脚本・蓬莱竜太
演出・栗山民也
【出演】片岡愛之助、黒木メイサ、中村獅童
南沢奈央、馬淵英俚可、中嶋しゅう、中山仁
日生劇場 1階XA31
《あらすじ》
草原が広がる大地に、絶えず争いを繰り返している赤い国と黒い国があった。
二つの国は絶えず戦争を繰り返していた。
黒い国には、「黒い国の獅子」とうたわれる、ふたりの英雄がいた。
無二の親友であるふたり冷静沈着な男ジンク(片岡愛之助)と自信家のカタリ(中村獅童)の活躍で、黒い国が優勢と見えた。
赤い国には、その勇猛さから「赤い国の魔女」という異名を持つ美しい王女ナジャ(黒木メイサ)がいた。
戦場で三人が刀を交わす中、赤い国が導入した強力な新兵器が戦局を一変させる。
負傷して捕虜となったジンクとカタリだが、カタリがナジャの美貌とその剣技の美しさに心奪われたことから、ふたりの間に亀裂が生じる。
ひとり釈放されたジンクは、名を変えナジャの親衛隊長になり野心を募らせる。
一方、ジンクに裏切られたとは知らず、処刑が決まったカタリは、牢番の娘ココ(南沢奈央)に助けられる。
親衛隊長と脱獄囚は、刀を合わせることになり・・・・・。
シェイクスピア作品は長らく全37作といわれてきたが、近年の研究の結果、新たに3作が加わり現在は全40作とされている。
その追加3作のひとつが、ジョン・フレッチャーとの共作である悲喜劇『二人の貴公子』。
これを元に、蓬莱竜太が脚色、ということになっているが、ほぼオリジナル脚本だろう。
最前列の席で、立ち回りのときは、今にも舞台から役者が転げ落ちそうだった。
ジンクの片岡愛之助は、理知的な顔立ちが冷静沈着な役にぴったり。
親友を裏切り、野心をむき出しにして、ナジャに迫る強引さも魅力的。
中村獅童のカタリは、前半は少年らしい奔放さを見せ、後半は逆境から這い上がった精神的強さを見せる。
王女ナジャの黒木メイサは、美しいだけでなく、凛々しく、眼差しの鋭さで圧倒する。
ただ、時々台詞がもつれる。でも、かっこいい。
戦闘は、冒頭ではマントを翻して剣を合わせていたものが、途中からは、武器は銃やライフルに、服は戦闘服に似た形のものにと変化する。
武器商人が売りつける兵器は次第に強大になり、豊かな土地を奪い合っていたはずの闘いは、その土地をも焼き尽くす。
赤と黒、どちらも衰退し、戦争は終わりかと思わせたところで、第三勢力が大量破壊兵器で攻め入ってくる。
「人である限りどこにでも争いはあるのだ」
と、ナジャは言う。
「それでも産めよ、育てよ、生きよ!」
と、民衆に叫ぶ。
中世の西アジアを思わせるエキゾチックな異国の地を舞台にして、戦争と愛、死と生という現代的なテーマを浮かび上がらせている。