2006年02月21日

WHEN THE MUSIC'S OVER

c50f0aac.jpg■第50回 『こどもと魔法』竹村延和

子供の無邪気な感性を音に変え、パッケージされた竹村延和の超傑作。
僕は幼い頃にこの音楽を聴いていたわけじゃないのに、この音楽は幼い頃の記憶を喚起させる。
前回僕は自身の音楽と記憶の関係について少し書いたけど、この音楽を改めて聴いてみて思うこと。それはその音楽と記憶の関係性というか考え方自体が本来あるべき姿ではないということだった。
生活があり、音楽があり、うたがあり、点があり、線になる。
個別のもの同士が重なりあい、記憶となる。
そうではないのだ、きっと。
生活がうたであり、音楽なのだ。
この世に存在するすべては音楽であり、音楽と記憶が結びついているのではなく記憶そのものが音楽であり音楽そのものが記憶だったのだ。
大人である竹村延和がこどもをイメージして音楽をつくったのではなく、こどもの頃にあらゆる場面で鳴っていた音楽を、忘れてしまった音楽を、大人になった竹村が手繰り寄せたのだ。
朝陽は音楽であり、風の匂いは音楽であり、裏道の静けさは音楽であり、雨音は音楽であり、月明かりは音楽だった。はじめからそこにあったのだ。
何となく意識していたことではあったけど、体がそれを理解したとき僕の中にあったわだかまりのようなものが溶解していった。
僕の中でバラバラだったパズルは今、最後の1ピースをみつけた。

すべては音楽なのだ。


『こどもと魔法』竹村延和

01:solitary walker
02:bright time to come
03:イタリア紀行
04:the back of the moon
05:curious child
06:鏡の中の鏡
07:子供と森の動物達
08:toybox with moonshine
09:long long night
10:湖畔にて
11:image of time
12:白い点
13:clown and crown
14:物語における読者
15:サーカス小屋の魔法使い
16:timewarp
17:birth
18:おだやかな死




突然ですが、今回をもちまして「地下室の喧騒」を最終回とさせていただきます。
今まで読んで頂いていたみなさま本当にありがとうございました。
今後また違う形で何か書こうとは思っていますので、その時はどうぞよろしくお願いします。

2006.2.21 noise_ug  

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2006年02月04日

記憶

cf8c2a07.JPG■第49回 『ODELAY』BECK

音楽ってやつが僕の生活にとっては切り離して考えることのできない代物だってことはたぶん以前にも書いたと思うんだけど、こいつが時々本当に厄介なもので、ある時はアルバム一枚だったりある時はその中の一曲だったりするんだけど、とにかくその曲を聴くとそれをよく聴いていた頃の情景がはっきりと鮮明に蘇ってくるんだ。
その頃いた場所や何かの景色から、その頃思っていたことなんかの心象風景までが。
で、蘇ってくるのがいつだって幸せな記憶ばかりだからこれには僕もいささか参ってしまう。
思い出は美しいものだなんてお決まりのせりふのことを言ってるんじゃない。
その頃の苦しかったことや、憎しみをすっかり忘れちまった訳じゃないんだけど時間が少しばかりそいつを溶解してしまっていることもまた確かなんだ。
今では情景が蘇っても当時のように苦しくなることはないし、憎しみを燃やすこともない。
それが年を取ったってことなんだと君は訳知り顔で言うだろうか?
確かに僕は年を取った。それはどうしようもない事実ではあるし、僕も随分と物分かりが良くなったように思うのもまた事実だ。
だけどそいつを単純にイコールで結びつけることには賛成しかねるな。
そいつをってのはもちろん、蘇る記憶が幸せなことばかりだってことと年を取ったってことなんだけど。
だから一体何が言いたいのかっていうと、実際言いたいほどのことなんて別にないんだ。
ただ音楽が、アルバムや曲が僕にとっては写真みたいなもので、それを聴いてた頃の僕自身の思いと深く結びついているっていうだけのことなんだ。
ノスタルジックな気分に浸っているのかって言われればそうなのかもしれない。完全には否定できないけど、でもそれだけじゃあないんだ。
この気持ちを何て言ったらいいだろう。うまく言葉がみつからないんだ。
とにかく、僕は今だって幸せなんだ。嘘じゃない。
蘇る記憶が幸せなものだからって今が不幸せなわけじゃない。
諸手を挙げて幸せに満ちあふれてるんだ!ってほどじゃないけど決して不幸せなんかじゃないと思うんだ。
僕は今だって十分に幸せだ。そう思うことが大事なんだ。そしてひとつづつ噛みしめようと、そう思うんだ。


 相変わらずのボロぐつで 俺はさまよい続けてる
 バラけていたものが 何となくつながってきた
 もしも あんたの行く先が
 謎と異教の地だと思うなら
 なんとかしろよ 変わったご招待だけど

 目を覚ませば 誰かがこの怠け癖を一掃してくれるだろう
 そしたら一緒に ひんやりとした夜に起き上がろう
 あんたの笑い方 覚えてるよ
 あの頃は重力の足かせがきつかった
 ところで 何かが足りない
 たぶんこれから すべてが始まるんだろう

