2008年09月09日
事故米問題（かび毒と発ガン性）
大阪のコメ加工販売会社が残留農薬や「かび毒」に汚染された「事故米」を食用として転売していた問題について、その実態が明らかになりつつある。
このところ、食に関わる事件・事故が後を絶たないが、今回は農薬ばかりでなく、「かび毒」も問題になっている。そのなかで「アフラトキシンＢ1」というかび毒が検出された。
農林水産省の資料によると、アフラトキシンＢ1は人体にも影響を及ぼすかび毒で、食品衛生法第6条第2号で規制される。アフラトキシンＢ1の対象食品として穀類・豆類・種実類・香辛料などがあげられているが、全食品中に検出されてはならない。
アフラトキシンＢ1は天然毒素の中で最も発ガン性が強い物質とされている。人体への影響としては、大量摂取による肝臓障害で、2004年にケニアで317名のうち125名が死亡、1974年にインドで397名のうち106名が死亡するという被害がでている。いずれも、とうもろこしのアフラトキシンが原因である。
また、摂取する量が微量だとしても、摂取が続くと肝臓ガンのリスクが高まるという。JECFA（FAO/WHO合同食品添加物専門家会議）によると、体重1ｋｇにつき1ｎｇ（ナノグラム、10-9g）のアフラトキシンＢ1を毎日摂取すると、健常人では1000万人に1人、Ｂ型肝炎キャリアでは1000万人に30人の確率で肝臓ガンになると予測されている。
ただ、かび毒は何千種類もあるといわれ、現在解明されているのは約300種類だといわれる。あまり細かいことを気にしていては日常生活に影響してしまう。
東京都健康安全研究センターによると、アフラトキシンがつくられる最適条件は温度30℃前後・湿度95％以上であるため、日本にはあまり分布していない。よって、国内で食品が汚染される可能性は低い。
アフラトキシンはコウジカビによってつくられる。もう少し詳しく分類すると、アフラトキシンを作り出すのは、アスペルギルスフラバスとアスペルギルスパラシティカスの2種類のコウジカビである。日本では、味噌や醤油、酒等がアスペルギルスオリゼというコウジカビを利用してつくられるが、アフラトキシンを作らないことがすでに確認されている。日本の旧来の発酵食品は安全といえるだろう。
今回の問題は未然に防ぐことができなかったのか。汚染された食品は工業用といえども流通させるべきではなかった。また、渦中の業者が毒性を熟知した上で転売したということであれば、到底許されるものではない。東京都健康安全研究センターの実験では、アフラトキシンＢ1は通常の調理加工では減少しないことがわかっている。そうなると、今までに国民が受けた健康被害が懸念される。
さて、今後は事故米について、どのように対応するのだろうか。8日の毎日新聞によると、農水次官は事故米の売却や検査の方法を見直す方針を明らかにし、場合によってはそのまま廃棄することも検討すると発表した。また、当面の改善策として�々�業用に使う業者に売却先を限定する��抜き打ち検査の実施�Ｅ祥僂鯔匹阿燭瓮灰瓩肪綽Г垢襪箸いΑ�
事故米を輸出した国に送り返すことはできないのだろうか。工業用に加工されれば安全なのだろうか。工作用のりは子どもの口に入る場合もあるが、大丈夫なのだろうか。農水次官が示した当面の改善策では不安が残る。いろいろと疑問が生じることが多く、現実的には破棄することが妥当であるように思う。
来週中にＷＴＯ交渉がジュネーブで再開される予定だが、今回の問題が影響を与えそうだ。輸入米（ミニマムアクセス米）についても、見直す議論があってもいいのではないだろうか。それにしてもタイミング良く問題になったような気もする。
あと1点だけ気になったことがある。食品安全委員会の「平成19年度における食品安全確保総合調査実施状況」のページで、12番の「食品中に含まれるカビ毒（オクラトキシン、アフラトキシン、ゼアラレノン）の汚染実態調査」の項目だけ、なぜか「中止」になっている。このページの更新日が平成20年5月14日とあるので、すでにこの時点で今回の問題を把握していたということはないのだろうか。
参考
・農林水産省：「非食用の事故米穀の不正規流通米の回収について（第2報）」
・農林水産省：「いろいろなかび毒」
・農林水産省：「かびとかび毒」（ＰＤＦ）
・食品安全委員会：「アフラトキシンに関する食品健康 影響評価」（ＰＤＦ）
・食品安全委員会：「かび毒・自然毒等専門調査会」
・東京都健康安全研究センター：「くらしの健康（第8号）」
・法令データ提供システム：「食品衛生法」
・法令データ提供システム：「食品衛生法施行規則」
・JECFA(The Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives)
・毎日ｊｐ：「事故米転売：売却や検査方法見直す…農水次官、会見で」
・食品安全委員会：「平成19年度における食品安全確保総合調査実施状況」
（3/13追記）
・鹿児島大学農学部獣医公衆衛生学教室：「分かりやすい安全性の考え方」
