河合信和の人類学のブログ

 科学ジャーナリスト、河合信和の公式ブログ。人類学、先史考古学関連のニュースなどを随時掲載の予定。

サウジアラビア北部の砂漠で8.5~9万年前の現生人類の指の化石

 サウジアラビア北部のネフド砂漠で2016年に発掘されたヒトの指の化石の解析結果から、現生人類ホモ・サピエンスは遅くとも8万5000年前にはアラビア半島に到達していたとする研究結果が4月9日付のイギリス科学誌『ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション』に発表された。


◎成人中指の3.2センチ分の化石
 発掘されたのは、アル・ウスタと呼ばれる今はカラカラに乾いた砂漠地帯。指の骨の持ち主が住んでいた頃には多数の川や湖が点在する草原だったとみられ、研究チームはガゼルやカバといった動物化石800点以上の他に多数の石器も発見している。
 指骨は、形態からホモ・サピエンスと明らかな、成人の中指と見られる長さ3.2センチの化石(写真)。発見以来、研究チームは2年にわたって解析作業を行った。

09万年前の現生人類の手の指化石















◎ウラン系列法で年代測定
 研究チームがウラン系列年代測定法で指の骨の年代を解析し、骨は少なくとも8.5万年前、場合によっては9万年前のものであることが明らかになったという。サウジアラビアでは最古のホモ・サピエンス化石であり、またアフリカやレバント地域以外で見つかったものの中で年代を直接推定できた最も古い現生人類化石だという。
 年代が正しければ現生人類は、従来考えていた6万年前頃より2~2.5万年前も早くレバント越えでのアラビアへの移住が起こっていたことになり、あるいはまたレバント経由ではなく紅海からアラビア半島南方を経ての出アフリカの可能性も出てくるだろう。

北スペイン、ラ・パシエガ洞窟壁画の年代は約6.5万年前、ヨーロッパ最古、ネアンデルタール人の作?

 世界遺産に登録されているスペイン北部の洞窟壁画の1つが、遅くとも6万4800年前に描かれていたことが分かった、とドイツ・マックスプランク研究所などのチームが22日、発表した。現生人類がアフリカから欧州に進出する2万年前だから、壁画を描いたのはネアンデルタール人という。論文は米科学誌『サイエンス』に掲載される。

◎エル・カステージョ例を2万年以上さかのぼる
 研究チームは、このラ・パシエガ洞窟で、赤いはしごのような模様が描かれた部分に付着した炭酸塩(炭素化合物)を採取し、含まれているウランとトリウムの比率から年代を測定し、上記の年代値を得た。またスペインの別の2カ所の洞窟壁画も、同様の年代と判明したという。
 これまでヨーロッパ最古の洞窟壁画は、約4万年前に描かれた同じスペインのエル・カスティージョ洞窟の壁画とされてきたが、今回は2万年以上さかのぼったことになる。なお南アフリカと東アフリカの早期現生人類が残した古い線刻などの年代はまだ未確定なので、ラ・パシエガ洞窟壁画が世界最古とまでは言えない。

◎ネアンデルタール人制作か
 ラ・パシエガ洞窟壁画(写真)は、幾何学模様やウマ、シカ、鳥などの動物、人の手などが描かれている。このモチーフは、従来知られていた初期の壁画と類似しており、これらとの関連も注目される。すなわち年代測定を進めれば、同様の年代値を示すものが出てくる可能性がある。

000ラ・パシエガ洞窟の壁画20180223-OYT1I50021-L さてそれでは、ラ・パシエガ洞窟壁画などの例は、ネアンデルタール人にも象徴化能力があったことを例証するものと言えるのだろうか。少なくとも現生人類ではないから、年代が正しければその候補はネアンデルタール人しかいない。

◎なぜ滅んだのか、ネアンデルタール人
 またスペインを含む西ヨーロッパで、中東から進出してきた現生人類ホモ・サピエンスは、人口を漸減させつつあったネアンデルタール人と長くとも5000年は共存していた。ネアンデルタール人が最終的に絶滅したのは、彼らの個体群が孤立して細りつつあったところに、勢いづく現生人類との生存競争に敗れたためと考えられるが、もし6.5万年前までに象徴化能力を身につけていたネアンデルタール人がなぜ滅んだのかも、今後、検討する必要がある。

38.5~17.2万年前のインド南部の中期旧石器、アッティランパッカム旧石器遺跡で年代

0発見された、中期旧石器時代の石器 インド南部、タミール・ナド州の古くから知られていたアッティランパッカム(Attirampakkam)遺跡の層序におけるルミネッセンス年代測定から、ここでアシュール文化の終焉と中期旧石器時代の文化の出現を示す複数の過程が38万5000±6万4000年前に起こったことが明らかになった、と英科学誌『ネイチャー』2018年2月1日号でインドの研究チームが報告した(写真=発見された、中期旧石器時代の石器)。


