東京都千代田区では、当初2020年に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックを契機に、竣工時期を問わず、大部分の公衆トイレの全面改修を順次行っています。千代田区の北側、日本武道館や靖国神社などが所在している九段下エリアにある2件の公衆トイレは、少し変わったスタイルでの改修で、筆者は既にこれを把握していましたが、当ブログには公開していませんでした。現状調査を行うために、九段下に足を運んできました。
まずは九段下駅から靖国通りを東側に進み、首都高速道路5号池袋線の高架下をくぐり抜けて左折・北上します。「専大通り」(専大=専修大学の略称)に差し掛かると、首都高速道路の西神田出入口があり、そこで左折して堀留橋を渡ります。
堀留橋の西側には、「堀留南児童遊園」があります。この公園の敷地内には千代田区管理の公衆トイレが「堀留橋際公衆便所」として開設されています(公園敷地内にあるトイレだが、公園敷地面積が狭いためか、この名称となっている。“○○橋際公衆便所”という名称の付け方は隣の中央区ではよくあるが、千代田区の公衆トイレでこの名称の付け方はここが唯一)。
■堀留橋際公衆便所
●器具カラー:ホワイト(TOTO色番号:#NW1)
●多機能トイレのドアは手動
「堀留橋際公衆便所」の外観です。男性用トイレと多機能トイレだけの構成となっており、単独の女性用トイレの設置はなく、多機能トイレは女性用トイレと兼用する形態をとっています。右半分が男性用トイレで入口は前面道路に面する形で設置、左半分が多機能トイレでドアは側面に設置されています。
点字表記付きのトイレ内部案内図です。内部案内図は多機能トイレドア付近に設置されています。男性用トイレの器具配置数は洗面台1台・小便器2台・洋式個室1室です。
洗面台は、多機能トイレで設置事例が多いTOTO製CeFiONtect仕様のL270CMを1台使用しています。蛇口は自動水栓アクアオート(TENA40A)を使用しています。自動液体石鹸供給器(TOTOオートソープディスペンサー)も設置されています。
小便器はTOTO製CeFiONtect仕様の自動洗浄小便器UFS900R(壁掛け低リップ)を2台使用しています。1台(右側/入口側)には手すりを併設しています。フックも設置されています。外観写真を見た方は分かるかと思いますが、小便器は外から丸見えの位置に設置となっていました。内装は木目調パネルを多用しており、ホテルのパブリックスペースと同等の高級感が演出されており、街路上の公衆トイレとは思えないような雰囲気です。
大便器個室は洋式1室のみです。洋式便器はTOTOの「壁掛け大便器セット・フラッシュタンク式」で、陶器部分はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器CS530P(フチなし形状・トルネード洗浄採用、このセットでの洗浄水量は6L)を使用しています。便器洗浄スイッチはオートクリーンCと同タイプの光電センサー式ですが、洗浄はフラッシュタンク式(リモコン便器洗浄ユニット内蔵)です。便座はウォシュレットPS2(2018/02~2021/03モデル、エコリモコン・ふたなし仕様、「音姫」「きれい除菌水」付き、標準ピクト採用)TCF5533YRです(リモコンはボタンを押した力で発電する「エコリモコン」のみの設置)。大便器個室内には手すり・幼児用補助便座(TOTO TC51)も設置されています。
大便器個室内にはベビーチェアも設置されています。ベビーチェアはCOMBIベビーキープスリムF62タイプBK-F62を使用しています。このトイレの掃除用具入れは男性用トイレの大便器個室に内包する形態をとっており、便座に座って正面の位置に掃除用具置き場のドアがあります。
多機能トイレです。単独の女性用トイレがないため、女性用トイレと兼用する形態をとっています。多機能トイレ器具一式はTOTO「コンパクト多機能トイレパック」を使用しており、給湯設備付きオストメイト対応設備も設置されています。レイアウトは左勝手で便器の正面にドアがあります。