・鹿児島大学農学部獣医公衆衛生学教室：「アフラトキシンの特性と法的規制」
このところ、食に関わる事件・事故が後を絶たないが、今回は農薬ばかりでなく、「かび毒」も問題になっている。そのなかで「アフラトキシンＢ1」というかび毒が検出された。
農林水産省の資料によると、アフラトキシンＢ1は人体にも影響を及ぼすかび毒で、食品衛生法第6条第2号で規制される。アフラトキシンＢ1の対象食品として穀類・豆類・種実類・香辛料などがあげられているが、全食品中に検出されてはならない。
アフラトキシンＢ1は天然毒素の中で最も発ガン性が強い物質とされている。人体への影響としては、大量摂取による肝臓障害で、2004年にケニアで317名のうち125名が死亡、1974年にインドで397名のうち106名が死亡するという被害がでている。いずれも、とうもろこしのアフラトキシンが原因である。
また、摂取する量が微量だとしても、摂取が続くと肝臓ガンのリスクが高まるという。JECFA（FAO/WHO合同食品添加物専門家会議）によると、体重1ｋｇにつき1ｎｇ（ナノグラム、10-9g）のアフラトキシンＢ1を毎日摂取すると、健常人では1000万人に1人、Ｂ型肝炎キャリアでは1000万人に30人の確率で肝臓ガンになると予測されている。
ただ、かび毒は何千種類もあるといわれ、現在解明されているのは約300種類だといわれる。あまり細かいことを気にしていては日常生活に影響してしまう。
東京都健康安全研究センターによると、アフラトキシンがつくられる最適条件は温度30℃前後・湿度95％以上であるため、日本にはあまり分布していない。よって、国内で食品が汚染される可能性は低い。
アフラトキシンはコウジカビによってつくられる。もう少し詳しく分類すると、アフラトキシンを作り出すのは、アスペルギルスフラバスとアスペルギルスパラシティカスの2種類のコウジカビである。日本では、味噌や醤油、酒等がアスペルギルスオリゼというコウジカビを利用してつくられるが、アフラトキシンを作らないことがすでに確認されている。日本の旧来の発酵食品は安全といえるだろう。
今回の問題は未然に防ぐことができなかったのか。汚染された食品は工業用といえども流通させるべきではなかった。また、渦中の業者が毒性を熟知した上で転売したということであれば、到底許されるものではない。東京都健康安全研究センターの実験では、アフラトキシンＢ1は通常の調理加工では減少しないことがわかっている。そうなると、今までに国民が受けた健康被害が懸念される。
さて、今後は事故米について、どのように対応するのだろうか。8日の毎日新聞によると、農水次官は事故米の売却や検査の方法を見直す方針を明らかにし、場合によってはそのまま廃棄することも検討すると発表した。また、当面の改善策として�々�業用に使う業者に売却先を限定する��抜き打ち検査の実施�Ｅ祥僂鯔匹阿燭瓮灰瓩肪綽Г垢襪箸いΑ�
事故米を輸出した国に送り返すことはできないのだろうか。工業用に加工されれば安全なのだろうか。工作用のりは子どもの口に入る場合もあるが、大丈夫なのだろうか。農水次官が示した当面の改善策では不安が残る。いろいろと疑問が生じることが多く、現実的には破棄することが妥当であるように思う。
来週中にＷＴＯ交渉がジュネーブで再開される予定だが、今回の問題が影響を与えそうだ。輸入米（ミニマムアクセス米）についても、見直す議論があってもいいのではないだろうか。それにしてもタイミング良く問題になったような気もする。
あと1点だけ気になったことがある。食品安全委員会の「平成19年度における食品安全確保総合調査実施状況」のページで、12番の「食品中に含まれるカビ毒（オクラトキシン、アフラトキシン、ゼアラレノン）の汚染実態調査」の項目だけ、なぜか「中止」になっている。このページの更新日が平成20年5月14日とあるので、すでにこの時点で今回の問題を把握していたということはないのだろうか。
参考
・農林水産省：「非食用の事故米穀の不正規流通米の回収について（第2報）」
・農林水産省：「いろいろなかび毒」
・農林水産省：「かびとかび毒」（ＰＤＦ）
・食品安全委員会：「アフラトキシンに関する食品健康 影響評価」（ＰＤＦ）
・食品安全委員会：「かび毒・自然毒等専門調査会」
・東京都健康安全研究センター：「くらしの健康（第8号）」
・法令データ提供システム：「食品衛生法」
・法令データ提供システム：「食品衛生法施行規則」
・JECFA(The Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives)
・毎日ｊｐ：「事故米転売：売却や検査方法見直す…農水次官、会見で」
・食品安全委員会：「平成19年度における食品安全確保総合調査実施状況」
（3/13追記）
・鹿児島大学農学部獣医公衆衛生学教室：「分かりやすい安全性の考え方」
・鹿児島大学農学部獣医公衆衛生学教室：「アフラトキシンの特性と法的規制」
