TOTO-012TOTOのトイレに関連する小ネタや未公開ネタなどを特集した記事シリーズ「TOTOトイレネタ100本ノックSP」の記事12本目です。
第12回の記事では、東急東横線・田園都市線、東京メトロ半蔵門線・副都心線の4路線が乗り入れる東急東京メトロ渋谷駅で4か所あるトイレの変遷と、つい最近になって改修された道玄坂改札内トイレをピックアップします。
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現在の東急東京メトロ渋谷駅は地下3階で東西に東急田園都市線(西)と東京メトロ半蔵門線(東)、地下5階で南北に東急東横線(南)と東京メトロ副都心線(北)が走っており、この4路線は地下で始点として結集しています(田園都市線と半蔵門線、東横線と副都心線はそれぞれ相互直通運転を行っている)。
DSCN9414この内副都心線は2008年6月に当時の有楽町線新線を延伸する形で池袋-渋谷間が開業、東横線との相互直通運転を見越した構造で地下5階にホームが構築され、東急電鉄管理の駅として建設されました。

DSCN6438なお、地下5階の東横線・副都心線ホームには2017年3月26日土曜日のダイヤ改正で登場した、西武鉄道のトイレ付き通勤車両40000系による有料座席指定列車「S-TRAIN」が土休日ダイヤ運行日に乗り入れます。土休日ダイヤの「S-TRAIN」は西武秩父-副都心線-東急東横線-みなとみらい線元町・中華街間で運行されています。
DSCN9417一方、半蔵門線は1977年に田園都市線の前身にあたる新玉川線の駅として開業、この当時東急管理の駅となっており、翌年の1978年に半蔵門線の渋谷-青山一丁目間が開業した際に管理が当時の帝都高速度交通営団(→東京メトロ)に変わった経歴があります(新玉川線の駅として開業した当時、ホームは営団が建設したもの)。そして副都心線の開業を控えた2007年暮れに東京メトロが管理していた半蔵門線エリアが東急管理に変わり、営団仕様の横に細長い駅名標も東急仕様の書式に差し替えられました。

東急東京メトロ渋谷駅のトイレは改札内に3か所、改札外に1か所あります(全て多機能トイレ併設)が、この内地下4階改札内コンコースと地下1階宮益坂改札内に2か所あるトイレは2008年の副都心線開業時に設置・改修されたものです(後者は元々営団東京メトロ仕様の陳腐化が著しいトイレだったが、2007年ごろに改札外に仮設トイレを設置、その後2008年の副都心線開業時に改札内にトイレを移転)。

この記事では、本来であれば東急東京メトロ渋谷駅で4か所あるトイレの内、最近になって改修された道玄坂改札内トイレをピックアップするつもりでいましたが、東急の駅トイレの変遷を簡単に解説するために、東急東京メトロ渋谷駅で4か所あるトイレの変遷をピックアップします。まず副都心線開業時に設置・改修トイレからピックアップします。これは地下4階改札内コンコースと地下1階宮益坂改札内の2か所が該当しますが、どちらも使用器具は同じなので、地下4階改札内コンコースのトイレをピックアップします。
■地下4階改札内コンコーストイレ
●撮影日
 外観・内部案内図:2017年2月4日
 男性用トイレ:2017年1月29日
 男性用多機能トイレ:2017年2月3日
 他は特記あり
●器具カラー:ペールホワイト(製造終了、TOTO色番号:#N11)
●多機能トイレのドアは自動(押しボタン式)
●TOTOフチなしトルネード便器実使用物件69件目を確認(2008年6月確認)
東横線/副都心線エリアとしてカウント
DSCN9415地下4階改札内コンコースにあるトイレは田園都市線・半蔵門線-東横線・副都心線間を結ぶ乗換経路の途中にあります。具体的には島式3・4番線(横浜方面)ホームと渋谷ヒカリエ1改札口間を結ぶエレベーターで地下4階で降りたところにあります。内部案内図を挟んで右が男性用トイレ、左が女性用トイレとなっています。多機能トイレは男性用・女性用各トイレ手前に1室設置となっています(2000年~2013年ごろにかけて竣工した東急の駅トイレで、スペースに余裕がある場合はこの形態が標準となっていた)。
DSCN9413点字表記・音声案内機能付きのトイレ内部案内図です。男性用トイレの器具配置数は洗面台3台・小便器5台・和式個室1室・洋式個室2室・多機能トイレ1室です。