多機能トイレの便器はTOTO製CeFiONtect仕様の壁掛け式ニューボルテックス式便器CS530P(フチなし形状・トルネード洗浄採用、このセットでの洗浄水量は大4.8L/小3.6L)を使用しています。洗浄はロータンク式(リモコン便器洗浄ユニット内蔵)です。便座はウォシュレットアプリコットP AP2AK(2019/02~2021/03モデル、エコリモコン・ふたなし仕様、「温風乾燥」「洗浄位置調節」「きれい除菌水」「オート便器洗浄」付き/「音姫」なし、標準ピクト採用)TCF5840AUPRです(リモコン・便器洗浄リモコンは「エコリモコン」)。小型手洗器(自動水栓)・背もたれ・幼児用補助便座(TOTO TC51)も設置されています。
多機能トイレ内のオストメイト対応設備(給湯設備付き)です。オストメイト対応設備はTOTOの「コンパクト多機能トイレパック」に内包されており、汚物流しはTOTO製CeFiONtect仕様のSK117(フチなし形状・トルネード洗浄、洗浄水量4.8L)を使用しています。蛇口はシングルレバー式混合プルアウト水栓です。 汚物流しの洗浄はオートクリーンCと同様のタッチスイッチ式ですが、給水はロータンク式(リモコン便器洗浄ユニット内蔵)です。オストメイト対応設備側に紙(・液体石鹸)の備え付けがあります。左側にベビーチェア・着替え台も設置されており、これらも「コンパクト多機能トイレパック」に内包されています。
多機能トイレの洗面台はTOTOの「コンパクト多機能トイレパック」に内包されている樹脂製カウンター式の一体型のものを使用しています(洗面台のサイズは手洗器に近い)。蛇口は自動水栓アクアオート(TENA12B)を使用しています。液体石鹸供給器もあります(撮影当時石鹸自体が入っていた)。
多機能トイレ内にはベビーシートも設置されています。ベビーシートはCOMBIおむつ交換台OK21Fを使用しています。
さて、このトイレも最近になって改修工事が行われたというのは確かなことですが、「多目的トイレマップ」の当物件の項目(磯谷俊仁さん管理データに後から画像データを追加したもの。物件タイトルは「掘溜南児童遊園」(変換ミス?)となっていた)に見覚えのある方は、何かに気付くかもしれません。
2015年3月12日に撮影した、以前の堀留橋際公衆便所です。実はこの公衆トイレ、元はLIXIL(INAX)が製造・販売していた、公園・街路上の公衆トイレ用ユニット躯体「アーバントイレ」で、ここでは2代目にあたる「アーバントイレSP」を使用していました。小便器2台と和式個室1室を設置したUTS-112Uと、多機能トイレユニットのUTS-40で構成されていました。
多機能トイレユニットUTS-40の室内の様子です。LIXIL(INAX)の車いす対応サイホンゼット式便器C-5Kと、洗面台L-365Gで構成されるユニットとなっていました。ここでは幼児用小便器(U-201M)とベビーシートを追加するなどのカスタマイズが行われていました。多機能トイレユニットUTS-40は、仕様で便器の正面にドアがあるレイアウトとなっていました。
その他の代表的なユニットの詳細を挙げていくと、小型手洗器付き前室+和式個室のUTS-2、小型手洗器付き前室+和式両用便器設置個室のUTS-3、小型手洗器・小便器・和式個室各1個で構成されるUTS-12、小型手洗器1台+和式個室2室で構成されるUTS-22が挙げられます(参考:LIXILいいナビで検索した際にヒットしたカタログページの一例)。
