220430 (693)東京都中央区の月島エリア北側、大川端リバーシティ21と八丁堀・新川方面を結ぶ中央大橋の南北では、隅田川に沿う形で中央区の公園が展開されていますが、中央大橋を挟んで南側の細長い公園は「佃公園」となり(逆に中央大橋より北側、相生橋の先まで展開されている公園は「石川島公園」となる)、この佃公園は隅田川・佃川支川に沿う形で展開されています。
佃公園では、園内南側に石川島灯台の復元建築物があり、この灯台の1階に中央区管理の公衆トイレが佃公園内公衆便所として開設されています。

★この記事は「Weekly Selection」形式での公開です。
★中央区管理の公衆トイレについては、中央区ホームページにある公衆便所のページも併せてご覧ください。

「中央区立佃公園」および「中央区立石川島公園」は、リバーシティ21開発による、スーパー堤防の上部を利用して整備された公園で、この内「中央区立佃公園」、隅田川に架かる佃大橋と中央大橋の間の2/3程度の長さに渡って中央大橋寄りに展開されています。ちなみに“佃”という地名は大阪、現在の阪神本線千船駅付近(大阪市西淀川区)の地名に由来します。

220430 (681)この公園敷地内南側には、同公園のシンボルとして機能する石川島灯台の復元建築物があり、佃大橋からもその全貌を見ることができるほか、後述するように夜間はライトアップされます。この灯台の下部に中央区管理の公衆トイレが設置されています。正式名称は「中央区立佃公園内公衆便所」となります。
220430 (683)「中央区立佃公園内公衆便所」の上部には展望台があり、展望台に上がると佃大橋方面を一望できます。写真は展望台から撮影した、聖路加国際病院前に佇む超高層ツインタワー「聖路加ガーデン」で、画面手前の橋が佃大橋、そして画面左側が月島・晴海方面となります。

