2016年09月23日

調達購買改革を巡る誤解 その3

その3.「複数社発注」=「リスクマネジメント」の誤解前々回から調達購買改革を巡る誤解について取上げていますが、今回はその三回目です。東日本大震災をきっかけに供給リスクマネジメントの手法として複数社発注とかマルチソース化を進めるべき、ということが日本企業においても言われるようになってきました。今回はこの「複数社発注」が「(供給)リスクマネジメント」につながるかどうか考えていきましょう。その前に先ずは複数社発注の定義についてです。複数社発注は違う言葉では二社発注とか二社購買、マルチソース、デュアルソースなどと言われています。それぞれの言葉の意味は大きくは違わないでしょう。しかし、この複数社発注は、元々供給リスクマネジメントを目的とした購買手法ではありません。複数の企業を競争させてコスト削減を実現したい、というのがそもそもの目的です。例えば電機メーカーなどでは汎用品である半導体などを複数の会社から購買していますが、四半期毎に価格交渉を行い、安いサプライヤから買う量を増やすなどの発注シェアコントロール(アロケーションという言葉を使います)を行っていますが、これは複数社発注の代表的な事例と言えるでしょう。しかし複数の企業を競争させてコスト削減を図るという目的であっても、先の半導体の事例のように全く同じもの(もしくは代替相当品)を複数の会社から買っているケースはあまり多くありません。むしろこのようなケースはごく一部分でしょう。複数社発注とは同じ品目群について2社以上の発注先をサプライヤ候補として持ち、常にこの複数社を競争させてコスト削減を図る取組み、これがむしろ一般的ではないでしょうか。トヨタ自動車は創業者である豊田喜一郎氏が作られた購買係心得にも書かれているように複数社発注(2社が基本)が基本方針です。一方でトヨタ自動車は系列関係などサプライヤとのパートナーシップを重視しています。この二つの基本方針を同時に実現するために、彼らは品目群ごとに複数社のサプライヤを競争させているのです。それにより「協調」と「競争」のバランスをとっています。つまり全く同じものを複数社から買っている訳ではなく同じ品目群(例えばピストンリングとかベアリングとかシートなど)で、二社以上の発注先をサプライヤ候補として持っておき、この複数社を競争させていく、という手法を取っているのです。これが多くの企業における複数社発注の実体と言えます。何故そのような手法をとっているのでしょうか。その理由は明快です。同じ品目を複数社から購買することは二重投資になるからです。特に自動車の場合購買品の殆どは各自動車メーカーのカスタマイズ品。カスタマイズ品ということは新規発注のためには金型や専用治具、専用工具などの設備投資が必要です。もし全く同じ品目を二社以上から買うということになると、これが二重三重の投資につながります。冒頭での半導体事例のように専用投資が不要な汎用品や原材料など一部の品目では二社以上から購入しても二重投資にはなりません。このケースでは複数社発注を行うことで競争によるコスト削減と供給リスクマネジメントにもつなげることができます。しかし全く同じ品目を複数社発注するということは一般的にはコスト的な負担につながるので、重要且つサプライヤがここしかできない、というような供給リスクマネジメントを優先せざるを得ないようなボトルネック品目でしか行われないでしょう。