その後、この堀留橋際公衆便所も他の千代田区の公衆トイレと同様に改修されましたが、この改修に際しても以前の「アーバントイレSP」の躯体を残したまま改修、という面白い改修が行われました(使用器具がTOTO製品主体に変わったので、“TOTO版アーバントイレ”という趣もある)。LIXIL(INAX)「アーバントイレ」シリーズは千代田区内では以前、千代田区と中央区の区境に近い、地蔵橋公衆便所でも見られ、そちらは元の躯体では多機能トイレ設置(地蔵橋公衆便所には一連の改修前、多機能トイレはなかった)を含めた改修が困難であったことから、躯体をゼロから作り直す形で改修されましたが、この堀留橋際公衆便所は、アーバントイレSPの躯体を流用した改修となり、対照的な感じがします。また、TOTOでは「アーバントイレ」シリーズに相当するトイレ建物の商品は出していなかったようです。更にここ最近のLIXILカタログでは、アーバントイレそのものが掲載されていないため、既に製造をやめてしまったようで(もしかしたらアーバントイレそのものも、木村技研の回転ドア式多機能トイレやTOTOの自動洗浄大便器などとともに“来なかった未来扱い”のトイレ器具に入るのだろうか?)、後継商品は信建工業製のトイレ建物(千代田区内でも設置事例がいくつかあるが、いずれ「多目的トイレマップ連動解説記事」としてピックアップ予定)や三晃商事製「サンコーブルースカイ」シリーズとなります。
一連の改修工事が行われた千代田区の公衆トイレ全てがTOTO製品主体かというと、そうでもなく、実は改修された千代田区の公衆トイレの中でも、LIXIL(INAX)主体で改修された物件が存在します。これをこの後ピックアップしていきます。
九段下駅に戻り、今度は靖国通りを靖国神社・市ヶ谷方面に向かう形で西に100mほど進みます(○東京メトロ半蔵門線・○都営新宿線の真上を○渋谷/○新宿方面に進む)。
靖国神社の東端の反対側には、千代田区の九段坂公園があります。具体的には靖国通りと早稲田通りの交差点と、日本武道館方面への道路の近くになります。写真は靖国通りと早稲田通りの交差点に架かる歩道橋から撮影した、九段坂公園の全景です。そこにも千代田区の公衆トイレがあり、そちらは「九段坂公衆便所」となります。写真は2月に撮影したものですが、桜の開花時期には雰囲気が一変しそうです。
九段坂公衆便所は、手元に改修前の写真がフルであるので、そこから掲載していきます。改修工事が行われた千代田区の公衆トイレでは数少ない、改修前の写真が手許にある物件です。
■九段坂公衆便所 改修前
●撮影日:2008年6月15日
●器具カラー:パステルアイボリー(TOTO色番号:#SC1)
●多機能トイレのドアは手動
2008年6月当時の九段坂公衆便所です。見るからに1990年代竣工のトイレであり、この時期に竣工した千代田区の公衆トイレでは多い、妙に凝ったデザインの建物となっていました。左から多機能→男性用→女性用の順に並んでおり、男性用・女性用トイレ入口には段差がありました。
洗面台はTOTOのL525(非CeFiONtect仕様)を1台使用していました。蛇口は自動水栓アクアオート(TEL30AX)を使用していました。
小便器はTOTOのU307C(床置き式中型)を2台使用していました。洗浄方式は光電センサー式フラッシュバルブ(オートクリーンU US-A型)による個別自動洗浄です。1台(左側)には手すりを併設していました。
大便器個室は和式1室のみでした。和式便器はTOTOのC750C(床下給水)を使用していました。洗浄装置は押し棒式フラッシュバルブを使用していました。大便器個室内には手すりの設置はありませんでした。
多機能トイレです。改修前の多機能トイレは“簡易多機能個室”レベルの狭いものでした。レイアウトは左勝手でした。便器はTOTOのサイホンゼット式便器C48(C48SR)(標準洗浄水量13L)を使用していました。洗浄装置はタッチスイッチ+光電センサー併用フラッシュバルブ(1992年~2001年モデルの「大便器自動洗浄システム」)を使用していました。便座は普通便座(TC291)です。小型手洗器(TOTO L593+レバー式単水栓)も設置されていましたが、手洗設備は便器横の小型手洗器のみで、大型の洗面台はありませんでした。
多機能トイレ内にはベビーチェアも設置されていました。ベビーチェアはTOTOのYKA13でした。ベビーチェアはこのトイレの竣工時期からするとさすがに後から設置されたものではないかと思われますが、ベビーシートは設置されていませんでした。
