イスラエル、テルアビブ大などの研究チームが、アフリカ以外では最古となる現生人類化石をイスラエルの洞窟で発見した、と1月26日付の米科学誌『サイエンス』に発表した。
 化石は、イスラエルのミスリヤ洞窟で2002年に発見された歯が8本残る右上顎骨(写真)。

000ミスリア洞窟は海抜90メートルの位置にある

000ミスリア洞窟の化石の歯は現生人類としては大きな部類に入る





 研究者たちは、コンピューター断層撮影(CT)で3Dバーチャル模型を作り、アフリカやヨーロッパ、アジアで見つかったヒトの化石や現生人類のヒトの骨と比較。顎の形態が現生人類のものだと確認した。これとは別に、歯冠の下の組織をスキャンし、現生人類だけに見られる特徴があるのを発見したという。
 年代は、それぞれ異なる年代測定方法を使う3つの研究施設が独立に測定し、その結果、上顎骨は19万4000年~17万7000年前と出された。
 この年代は、これまでイスラエルで見つかっているスフール、カフゼーの現生人類化石より少なくとも5万年は古い。
 また上顎骨そばで、フリント製のルヴァロワ尖頭器なども見つかっていて、年代も符合する。
 これまでアフリカを出た現生人類ホモ・サピエンスは、氷期に海峡の狭まった紅海南端のバブ・エル=マンデブ海峡を渡ってアラビア半島南部に初めて進出したとの説もあったが、ミスリヤ上顎骨が本当に現生人類のものであり、年代も正しければ、現生人類はオーソドックスなシナイ半島経由でイスラエルに入ったとの説が確証されたことになり、また年代もさらに早かったことになる。
 ただ、エチオピアのヘルトで16万年前のホモ・サピエンス・イダルツを発見したチームの1人の諏訪元・東大教授は、ミスリヤ上顎骨に頭蓋がないことから同研究チームの結論を保留していると一部メディアが伝えている。