                 『 JACK-ASS 』


『ODELAY』BECK

01:DEVILS HAIRCUT
02:HOTWAX
03:LORD ONLY KNOWS
04:THE NEW POLLUTION
05:DERELICT
06:NOVOCANE
07:JACK-ASS
08:WHERE IT'S AT
09:MINUS
10:SISSYNECK
11:READYMADE
12:HIGH 5(ROCK THE CATSKILLS)
13:RAMSHACKLE


  
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2006年01月19日

おれのアイドル

2067aa61.JPG■第48回 『FUJIROCK FESTIVAL '05(海賊版)』PRIMAL SCREAM

ついに、ついに見つけました。そして即購入しました。
フジロック’05プライマルスクリームライブ映像!Jマスシスも3曲参加!
画質良好、大画面モニターをひたすら撮っただけという子供騙しな内容ながら全曲収録でしかも音質はそんなに悪くない。
まあそんなことはどーでもいい訳で、とにかくボビーがカッコいい!
相変わらずボビーのダメっぷりは健在で、髪を振り乱しながら頼りない声で歌う(音程外しまくり)その姿はまさに永遠のダメロッカーの最高峰。
他のメンバーが楽しそうに演奏する中で終始ふてくされたような、機嫌が悪いのか何なのか分からない顔で異様な雰囲気をかもしだすこの男。
がむしゃらにシャウトしたかと思えばすぐに冷めた表情になり、マラカスを手に取って振り始めたかと思えばすぐに投げ捨ててしまうこの男。
「1,2,3,4!」とカウントするが、ドラムのカウントと合わず結果「1,2,3,4!(ボビー)、1,2,3,4!(ドラム)」となってしまうこの男。
最高にダメで、最高にカッコいい。

そしてこの時演奏された3曲の新曲がこれまたヤバい。
「バニシングポイント」以来エレクトロパンク路線できていたプライマルズが聴かせた新曲は何とシンプルなロックンロールで、どちらかというと「ギウ゛アウト〜」ではなく2ndのガレージ路線。
これがまたとにかくカッコいい訳でニューアルバムを早く出せって感じです。
この男はやっぱりスウィートなメロディーをハードなロックに乗せて歌わせたら天下一品。
そして星柄のシャツがこんなにも似合う男は他にいない。
とにかく褒めちぎっていますが、ホントに最高なんだからしょうがない。
「ジョニーサンダースに捧ぐ」と言って歌われた新曲もあり、この人はやっぱり情けない系ロックンローラーの正統な系譜にいるんだなあと変に納得した。
ラストまでの3曲ではダイナソーJRのJマスシスも参加しているのですが、もうギターは4人ぐらいいるしとにかくディストーションやらファズやらかかりまくって何弾いてるのかわからないしメタルバンドみたいだし大変なことになってました。マニなんか笑ってばっかりのただのおっさんみたいだし。
で、そんなメタルバンド編成でジョンレノンのカバーとストゥージズのカバーで終了。
演奏の素晴らしさとかそういうものとは無縁のところで、ただただひたすら不安定な状態を安定して保っているスリリングさが彼らの魅力であり醍醐味である。
そんなダメバンドを世界一のバンドだなんて思っている僕はダメなやつだなあ。


『FUJIROCK FESTIVAL'05』PRIMAL SCREAM

01:COUNTRY GIRL
02:ACCELERATOR
03:MISS LUCIFER
04:RISE
05:SHOOT SPEED/KILL LIGHT
06:BURNING WHEEL
07:ALRIGHT
08:KILL ALL HIPPIES
09:CARS
10:DETROIT
11:JAILBIRD
12:MEDICATION
13:CITY
14:ROCKS
15:KOWALSKI
16:SWASTIKA EYES
17:MOVIN'ON UP
18:SKULL X
19:JUST GIMME SOME TRUTH
20:NO FUN

  
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2006年01月10日

夢のかけら

47a1d551.JPG■第47回 『STRANGER THAN PARADISE AND THE RESURRECTION OF ALBERT AYLER』JOHN LURIE

ジム・ジャームッシュ監督作の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を初めて観たのはもう10年以上も前のこと。
その頃僕にはよく一緒に遊んでいた友達がいた。
彼と僕はその頃文学や音楽に夢中で、いつもそんな話ばかりしていた。
ある時は中上健次や坂口安吾の文学の凄さについて、またある時はソニックユースやダイナソーJRの音楽の素晴らしさについて。
僕らは暇さえあれば会い、酒を飲み、夜の街を歩き、朝焼けの空を横目に泥のように眠った。
彼の部屋にはたくさんの本が山積みになっていて、常に彼は色々な本を読んでいた。
僕も負けじとたくさんの本を読み、お互いにその作品や思想を延々と語った。
マンションとは名ばかりの古びたうすら寒い彼の部屋で僕らはいつも熱く語っていた。
ある日彼が人から借りた映画のビデオを観せてくれた。それが『ストレンジャー・ザン・パラダイス』だった。
ストーリーはあまり覚えていない。ストーリーらしいストーリーもなかったような気がする。
3人の男女が一時を共にし、ふとしたことでバラバラになってしまう。その程度しか覚えていない。
ジム・ジャームッシュの作品は好きで、その後も「ナイト・オン・ザ・プラネット」や「ダウン・バイ・ロー」、「デッドマン」に「ゴースト・ドッグ」と色々観たが彼の作品の魅力は物語ではないので僕が覚えてないのではなくて本当に、3人の男女が一時を共にし、ふとしたことでバラバラになってしまう、というただそれだけの映画だったのかもしれない。