男性用トイレは清掃などで左右2区画に分割可能な構造となっており、左区画は洗面台1台・小便器3台(右区画2台を合わせて5台使用することもある)・和式個室1室、右区画は洗面台2台・小便器2台・洋式個室2室となっています。なお右区画は女性用トイレが清掃中の場合女性用トイレに転用される場合もあり、その場合は右区画にある小便器を使用せず女性用トイレに一時的に転用、男性用多機能トイレを男女共用多機能トイレとして使用することになっています。
DSCN8557洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛自動洗面器LS800GM(自動水栓・自動液体石鹸供給器内蔵)を3台使用しています(左2台が右区画、右1台が左区画のもの)。洗面コーナーには非常ボタンも設置されています。

DSCN8556小便器はTOTO製CeFiONtect仕様の小便器ユニット・センサー内蔵タイプUTEU53D(マイクロ波センサー ・ ジアテクト内蔵、器具脱臭付き、壁掛け低リップ、陶器部品番:UU500D)を5台使用しています(左3台が左区画、右2台が右区画のもの)。各区画とも1台(合計2台)は手すりを併設しており、左端と右端には手すりを併設しています。フックも設置されています。小便器にはCalmicサニタイザー(ボトルタイプ)も組み込まれています。
DSCN8559大便器個室は3室(和式1+洋式2。内包型の多機能トイレを含まない)あります。和式個室は左区画に設置されています。和式便器はTOTO製CeFiONtect仕様の掃除口付き便器C755CU(床下給水)を使用しています。洗浄装置はタッチスイッチ式フラッシュバルブ(オートクリーンCコンビネーションタイプ)を使用しています。和式個室内には手すり(便器前方と左側の逆L字型)も設置されています。大便器個室全室には非常ボタンも設置されています。
DSCN8558洋式個室は2室あり、どちらも右区画に設置されています。洋式便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器CU470PD(フチなし形状・トルネード洗浄採用、器具脱臭付き、洗浄水量8L)を使用しています。洗浄装置はタッチスイッチ式フラッシュバルブ(オートクリーンCコンビネーションタイプ)を使用しています。便座は普通便座(TC291J)です。洋式個室は2室とも手すり・ベビーチェアも設置されているほか、右区画の大便器個室が本設の女性用トイレが清掃中に女性用トイレに転用されるため、擬音装置「音姫」も設置されています。
DSCN0627ベビーチェアは2室で異なっており、右側ではTOTOのYKA13、左側ではTOTOのYKA16を使用しています。左側のベビーチェアは後年になって交換されました。
(この写真は2017年2月11日撮影)

右区画に2室ある洋式個室の反対側にはパウダーコーナーが設置されていました(これも本設の女性用トイレが清掃中に女性用トイレに転用されるため)。
DSCN9364男性用多機能トイレです。男性用トイレ入口の一番手前にあります。レイアウトは左勝手です。便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器CU470PD(フチなし形状・トルネード洗浄採用、器具脱臭付き、洗浄水量8L)を使用しています。洗浄装置はタッチスイッチ式フラッシュバルブ(オートクリーンCコンビネーションタイプ)を使用しています。便座は普通便座(TC291J)です。便座クリーナーも備え付けられています。小型手洗器(TOTO L570A+自動水栓)・背もたれも設置されています。
DSCN9365多機能トイレ内のオストメイト対応設備です(当時故障中だった)。汚物流しはTOTOのSK35を使用しています。蛇口は自在水栓でお湯は出ません。洗浄装置はタッチスイッチ式フラッシュバルブ(オートクリーンCコンビネーションタイプ)です。オストメイト対応設備側に紙(・液体石鹸)の備え付けがあります。
DSCN9366多機能トイレの洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様のL270DMを使用しています。蛇口は自動水栓アクアオート手動スイッチ付きグースネックタイプ(TEL76GX)を使用しています。液体石鹸供給器も備え付けられています。

DSCN9367多機能トイレ内にはベビーシート(左)・ベビーチェア(右)も設置されています。ベビーシートはTOTOのYKA24、ベビーチェアはTOTOのYKA15を使用しています。どちらも一度交換されました。