■基本情報
●所在地:東京都中央区佃1-11-4
▲中央区HPの公衆便所のページに記載されている所在地

■交通アクセス
東京メトロ有楽町線・都営大江戸線 月島駅 徒歩3分
JR京葉線・東京メトロ日比谷線 八丁堀駅 徒歩9分

この公衆トイレですが、中央区HPの公衆便所のページ内「最近リニューアルした公衆便所」の項目において、改修されたとの旨が記載されていました。改修前の写真が手許にあるので、改修前・改修後で掲載します。
■佃公園内公衆便所 改修前
●撮影日
 説明文頭無印:2010年2月10日
 説明文頭●印:2014年5月6日
●器具カラー
 下記以外:アイボリー(製造終了、LIXIL INAX色番号:/BU8)
 小便器・和式便器:ミスティブルー
 (製造終了、LIXIL INAX色番号:/L72)
●多機能トイレ(だれでもトイレ)のドアは手動
P5060013●改修前のトイレ外観です。前面通路から通路は2つに分岐、男性用トイレは左側の広い通路を進んだ先の右側、女性用トイレは右側の狭い通路を進んだ先の右側にありました。以前から多機能トイレは設置されていましたが、以前の多機能トイレは男性用トイレ側に横付けされるような形での設置で、左側の広い通路を進んだ一番奥にありました(左側の広い通路には手すりがあり、中央を手すりで仕切っていた)。女性客には入りにくそうな配置であった上、動線から男性用トイレ内部が丸見えになってしまっていた点が難点でした。
Tsukuda-Park (2)洗面台はカウンター式で、LIXIL(INAX)のL-2584ANC(TOTOのL507系に相当)を1台使用していました。蛇口はTOTOのオートストップ水栓を使用していました(以前はINAXのプッシュ式セルフストップ水栓を使用していた。INAXではオートストップ水栓うをこのように呼称している)。
Tsukuda-Park (4)小便器はLIXIL(INAX)のU-206SM(床置き式中型)を使用していました。洗浄方式は光電センサー式フラッシュバルブによる個別自動洗浄で、センサーは後に交換されました。1台(右側/入口側)には手すりを併設していました。小便器にはCalmicサニタイザー類似品も組み込まれていました。
Tsukuda-Park (3)大便器個室は和式1室のみでした。和式便器はLIXIL(INAX)のボウル内掃除口付き洗い落とし式便器C-762BM(床下給水)を使用していました。洗浄装置は靴べら(ソフトレバー)式スイッチフラッシュバルブ(リモコンフラッシュバルブ)を使用していました。和式個室内には手すり(便器前方柵型)も設置されていました。手すり・ペーパーホルダーはTOTO製でした。掃除口付の和式便器はTOTOではボウル外に掃除口があるタイプ(C750Cなど)が一般的でしたが、LIXIL(INAX)の掃除口付和式便器はこのようにボウル内に掃除口があるタイプのみの品揃えであり、また現行のC-852M系が出るまでは後ろトラップの洗落し式のみが発売されていました(TOTOでは寒冷地用以外であまり見ない形態。TOTOも「C135C」系の品番でC-762M系とほぼ同じスタイルの便器を発売していたが、総合カタログに掲載されていなかった機種で目撃報告も少なく、半ば“幻の機種”と化している)。
Tsukuda-Park (5)多機能トイレ(だれでもトイレ)です。レイアウトは左勝手で便器の正面にドアがありました。便器はLIXIL(INAX)の車いす対応重度障がい者用便器C-35K(上面高さ417mm)を使用していました。LIXIL(INAX)のC-35系およびTOTOのC111系(「バリアフリー便器」という商品名が付加されていた)は細長い形状が特徴であり、浣腸や座薬を必要とする場合や、後始末に介助が必要な場合に適した機種とされています。1990年代初めぐらいまでに竣工した多機能トイレではこのタイプの便器が入っているケースが時々見られます(ここのほか、聖路加国際病院に近い中央区立教育センター付近・あかつき公園内にある「元南明橋際公衆便所」にも写真と同じ便器があったほか、TOTOのC111が設置されている中央区公衆便所が最盛期で5件ほどあった)が、一般的な便座と使い勝手が異なり、その上暖房便座や温水洗浄便座は設置できないため、近年は不特定多数が利用する施設で多機能トイレに設置されるケースはほとんど見られません(更にINAXでは、今年3月にこのC-35系の製造を終了した模様)。洗浄装置は竣工当時、タッチスイッチ+光電センサー併用フラッシュバルブ(1984年~1994年モデル)を使用していました(光電センサーは検知範囲を少しでも外れるとすぐに洗浄信号をフラッシュバルブ本体に発信する。TOTOの初期型「大便器自動洗浄システム」に相当)。ペーパーホルダーはやはりTOTO製となっており(男性用トイレのものよりは新しいモデル)、ここでは異様に高い位置にペーパーホルダーがありました。
P5060010●2014年5月時点では、フラッシュバルブがオートフラッシュC・セパレート型に交換されており、便器洗浄スイッチがセンサースイッチ(スイッチ筐体が正方形のモデル)のみとなっていました。また、2010年2月・2014年5月の撮影当時非常ボタンがありませんでしたが、末期に後付けされました。
Tsukuda-Park (6)多機能トイレの洗面台はLIXIL(INAX)のL-364AN(TOTOのL103Dに相当)を使用していました。蛇口はTOTOのオートストップ水栓を使用していました。洗面台両側に手すりも設置されていました。洗面台左側にはベビーシート(TOTO YKA23R)も設置されていました(さすがにこのトイレの竣工当時はベビーシートはなかったはずで、ベビーシート自体は恐らく後付け)。

■佃公園内公衆便所 改修後
●撮影日:2022年4月30日(他は特記あり)
●器具カラー:ホワイト(TOTO色番号:#NW1)
●多機能トイレ(だれでもトイレ)のドアは手動
●多目的トイレマップ当該データはこちらを参照
▲多機能トイレは深夜~早朝時間帯閉鎖(閉鎖時間不明)
220430 (680)改修後のトイレ外観です。前面通路から通路が2つに分岐する形態は改修前と同様ですが、男性用トイレと女性用トイレの位置関係が入れ替わり、右側の通路を進んだ先が男性用トイレ、左側の通路(改修前より通路幅が狭くなってしまった)を進んだ先が女性用トイレ・多機能トイレとなります。
220507夜間に撮影するとこのようになります。改修されても佃島灯台のライトアップは健在であり、灯台の光源は電球色となっています。またトイレ入口通路やトイレ内部の光源はLED照明となり、明るく目立っています。中央区HPの公衆便所のページ内「最近リニューアルした公衆便所」の項目によれば、このトイレの改修工事は、今年3月に竣工していたようです。
(夜景の写真は2022年5月6日撮影)
220430 (678)トイレ内部案内図です(点字表記はなかった)。男性用トイレの器具配置数は洗面台1台・小便器2台・洋式個室1室です。大便器個室はもちろん完全洋式化された一方、問題として、改修に際して男性用と女性用の位置を入れ替えたものの、多機能トイレの位置は従前どおりであるため、今度は女性用側に入った位置に多機能トイレがある格好となってしまい、男性客には入りづらい構造になってしまいました(一応、多機能トイレへの動線上から女性用トイレ内部は見えないようになっていたし、多機能トイレ入口標識には男女共用のピクトはあったが…)。
220430 (674)洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様のL210Dを1台使用しています。蛇口はオートストップ水栓を使用しています。屋外公衆トイレでも、洗面台の蛇口が自動水栓となるケースが多く、ここのように都心部にある公衆トイレで手動の蛇口が設置されるのは今時珍しいように思います。
220430 (675)小便器はTOTO製CeFiONtect仕様の自動洗浄小便器UFS900R(壁掛け低リップ)を2台使用しています。1台(右側)には手すりを併設しています。フックも設置されています。