あの頃僕らには夢があった。
それは夢と呼べるような大それたものではなかったのかもしれない。
アテも無く手段もわからなかった僕らは漠然と、ただ漠然とそこへ向かおうともがいていた。
僕らは無力だった。
僕らは無力さをひた隠しにするために、お互いのベクトルを確認しあってばかりいた。
僕らは無力だった。不安で、強がってばかりいた。
僕らは無力だった。だけどそれを補って余るぐらいの純粋さがあった。

彼との連絡が途絶えてもう8年以上になる。
最後に会った時、彼は新しい仕事を始めたばかりだった。
僕は彼の行く道が彼の夢とはかけ離れたもののような気がして少し悲しかった。
だけど今はもう悲しくはないんだ。
僕らの向かう場所はそんなちっぽけな事に左右されないんだって分かったから。
元気でやってるかい?
このあいだ偶然、お前と一緒に観た映画のレコードをみつけたよ。
お前のことを真っ先に思い出して、懐かしくなって買ったんだ。
初めて聴くアイラーのメロディーはどこか懐かしくて、あったかくて、ちょっと切なかったよ。
元気でやってるかい?
色々話したいことがあるんだ。何から話そうか。
元気でやってるかい?
カッコいいレコードをみつけたんだ。
元気でやってるかい?
おれはあの頃といっしょで今でも無力なまんまさ。
だから何だって言うんだ。そんなこと構いやしないのさ。そうだろ?
元気でやっているかい?
元気でやっているかい?

おれはもう魂を安売りするような真似だけはしないって決めたんだ。
お前はどうだい、元気でやってるかい?


『STRANGER THAN PARADISE AND THE RESURRECTION OF ALBERT AYLER』JOHN LURIE

01:BELLA BY BARLIGHT
02:CAR CLEVELAND
03:SAD TREES
04:THE LAMPPOSTS ARE MINE
05:CAR FLORIDA
06:EVA & WILLIE'S ROOM
BEER FOR BOYS
EVA PACKING
07:THE GOOD AND HAPPY ARMY
08:A WOMAN CAN TAKE YOU TO ANOTHER UNIVERSE;
  SOMETIMES SHE JUST LEAVES YOU THERE
09:THE RESURRECTION OF ALBERT AYLER


  
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2006年01月03日

総括

75dd50f7.JPG■2005年 今さら総集編

●2005年購入したレコード、CDベスト10(順不同、新譜、旧譜問わず)

01.『Jazz at massey hall』the Quintet'
02.『GIANT STEPS』John coltrane
03.『You're Living All Over Me』Dinosaur Jr
04.『戦場のボーイズライフ』小沢健二
05.『Live at THE HARLEM SQUARE CLUB,1963』SAM COOKE
06.『FAR』レシーバーズポンポンヘッド
07.『オールスター』the Star,Magnitude Six
08.『Mercy』DON COVAY
09.『LAST DATE』ERIC DOLPHY
10.『Vespertine Live at Royal Opera House(DVD)』Bjork
番外.『PUNK:ATTITUDE(DVD)』DON LETTS

かなり「今さら」な音源が多いです。
2005年は例年にくらべ新人ミュージシャンや新譜で良いと思えるものがあまりなく、UKシーンは盛り上がっているようですがどれも個人的にはイマいちで購入するには至りませんでした。
それに比べ今年購入のジャズの旧譜は当たりばかりで非常に充実していました。
それとオークションで非常に良心的な価格で落札できた小沢健二のシングルは文句なく最高で、その曲の完成度には相変わらず脱帽でした。
個人的にはダイナソーJRの再結成と初期3作の再発がとても嬉しく、いつのまにか手放してしまっていた自分としては飛びつくようにして買いました。フジロック05’ではプライマルスクリームと一緒にストゥージズを演奏(!!)するというサプライズもあったらしく、見れなかった僕は雑誌片手に嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちでした。
あと新譜では06レシーバーズポンポンヘッドの『FAR』がすごかった。
あれは絶対買いです。レコード屋にないけど。
番外の『PUNK:ATTITUDE』は最近発売されたばかりのものですが、パンクのドキュメンタリービデオとしては秀逸で、パンク前夜〜現在までを網羅した内容になっていてパンク初心者からパンク上級者まで存分に楽しめます。

●2005年ベストライブ

PIXIES at Zepp Osaka

これはもう文句なくPIXIES。フランク・ブラックが紡ぎ出すメロディーとキム・ディールによるコーラスは掛け値なしに最高で、その音楽には文字どおり魔法がかかっていました。