東急では多機能トイレのオストメイト対応設備を他の大手私鉄に先駆けて(小田急と同じぐらい早い?)便器から独立して設置したり、洗面台やオストメイト対応設備に液体石鹸を備え付けたり、またTOTOのフチなし形状・トルネード洗浄を採用した大便器(TOTOだと壁排水の機種でCU470P系・C516P・C473P)を採用したりなど、10年前の時点では東京圏大手私鉄の中でも駅トイレに関しては先進的な印象となっていましたが、オストメイト対応設備は便器から独立して設置されたものの蛇口は水しか出ない箇所が多く、それに便座は多機能トイレを含め普通便座が多くなっており、それ以降は大きな進歩が見受けられず、他社(小田急など)で相次いで駅トイレ設備レベルの向上が進む中でやや見劣りする印象がありました。
DSCN9412なお参考までに、地下1階宮益坂改札内トイレは男性用で洗面台4台・小便器9台・和式個室2室・洋式個室6室・多機能トイレ1室となっており、こちらは男性用トイレに加え女性用トイレも左右2区画に分割可能となっていました(男性用では左区画は洗面台4台・小便器5台・和式個室1室・洋式個室3室、右区画は洗面台4台・小便器4台・和式個室1室・洋式個室3室)。東急ではこのように規模の大きいトイレでは製造時に中を分割して使用できるようにしており、これも先進的な印象となっていました。地下1階宮益坂改札内トイレは地下4階改札内コンコーストイレと使用器具は同じとなっていましたが、男性用トイレのみ洗浄装置がヒューネット・ジャパン製「アクア・プロヴィーナス」(ここ最近の東急の駅トイレで多く見られる大便器用自動フラッシュバルブ)に交換されていました。

東横線と副都心線の相互直通運転開始から1年後の2014年ゴールデンウィーク前、道玄坂改札外地下1階コンコースに「渋谷ちかみちラウンジ」が開設され、同施設に付随する形でトイレが設置されました。どうやら東急東京メトロ渋谷駅のトイレの1つとして新設されたようですが、そのトイレは想像を超えるようなものとなっていました。
■道玄坂改札外地下1階コンコーストイレ
 (「渋谷ちかみちラウンジ」内)
●撮影日
 外観・男性用トイレ:2017年1月12日
 多機能トイレ:2017年2月11日
 他は特記あり
●器具カラー:ホワイト(TOTO色番号:#NW1)
●多機能トイレのドアは自動(タッチスイッチ式)
 (ただし入室時はドア付近のインターホン操作で係員がドア開)
●洋式便器には全て便座クリーナーを備え付け
●TOTOフチなしトルネード便器実使用物件950件目を確認(2014年4月確認)
田園都市線/半蔵門線エリアとしてカウント(東横線/副都心線エリアと田園都市線/半蔵門線エリアをそれぞれ1件としてカウント)
DSCN7367こちらが2014年4月に開設された「渋谷ちかみちラウンジ」です。トイレのほか、パウダールーム・授乳室(これらは女性専用)やドレッシングルーム(男性専用)、ラウンジ・ベビールーム(+子供用トイレを内包)が設置されており、全て無料で利用できますが、パウダールームとベビールームは東急または東京メトロのクレジットカードをドア付近のカードリーダーに通すか、カードを持っていなければ反対側の「渋谷ちかみち総合インフォメーション」で記帳しないと利用できませんが、トイレは自由に利用できます。トイレは左側に手前から男性用→女性用→多機能の順に並んでいます。トイレ入口には音声案内装置も設置されていますが、内部案内図は男性用・女性用・多機能トイレで別々となっています。
なお、男性用・女性用トイレは始発~終電の間使用可能ですが、多機能トイレ・パウダールーム・ドレッシングルーム・ベビールームも同様は使用時間制限があり、朝10時~夜20時の間しか使用できず、使用時には入口ドア横のインターホンで係員に申し出る必要があります(係員が遠隔操作でドアを開放)。その他の時間帯に多機能トイレを使用する場合、下の階の宮益坂改札内トイレ(後述)や道玄坂改札内に2か所あるトイレ(前述)を使うことになります。
DSCN7363洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛けハイバック洗面器「ニューラバトリースペース」L120DMを2台使用しています。蛇口は自動水栓アクアオート(TEL120AS)を使用しています。液体石鹸も備え付けられています。洗面コーナーには非常ボタンも設置されているほか、中央に手指乾燥機(TOTOクリーンドライ高速両面タイプ)も設置されています。
DSCN7362小便器はTOTO製CeFiONtect仕様の自動洗浄小便器ジアテクトUFS800CE(壁掛け低リップ)を3台使用しています。 1台(左側)には手すりを併設しています。フックも設置されています。小便器にはCalmicサニタイザー(ボトルタイプ)も組み込まれています。

