2014年07月03日

『抜け目のない未亡人』

抜け目のない未亡人

原作=カルロ・ゴルドーニ
上演台本・演出=三谷幸喜

新国立劇場 中劇場 17列15番


ストーリー

映画祭の開かれているヴェネツィア。
高級ホテルの海辺の中庭で、老映画監督の夫に先立たれ莫大な遺産を手にしたかつての大女優・ロザーウラ(大竹しのぶ)は、10年ぶりの女優復帰と、自分と年相応な相手との再婚を夢見ていた。
ロザーウラとエージェントのマリオネット(峯村リエ)の前に現れたのはフランスの監督・ルブロー(岡本健一)、スペインの監督・カスッチャ(高橋克実)、イギリスの監督・ルネビーフ(中川晃教)、イタリアの監督・ネーロ(段田安則)の4人。
彼らが持ちこんだ企画は、台詞なしで動かない役とか、女海賊とか、十代の乙女のジャンヌ・ダルク、市議会議員の息子を持ち、最後は警官に射殺される老母役など、ロザーウラにしてみれば常識外れのものばかりだった。
それぞれに思惑のある監督たちは、ホテル支配人(八嶋智人)をメッセンジャーにして駆け引きをはじめる。
不信感を募らせたロザーウラは、女優志望の少女、占い師、フラメンコ・ダンサー、洗濯女に変装して、監督たちの本心を聞き出していく。
そこに、芝居の下手な女優の妹・エレオノーラ(木村佳乃)、彼女に求婚する老脚本家・パンタローネ(浅野和之)、役が欲しい俳優の父親ロンバルディ(小野武彦)が絡んで、話はややこしくなる。


18世紀のイタリア作家カルロ・ゴルドーニの喜劇を、三谷幸喜の上演台本・演出で、時代を現代の映画界に置き換えるなど大幅改変しての上演。
ほんとうに、三分おきに笑っていた。
大竹しのぶのための芝居で、元大女優のわがまま、傲慢、嫉妬を明るく、激しく、かわいく演じていく。ちょっと下品な台詞やおっさん言葉あり、歌ありスパニッシュ・ダンスあり、アルプスの少女ハイジにまでなってしまう。
やっぱり、変幻自在のすごい才能。

舞台は、たしかにヴェネツィアの雰囲気のある素敵なセット。
イタリアの監督の服は白と緑と赤、フランスの監督の服は白と青と赤、イギリスの監督はユニオンジャック柄のグレーのスーツと分かりやすかったが、なぜかスペインの監督は、赤と黄色のボーダーの水着姿に足ひれをつけて、自分の事を「拙者」という。
狂言回しの八嶋は動き回って笑わせ、時速3メートルで歩く老人役の浅野は、動かずに笑わせる。舞台を外れたところでも、しっかり観客の視線を持っていくのはさすが。
美人だけど芝居の下手な女優役の木村佳乃が、生き生きとしていて楽しそうだった。意外と喜劇向きかも。

内容としては軽くておかしくて何も残らない話だけど、たくさん笑って元気になれる。
上手い役者がこれだけそろえば、どんな芝居もおもしろくなるのかもしれないけれど、やっぱり三谷氏のセンスが何より素敵。


  
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2014年06月26日

『三人吉三』2014

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二年ぶりのコクーン歌舞伎。
出し物は、七年前と同じ『三人吉三』

七年前の『三人吉三』

スタッフ 作:河竹黙阿弥
演出・美術:串田和美
出 演 :和尚吉三  中村 勘九郎
      嬢吉三   中村 七之助
      坊吉三   尾上 松 也
      十三郎   坂東 新 悟
      おとせ    中村 鶴 松
      海老名軍蔵/八百屋久兵衛 真那胡 敬二
      太郎右衛門/長沼六郎 大森 博史
      土左衛門伝吉 笹野 高 史
      研師与九兵衛 片岡 亀 蔵

コクーン 2階 C27

当日の立見席のチケットに行列ができていたほど、話題の舞台。
前方のサブトン席は、団体さんが多かったようだ。

歌舞伎以外の役者が多く入ったせいか、つなぎの場面が増え、テンポが早くなった分、黙阿弥独特の台詞回しは軽くなってしまった気がした。
主役の三人も若返った分、もっとエネルギッシュになるのかと思ったが、そうでもなかった。
やはり七年前の方が、感動は大きかった。