●2005年に読んで面白かった本(順不同)

01.『古事記』
02.『旧約聖書』
03.『ブッダ』手塚治虫
04.『東京大学のアルバート・アイラー』菊地成孔
05.『ヘレン・ケラー自伝』

こちらもかなり今さらなものが多いですが、『古事記』と『旧約聖書』は圧倒的に面白かった。
あの物語性というのはちょっと半端じゃあないですね。
2005年後半はとにかく宗教、神話関連の本にどっぷりハマりました。

2005年は簡単にまとめるとこんな感じですが、2006年は一体どんな音楽に出会えるのか楽しみです。
ここ最近では70’UKパンクにまた熱を上げています。
やっぱり僕の音楽の好みの根底はここにあるようで、巡り巡ってもう何度目かわかりませんがまたここに辿り着いてます。

そんなわけでみなさん2006年もよろしくおねがいします。


  
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2005年12月23日

地下室の喧騒:外伝

d243d2e9.JPG■地下室の喧騒:外伝『私が音楽を闇雲に言葉で奏でようとする理由』

今回はディスクレビューではなく、このブログで私が一見音楽とは関係のないような文章をなぜ毎回つらつらと書いているのかということについて別に聞かれてもいないけど触れようと思う。

以前のブログにも少し書いたことがあるが、私の生まれ育った土地は小さな田舎の、町とも呼べないような小さな町で、私はそこで18歳までを過ごした。
小学生の頃私はまるで音楽には興味がなかった。両親も特別音楽には興味がなかったのか家ではレコード一枚見かけたことすらなかった。
家族で出かける時も車ではいつもラジオがかかっていてカセットテープすらかかることはなかった。テレビでは歌謡曲を紹介する番組が人気で、私もごくたまに観たりもしていたが、文字どおり「観ている」だけでそれ以上でもそれ以下でもなく、クラスメイトは誰それの何という歌がどうだとか話したりもしていたが私はまるでその話にはついていけないくらい知らなかったし、特別興味もなかった。
音楽を自分の意志で聴くようになったのは中学に入ってからだった。
私の通っていた中学はバンド活動が盛んな学校で、バンドをやってたり楽器をやってたりする人がたくさんいた。私はそんな風潮のなかでごくごく当たり前に音楽を聴くようになっていった。
中学時代に色々と見たり聴いたりした影響で、私は高校に入ってすぐに初めてのギターを手にした。
初めてのギターはヤマハの黒いテレキャスターという今考えるとよく分からない微妙な代物だったが私は夢中になった。
それと同時に色々な音楽に興味を持ち始めた。これも以前に書いたが、小遣いをもらってはレコード屋に走り、町で唯一の豊富な品揃えの(当時としては)店のCD棚と睨み合っていた。
今となっては信じ難いことだけど、当時まだレンタルCDはあるにはあったがそれほど盛んではなく、まして田舎のレンタルショップとなると洋楽のCDなんて皆無に等しかった。
ユーロビートとかそんなやつだけは一丁前にあったのは覚えているが、私が聴きたいようなロックのCDはほとんどなかった。
これも今では信じられないことだが当時レコード屋に試聴機なんてものはなく、私たちはそれがどんな音がなっているのか分からずにただCDのジャケットや帯をじっと見て、読んで、悩んで、なけなしのお金をはたいてロックの名盤に手をつけていった。
お金を手にすればジョニーサンダースに、お金を手にすればレッドツェッペリンに、お金を手にすればローリングストーンズに。
今ではインターネットで調べたりすればどんな情報だって手にすることができるし、ダウンロードだってできる。掘り出し物の中古盤だって簡単に手に入る。レコード屋には試聴機もある。
私の時代にはそのどれもがなかった。
ではそのような何もない時代で一体何を手がかりに音楽を探したのか。
当然、本だった。
これもまた小さな本屋に行き、小さな音楽雑誌のコーナーでひたすらイカス音楽は何か、情報を探っていた。ここで情報を手に入れ、どのバンドがいいのか、また最初に買うならどのアルバムか、それは必死だった。お金なんてないから買える枚数は1枚かせいぜい2枚。それはもう必死だ。
失敗は許されない。一枚目のチョイスを誤ればそのバンドの2枚目を買うことはない。
そうやってたくさんの名盤や迷盤に出会ってきた。
限られた情報の中で良質な音楽を紹介していた音楽誌はまさに道標だった。
もちろん道標にならなかったこともある。買って失敗なんてものも山のようにある。
だけどその限られた情報がなければ出会えなかった数々の素晴らしい作品もある。
心臓をぶち抜かれるような音楽の衝撃を言葉に変えて、限られた情報手段の中でなんとか伝えようとしたあの頃のライターの方々に胸いっぱいの愛を。
純粋に音楽を愛し、情報手段の少なかった時代に音を言葉で必死に著わそうとしたライターの方々に深いリスぺクトを。
そして同時に彼らの拙さと間違いを深い愛情でもって報いたい。
私があえてこのブログのディスクレビューで「前作よりどうこう」とか「リズム隊があーだこーだ」とかそういう通ぶった下らないことを書かない(特に最近は)のは今あまりにもそういうレビューが多いから。音楽への深い愛情が感じられない文章が多いから。
私のレビューは特殊かもしれないが、できるだけその作品に溢れるフィーリングを大事にしようとは心がけているつもりだ。
私はただ自分自身の体験談をこの場を借りてつらつらと書いているのではない。
音楽が喚起する風景を言葉に変えて書いているつもりだ。
自称音楽通の御託など読みたくもない。迷惑だ。
私は素晴らしい作品を、音を言葉に変えることなど不可能だと知りつつも、その音楽の本質を、根底を何とかして言葉に還元してあなたの胸を貫きたいと、そう思う。
私がかつて言葉で奏でる音楽に胸を貫かれたのと同じように。
ポストに入れられた宛先のない手紙が一体どこへ届くのか、それは私にとってはどうだっていいこと。
ただ私の書いた音楽への深い愛情が誰かにとっての毒となり得れば。そんなふうに思っている。