DSCN7359大便器個室は2室(洋式×2)あります。洋式便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器C473P(フチなし形状・トルネード洗浄採用、洗浄水量6L)を使用しています。洗浄装置は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンCコンビネーションタイプ)を使用しています。便座はウォシュレットPS・AC100Vバリアフリーリモコン仕様(2013/02~2014/09モデル)TCF5502ERです。大便器個室は3室とも手すり(縦手すり1本)・非常ボタンも設置されています。
DSCN6073A2017年ごろに1室だけ便座が現行モデルのウォシュレットPS・AC100Vバリアフリーリモコン仕様(2016/07~モデル)TCF5503Rに交換されており、製造年がTOTO創立100周年YEARにあたる2017年製造になっていたほか、駅トイレでは珍しく便ふたが付いていました。それにこのタイプのウォシュレットでは珍しく便ふた付きです(AC100Vバリアフリーリモコンを設置したトイレではウォシュレットは大体ふたなし)。
(この写真は2017年11月9日撮影)
DSCN7364大便器個室3室中1室(奥1室)は車いす・ベビーカー入室可能な簡易多機能個室です。ドアは手動でレイアウトは右勝手です。便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器C473P(フチなし形状・トルネード洗浄採用、洗浄水量6L)を使用しています。洗浄装置は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンCコンビネーションタイプ)を使用しています。便座はウォシュレットPS・AC100Vバリアフリーリモコン仕様(2013/02~2014/09モデル)TCF5502ERです。手すりは便器右側のみの設置です。
DSCN7365簡易多機能個室内にはベビーシート(左)・ベビーチェア(右側)・着替え台(中央)も設置されています。ベビーシートはCOMBIベビーシートMP-F42、ベビーチェアはCOMBIベビーキープ・スリムF62タイプ、着替え台はCOMBIチェンジングボードCB13を使用しています。
DSCN0629多機能トイレです。多機能トイレはTOTO「コンパクト多機能トイレパック」の2016年春以前のロットのものを一部だけ改造して使用していますが、便器から独立したオストメイト対応設備も設置されています。レイアウトは左勝手です。

DSCN0630多機能トイレの便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛けサイホン便器C550SU(洗浄水量8L)を使用しています。洗浄装置は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンCコンビネーションタイプ)を使用しています。便座はウォシュレットアプリコットF2・AC100Vバリアフリーリモコン仕様(2012/02~2017/06モデル)TCF4721V81です。小型手洗器(自動水栓)・背もたれも設置されており、これらは「コンパクト多機能トイレパック」にセットされています。
DSCN0631多機能トイレ内のオストメイト対応設備(給湯設備付き)です。オストメイト対応設備はTOTOの「コンパクト多機能トイレパック」に内包されており、汚物流しはTOTO製CeFiONtect仕様のSK116(フチなし形状・トルネード洗浄採用、洗浄水量8L)を使用しています。 蛇口はシングルレバー式混合プルアウト水栓(ハンドシャワー)です。便器洗浄スイッチははオートクリーンCと同様のタッチスイッチ式ですが、給水はロータンク式(リモコン便器洗浄ユニット内蔵)です。オストメイト対応設備側に紙・液体石鹸の備え付けがあります。
DSCN0632多機能トイレの洗面台はTOTOの「コンパクト多機能トイレパック」に内包されている樹脂製カウンター式の一体型のものを使用しています。蛇口は自動水栓アクアオート(TEN40AX)を使用しています。液体石鹸も備え付けられています。左側に着替え台(TOTO YKA40)も設置されています。
DSCN0633多機能トイレ内にはベビーシート(右側)・ベビーチェア(左側も設置されています。ベビーシートはCOMBIベビーシートMP-F42、ベビーチェアはCOMBIベビーキープ・スリムF62タイプを使用しています。


