン・メータの音が帰ってきました。
5月半ばから6月月末まで、3シーズンかけて上演してきたワーグナーの代表作「ニーベルングの指輪」全4部作シリーズの締めくくりとして、最終作「神々の黄昏」のプレミエ上演と、それに加えて2度にわたる全作品のチクルス上演のリハーサル、本番が組まれています。

まずは「神々の黄昏」のリハーサルから入り、順次他の作品もリハーサルしながら、
この前の水曜日に「黄昏」の最後の通し練習(ゲネラル・プローベ)があり、
あとは土曜日のプレミエを待つばかり(他の作品のリハーサルをしながらですが)、
という状況です。

最初のシーズンは、ほとんど毎フレーズに渡って噛んで含めるようなリハーサルをしていたマエストロメータですが、関係も3年目に入り、段々スムーズな瞬間が増えて来たように思います。

メータの、言葉の最も良い意味で「健康」な音楽作りに導かれ、
歌手やオーケストラも緊張とリラックスがない交ぜになった音楽家冥利に尽きる時間を過ごしています。

今シーズンはマゼールと「パルジファル」を演奏できましたし、
オペラのオーケストラで、日本であまり接する機会がなかったワーグナーの作品にきちんと触れることが出来るのはとてもうれしいです。

せっかくなかなか出来ない「指輪全曲」月間なので、
僕自身としても、いろいろなことを吸収できるだけ吸収して、
今後の肥やしに出来れば、と思っています。

そういえば、生前のフルネ先生がかつて、
音楽院を出た後は、故郷ルーアンの歌劇場でフルートを吹いたり、歌手の面倒を見たりして、いろいろと勉強したよ。
とおっしゃっていたことがあります。

しっかりと肥やしを作ることが豊かな収穫につながる、
…はず…。

さて、もうひと頑張りすることにします。
いえ、なにせ昼間なかなかはかどらなかったので。
なにせ宵っ張りなので、夜のほうが集中できる(気がする)のです。
朝早くから起きて勉強した方が能率が良さそうなのですが、
寝起きが悪いのは生まれつきなので、
もうそういう性分なんだとなかばあきらめています。

それでは。

Gripe en España

こんにちは。

5月も中旬にさしかかろうというこの頃、
近所の公園の緑もぐっと色濃くなってきています。

さて、
多分日本でも報道されているとおもいますが、
今住んでいるここスペインでも、
最近発生した新型インフルエンザの患者が確認されています。

日本ではマスクを着用する方がとても増えていると聞きますが、
現在のところずっと患者数が多いとされているここスペインでは、
というよりも、この街で暮らしていて接する範囲の人たちの中に、
いまのところマスクをしている人はほとんど、というよりまったく見かけません。

新聞やテレビニュースなどでは、世界の感染拡大についての報道はあるようですが、
市民生活というレベルでは特に、通常と大きく違う、という事はないように思います。

最近感染者がいることが判明した後のカナダに数日滞在しましたが、
そこで街を歩いている時も、往復の際の各空港でもマスク姿の方は全く見かけませんでした。
感染国カナダからヨーロッパに戻った時にも、機内検疫のようなものはありませんでした。ヨーロッパだってすでに各国で感染が報告されていますから、今更やっても、ということなのかもしれません。

もしかしたら、感染された方が単に外出を控えて自宅にとどまっておられるから結果的にマスク姿がほとんど見られない、ということなのかもしれませんが、
とにかく、現在まだ感染しておらず(または感染が判明しておらず)、また感染している患者さんと接点がある方でもない、ごく普通の方が日常生活の中でマスクをしている、という状況はまだ目にしていませんし、政府や公的な機関が感染と関係のない一般市民に効果的な予防法としてマスク着用を呼びかけているわけではなさそうです。

報道を見る限り、
今回のインフルエンザウィルスは、
ありがたいことに感染が死に直結するような事態はあまり多くなく(多くの死者が報告されているのがメキシコだけ、というのは不思議ですね)、
私達がすでに経験しているこれまでのインフルエンザでだって毎年一定数亡くなる方がいることを考えれば、今のところその毒性は特に強いとはいえないようです。
今後変異を重ねて厄介なウィルスにならないことを祈りますが、
今のところ、タミフルなどのインフルエンザ用の薬も効果があるようですし、
症状自体も軽い方が多く、自宅待機している間に治る、
というケースも多数という状況のようですね。
新しいウィルスとはいえ、私達の手に負えない、というわけではなさそうです。

それやこれやを考えあわせると、
今回のインフルエンザに関しての日本での対応は部分的には少しオーバーじゃないかいえるかもしれません。

しかし、
今後今回以上に毒性の強い感染症が突然発生する危険もあるわけですし、
例のH5N1型の鳥由来のインフルエンザがヒトからヒトに感染するようになると、
とても危険だ、という話も聞きます。
今回の日本の政府の一連の対応は多分そういうかなり危険なウィルス感染症を想定したマニュアルにのっとっているのでしょう。
不幸中の幸い、というか、今の頃今回のウィルスの毒性はそういった想定よりも今の時点ではおだやかなようです。

だとしたら、
今後いつ本当に発生するかもわからないそういう厄介な事態への
とてもいい実地訓練(今、新型インフルエンザに感染し、またその対応に苦しんでおられる方には全く失礼な言い方で申し訳ありません)になっているのではないか、
と思います。

いくら完璧なマニュアルを作って万全の備えをしている、
と思っても、
現実に、すわっ、という事態になればいろいろな不備、ほころびが見つかり、
更に大きな混乱の元になったりしますよね。

頭で考えて準備しただけではやはり足らない部分があって、こうやって実際に体験することで、普通の市民レベルだけではなく、医療関係者の方も、政府の方もいろいろな学習が出来たのではないかと思います。

私達の現場でも、
本番直前のリハーサルでうまく行かなかった場所は本番ではうまく行く、ということはしばしばあります。
下手に無自覚にうまくいっているよりも、仕上がっていない部分が表面に出てきて、
演奏者全員がそれを自覚して対応することで本番がよりよくなる、
だからリハーサルでは失敗しておいた方がいい、というわけです。

逆に今回冷静に対応している(のかな)、というよりただのんきなだけな気もしますが、わがスペインでは、今回いろいろ失敗しておいていないので、次に深刻な事態が発生したときに、市民としては対応策などほぼまっさらな状態ですからいろいろ混乱がおきてしまうかもしれませんね。

北半球はこれから夏ですし、夏に流行るインフルエンザというのもあまり聞きませんから、今後流行が早く収まっていって欲しいと思います。

被害にあわれている方が一刻も早く健康を回復されることを祈ります。

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