[原案・原作]市川森一
[劇作・脚本]蓬莱竜太
[演出]マキノノゾミ
[出演]中村獅童 / 長谷川京子 / 平岡祐太 / 草刈民代 / 他
赤坂アクトシアター
ストーリー
サラ金の取り立て屋・沼田薫(中村獅童)は、妻よし江(長谷川京子)と細々と暮らしていた。
ある日、沼田はローンズランドの影のオーナー国分(声・西田敏行)からある仕事を依頼される。
その内容とは、国分の愛人であった由良常子(草刈民代)とその息子・市太郎(平岡祐太)から、慰謝料として2000万円を取り立てることだった。
しかし、常子が昔世話になった花村月之丞の娘だと知った沼田は、二人を救う為に国分を相手に一芝居打つ事に。
そのことが国分に知れ、逆に二人の借金二千万円の連帯保証人にされてしまう。
沼田が生き残る方法はただひとつ。一年以内に旅一座の借金も含め、ブラックリストに載っている人々全ての借金を回収すること。それが組の出した交換条件だった。
途方に暮れる沼田に、常子は花村月之丞一座を旗揚げし、そのおひねりで借金を返済しようと持ち掛ける。
ブラックリストのメンバーを集めてそこで囲ってしまえば一石二鳥ではないか。
よし江の反対も聞かず、沼田は常子と市太郎の舞を見てその提案に乗ってしまう。
こうして借金まみれの旅一座が出来上がっていくのだった・・・。
客電が落ちる前の客席で携帯の音がして、中村獅童が登場。
「100万円拾ったらどうします?」などと語りかけながら、客を芝居に引き込む。
雰囲気としては、歌舞伎ファンより大衆演劇ファンのほうが多かったようだ。
テレビ・ドラマのリメイクだが、常子と市太郎は恋人同士ではなく親子になっている。
ドラマで沼田を演じた西田敏行が、声だけだが国分役をやっているのがご愛嬌。国分は、ドラマでは財津一郎。
数日の稽古で、素人が踊って芝居をするなんてちょいと無理だと思うし、借金のかたにとった倉庫を芝居小屋に改装してしまうというのも、金が無いのだから都合が良すぎる。
二幕目の最初、獅童が女形で「むらさき小唄」(八代亜紀)を踊り、そのまま金髪の平岡祐太のエレキギターで「江戸の黒豹」(杉良太郎の歌)ロックバージョン。早替りで獅童がロッカーになりボーカル。女形よりカッコいい。
平岡祐太のギターもかなりのもの。市太郎も女形で踊るが、腰が落ちていない。
さらに草刈民代の日舞は、やっぱりバレエ。立ち姿は美しいし、手や脚の動きもきれいなのだがやはりバレエ。
台詞も味が無い。相変わらず宝塚風。でも、それなりに面白い。
松永健次役の大川良太郎は、元々大衆演劇の役者なので、目配りとか台詞の間が上手い。現代劇の部分も、チャライなりに必死に生きている感じがした。
初めは血も涙もない暴力男だった西方完二が、毎日舞台を観ているうちに仲間に加わり、女形までやってしまうというのが人情話として面白い。役者は佐々木喜英、『テニスの王子様』で出てきたらしいが初めて観た。
終わり方は平凡で、それぞれの生きかたがもうちょっと描かれてもいいと思ったが、珍しくもう一度観たいと思わされた。