このトイレは「渋谷ちかみちラウンジ」に付随されているトイレとなっているものの、東急の駅トイレとして取り扱われているようですが、東急の駅トイレにしては大幅なレベルアップとなっており、一般トイレ・多機能トイレ両方へのウォシュレット設置、一般トイレ内へのベビーシート・ベビーチェアを備えた簡易多機能個室の設置、洗面コーナーへの手指乾燥機設置など、設備がかなり充実したものとなりました。5年以上前の東急の駅トイレというと新築・改修は10年前からあまり設備レベルが進歩しない印象で、5年以上前に竣工した中目黒・御嶽山・緑が丘などの駅トイレと他社の同時期に竣工した物件を見比べると見劣りする印象がありましたが、この「渋谷ちかみちラウンジ」に付随されているトイレは竣工当時、東急の駅トイレの中ではハイレベルなものでした。一般トイレ内のベビーシート設置は改修前のあざみ野など、男女別の一般トイレ内に多機能トイレを内包している物件を除けば、東急の駅トイレでは初となりました。
この「渋谷ちかみちラウンジ」のトイレがきっかけで、これ以降に竣工した東急の駅トイレでは大規模改修・トイレ新設に際してウォシュレットや一般トイレ内簡易多機能個室を整備するようになり、2014年暮れに竣工した青葉台や、2015年春にバリアフリー化工事の総仕上げとして竣工した下神明でウォシュレットや簡易多機能個室が整備され、また「木になるリニューアル」のコンセプトでトイレが改修された戸越銀座などの駅トイレ改修でも簡易多機能個室の整備まで行われなかったもののウォシュレットが整備されたほか、2015年春から一部の主要乗換駅の既存トイレにもウォシュレットを整備、2016年秋からその他の既存駅トイレにもウォシュレットを整備したりなど、同じくウォシュレットを集中的に設置している西武と並んでウォシュレット整備率が上がってきました。この「渋谷ちかみちラウンジ」のトイレがまさに、東急の駅トイレの設備レベル向上の起爆剤として機能したという格好になりました。