■九段坂公衆便所 改修後
●撮影日:2022年2月23日
●器具カラー:ピュアホワイト(LIXIL INAX色番号:/BW1)
●多機能トイレのドアは手動
このトイレは、2020年3月に改修されたほか、LIXILビジネス情報にもこのトイレの事例が掲載されています。改修に際して躯体も一新されています。改修後のトイレはいたってシンプルな切妻屋根の建物となり、以前よりもコンパクトになった印象がありますが、躯体は皇居のお濠の豊かな自然環境と都市景観が調和した空間に合わせて、「MOKU REST」と呼称される木造パネル工法ユニット式トイレを採用、外壁は黒系のルーバー状の外壁材となりました。男性用・女性用トイレ手前には木目調の衝立が設置されています。改修済みの千代田区の公衆トイレで見られる、紫色の千代田区ロゴは右側面に入っています(その一方で前掲の堀留橋際公衆便所などをはじめとする改修済みの千代田区の公衆トイレで見られるアクセントカラーはここでは取り入れられておらず、一般的なサインが設置されている)。トイレは左から男性用→多機能→女性用の順に並んでいます。
点字表記付きのトイレ内部案内図です。男性用トイレの器具配置数は小型手洗器1台・小便器2台・洋式個室1室で、少なくとも男性用トイレは改修前と同等の器具数となっています。
男性用トイレの手洗設備は小型手洗器のみの設置です。小型手洗器はLIXIL(INAX)製アクアセラミック仕様のYL-A74Uを1台使用しています。蛇口は自動水栓オートマージュ(AM-200CV1)です。液体石鹸供給器も設置されています(中身の有無は未確認)。INAXのL-A74系はTOTOのL870系に相当する機種で、サイズも近いですが、TOTOのL870系は蛇口の吐水部が上部にあって、水栓金具は専用の機種が必要となる一方、INAXのL-A74系は台付水栓を右側に取り付ける形態のため、汎用型の水栓を取り付けることができます。ただその関係で吐水部からボウル底面までのスペースに余裕がなく、TOTO L870系と比べると使いにくい印象です。なおLIXILビジネス情報の当該ページによれば、女性用トイレの手洗設備は大型の洗面台であり、マーベリイナカウンター・ボウル一体タイプが2台設置されているようです。
小便器はLIXIL(INAX)製ハイパーキラミック仕様のセンサー一体型ストール小便器U-A51MP(TOTOのUFS800C系に相当、壁掛け低リップ)を2台使用しています。1台(左側)には手すりを併設しています。フックも設置されています。男性用トイレの小便器は一見すると外から丸見えですが、撮影位置の背後にL字型の衝立があるため、外から丸見えということはありません。
大便器個室は洋式1室のみです。洋式便器はLIXIL(INAX)製アクアセラミック仕様の壁掛け式ネオボルテックス式便器「パブリック向けクイックタンク式壁掛便器」YC-P111PA(TOTOのCS530Pに相当、標準洗浄水量大6L/小5L、サイドカバー付き)を使用しています。便器洗浄スイッチはタッチスイッチ式ですが給水は「クイックタンク式」(TOTOの「フラッシュタンク式」に相当)です。便座はシャワートイレPA11M(男性用モデル、発電リモコン・ふたなし仕様、「ビデ洗浄」なし、標準ピクト採用)CW-PA11MLです(リモコンの詳細は次の写真で詳述)。大便器個室内には手すりも設置されています。
大便器個室内の操作系設備の詳細です。シャワートイレのリモコンはボタンを押した力で発電する「発電リモコン」のみの設置で、TOTOウォシュレットPSエコリモコンに相当します。現在TOTO・LIXIL(INAX)両社では、パブリック向け温水洗浄便座各種をシートタイプ・一体型ともに発売していますが、LIXIL(INAX)ではシートタイプ・一体型、リモコン操作式・本体操作式問わず、男女別でモデルを展開しており、「ビデ洗浄」がない男性用モデル(この写真)と、「流水音」(TOTOの「音姫」に相当)がある女性用モデル(この後の多機能トイレに登場)で推移しています(一方TOTOでは、イオンモール向け特殊品の例外を除き、「ビデ洗浄」のほか「音姫」が付いた女性用モデルで1本化されている)。便器洗浄リモコンも発電リモコンとなっています。