220430 (677)大便器個室は洋式1室のみです。洋式便器は2014年以降に改修された中央区公衆便所の大部分で標準仕様となっているアルソナ技研製防災トイレ「アルソナα」TF-E01[参考1参考2]ではなく、TOTO製CeFiONtect仕様のニューボルテックス式便器「パブリックコンパクト便器・フラッシュバルブ式」CS494(フチなし形状・トルネード洗浄採用、標準洗浄水量4.8L~5.5L)を使用しています。洗浄装置はタッチスイッチ式フラッシュバルブ(オートクリーンC)を使用しています。便座は普通便座(TC291J)です。大便器個室内には手すり・ベビーチェア(TOTO YKA15S)も設置されています。
220430 (689)多機能トイレ(だれでもトイレ)です。改修に際して別置きのオストメイト対応設備が設置されたほか、便器の正面にドアがあるレイアウトではなくなりました。やはり大便器はアルソナ技研製防災トイレ「アルソナα」ではなく、TOTO製となっています。レイアウトは右勝手となりました。
220430 (685)多機能トイレの便器はTOTO製CeFiONtect仕様のニューボルテックス式便器「パブリックコンパクト便器・フラッシュバルブ式」CS494を使用しています。洗浄装置はタッチスイッチ式フラッシュバルブ(オートクリーンC)を使用しています。便座は普通便座(TC291J)です。背もたれも設置されているほか、左隣にベビーチェア(TOTO YKA15S)も設置されています。
220430 (686)多機能トイレ内のオストメイト対応設備です。オストメイト対応設備はTOTOの「コンパクトオストメイトパック」で、汚物流しはTOTO製CeFiONtect仕様のSK117(フチなし形状・トルネード洗浄、洗浄水量4.8L)を使用しています。蛇口はシングルレバー式混合プルアウト水栓です。汚物流しの洗浄はオートクリーンCと同様のタッチスイッチ式ですが、給水はロータンク式(リモコン便器洗浄ユニット内蔵)となっています。オストメイト対応設備側に紙の備え付けがあります。
220430 (687)多機能トイレの洗面台はTOTO製CeFiONtect仕様のL270Dを使用しています。蛇口は自動水栓アクアオート手動スイッチ付きグースネックタイプ(TEN76G)を使用しています。


220430 (688)多機能トイレ内にはベビーシートも設置されています。ベビーシートはTOTOのYKA25Sです。




この公衆トイレ、元は男女別トイレ+多機能トイレの構成で、改修により完全洋式化と多機能トイレ設備の拡充が行われた(ここに限らず、門跡橋東公衆便所築地川公園内公衆便所など、男女別トイレ+多機能トイレから改修されたトイレも存在する)ものの、多機能トイレの位置が悪いのは相変わらずとなっていました。似たような事例は、一昨年夏に再改修が行われた、東武スカイツリーライン 西新井駅のトイレ(「トイレ探索日記 by 東府中の住人」の2021年4月10日付の記事を参照。なお再改修前の男性用トイレ写真は筆者提供のもの)でも見かけました。
ところで、今般改修されたこの「佃公園内公衆便所」、2014年以降に改修された中央区公衆便所では標準仕様となっているアルソナ技研製防災トイレ「アルソナα」TF-E01ではなく、一般的なTOTO製洋式便器が入っており、また災害対応型である旨の記載もありません。ここの場合、門跡橋東公衆便所や築地川公園内公衆便所とは異なり、従前の躯体を流用したままでの改修であり、しかもトイレ上部には巨大な構造物(佃島灯台の復元建築物)があり、その状態でトイレ下部への災害時用ピット構築が困難で災害対応型とすることを見送ったのではないかと思います(日本橋際公衆便所も従前の躯体を流用しての改修だが、そちらは上部に大きな構造物がないためか、アルソナ技研製防災トイレ「アルソナα」TF-E01による災害対応型となっている)。

▲現在は物件の状況が変化している場合があります。