コクーンでは何度もお芝居を観ているが、こんなに後ろの席は初めて。
ところが最後の立ち回りは正面上から見下ろすことになったので、きれいに見えた。
それにしても、雪の量の多いこと。  
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2014年06月10日

追悼・古田足日さん

昨夜、安藤直樹さん(安藤美紀夫氏の息子さん)のツィートで、古田足日さんの訃報を知った。

初めて古田さんとお会いしたのは2007年9月16日、目白の子どもの文化研究所だった。
「新しい戦争児童文学」の合評研究会で、同人誌経験のない私にとっては合評会というだけで緊張した。

その日の日記

私にとって古田足日は歴史上の人物だった。
安藤美紀夫さんと砂田弘さんは、学生時代に講義を受けていたので「先生」という意識が強いが、古田さんはもう「雲上人」。
合評の時は、事前にいただいていた選評のテキストで、古田さんが私の作品を文学作品として評価し、あえて「優しさ」を描いた私の意図を認めてくださっていたことを知っていたので、感激していた。
その時の作品『ビスケットと少年』が収録された「おはなしのピースウォーク」の原画展の時には、ご一緒に記念写真におさまった。

初めて読んだ古田作品は『宿題ひきうけ株式会社』だった。
子どもたちの幼い発想から出発し、資本主義のしくみ、社会構造への疑問と発展し、それでいてストーリー性があり、子どもたちも生き生きと描かれている。
『大きい一年生と小さい二年生』は、スーダンの大使館にあったので、息子といっしょにくりかえし読んだ。
日本の小学校のようすを知るのに、ちょうど良い一冊だった。
『ロボット・カミイ』は、図書館で紙芝居を借りて、団地の読書会で何度か読んだ。
『おしいれのぼうけん』は、名作だ。いつ読んでもわくわくする。
もうそろそろ、保育園に通っている3歳の孫に、読んであげようと思っていたところだった。

何年か前の子どもの本・九条の会でお見かけしたのが最後になってしまったが、子どもに寄り添った社会派の児童文学作家がまた逝ってしまった。

合掌

  
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2014年06月03日

『松竹大歌舞伎 平成26年度』

松竹大歌舞伎2014

市川亀治郎改め四代目 市川猿之助襲名披露
       九代目 市川中 車襲名披露

一、三代猿之助四十八撰の内 太閤三番叟(たいこうさんばそう)

  太閤秀吉  市川 右 近
  淀の方  市川 笑三郎
  北政所  市川 笑 也

二、襲名披露 口上(こうじょう)
     
三、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)

  お蔦        市川 猿之助
  駒形茂兵衛  市川 中 車
  波一里儀十  市川 猿 弥
  堀下根吉     市川 月乃助
  若船頭  市川 弘太郎
  船戸の弥八  市川 猿四郎
  清大工  市川 寿 猿
  老船頭  坂東 竹三郎
  船印彫師辰三郎 市川 門之助


越谷サンシティホール

襲名披露は一昨年、新橋演舞場で観劇しているが、隣町で公演があると聞いては、観に行かざるを得ない。

『三番叟』はもともとは五穀豊穣を祝って舞う能楽で、歌舞伎や浄瑠璃にもなったもの。
お祝いの席などで舞われるおめでたい演目だが、秀吉と淀君と北政所が舞う『太閤三番叟』があるとは知らなかった。
金ぴかの剣先烏帽子を被った秀吉が華やかに踊ったあとに、柴田勝家の残党が襲い掛かるという立ち回りが入るのが歌舞伎らしい演出。

口上の前には、舞台に福山雅治の祝幕がかけられたので、一斉にシャッターが押されていた。

『一本刀土俵入』は、話としては知っていたが、取手が舞台だと初めて知った。
亀さまは久しぶりの女形。
一幕目のお蔦は、ひとりで産んだ子を預けて働く酌婦で、どこか投げやりだったり男たちに啖呵をきったりしているが、一文無しでお腹を空かせた相撲取りの茂兵衛には、金を恵んでやる。
亡くなった母親のために横綱になることを夢みている茂兵衛は、力はあるがお人よし。