一方この「渋谷ちかみちラウンジ」のトイレで残念だった点として、これだけ設備を充実しておきながらも多機能トイレのベッド系設備がベビーシート止まりで多目的シートが設置されておらず(この当時東急の駅トイレでは多目的シート設置物件はなかった)、それに男性用・女性用トイレが始発~終電の間使用可能であるのに対し多機能トイレは使用時インターホンで係員に呼び出さないと使用できず、また使用開始時間が10時と遅く、終了時間は逆に20時と早く、更に車いすでアクセスする場合の立地条件が悪い(道玄坂改札口最寄りのエレベーターは109店舗内エレベーターで、地下1階エレベーター乗り場付近からも東急渋谷駅構内に繋がっているものの、109の地下1階駅連絡口には階段があり、車いすでの移動が難しくなっている)といった点が挙げられました。
この「渋谷ちかみちラウンジ」の至近距離にある、車いすでアクセス可能なトイレは道玄坂改札内にあるトイレ(道玄坂改札口を入って斜め右前方)で、田園都市線・半蔵門線ホームからエレベーターでアクセスでき、多機能トイレも設置されていますが、そちらは宮益坂改札内に2か所あるトイレよりもやや古く、ウォシュレットや手指乾燥機などは設置されていませんでした。
■道玄坂改札内トイレ 改修前(2003年ごろ竣工?)
●撮影日
 男性用トイレ:2017年1月12日
 多機能トイレ:2017年2月11日
 他は特記あり
●器具カラー
 下記以外:ペールホワイト(製造終了、TOTO色番号:#N11)
 洗面台(多機能):ホワイト(TOTO色番号:#NW1)
●多機能トイレのドアは自動(手かざしセンサー式)
●洋式便器には全て便座クリーナーを備え付け
DSCN9410道玄坂改札内トイレは、田園都市線/半蔵門線エリアが営団(→東京メトロ)管理だったころの2003年ごろに改修、つまり営団地下鉄だったころに改修されましたが、2007年暮れに管理が東京メトロ東急に変わってもトイレ自体はそれほど古くなかったため、トイレ入口周りなどのサインシステム類を東急仕様のものに変更してそのまま使用していました。入口通路を入って左側に手前から多機能→女性用→男性用の順に並んでいました。
(2017年2月4日撮影)
DSCN7370洗面台はカウンター式で、TOTO製CeFiONtect仕様のL331RAを2台使用していました。蛇口は自動水栓アクアオート(TEL70AX)を使用していました。管理が東京メトロ東急に変わった後に液体石鹸が備え付けられました。1台(左側/入口側)には手すりを併設していました。
DSCN7368小便器はTOTO製CeFiONtect仕様の自動洗浄小便器ジアテクトUFS800CE(壁掛け低リップ)を1台(右1台)と同UFS860CE(壁掛け式)を4台(左4台)の計5台を使用していました(左2台+角(左奥)1台+右2台のL字型配置)。1台(右側/入口側)には手すりを併設していました。フックも設置されていました。小便器にはCalmicサニタイザー(ボトルタイプ)も組み込まれていました。
DSCN7369大便器個室は3室(和式1+洋式2)ありました。一番手前の個室が和式でした。和式便器はTOTO製CeFiONtect仕様の掃除口付き便器C755CU(床下給水)を使用していました。洗浄装置は押し棒式フラッシュバルブを使用していました。大便器個室は全て非常ボタンも設置されていました。和式個室内には手すりの設置はなかったと思います。
DSCN7371洋式便器はTOTO製CeFiONtect仕様のサイホンゼット式便器C480Sを使用していました。洗浄装置は押し棒式フラッシュバルブを使用していました。便座は普通便座(TC291J)です。洋式個室は2室とも手すり、2室中1室(奥1室)にはベビーチェア(TOTO YKA15)も設置されていました。
DSCN7708多機能トイレです。レイアウトは右勝手でした。便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器CU467Pを使用していました。洗浄装置は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンCコンビネーションタイプ)を使用していました(便器洗浄スイッチは2つ設置)。便座は普通便座(品番不明)です。小型手洗器(TOTO L570A+自動水栓)・背もたれ・オストメイト用洗浄水栓(ノズルタイプ)も設置されていました。
DSCN7709多機能トイレの洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様のL270DMを使用していました。蛇口は自動水栓アクアオート手動スイッチ付きグースネックタイプ(TEL76GX)を使用していました。竣工当時、洗面台は液体石鹸供給器取付穴のないL270Dを使用しており、管理が東京メトロ東急に変わった後に洗面台が交換され、それと同時に液体石鹸が備え付けられました。
DSCN7710多機能トイレ内にはベビーシートも設置されていました。ベビーシートはTOTOのYKA25でした。一度取り換えられています。



このトイレは概ね2002年~2010年竣工の営団地下鉄東京メトロ標準仕様の設備レベルとなっており、営団東京メトロでは多機能トイレは便器上面のノズルタイプのオストメイト用洗浄水栓とベビーシート設置が長らくデフォルトとなっていたほか、大便器は自動洗浄大便器(CFS800系・CFS802系)か壁排水のC743PV系のいずれかがデフォルトとなっていました。
DSCN9682この営団東京メトロ標準仕様で改修され(管理が東京メトロ東急に変わる前に改修された)、それほど陳腐化が目立っていなかった道玄坂改札内トイレですが、上の階の「渋谷ちかみちラウンジ」のトイレと比べるとやや見劣りする印象も目立ってきたためか、改修されることになりました。改修工事によるトイレ閉鎖日はなんとTOTO創立100周年記念日の翌日:2017年5月16日火曜日で(余談ながら連載「その8」でも書いたように、都営新宿線市ケ谷駅・市ケ谷橋方面改札内トイレ改修工事が行われた際、トイレ閉鎖日がTOTO創立100周年記念日の2017年5月15日月曜日となっていた)、完成予定は当初は2017年9月下旬とアナウンスされていましたが、9月下旬ごろに通りかかったところ完成予定が11月下旬に延期、その後11月ごろに通りかかったところ完成予定が12月下旬に延期され、完成予定が2回に渡って延期されたことになります。