  
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2005年12月16日

雪を見た日

1f398bfb.JPG■第46回 『FLIGHT TO DENMARK』DUKE JORDAN

その日、私は確かに雪を見たのだった。
私は街の喧噪の中にいた。
クリスマスを近くに控えた街はにぎやかで、街をデコレーションした色とりどりの光はせわしなく点滅したりして無邪気に道行く人々を照らしていた。
私には特別何の縁もない日だったが、無邪気に点滅する光を見るのは楽しかったし、誰かが誰かを想って笑っていたり、子供たちの喜ぶ顔を見るために一生懸命になっている大人の姿を見るのは悪くはなかった。というかむしろ素敵な光景だった。

幼い頃、クリスマスはプレゼントをもらえる日だった。
本当は何の日なのかなんて知らなかった。
新聞に折り込まれたおもちゃ屋のチラシを毎日眺めた。
クリスマスの数日前、父親の部屋でプレゼントの包装のされた大きな箱を見つけた。
欲しかったテレビゲームだと思って、私はよろこんだ。
クリスマスの朝、枕元に大きなクリスマスプレゼントがあった。
包装を取り、箱を開けて私はがっかりした。
箱の中にはテレビゲームではなく地球儀が入っていた。
私は地球儀では遊べなくて、どうしていいのか分からず、ただそのまま置いていた。
あの地球儀はどこへ行ってしまったのだろう?
皮肉なものだ。今なら私はきっとテレビゲームよりも地球儀が欲しいと言うだろう。
親と子は擦れ違うものなのだろうか。
少なくとも私はそうだったのかもしれない。
今ならきっと地球儀を見て私は喜び、ありがとうと笑顔で言うだろう。
だけど遅かった。
ありがとうを言おうにも、あなたはもういないのだから。

もう随分まえの話。
私は童話を書いてみたいと思っていた。
クリスマスの話を書いてみたいと思った。
サンタクロースとそっくりな名前の別人の家にある日たくさんの荷物が送られてくる。
その年のクリスマスに子供たちに配るプレゼントだと知って驚いた男はプレゼントの山を返そうとするが送り主は書いておらず、どうしていいのかわからぬままクリスマスイウ゛を迎える。
間違えて送られてきたんだ、知らないぞ、おれはサンタクロースじゃない。
しかし夜が更けるにしたがって男はだんだんと気になっていった。
朝が来てたくさんの子供たちが枕元にプレゼントがないことに気付き、がっかりする顔を想像したら落ち着かなくなって、とうとうたくさんのプレゼントを持って子供たちに配りに行く。
たった一晩かぎりのサンタクロースの話。
そんな話の内容だった。もっと色々あったように思うが、忘れてしまった。

街を照らす光を見ていてふと、そんなことを思い出した。
街は冷えきっていた。
道行く人々は笑っていたように思う。
そんな冬の日、私は確かに雪を見たのだった。
もしかすると私にしか見えなかったのかもしれない。
しかし確かに雪を見たのだった。
それはあたたかく、真っ白い雪だった。


『FLIGHT TO DENMARK』DUKE JORDAN

01:NO PROBLEM
02:HERE'S THAT RAINY DAY
03:EVERYTHING HAPPENS TO ME
04:GLAD I MET PAT
05:HOW DEEP IS THE OCEAN
06:GREEN DOLPHIN STREET
07:IF I DID-WOULD YOU?
08:FLIGHT TO DENMARK

  
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2005年12月08日

暖かな季節

e44e08a6.JPG■第45回 『太陽』中村一義

それは確かに暖かな季節だった。
晴れた日はもちろん、雨の日でさえ暖かかった。
今も思い出す、色褪せないその景色にはいつだって優しい陽が射していて、
何となく暖かくて、何となく切なくて。
蘇るのはいつだって暖かく、優しい季節。

ベランダにたくさんの陽を浴びて実をつけた赤い果実。
僕はその赤い実に見とれていた。
その実をひとつ君は口に含んだ。
君を真似て僕もその実をひとつ口に含んだ。
皮が硬いねって君は笑っていた。
皮が硬いねって僕も笑った。

暖かな季節。優しい季節。
僕は確かにその頃暖かな季節にいた。
だけどその頃僕は暖かな季節にいることを知らなかった。

雨が降れば憂鬱だと言い、
空が晴れればあの頃を思い出す。

ごめんね
ごめんね
ごめんね
何言ったってだめさ。
わかってるよ、だけど
ごめんね。

僕は今もあの暖かな季節に君と聴いた優しい歌を聴いている。
君はもう聴いていないだろうか。
そっちはどうだい?