大便器個室内にはベビーチェア(正面)・着替え台(左側)も設置されています。ベビーチェアはLIXIL(INAX)のKFA-11(COMBIベビーキープスリムF62タイプBK-F62のOEM品)、着替え台はCOMBIチェンジングボードCB-13を使用しています。
多機能トイレです。木造パネル工法ユニット式トイレということで、一般トイレ・多機能トイレともに壁面は木材を多用していますが、ライニングパネルや腰壁はプラスチック製の白いパネルとなっています。改修に際して従来の簡易多機能個室程度の狭さから格段に広くなり、給湯設備付きオストメイト対応設備が設置されました。レイアウトは改修前と同じく左勝手です。
多機能トイレの便器はLIXIL(INAX)製アクアセラミック仕様の壁掛け式ネオボルテックス式便器「パブリック向けクイックタンク式壁掛便器」YC-P111PAを使用しています。便器洗浄スイッチはタッチスイッチ式ですが給水は「クイックタンク式」です。便座はシャワートイレPA11F(女性用モデル、発電リモコン・ふたなし仕様、「流水音」付き、標準ピクト採用)CW-PA11FLです(リモコン・便器洗浄リモコンは「発電リモコン」)。背もたれも設置されているほか、左手前にベビーチェア(LIXIL(INAX) KFA-11。COMBIベビーキープスリムF62タイプBK-F62のOEM品)も設置されています。
多機能トイレ内のオストメイト対応設備(給湯設備付き)です。オストメイト対応設備はLIXIL(INAX)の「オストメイトパック」で、汚物流しはLIXIL(INAX)製アクアセラミック仕様のYS-210(TOTOのSK116に相当するがフチ裏あり・複数穴吐水、標準洗浄水量6L)を使用しています。蛇口はシングルレバー式混合プルアウト水栓です。便器洗浄スイッチはタッチスイッチ式ですが、洗浄はロータンク式(リモコン便器洗浄ユニット内蔵)です。オストメイト対応設備側に紙(・液体石鹸)の備え付けがあります。
多機能トイレの洗面台はLIXIL(INAX)製アクアセラミック仕様のYL-275(TOTOのL270Dに相当)を使用しています。蛇口は自動水栓オートマーシュ手動スイッチ付きグースネックタイプ(AM-211CV1)を使用しています。液体石鹸供給器も設置されています(中身の有無は未確認)。一般トイレ・多機能トイレともに、光源は電球色に近いLED照明となっています。
多機能トイレ内にはベビーシート(右側)・着替え台(左側)も設置されています。ベビーシートはCOMBI横型おむつ交換台OK21W、着替え台はCOMBIチェンジングボードCB-13を使用しています。
この九段坂公衆便所は、改修工事が行われた千代田区の公衆トイレでは唯一のLIXIL(INAX)製品主体で、多機能トイレは「多機能トイレパック」といった洋式便器・給湯設備付きオストメイト対応設備・洗面台が1つになったセットではなくそれぞれ単体での設置、また木質化された内装材(東急戸越銀座・旗の台両駅や、小田急参宮橋駅(関連記事1・関連記事2)などで見られるような多摩産材ではない模様)を多用するなど、他の改修工事が行われた千代田区の公衆トイレとは一線を画す仕様となっています。それに「パブリック向けクイックタンク式壁掛便器」や「発電リモコン」仕様のパブリック向けシャワートイレなどをはじめとする、現在のLIXIL(INAX)の看板商品が集まっている、ということもあり、先述したようにLIXILビジネス情報でもこのトイレがピックアップされています。