二幕目になると、お蔦は子どもとふたりで細々と暮らしている。
そこへ、いかさま博打が見つかって追われる身になったお蔦の夫が会いに来る。
これを知った、いまは博徒に身を落とした茂兵衛が、せめてもの恩返しにと三人を逃がす。

一幕目と二幕目での、お蔦と茂兵衛の変貌ぶりが歌舞伎のひとつの見せ所なのだが、話としては飛び過ぎ。

亀さまのお蔦は、二階の場面の台詞が良く聞こえなかった。
中車は、一幕目のどんくさい茂兵衛の方が似合っている。
二幕目でさっそうと登場するのだが、台詞の歯切れは良いが、良すぎて同じ人物に見えない。
まぁ、これが歌舞伎の演出なのかもしれないが、香川照之ならもっと違う芝居をしそうなんだけど。

いま売出し中の月乃助が登場すると、客席からため息が。
たしかに二枚目だけど、もうちょっと華が欲しい。

公演日程を見ると、1ヶ月で本州往復縦断して最終はまた埼玉。
移動だけで大変そう。
  
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2014年05月15日

伝統芸能の今2014

10年前の平日の浅草・仲見世通りなんて、人通りは少なかったけど、今は修学旅行の生徒と外国の人たちの間をすり抜けながらお参り。
急に雨が降ってきたので伝法院通りを走り抜けようとしたら、若者たちの行列が行く手を遮る。
浅草メンチを買う行列と歩き食べの行列。ちゃんと並べよ!

2014伝統芸能


ゴールドリボン+世界の子どもにワクチンを チャリティー企画

浅草公会堂 2階 て列 24番

一、上妻宏光演奏
    出演:上妻宏光
二、創作「三番三」
    出演:茂山逸平/上妻宏光/亀井広忠/田中傳次郎
三、創作「空破」
    出演:市川猿之助/上妻宏光/田中傳次郎
四、創作舞踊「風林火山」
    出演:市川猿之助/上妻宏光
五、トーク
    出演:市川猿之助/上妻宏光/茂山逸平/亀井広忠/田中傳次郎
六、歌舞伎と狂言による「石橋」
    出演:市川猿之助/茂山逸平/亀井広忠/田中傳次郎 ほか


亀さま、募金箱を持って走り回っていた。
確か4回目の参加だが、こんなに精力的に寄付を集めていたのは初めてのような・・・。
それもそのはず、トークの時に寄付先の「公益財団法人 がんの子どもを守る会」と 「認定特定非営利活動法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会」の代表がご挨拶。後者の理事は、細川佳世子さん。細川元首相の体調が悪いらしいけど、大丈夫なのかな。

上妻宏光の生演奏は2度目だが、ますます迫力と繊細さと速弾きが冴えて、とても太棹とは思えない音色。
茂山逸平の「三番三」は、狂言ではふつう楽器の伴奏がないので、不思議な感じ。
創作舞踊「風林火山」は大河ドラマのテーマ曲に花柳の宗匠が振りつけたそうだが、日舞というよりバレエのようだった。

「石橋(しゃっきょう)」は狂言では、唐の霊地・清涼山のふもとにかかる石橋は人間は渡れないが、文殊菩薩の霊獣である獅子はその姿をみせるという伝説を素材とした演目。歌舞伎では「連獅子」「鏡獅子」に当たる。
茂山逸平の老人がほんわかと滑稽に人間を演じ、せり上がりで亀さまの獅子が登場。
クライマックスはもちろん毛振り。
子どもの頃、子どもサイズの毛を被って頭を回したことがあるが、下手に振るとムチ打ちか脳震とうを起こす。
亀さまは、いったい何回まわしたことやら。集まった寄付の額に比例すると言っていたが、あきれるほど長かった。お囃子もノリノリ。
亀さまがポンと足を踏んだのが合図でフェイドアウトしたが、こんなに長い毛振りは初めて。
胡蝶がふたり出てきたが、ちょいとむさくるしかった。