そういう品目は一部であり稀な品目と言えます。こういう状況を考えると「複数社発注」は必ずしも「供給リスクマネジメント」にはつながらないのです。しかしカスタマイズ品であっても品目や条件が変われば全く同じ品目を複数の会社や工場から買うことがあり得ます。以前私が自動車会社で購買担当をしていた時ですが自社生産していた車種は生産量が非常に多く、1ラインだけでは生産が間に合いませんでした。このようなケースでは異なった工場の2ラインで最終製品を生産しているので、全く同じ部品を異なったサプライヤ2社から購買するという複数社発注の手法を取ることができるのです。また、最近では生産戦略上国内と海外の2工場(もしくはそれ以上)で同じ製品の生産をしているケースも少なくありません。このようなケースでは二重投資になったとしても輸送コストや現地の生産コストを考えると国内と海外の複数工場や複数社から同じものを購買するというケースもあり得ます。これらのケースでは全く同じ品目を複数社発注することで供給リスクマネジメントにもつながるのです。繰り返しになりますが、これらのケースはレアケースであり、多くの品目については供給リスクマネジメントのために二重投資によるコストアップを容認するということは考え難く、複数社発注はリスクマネジメントに直結しません。それでは供給リスクマネジメントを目的とした購買手法の昨今の動向はどのような状況にあるのでしょうか。一つ言えることは複数社発注についてもそうですが、コスト増や高負荷を無視したリスクマネジメントは無理があるということです。昨今の動向としてはティア情報などの源流情報の収集、蓄積などはしっかりやっておくという前提のもと、リスクに対して事前に手を打っておこうというリスク回避、軽減策よりも事案が起きた時の初動の速さと、収集した情報を元に適切な意思決定を行うことをより重視していく方向にあるのではないかと考えます。また現場の復興をまず第一優先とし、もし現場の復興にあまりにも時間がかかれば、まずは設備や金型の移転等によって同じサプライヤの違う工場での生産に移行する、それもできなければ海外含む代替サプライヤの検討、というのが基本的な考え方になっています。基本的な考え方は無理なリスクマネジメントは長続きしない、という前提で如何に復興を最優先するか、ということです。これは以前メルマガでもふれましたトヨタ自動車の復旧支援活動でも同じような方針が打ち出されています。http://www.agile-associates.com/2016/06/2016617.html今回述べてきたことと前2回の誤解について、共通している考え方はそれぞれ購入している品目によってサプライヤマネジメントやサプライヤ集約、複数社発注などの購買手法の適合性が異なることです。ようするに購入品目を層別化して捉え、その購入品目にあった購買手法を採用しなければ意味がないのです。複数社発注と言ってもサプライヤ切替えや新規投資によってコストがどれ位がかかるか、また購入品目群の重要性等の要素によっても取るべき購買手法、施策は異なります。それにも関わらず調達購買改革のいくつかのキーワードの元、何から何まで一つの考え方で推進しようとするから無理が生じているのです。次回は、誤解その4.「部品集約」=「コスト削減」の誤解について述べていく予定です。