…といったように、以上2件の千代田区の公衆トイレも、完全洋式化や多機能トイレの設備充実化(給湯設備付きオストメイト対応設備設置によるオストメイト対応化や乳幼児対応設備の拡充)のほか、全大便器への温水洗浄便座設置など、設備の充実度は渋谷区「THE TOKYO TOILET」の諸施設(関連記事)にも迫るどころが、渋谷区の件のプロジェクトによる公衆トイレができる前からこのようなハイレベルな公衆トイレが相次いで整備されており、頭が下がります。他の千代田区の公衆トイレについても、いずれ「多目的トイレマップ連動解説記事」での執筆を予定したいと思います(ただこの記事は離れた複数物件をピックアップしたものであるため、あえて「多目的トイレマップ連動解説記事」としての取扱対象外としていた)が、ここと同等のハイレベルなトイレだった場合、高い評価として同じようなことを書くことになりそうです。
九段下駅周辺では、南側の九段会館駐車場前に千代田区管理の公衆トイレがあり(外部記事)、そちらは九段会館とほぼ同時期竣工(1930年代?)とみられるもので、セメント製の半円形流しや、大鷲マークの入ったTOTO小便器U29があるなど、年季の入ったものでしたが、2011年の東日本大震災による九段会館の天井崩落事故から、長期間使用不可能となっています。こちらに関しても大規模改修や多機能トイレ新設(以前の「千代田区総合防災案内板」などによると多機能トイレがあるとの記載(=車いすマーク記載)があったが、実際にはなかった)などの梃入れ策が必要となってくるはずです。
★九段下の桜の写真(2018年3月)
この序に、過去に九段下で撮影した桜の写真を掲載しておきます。写真は九段下駅から靖国通りを西に進んだところ(先ほどの九段坂公衆便所よりも手前辺り)から撮影した桜です。九段下周辺をはじめとする皇居周辺は桜の名所としても知られています。画面右側に見えるメタリックの建物は、国民が経験した戦中・戦後の国民生活に係る資料を展示し、後世代にその労苦を伝える国立の博物館施設である「昭和館」です。画面右方向が九段会館・千代田区役所・竹橋方面となります。
※「ウォシュレット」はTOTOの登録商標です。
まずは九段下駅から靖国通りを東側に進み、首都高速道路5号池袋線の高架下をくぐり抜けて左折・北上します。「専大通り」(専大=専修大学の略称)に差し掛かると、首都高速道路の西神田出入口があり、そこで左折して堀留橋を渡ります。

■堀留橋際公衆便所
●器具カラー:ホワイト(TOTO色番号:#NW1)
●多機能トイレのドアは手動











さて、このトイレも最近になって改修工事が行われたというのは確かなことですが、「多目的トイレマップ」の当物件の項目(磯谷俊仁さん管理データに後から画像データを追加したもの。物件タイトルは「掘溜南児童遊園」(変換ミス?)となっていた)に見覚えのある方は、何かに気付くかもしれません。


その他の代表的なユニットの詳細を挙げていくと、小型手洗器付き前室+和式個室のUTS-2、小型手洗器付き前室+和式両用便器設置個室のUTS-3、小型手洗器・小便器・和式個室各1個で構成されるUTS-12、小型手洗器1台+和式個室2室で構成されるUTS-22が挙げられます(参考:LIXILいいナビで検索した際にヒットしたカタログページの一例)。
その後、この堀留橋際公衆便所も他の千代田区の公衆トイレと同様に改修されましたが、この改修に際しても以前の「アーバントイレSP」の躯体を残したまま改修、という面白い改修が行われました(使用器具がTOTO製品主体に変わったので、“TOTO版アーバントイレ”という趣もある)。LIXIL(INAX)「アーバントイレ」シリーズは千代田区内では以前、千代田区と中央区の区境に近い、地蔵橋公衆便所でも見られ、そちらは元の躯体では多機能トイレ設置(地蔵橋公衆便所には一連の改修前、多機能トイレはなかった)を含めた改修が困難であったことから、躯体をゼロから作り直す形で改修されましたが、この堀留橋際公衆便所は、アーバントイレSPの躯体を流用した改修となり、対照的な感じがします。また、TOTOでは「アーバントイレ」シリーズに相当するトイレ建物の商品は出していなかったようです。更にここ最近のLIXILカタログでは、アーバントイレそのものが掲載されていないため、既に製造をやめてしまったようで(もしかしたらアーバントイレそのものも、木村技研の回転ドア式多機能トイレやTOTOの自動洗浄大便器などとともに“来なかった未来扱い”のトイレ器具に入るのだろうか?)、後継商品は信建工業製のトイレ建物(千代田区内でも設置事例がいくつかあるが、いずれ「多目的トイレマップ連動解説記事」としてピックアップ予定)や三晃商事製「サンコーブルースカイ」シリーズとなります。