来月は、市川猿之助舞踊の会。
  
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2014年05月13日

『わたしを離さないで』

わたしを離さないで
わたしを離さないで

原作 カズオ・イシグロ(「NEVER LET ME GO」)
演出 蜷川幸雄
脚本 倉持裕

さいたま芸術劇場

《ストーリー》
寄宿学校へールシャムは、海に近い場所にある。
活動的なリーダー格の鈴(木村文乃)、大人びた感じの八尋(多部未華子)、クラスで浮いた存在のもとむ(三浦涼介)。
子どもたちには使命があり、来るべき日にその役割を果たす運命のために、外界と遮断された世界で、厳しい主任保護官の冬子先生(銀粉蝶)、理解のある晴海先生(山本道子)らに指導され、育てられていた。
しかし成長するにつれ、彼らは友情を育み、恋をし、傷つけあいながら、自分という“存在”を意識し始めるようになっていく。
仲間意識の一方、気持ちをコントロールできずに、感情を爆発させることもある。

やがてへールシャムを出てコテージと呼ばれる施設に移り、仲間から心から愛し合っているカップルは、申請すれば数年間の提供猶予が与えられるという噂を聞く。
カップルになった鈴ともとむは臓器提供の猶予を願い、八尋は介護人になることを選ぶ。

九年後、初めての提供で弱った鈴と、その介護人となった八尋は、もとむと再会する。
鈴は、ふたりの仲を裂いたことを謝り、提供猶予の申請をすすめる。

八尋ともとむは、提供の猶予を申請に行くが、そこで冬子先生から提供猶予などはなく、へールシャムではクローン人間にも魂があるという証明をするために教育していたことを知らされる。
もとむは大声で叫び、絶望する。
八尋は・・・・・。


初めにラジコンのヘリコプターが飛んで来るのは、何を意味しているのか。
車椅子を押していた多部未華子がコートと鬘を脱ぎ、舞台の奥からサッカーをする少年たちがスローモーションで出てきたときには、これミュージカルだったっけ?と思ってしまった。

原作の内容は知っているが、読んではいない。というか、ヒリヒリ系は辛くて読めない。
それでも『海辺のカフカ』と同様に、蜷川さんがどう演出するのか興味があった。

最初の方は、寄宿学校を舞台にした、いじめや勉強の悩みや恋愛話で展開する学園ものという感じで、臓器移植やクローン人間といった直接的な台詞もない。
若者たちの、運命を変えられない理不尽さ過酷さも、限られた人生への執着も希薄に感じられる。
それは、そういう教育を受けた子どもたちだからなのだろうか。
しかし、愛する者を守れないと知った時、もとむは絶望する。
八尋はもとむを見送り、また別の若者の介護人を続ける。
ここは、原作と違うのかもしれない。

自己犠牲を強制された運命であっても、なんとか自分の意志で道を選んで生きていこうとする八尋。
それはそれで、短くてもかけがえのない精一杯の一生だ。
しかし、美化していいものかどうか・・・・・。

蜷川作品としては大掛かりで展開の多いセットだったが、机や椅子や教材を無造作に積んだ学校の資料室のセットが、特に印象的だった。
埠頭の場面も、本物の水を打ち付けて海を見せていた。
三人が若いときの波は強く、最後の場面はおだやかな海。