ここは寒いなあ。


『太陽』中村一義

01:魂の本
02:あえてこそ
03:春
04:再会
05:ゆうなぎ
06:日の出の日
07:夏
08:そこへゆけ
09:晴れたり、曇ったり
10:秋
11:歌
12:笑顔
13:生きている
14:冬
15:いつも二人で




  
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2005年12月01日

うたで世界をつつみこめ

c761c14c.jpg■第44回 『へウ゛ンリィ・パンク:アダージョ』七尾旅人

たぶん、今世紀最初の傑作。

淡々と流れるように流れる音と言葉。つまりは「うた」。
溢れ出すうた、鳴り止まないうた。
穏やかに、緩やかに。
これほどまでに美しい音と言葉を歌ううたい手を僕は他に知らない。

世界はまだこんなにもうたで溢れている。
その驚きと、喜びを、ただそれだけを。
悲しみを、嘘を、夜を、きみのなかにあるからっぽを、間違いを、
世界中を、愛で、うたで包み込むんだ。

ただひたすらに感動的。
もうこれ以上言葉もない。


僕は未来永劫このアルバムを支持する。


『へウ゛ンリィ・パンク:アダージョ』七尾旅人

■DISC 1
01:息をのんで
02:エンゼルコール
03:耳うちせずにいられないことが
04:わぁ。(驚きに満ちた小さな悲鳴)
05:天国北上
06:ハーシーズ・ムーンシャイン
07:リトルエクスタシィ
08:泡と光
09:『横浜市立阿龍公園』
10:h.b
11:夜光る
12:ブルーハンティング
13:だんだん夢みたい
14:これは花びらかな、そうじゃないかも
15:チーク
16:ブラインドタッチ
17:シュリンプ(ガリバー6)

■DISC 2
01:最終電車で海へいこう
02:反吐、反吐、汽車
03:『潜水バースデイ』
04:ウ゛ィッグビーチ
05:頭上の水面 白 白 白
06:大きなベイベ
07:天使が降りたつまえに
08:ヒタ・リーを聴きながら
09:ラストシーン
10:昔の発明
11:赤い星(サーチンソール)
12:バンブーズ
13:NEON
14:グライドしてた
15:完璧な朝
16:真夜中2時→
17:ナイト・グロウイン
18:『生涯の秘密』






  
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2005年10月28日

潜水病

7e84ada0.JPG■第43回 『the bends』RADIOHEAD

もう随分と前のことだ。
僕は来る日も来る日もこの「潜水病」と名付けられたレコードばかり聴いていた。
その頃、ほんの短い間に身のまわりで色々なことがあった。
近しい人たちに起こったたくさんの不幸から、今となっては他愛もないいざこざの数々まで様々なことがあった。
あらゆる出来事に対し免疫のなかった僕はそのいちいちに引っ掻き傷を負ってしまっていて、傷を負った僕は日増しにささくれだっていき、傷の処方箋として出来る限りの悪意を持とうとしていた。
光は見えなかった。
僕は来る日も来る日もこの「潜水病」と名付けられたレコードばかり聴いていた。

「それでもいいんだ」
トム・ヨークが何を歌っているのかなんて知ったこっちゃなかった。
彼の詩をちゃんと読んだこともないし、別に読む気もなかった。
だけど僕は彼がきっとそう歌っているのだと勝手に思い込んでいた。
実際には何を歌っているのか、今も知らないし知りたくもない。
真意や真実なんていらない。
僕の中でトム・ヨークは「それでもいいんだ」と歌っていた。
そんな彼の歌を聴いて「お前なんかに何がわかるんだ」と悪態をつきながらも僕はどこか救われていた。

肥大していく自意識に僕の心は蝕まれていき、気付けばからっぽになっていた。
からっぽのまま僕は海中深くに向かってゆっくりと下降していった。
このままもう戻れないところまで沈んでいくのだと思っていた。
だけど僕は沈みきらなかった。
沈んでゆく途中で出会った幾人かと過ごした時間が僕を救ってくれた。
彼や彼女らは海中深く光の見えなくなっていた僕にそっと蝋燭を差し出してくれ、流れ込む液体によってゆっくりと膨張していくような僕の自意識のバルブを静かに閉じてくれた。
気が付けば僕は悪意を脱ぎ去り、裸になっていた。
裸になった僕はその時初めて彼らの心に触れた。
「それでもいいんだ」
彼らはきっと僕にそんなことを言おうとしてくれていたのだと思う。
あんなにも涙が止まらなかったのは初めてのことだった。