 この年代は南アジアにおける従来の想定をはるかにさかのぼる。
 なおアッティランパッカム遺跡では、中期旧石器時代は17万2000±4万1000年前まで続いた。
 アフリカとヨーロッパから遠く離れた地域での中期旧石器文化の年代は、同文化の起源と初期の発展をうかがうのに、さらには現生人類やそれより古いヒト族との関連、先行したアシュール文化とのつながり、そしてルヴァロワ技術の広がりを理解する上でも極めて重要である。
 インドでの豊富な中期旧石器文化記録は、こうした問題に取り組むのに理想的だが、発掘された遺跡とヒト族化石の少なさと地質年代学的な制約により進展が制限されている。
 今回の研究で、アッティランパッカムにおける、両面加工石器の漸進的消滅、小型の石器の多さ、特徴的で多様なルヴァロワ剥片技法や尖頭器技法の出現、そして石刃の要素は、先行したアシュール文化の大型剥片技術からの顕著な移行を浮き彫りにしているようだ。
 これらの知見は、インドで38万5000年前に起こった大規模な行動変化の過程を示しており、この過程がアフリカおよびヨーロッパで記録されている類似の過程と同時期のものであることを裏付る、としている。

アフリカ外に出た最古の現生人類化石ミスリヤ上顎骨は、19.4万~17.7万年前

 イスラエル、テルアビブ大などの研究チームが、アフリカ以外では最古となる現生人類化石をイスラエルの洞窟で発見した、と1月26日付の米科学誌『サイエンス』に発表した。
 化石は、イスラエルのミスリヤ洞窟で2002年に発見された歯が8本残る右上顎骨(写真)。

000ミスリア洞窟は海抜90メートルの位置にある

000ミスリア洞窟の化石の歯は現生人類としては大きな部類に入る





 研究者たちは、コンピューター断層撮影(CT)で3Dバーチャル模型を作り、アフリカやヨーロッパ、アジアで見つかったヒトの化石や現生人類のヒトの骨と比較。顎の形態が現生人類のものだと確認した。これとは別に、歯冠の下の組織をスキャンし、現生人類だけに見られる特徴があるのを発見したという。
 年代は、それぞれ異なる年代測定方法を使う3つの研究施設が独立に測定し、その結果、上顎骨は19万4000年~17万7000年前と出された。
 この年代は、これまでイスラエルで見つかっているスフール、カフゼーの現生人類化石より少なくとも5万年は古い。
 また上顎骨そばで、フリント製のルヴァロワ尖頭器なども見つかっていて、年代も符合する。
 これまでアフリカを出た現生人類ホモ・サピエンスは、氷期に海峡の狭まった紅海南端のバブ・エル=マンデブ海峡を渡ってアラビア半島南部に初めて進出したとの説もあったが、ミスリヤ上顎骨が本当に現生人類のものであり、年代も正しければ、現生人類はオーソドックスなシナイ半島経由でイスラエルに入ったとの説が確証されたことになり、また年代もさらに早かったことになる。
 ただ、エチオピアのヘルトで16万年前のホモ・サピエンス・イダルツを発見したチームの1人の諏訪元・東大教授は、ミスリヤ上顎骨に頭蓋がないことから同研究チームの結論を保留していると一部メディアが伝えている。

インドネシア、スマトラの辺境の森林地帯で新種オランウータン見つかる;大型類人猿の発見は88年ぶり

 まさかと思われる大型類人猿の新種の発見である。88年ぶりの快挙だ。
 インドネシア、北スマトラ州の辺境のバタン・トル森林地帯で、孤立して生息するオランウータンの集団が新種であることが分かったと、イギリスやインドネシアの国際研究チームが11月2日付の米科学誌「カレント・バイオロジー(Current Biology)」誌に発表した。

◎大型類人猿としてはボノボ以来の新種
 人類に近い大型類人猿の新種が見つかるのは、1929年にアフリカ、コンゴで生息するボノボ以来、88年ぶりという。新種と記載されるまでボノボは、チンパンジーの仲間だと考えられていた。
 これまでオランウータンには「ボルネオオランウータン」と「スマトラオランウータン」の2種しか存在しないと考えられてきたが、1997年、スマトラオランウータンの生息地の南に位置するバタン・トルで、オーストラリア国立大の研究チームが周囲から孤立した個体群を確認され、以降、これが独立種である可能性が調査されていた。

◎新種はポンゴ・タバヌリエンシスと命名
 2013年に研究チームは、北スマトラ州で97年に生息が確認されたオランウータン集団の中の南タパヌリ県で死んだ成体の雄1頭の頭蓋や歯の形態を詳細に調べた他、2頭分の遺伝情報を他のオランウータン2種と比較した。その結果、スマトラオランウータンはトバ湖を境に南北で分かれ、南側に生息する集団は新種と結論付けた(写真)。

000新種オランウータン1

 新種は、Pongo tapanuliensis(ポンゴ・タバヌリエンシス)、すなわちタパヌリオランウータンと名付けられた。
 新種ポンゴ・タバヌリエンシスは、見た目も体毛がもう1つのスマトラ産より細かく縮れていて、ボルネオ産と比べるとシナモン色が濃い。両種よりも発達した犬歯を持つ。

◎古い系統の生き残り
 遺伝子の面で、既存のボルネオオランウータン、スマトラオランウータンと比べた結果、タパヌリの系統から約340万年前にまずスマトラオランウータンが分岐し、その後、約70万にルネオオランウータンが枝分かれしたと推定された。つまりタパヌリオランウータンは、古い系統の生き残りなのだ。
 これで、これまでオランウータン2種、ゴリラ2種、チンパンジー、ボノボの計6種だった大型類人猿の種数、7に増えることになる。

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