3時間45分は長過ぎ。

  
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2014年04月24日

『蒼の乱』

蒼の乱2


作:中島かずき
演出:いのうえひでのり

シアター・オーブ 2階2−11

〈ストーリー〉
時は戦乱の世。京の都で貴族どもが贅を尽くした暮らしをしている一方、民百姓は重税に苦しみ、日々の食べる物にも事欠いていた。
国を失くし日本に渡ってきた渡来衆である蒼真(天海祐希)と桔梗(高田聖子)は、左大臣一条琵琶麿(右近健一)の宴で余興として占いを行っていたが、東西で国家大乱が起きるという卦を出してしまったため殺されそうになる。
しかし、館の近衛兵を勤めながら左大臣の行いに嫌気がさしていた、坂東武者の将門小次郎(松山ケンイチ)に、命を救われる。
屋敷に使えていた坂東武者の将門小次郎(松山ケンイチ)に救われ、
追われる身となった三人は、帳の夜叉丸(早乙女太一)と名乗る盗賊に助けられ、西の海に案内されていくと、そこに待っていたのは蒼真と桔梗のかつての仲間で、今は大海賊としてその名を轟かせている伊予純友(栗根まこと)だった。
純友は西の海での反乱を計画しており、小次郎に故郷の東の国で反乱を起こすよう促す。東西で大きな反乱が起きれば、中央の力は分散し国家転覆が謀れるだろうというのだ。陰謀とは無縁の、野生の血で武士として生きてきた小次郎には気が進まない話だが、都にいられる訳もなく、故郷の相馬に戻ることにする。
しかし故郷では国司と組んだ伯父たちが好き放題の悪政を敷いており、小次郎の母も民衆たちも疲弊しきっていた。腹を立てた小次郎は、親友ともいうべき愛馬の黒馬鬼(橋本じゅん)と共に伯父たちを蹴ちらす。
伯父たちを斬ろうとする小次郎は、蒼真に「不要な殺しは憎しみの連鎖を生む」と諭され、伯父たちを解放する。
東国の地でお互いの気持ちが通じ、結ばれる小次郎と蒼真。
再び現れた帳の夜叉丸に案内されたのは、蝦夷の常夜王(平幹二朗)の隠れ家。
小次郎の勇猛さを見込んだ常世王は、腐敗した政治を改善するために東国で反乱を起こし、東国の独立を目指すことを託される。
小次郎は将門新皇と名乗り、反乱軍を組織する。
勇猛に戦い続ける小次郎だったが、蒼真は反乱が成功した後の政治を心配する。
蒼真には、自分の国で反乱を起こし成功させたものの、その後の政治力が無かったために隣国に国を滅ぼされたという過去があった。
蒼真は、小次郎に同じ過ちを繰り返させまいと必死に止める。
大願成就のために、蒼真が障害になると考えた常世王の側近の術で、己を見失い悪夢に操られた将門小次郎は、蒼真を斬ろうとしてしまった事をきっかけに坂東から姿を消してしまう。
小次郎が失踪した後も、蒼真は妻として夫の居ない坂東を守り続ける。
やがて都の軍勢が攻めてくると、蒼真は小次郎の意志を継ぎ、自ら将門御前と名乗り、東国の軍勢を率いて立ちあがる。
その頃、都をさまよっていた小次郎は、空腹のあまり米泥棒をしてしまいそうになる。
そこに通りかかった弾正叔人(梶原善)は、純友にも、戦わずして海賊をやめさせる手だてがあると説得している人物だった。
小次郎は、奥の大王と呼ばれる殿上人(平幹二郎)に引合され、常世王が大王の弟で、自らの恨みを晴らすために小次郎たちを利用している、と聞かされる。
憤慨した小次郎は、名前を捨て都軍の副大将・俵の平太として戦うことになる。
愛した男の故郷を守ろうと、将門御前と名乗り戦う蒼真と、俵の平太として都軍を率いる小次郎は、東国の地で顔を合わせることになる。


天海祐希のために書き下ろされた脚本で、全体のストーリーとしてはダイナミックだが穴だらけの感じ。
20分の休憩を挟んで3時間45分と、かなり長いが飽きさせない。
しかし、常世王の本心とか、常世王が蝦夷の出ではないことを知りながら仕える夜叉丸の心情とか、故郷から逃げ出さずにはいられなかった小次郎の気持ちとか、待っていた夫と敵として向かい合わなければならなくなった蒼真の心情とか、別れの場面とか、もう少し丁寧に描いてくれれば深みがあっただろうに。
エンターティメントに徹するあまり、ドラマが薄くなった?