■道玄坂改札内トイレ 改修後(2017年竣工)
●撮影日:2017年12月27日
●器具カラー:ホワイト(TOTO色番号:#NW1)
●多機能トイレのドアは自動(タッチスイッチ式・アナウンス付き)
●洋式便器には全て便座クリーナーを備え付け
●TOTOフチなしトルネード便器実使用物件950件目を確認(2014年4月確認)
田園都市線/半蔵門線エリアとしてカウント(東横線/副都心線エリアと田園都市線/半蔵門線エリアをそれぞれ1件としてカウント)
DSCN980412月27日水曜日に通りかかったところ、道玄坂改札内トイレ改修工事が完成、これにより東急東京メトロ渋谷駅で4か所あるトイレの内、営団時代の痕跡が残っていたトイレは完全に姿を消し、外観の印象が大きく変わりました。スロープを上がってすぐ右側に多機能トイレ、正面に男性用トイレ、正面右側に女性用トイレがあります。トイレ入口には音声案内装置も設置されています。
DSCN9784点字表記付きのトイレ内部案内図です。男性用トイレの器具配置数は洗面台2台・小便器5台・洋式個室4室(内2室は簡易多機能個室)で、大便器個室は改修前に比べて1室増えました。


DSCN9795洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛けハイバック洗面器「ニューラバトリースペース」L120DMを2台使用しています。蛇口は自動水栓アクアオート(TEL120AS)を使用しています。液体石鹸も備え付けられています。洗面コーナーには非常ボタンも設置されているほか、中央に手指乾燥機(TOTOクリーンドライ高速両面タイプ)も設置されています。
DSCN9796小便器はTOTO製CeFiONtect仕様の自動洗浄小便器ジアテクトUFS800CE(壁掛け低リップ)を5台使用しています。 1台(右側)には手すりを併設しています。フックも設置されています。小便器にはCalmicサニタイザー(ボトルタイプ)も組み込まれています。

DSCN9803A大便器個室は4室(洋式×4)あります。洋式便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器C473P(フチなし形状・トルネード洗浄採用、洗浄水量6L)を使用しています。洗浄装置はタッチスイッチ+光電センサー併用フラッシュバルブ(オートクリーンC自動バルブユニット・コンビネーションタイプ)を使用しており、後方に人体検知用センサーが設置されています。便座はウォシュレットアプリコットF2・AC100Vバリアフリーリモコン仕様(2012/02~2017/06モデル)TCF4721V81で、このトイレのウォシュレットは全てTOTO創立100周年YEARにあたる2017年製造です。大便器個室は4室とも手すり・非常ボタンも設置されています。
DSCN9800このトイレでは、ベビーカー入室可能な簡易多機能個室が一番手前と奥に1室ずつ、計2室用意されています(どちらも車いすでの入室は困難)。ドアはどちらも手動です。 こちらは手前の簡易多機能個室で、レイアウトは右勝手となっています。簡易多機能個室の便器関係は2室とも先ほどの個室と同じものとなっています。手すりは便器右側のみの設置です。
DSCN9802手前の簡易多機能個室内にはベビーシート(左)・着替え台(右)も設置されています。ベビーシートはTOTOのYKA25R、着替え台はTOTOのYKA41を使用しています。


DSCN9797こちらは一番奥にある簡易多機能個室です。 レイアウトは左勝手で便器の向きは横向きとなっています。手すりは便器左側のみの設置です。



DSCN9798一番奥の簡易多機能個室内にはベビーチェア (右側)・着替え台(左側)も設置されています。ベビーチェアはTOTOのYKA16R、着替え台はTOTOのYKA41を使用しています。


DSCN9786多機能トイレです。スペースは改修前と比べて1.5倍広くなり、もちろん10年前から東急の駅トイレで標準となっている、便器から独立したオストメイト対応設備も設置されています。改修後のレイアウトは左勝手となりました。