あれからもう随分と経つ。
彼らは今も僕にとって特別な感情を抱く特別な存在だ。
それぞれの道を行き、それぞれの幸せを手にしていることを僕は自分のことのように幸せに思う。

「潜水病」と名付けられたこのレコードを聴くことは今はもう、ほとんどない。



『the bends』RADIOHEAD

01:planet telex
02:the bends
03:high and dry
04:fake plastic trees
05:bones
06:(nice dream)
07:just
08:my iron lung
09:bullet proof..i wish i was
10:black star
11:sulk
12:street spirit(fade out)


  
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2005年10月26日

さよなら、然るべき世界。

3315d14d.JPG■第42回 『ultravisitor』squarepusher

百人百様。
感受性はそれぞれに違う。
百人いれば百通りの感じ方がある。
単純明快なことだし、当たり前のことだ。
しかしほとんどにおいてそれは理解されてはいない。
私達は生活の中で、無意識下における価値の共有や共感を強いられている。
あらゆる場面でだ。
「然るべき」という発想は限りなく独善的なものだ。
「こうありたい」と望むからそれは発生し、意味を成し、その人にとっての価値を生むのであって、他者にとっての意味や価値を求めるものではない。つまり「然るべき」という発想とは全く違うものだ。
我が物顔の独善的独裁者が闊歩する。
それを非難する独善的独裁者が声を張り上げる。
民衆が旗を振る。

私はそういった世界と決別する。


『ultravisitor』squarepusher

01:Ultravisitor
02:I Fulcrum
03:Iambic 9 Poetry
04:Andrei
05:50 Cycles
06:Menelec
07:C-Town Smash
08:Steinbolt
09:An Arched Pathway
10:Telluric Piece
11:District Line ?
12:Circlewave
13:Tetra-Sync
14:Tommib Help Buss
15:Every Day I Love

  
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2005年10月17日

ストレンジャーズブルース

ab980080.jpg■第41回 『さよならストレンジャー』くるり

「東京」という彼らの曲に出会ってから随分と年月が経った。
初めて聴いた当時は良い曲だとは思いつつも別段特別視はしていなかった。

その頃僕は生まれ育った土地を遠く離れいくつかの町を転々とし、今住むこの場所にいた。
見知らぬ土地はいつしか見知る土地へと変わっていき、同じ四季の中で少し違う四季を感じていた。
見知らぬ土地が見知る土地になっていく過程で比較対象となるのは幼い頃に見た風景であり体験だった。
見知らぬ土地を知り、暮らす中で浮き彫りになっていく原風景、原体験。
僕は今までずっと、スタート地点からどれだけ遠くまで行けるかを思ってきた。
しかし遠く離れれば離れるほどに逃れられない強い繋がりを感じ、今ではそこを離れて人は生きて行くことは出来ないとさえ思う。
僕は今、遠く離れてしまった場所や時間を強く思い、在りし日の記憶に幾許かの感傷を抱く。
これがノスタルジーであろうが何であろうがかまわない。
現代人は漂泊の民になってしまったのではなく、帰るべき場所へ行く術を見失っただけなのだ。
土着の民でありながら、そのことを忘れ彷徨う悲しき民族。

過去が未来を追い越すということはあってはならないと思うが、過去は遠く離れていくものではなく常に離れていこうとする自分を追いかけてくるものだ。
今では忘れてしまったことや、忘れたくないこと、忘れたくても忘れられないこと、忘れたくないのに忘れてしまうこと、いつか忘れてしまうだろうこと、いつまでも忘れたくないこと。
その全てが切なくていとおしい。

そしていつしか「東京」は僕にとって特別な存在となった。

「東京」というこの曲は故郷を、昔日を、過去を、そこには何もないと知りながらも携えずにはいられずに、見えない明日に歩を進めるストレンジャーたちのブルースだ。


『さよならストレンジャー』くるり

01:ランチ
02:虹
03:オールドタイマー
04:さよならストレンジャー
05:ハワイ・サーティーン
06:東京
07:トランスファー
08:葡萄園
09:7月の夜
10:りんご飴
11:傘
12:ブルース
  
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2005年10月09日

溢れ出る涙

42572d7f.JPG■第40回 『溢れ出る涙』ローランド・カーク

レコードに針を落としたら何も考えずに、ただその音に身を委ねてほしい。
音楽鑑賞、それは、隠し難い「魂」そのものを享受する事。
と言った人がいたが、そのとおりだと思う。

音楽は音楽だ。
音楽は音楽以外の何物でもない。
大切なのは音楽であって、その良し悪しが全て。
有象無象の降って湧いたような所謂アーティストなるものに多く見受けられるように思う、「何を歌うか」「何を歌っているか」ばかりが取り立てられる状況は如何なるものか。
耳障りがいいだけの15秒間の消耗品。
浅瀬の主義主張など飽き飽きだ。