天海祐希の蒼真がカッコイイ分、小次郎の軽薄さ、おバカ加減が増して、とても蒼真が愛するに値する男に見えない。
凛々しい姉と、軽薄な弟という感じ。
早乙女太一は、殺陣の身のこなしも太刀さばきも美しいが、三枚目の要素が加わり芝居が柔軟で大きくなった。
梶原善は、得な役。
平幹二郎は、さすがの貫録。きっちり、別人格を演じ分けている。
橋本じゅんの黒馬鬼は、後ろ脚を手で持った棒で操作するという、ライオン・キングの手法で大いに笑わせる。

マイクのせいか、特に男声がみな同じように聞こえてしまった。
プログラム2500円は、高すぎる。
  
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2014年04月17日

『酒と涙とジキルとハイド』

酒と涙とジキルとハイド

作・演出  三谷幸喜

東京芸術劇場 2階 
1時間45分

<あらすじ>
舞台は19世紀末のロンドン。
科学者・ジキル博士(片岡愛之助)の家に、婚約者のイヴ(優香)が訪ねてきている。
博士は留守で、助手・プール(迫田孝也)を相手に、ジキル博士への不満をこぼしている。
理想の相手では無いというのだ。
帰宅した博士は、開発した新薬の学会発表を明日に控え、テンションが高い。
しかし、人間を善悪ふたつの人格に分ける画期的な薬、のはずだったが、その薬はまったく効かない。
そこで博士は、背格好が同じで、売れない役者ビクター(藤井隆)を雇い、薬を飲んだ後の悪い人格のハイド氏を演じさせようと目論む。
ところが、イヴが忘れた本(官能小説)を取りに戻ったことで、事態はドタバタ大混乱となる。


『ろくでなし啄木』『ロスト・イン・ヨンカーズ』『国民の映画』と、笑いはあってもかなり理屈っぽい作品が続いたので、三谷氏の最初から最後まで笑いっぱなしの喜劇は久しぶり。
もしかしたらメジャーになり過ぎて、今まで喜劇を書く気にならなかったのかしら? 
そして何か心境の変化があって、喜劇を書く気になったとか?
台詞の面白さと、役者の身体的パフォーマンスがあっての喜劇だから、作家のひらめきが大事。
元になる話があるわけ
だから、創作とは少し違うけれど、こういう作り方もありだよね。

舞台はジキル博士の実験室を斜めに配置し、壁に沿った階段の上が入口のドア。
そこに楽器が置かれ、ふたりのミュージャンが生演奏する。
異空間のはずが、時々部屋の中をのぞきこめるという掟破りあり

。実験の失敗というのは、まさにタイムリーな題材で、
「実験は200回成功してます」「実験ノートは5〜6冊」なんて台詞も。
さらに歌舞伎の見栄や愛之助のおネエ言葉まであって、キャスティングに納得。
藤井隆は居るだけでおかしいし、優香は小顔なのに舞台映えするし、なにより「間」がいい。
迫田孝也の髪型が、『ロード・オブ・ザ・リング』のオーランド・ブルームのレゴラスそっくりだったが、何か意図があったのかな。見た目だけで、かなり笑えたけど。

次作の『抜け目のない未亡人』も楽しみ。

  
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2014年03月01日

まどさん

断片的だが、幼稚園の頃の記憶がある。
そのうちの多くは、親からくりかえし聞かされたこととモノクロ写真に裏付けられているが、自分自身の記憶として残っていることもある。

そのひとつが、大好きだった歌『ふしぎなポケット』。
帰りの幼稚園バスの中で、園服のポケットをたたきながら歌ったこと。
祖母の家で、おせんべをポケットに入れてもらって歌ったこと。
おやつのビスケットをスモックのポケットに入れて、弟に歌って聞かせたこと。
ちょうど数を覚える時期と、一致していたのかもしれない。
食いしん坊で、ビスケットがふえたらいいなぁ、と思っていたのかもしれない。
ふしぎ大好きな、おんなの子だったからかもしれない。
悲しい時に、『ふしぎなポケット』を歌うとポケットの中のしあわせが、少し大きくなるような気がしていたのは、もう少し大きくなってからだった。

まどさんの詩は、小さなものだけでなく、いのちのないものにまで優しい。
ユーモアがあって、イメージ豊かで、ことばのリズムが楽しい。
これは、やなせさんと同じだが、まどさんの詩の方がシンプル。