DSCN9787多機能トイレの便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器C473P(フチなし形状・トルネード洗浄採用、洗浄水量6L)を使用しています。洗浄装置はタッチスイッチ+光電センサー併用フラッシュバルブ(オートクリーンC自動バルブユニット・コンビネーションタイプ)を使用しており、後方に人体検知用センサーが設置されています。便座はウォシュレットアプリコットF2・AC100Vバリアフリーリモコン仕様(2012/02~2017/06モデル)TCF4721V81です。小型手洗器(TOTO L570A+自動水栓)・背もたれも設置されています。
DSCN9788オストメイト対応設備はTOTOの「オストメイト対応トイレパック」で、汚物流しはTOTO製CeFiONtect仕様のSK115(フチなし形状・トルネード洗浄採用、洗浄水量8L)を使用しています。蛇口はシングルレバー式混合プルアウト水栓(ハンドシャワー)です。便器洗浄スイッチはオートクリーンCと同タイプのタッチスイッチですが、洗浄はロータンク式(リモコン便器洗浄ユニット内蔵)です。オストメイト対応設備側に紙・液体石鹸の備え付けがあります。
DSCN9789多機能トイレの洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様のL270DMを使用しています。蛇口は自動水栓アクアオート発電・オールインワンタイプ(TENA10AX)を使用しています。液体石鹸も備え付けられています(液体石鹸供給器は自動)。左側に手指乾燥機(TOTOクリーンドライ高速両面タイプ)・ベビーチェア(TOTO YKA16R)も設置されています。
DSCN9790多機能トイレ内にはベビーシートも設置されています。ベビーシートはTOTOのYKA25Rです。多目的シートは設置されていませんでした。



<評価>このトイレの設備は宮益坂改札口の上の階にある「渋谷ちかみちラウンジ」のトイレと同等の設備レベルで、大便器個室全室と多機能トイレへのウォシュレット設置、簡易多機能個室など、充実した設備となっています。こちらのトイレの方が車いすでのアクセスは良好で、田園都市線・半蔵門線ホームや地上からエレベーターでアクセスできる位置に「渋谷ちかみちラウンジ」に匹敵する設備レベルのトイレができた格好になるので、今般実施した改修工事は、いくら元のトイレがそれほど古くないとはいえ、大変有意義なものだったと言えます(それどころが、東急の駅トイレでは、2000年代竣工の駅トイレでも後から大便器個室完全洋式化・ウォシュレット設置を行っているところもあるが、これらは今後1~2年間は改修しないことになっているのだろうか?)。
ここでは一般トイレ内には車いすでの入室は困難な造りとなっていたものの、簡易多機能個室が2室用意されていました。駅トイレで簡易多機能個室を2室用意する事例はあまり例がなく、ここ以外では大阪市営地下鉄御堂筋線新大阪駅中改札内で確認したぐらいです(同駅の同トイレは2室ある簡易多機能個室の内、片方はベビーシート設置、もう片方は給湯設備付きオストメイト対応設備設置となっている)が、簡易多機能個室が2室用意されているのを考えると、多機能トイレにかかる需要分散が図られていると言えます(片方の簡易多機能個室に「パウチ・しびん洗浄水栓付き背もたれ」といった簡易的なオストメイト対応設備があればいいのだが…)。
このトイレは営団(→東京メトロ)管理だったころに一度改修し、東急管理に移行した後に再度改修したわけで、ここ最近のJR東日本の駅トイレでよくある「再改修」に相当するようなトイレ改修工事となりますが、東急ではここ以外にも田園都市線のあざみ野・中央林間両駅でもトイレ再改修を確認しています(いずれも次回「東急ワンデーオープンチケット」欅坂46仕様の「東急ワンデーオープンチケット」東横線開業90周年記念の乗車券)が手元に3枚あるので3月末までに消化しなければ…)東急線沿線に出かけた際に再度見てくる予定)。
一方で残念だった点として、「渋谷ちかみちラウンジ」のトイレにも同じことが言えますが、多機能トイレのベッド系設備がベビーシート止まりとなってしまったことが挙げられ、今のところ東急の駅トイレで多目的シートが設置されているのは二子玉川のみで、この点は要改善事項と言えます。
東急電鉄公式HPによれば、2016年度までに50駅でウォシュレット設置が完了しており、2017年度は鷺沼・たまプラーザなどをはじめとした約25駅でウォシュレットを整備するとの言及があるので、期待が高まります。

※「ウォシュレット」はTOTOの登録商標です。