一連の改修工事が行われた千代田区の公衆トイレ全てがTOTO製品主体かというと、そうでもなく、実は改修された千代田区の公衆トイレの中でも、LIXIL(INAX)主体で改修された物件が存在します。これをこの後ピックアップしていきます。
九段下駅に戻り、今度は靖国通りを靖国神社・市ヶ谷方面に向かう形で西に100mほど進みます(○東京メトロ半蔵門線・○都営新宿線の真上を○渋谷/○新宿方面に進む)。

九段坂公衆便所は、手元に改修前の写真がフルであるので、そこから掲載していきます。改修工事が行われた千代田区の公衆トイレでは数少ない、改修前の写真が手許にある物件です。
■九段坂公衆便所 改修前
●撮影日:2008年6月15日
●器具カラー:パステルアイボリー(TOTO色番号:#SC1)
●多機能トイレのドアは手動






■九段坂公衆便所 改修後
●撮影日:2022年2月23日
●器具カラー:ピュアホワイト(LIXIL INAX色番号:/BW1)
●多機能トイレのドアは手動












この九段坂公衆便所は、改修工事が行われた千代田区の公衆トイレでは唯一のLIXIL(INAX)製品主体で、多機能トイレは「多機能トイレパック」といった洋式便器・給湯設備付きオストメイト対応設備・洗面台が1つになったセットではなくそれぞれ単体での設置、また木質化された内装材(東急戸越銀座・旗の台両駅や、小田急参宮橋駅(関連記事1・関連記事2)などで見られるような多摩産材ではない模様)を多用するなど、他の改修工事が行われた千代田区の公衆トイレとは一線を画す仕様となっています。それに「パブリック向けクイックタンク式壁掛便器」や「発電リモコン」仕様のパブリック向けシャワートイレなどをはじめとする、現在のLIXIL(INAX)の看板商品が集まっている、ということもあり、先述したようにLIXILビジネス情報でもこのトイレがピックアップされています。
…といったように、以上2件の千代田区の公衆トイレも、完全洋式化や多機能トイレの設備充実化(給湯設備付きオストメイト対応設備設置によるオストメイト対応化や乳幼児対応設備の拡充)のほか、全大便器への温水洗浄便座設置など、設備の充実度は渋谷区「THE TOKYO TOILET」の諸施設(関連記事)にも迫るどころが、渋谷区の件のプロジェクトによる公衆トイレができる前からこのようなハイレベルな公衆トイレが相次いで整備されており、頭が下がります。他の千代田区の公衆トイレについても、いずれ「多目的トイレマップ連動解説記事」での執筆を予定したいと思います(ただこの記事は離れた複数物件をピックアップしたものであるため、あえて「多目的トイレマップ連動解説記事」としての取扱対象外としていた)が、ここと同等のハイレベルなトイレだった場合、高い評価として同じようなことを書くことになりそうです。
九段下駅周辺では、南側の九段会館駐車場前に千代田区管理の公衆トイレがあり(外部記事)、そちらは九段会館とほぼ同時期竣工(1930年代?)とみられるもので、セメント製の半円形流しや、大鷲マークの入ったTOTO小便器U29があるなど、年季の入ったものでしたが、2011年の東日本大震災による九段会館の天井崩落事故から、長期間使用不可能となっています。こちらに関しても大規模改修や多機能トイレ新設(以前の「千代田区総合防災案内板」などによると多機能トイレがあるとの記載(=車いすマーク記載)があったが、実際にはなかった)などの梃入れ策が必要となってくるはずです。
★九段下の桜の写真(2018年3月)

※「ウォシュレット」はTOTOの登録商標です。