「戦争協力詩」のことはショックだったが、二編の詩を読んでも、まどさんが利用されたとしか思えなかった。
ケストナーと同様に。

なぜか今週のはじめからまどさんの詩が気になって、『まど・みちお全詩集』をベット゜・サイドに持ち込んで、寝る前に数編ずつ読んでいるところだった。

合掌

孫のKクンが最初に覚えて歌ってくれた歌は、『ぞうさん』でした。
  
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2014年02月25日

『国民の映画』

国民の映画

パルコ劇場



作・演出三谷幸喜

<登場人物>
■ナチス高官
宣伝大臣 ヨゼフ・ゲッベルズ‥‥小日向文世
親衛隊隊長 ハインリヒ・ヒムラー‥‥段田安則
空軍元帥 ヘルマン・ゲーリング‥‥渡辺徹

ゲッベルスの妻 マグダ・ゲッベルズ‥‥吉田羊 
ゲッベルスの従僕 フリッツ ‥‥小林隆
ピアニスト ‥‥荻野清子

■映画人たち
ナチスと手を結んだ男 エミール・ヤニングス 映画監督‥‥風間杜夫
ナチスと敵対した男 グスタフ・グリュントゲンス 演出家・俳優‥‥小林勝也
ナチスに恐れられた男 エーリヒ・ケストナー 国民的作家‥‥今井朋彦 
ナチスに嫌われた男  グスタフ・フレーリヒ 二枚目俳優‥‥平岳大   
ナチスに利用された女 ツァラ・レアンダー 大女優‥‥シルビア・グラブ
ナチスに愛された女 レニ・リーフェンシュタール 若き女性監督‥新妻聖子  
ナチスを利用した女  エルザ・フェーゼンマイヤー 新進女優‥‥秋元才加


舞台は1940年代のドイツ・ベルリン。
ヒトラー内閣がプロパガンダの為に作った宣伝省の初代大臣ヨゼフ・ゲッベルズは、すべての芸術とメディアを監視検閲する権利を与えられていた。
ある日ゲッベルズは映画関係者たちを呼んで、ホーム・パーティを開く。
子連れ再婚の妻とは、今や仮面夫婦。エルザは、新しい愛人。
招待していないのにやって来たヒムラーは、何かを探っている。
パーティにやってきた映画人たちの前で、ゲッベルズは彼らを招いた本当の理由を発表する。
最高のスタッフとキャストを使い、巨額の資金を使って、アメリカ映画の『風と共に去りぬ』を越える、自分の理想の映画を作ろうと考えていたのだ。全ドイツ国民が誇れる映画、「国民の映画」を。
ナチス高官たちと映画人たち、彼らが一堂に介したその夜、虚飾と陰謀に満ちた、狂乱の一夜。


モデルがいるエルザとフリッツ以外は、実在した人物。
芸術と権力の狭間で葛藤する人々の群像劇だが、一応ナチスのことを知っているから理解できる部分があって、中には「あの方」がヒトラーと分からない観客もいるのではないかと、ちと心配になった。

映画を作るために権力に迎合する者もいれば、権力を使って映画を作ろうとする者もいる。
権力を批判したために、著作を焼かれ、書くことを禁じられた作家。それがケストナー。
なぜケストナーが、ゲッベルズの家に招かれたのか。
これが三谷らしい設定で、ケストナーのファンであるマグダの妄想に嫉妬したゲッベルズが、ケストナーを呼び出して「国民の映画」の脚本を書かせようというのだ。書くことに飢えていたケストナーは、悩みながらも引き受ける。それが後に映画『ほらふき男爵の冒険』の脚本になったのだが、ケストナーは別の名前を使った。

とても喜劇にはなりそうにない内容なのに、三谷にかかれば喜劇になる。
いや、喜劇としては物足りない。笑いはちりばめられていて、観客の心をゆるめながら、狂気に走って行った人々の普通の生活、という本筋に引き込んでいく。
これが三谷の品性、演劇の質の高さなのだろう。
でも、ちょっと盛り過ぎかな、休憩はさんで3時間20分は長過ぎ。

初演は3年前。
今、再演するのは、いろいろな意味でgood timing。


  
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2014年02月24日

また、オレオレ詐欺?

