この物語はフィクションであり、実在の人物及び団体とは一切関係ありません。


第4回ノギザカッション小説コンテスト
エントリーNo2

いらない「奇跡」
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「最初は半年間待たせて、今度は何年待たせるつもりなんだよ。」
「半年も 返事 待たせた っけ?」
「バカ、それは1か月も無かった。俺が6月生まれで、お前が1月生まれだろ。」
「…そういう こと。」

いつもと変わらなかった日常も、表情も、声も、体型も、見る見るうちに変わってしまった。痩せ細った体、こけた頬、夏を越した辺りからは声を出す呼吸さえ辛そうだった。

「仮に そうなて も、 あなた じゃなくて、 わたしが  待つ。じゃ ない?」
「…俺の隣にお前がいないってことには変わりない。」
「待っといて、 あげるから。」

待たなくていい。待たせる暇もないぐらいに、俺とお前はこっちで一緒に居るんだ。
出逢って、たった四半世紀で、どうしてどっちかがどっちかを待たせなきゃいけないんだ。
そう思ってた。そうならないとも信じていた。けれど、いつからか、俺は待たなくちゃいけないんだな、ってどこかで思っていた。

「どうした?」

「起き上がりたいのか?」
「 おこして」

「 じゃあ ね?また ね。」

それからはうわごとのようなことしか言わなくなった。聞き覚えのある名前が、所々聞こえてくる。

「…世界で一番だよ。」

「最高の、うん。」

「なんだよ、それ。」

「親指なんて立てて、嬉しいの?」

「はっはっはっはっ…そうか、嬉しいのか。」

「なんだい、それ。」

昔、時折送られてきた、片方の手が、そこにはあった。

「そうか、その頃はできなかったなあ。そういえば。」


5時ごろに脈拍がなくなった。それでも、息はしていた。それも7時には止まった。

「脈拍がなくなっても自発呼吸がこんなに続くなんて、奇跡ですよ。」
涙ながらに発せられた、そんな奇跡なんて僕は要らなかった。

貴女のいない「奇跡」なんて、意味がない。

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