音楽をなめるんじゃないよ。音楽は音楽だ。

音楽は、ただ、音楽なんだよ。
そして、僕らはそこに込められた「魂」を、隠し難い「魂」そのものを享受するんだよ。
ローランド・カークを聴いてみたらいい。
安っぽい主義主張なんて音楽の前ではちっぽけなものだ。


『溢れ出る涙』ローランド・カーク

01:THE BLACK AND CRAZY BLUES
02:A LAUGH FOR RORY
03:MANY BLESSING
04:FINGERS IN THE WIND
05:THE INFLATED TEAR
06:THE CREOLE LOVE CALL
07:A HANDFUL OF FIVES
08:FLY BY NIGHT
09:LOVELLEVELLILOQUI





  
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2005年09月23日

閃光を放つ六等星

0b01c8aa.JPG■第39回 『未来少年』the Star,Magnitude Six

完全無欠の肯定ソング。

彼らの数々の曲の中で、その中でも明らかに強い光を放つ珠玉の1曲。
今までの彼らの曲に感じた光というのは強い光ではあるけど、それはまるで閃光のような、流星のような、瞬間と永遠が交差するその一瞬の煌めきのような光だった。
だからこそ眩いばかりの美しさがあったわけだが、今回は少し違う。
この『未来少年』にはその一瞬の煌めきが永遠に続いているような光の強さがある。
ずっと輝いているんじゃない、いくつもの閃光が、流星が、光を帯びた単体が連続し、繋がり続け、輝き続けている。
「僕らはきっと何ひとつ変わらないのさ」と唄った男は今、この曲でこう唄う。

 僕らは転がってくから 思い出は美しいままなのさ
 僕らは転がってくから みっともねえのさ

 それでいいのさ
 
 僕らは振り返るから 思い出は美しくなるのさ
 僕らは振り返るから 大人になるのさ

 それがどうした

明らかに唄の強度が上がった。
これは強いも弱いも情けないも寂しいも悔しいも嬉しいも、あらゆる感情を駆け抜けてなお、前進しようとする男たちの唄だ。
前を向きたくても向けない、誰だってそんな時がある。理由は色々ある。
だけど、
それがどうした
それでいいのさ
全てを飲み込め、そして駆け抜けろ、それでいいのさ。
                        
眩い閃光の中、いい歳をした4人の「少年」たちは未来を暴き出す。                                                                                              
                    

『未来少年』the Star,Magnitude Six

01:未来少年




  
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2005年09月22日

青春の闇

d866e48e.JPG■第38回 『YOU'RE LIVING ALL OVER ME』DINOSAUR JR.

切ない。

何が一体切ないのかと言えばフジロック05’にて復活したダイナソーJRを観れなかったということがたまらなく切ない。
ダイナソーJRの初期3作が再発され、僕はどんなに喜んだことか・・・
昔も今も積極的な活動をする人じゃなかったので、今の10代〜20代前半の音楽ファンの人たちじゃあんまり知らないなんて人も多いのかも知れない。
あの頃アメリカは所謂グランジムーブメントなるものが起こっていて、良質な音楽が溢れていた。
まあ微妙な人たちも山のようにいましたが。
その中でも僕はとりわけダイナソーJRとマッドハニーを愛した。
もそもそと何を言ってるのかわからないJマスシスの歌、超絶ギター、お世辞にもカッコ良いとは言えない風貌、決してわかりやすくはなかったかもしれないけど誰よりも素晴らしいたくさんの曲。
ダイナソーJRは僕の青春だった。決してニルウ゛ァーナじゃない。
ニルウ゛ァーナは、カート・コバーンは当時のアメリカの若者が抱える心の闇を歌ったと言われ、時代の象徴のように祭り上げられた。本当に?冗談じゃない。
そんな下らない誰かの戯言なんて嘘っぱちだ。あれは、彼の歌だ。
もし、アメリカの闇を歌った人がいたとすればそれはたぶんJマスシスのことだ。
彼の歌には、目には見えないが確実に存在する不穏な空気、その空気感が漂っている。
どこまでも消える事の無い闇、不安とささやかな希望が交錯する闇で彼はそれを打ち消そうとするかのように、抗うように爆音を鳴らす。闇を食い散らすダイナソーのように。

銃は持ってないって誓うよ、カートはそう歌った。だけど銃を持っていた。
彼は一体誰に何を誓ったんだ?
だけどもういいんだ、彼は死んでしまった。持ってないと誓ったその銃で。

彼の死とともにグランジムーブメントなるものは終焉を迎えた。
その後もJマスシスは歌った。そして鳴らした。
カートの死とともに闇がなくなったわけでは決してない。
フジロック05'でもJはやっぱりフルボリュームでギターを掻き鳴らしたという。
闇に抗うように、闇を食い散らすダイナソーのように。
決して終わったわけではない。

吹き飛ばしてくれ、俺の中に渦巻く闇を。あなたのそのギターで。


『YOU'RE LIVING ALL OVER ME』DINOSAUR JR.

01:Little Fury Things
02:Kracked
03:SludgeFeast
04:The Lung
05:Raisans
06:Tarpit
07:In a Jar
08:Lose
09:Poledo
10:Just Like Heaven



  
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