夕食時、電話が鳴った。
「〇〇〇だけど」と、息子の名を言う。
しかし、息子の声ではない。
〇「今日の午後、会社の人から電話なかった?」
私「ないよ」
〇「そう、それならいいんだけど・・・」
私「そう」
〇「うん・・・・・・・・」

一瞬、電話をつないでおいて警察に通報するか、それとも偽物君に説教しようかとも思ったが、不愉快になるだけなので、電話を切った。
すぐに息子にメールで報告。
「またオレオレ詐欺?」
今回は、息子の名前を知っていた。
たぶん、高校の時の名簿を見ているのだ。

去年の夏には、結婚紹介所から何度も電話がかかってきて、あまりに執拗なので問いただしたら、高校の卒業者名簿を見てかけていると答えていた。
最近は、名簿が流出しないように、学校の連絡網も作らないらしいが、なんだかそれもヘン。
児童文芸家協会と児童文学者協会の名簿も、毎回、シュレッターにかけて処分している。

こんど偽物君から電話がかかってきたら、数学の問題でも出してやろうかな。  
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2014年02月17日

孫守りと絵本

息子夫婦が、友人の結婚式に出席するため名古屋へ行くというので、ジイタン・バアタンで孫守り。
3歳になったばかりのKクンは元気いっぱいで、もうすぐ1歳になるHANAちゃんは超・おかあさん子。

道路にはまだ雪が残っているのに、Kクンは散歩に行きたがる。
公園は無理なので、駅前のパン屋さんまで。
HANAちゃんをベビーカーに乗せ、Kクンは長くつをはいて出発。
Kクンは雪の上に足跡をつけ、雪のかたまりをひろっては投げ、水たまりをパシャパシャ。
おかげで、ズボンまでビショビショ。
ご本人は満足らしいが、風邪をひかせてはいけないと、バアタンは大急ぎで着替えさせる。

基本的に保育園の生活パターンを守りたいので、昼食の後はお昼寝。
「好きなご本をもっていらっしゃい」と言うと、Kクンが持ってきたのは『ぐるんぱのようちえん』と鉄道の図鑑。

『ぐるんぱのようちえん』は、クレヨンハウスのブッククラブから届いたばかりで、初めて読むらしい。
Kクンにはちょっと長すぎるおはなしかと思ったが、最後までじっと聞いていた。
鉄道の図鑑は小学校高学年向きくらいのレベルだが、すきな新幹線の車両の名前はすっかり憶えていて、バアタンはついていけない。

ふたりとも2時間半ほど昼寝をして、おやつを食べた後はプラレールとレゴ。
合間に
「読んで!」と、持ってきた絵本は『せんべ せんべ やけた』と『あしたもげんき』。
Kクンとしては、『せんべ せんべ やけた』をHANAちゃんのために選んだらしい。
『あしたもげんき』は、バアタンのおはなしと知っているので、読み終わると必ず最後のページにある私の写真を指して
「バアタン!」と叫ぶ。
それにしても、Kクンはますます主人公のさるくんに似てきた。
Kクンが、生まれる前に書いたおはなしなんだけど。

夕食が終わってひと息つくと、また
「読んで!」と、本を持ってくる。
『はらぺこあおむし』と『テムテムとなまえのないウサギ』
『はらぺこあおむし』は、もう何度も読んだので、Kクンはすっかり暗記している。
だからあおむしが一週間に食べたものの場面は、早口で一気に読む。
そうすると、最後のちょうちょになる場面では、
「はぁぁ」と、安心したように息をはく。
『テムテムとなまえのないウサギ』は、1年以上前に一度読んだくらいで、バアタンの書いたおはなしだということも知らないはず。
読んでいる間に、ふたりともどんどんと前のめりになり、ソファに座っている私の膝にもたれかかってきた。
あの、ねむたくなるようなおはなしでは、ないんだけどなぁぁぁぁ。

そろそろHANAちゃんを寝かせる支度をしているところに、息子夫婦が帰宅。
「あれ、もう帰ってきちゃったの、せっかく遊んでたのに」
と、Kクン。
そのわりには、父親の背中に飛び乗ったまま離れない。

雪かきの後の孫守りは、身体的にきつかったけれど楽しかった。
  
Posted by noco24 at 23:11Comments(0)日々雑感 |