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2016年09月07日

調達購買改革を巡る誤解 その2

その2.「サプライヤ評価」=「サプライヤマネジメント」の誤解

前回から調達購買改革を巡る誤解について取上げていますが、今回はその第二回
です。

お客さんなどから良く聞かれる質問で「サプライヤ評価をやろうと検討しているが、
どのような評価項目にすればよいですか?」ということがあります。
しかしそういう企業に限って何のためにサプライヤ評価をやろうとしているか明確で
ないことがとても多いです。

サプライヤ評価はあくまでも手段であり目的ではありません。

つまり何かの目的を達成するために評価をする訳ですが、それが不明確なまま評価
だけ先行するといわゆる評価疲れに陥りやすくなります。
それでは評価は何のためにやるのでしょうか。
大きく分けるとサプライヤ選定や決定のために行う評価と既に取引があるサプライヤ
に対する実績に基づく評価に分けられます。(後者は目的ではありませんが)

前者はこれからサプライヤの選定を行う訳ですから基本的には限られた情報から
多面的に評価を行い、安かろう悪かろうではない最適なサプライヤ選定を行うことが
求められます。ですから評価項目としてもこのような購買取引に関するQCD等の条件
が含まれます。ですから比較的評価の仕組みを構築するのも難しくはありません。

一方で実績に基づく定期的な評価ですが、これは多くの企業で年に一回とか半年に
一回とか実施されるいわゆるパフォーマンス評価と言われるものです。
これは様々な目的が考えられますが、例えば品目別のサプライヤ戦略の策定、高い
評価のサプライヤに対する表彰、低い評価のサプライヤに対する改善や改善支援、
一社発注品などのクリティカルな購買品のサプライヤに対する囲い込みや関係性の
構築などが上げられます。つまり簡単に言ってしまうとサプライヤマネジメントの
ツールとしてサプライヤ評価を行うのです。

具体的な事例を上げてみましょう。

例えばある品目群についてA社、B社、C社の三社との取引があるとしましょう。3社の
評価についてはA社が一番高く、B社、C社は低い。一方でA社が独立系で自社との
関係性は低い、B社は地場系であり自社に対する売上依存度も高く、こちらを向いて
仕事をしてくれる。C社はやはり独立系である。
この場合どのようなサプライヤ戦略やサプライヤマネジメントが考えられるかというと、
例えば評価も関係性も低いC社への発注を減少させA社、B社に振り分ける
(サプライヤの集約)ということが考えられます。一方でA社、B社に対しては取引継続
というサプライヤ戦略になります。
但しB社に対しては取引継続の条件として評価の改善をしてもらわなければなりま
せん。またA社に対しては自社に対する関係性を高めるために、囲い込みを行う、
具体的には定期的な情報共有や表彰、マネジメント同志での定例ミーティングを持つ、
とか、場合によっては出資なども考えられるでしょう。

このようにサプライヤ評価はあくまでもツールであり、それを元にサプライヤ戦略を
策定し、戦略に基づいて各施策に落とし込んでいくことがサプライヤマネジメントの
全体像なのです。

これは品目群毎に考えていく必要があります。よくサプライヤ格付けということで評価
が高いサプライヤから1軍、2軍、3軍、のように区分けをすることがありますが、この
ような総花的な格付け自体にはあまり意味がありません。サプライヤ戦略は品目群
毎に策定するのですから、評価や戦略、戦略に基づきどのような差別化や施策を
行うか、は品目群毎に変わってくるからです。

このようにサプライヤ評価を捉えるとどのような評価をすべきかは目的によって変わ
ってくることが理解できます。例えばある企業のサプライヤ評価軸の事例ですが、
品質(Q)に関する評価がありません。何故ならこの企業は品質が悪い企業とは
そもそも取引をしていないので、現在取引をしているサプライヤの実績評価に品質
評価を入れる必要がないからです。何を目的としてどのような企業を対象にした評価
であるかにより評価項目は変わってくるのです。

昨年の4月まで約3年程「改革推進者勉強会」という会を私が発起人になって進めて
きましたが、その会の1つのグループにサプライヤマネジメントグループがありました。
この勉強会で何社かのサプライヤマネジメントの事例を調べる機会がありました。

各企業ともとても興味深い事例です。ある1社は限定されたサプライヤのみの評価を
行っています。全体で300社以上の取引サプライヤがいるものの評価対象は30社
程度。つまり評価対象となっているサプライヤはバイヤー企業側が関係性を強めたい
サプライヤです。取引金額が大きい、とか1社しか対応できない技術を持っている、
などのサプライヤをあえて評価対象とすることでそれらのサプライヤと緊密な関係を
築こうとしている訳です。この企業のもう一つの興味深い点は購買部門はサプライヤ
の評価を改善することが仕事であり、KPIとして管理しているという点。通常、評価は
やるけど、評価の改善についてはサプライヤ任せ、という企業が多いわけですが、
この企業はサプライヤ評価の改善を購買部門が会社に対して責任を持っているの
です。

別のある企業はとてもシステマチックなサプライヤマネジメントの仕組みを持ってい
ました。サプライヤ評価のための専任チームを持っており、そこが四半期の評価や
評価項目のメンテナンスなどをしています。またサプライヤと自社のマネジメントの
クォタリミーティングを実施したり、トップダウンでサプライヤマネジメントをシステマ
チックに推進しているのです。この企業はサプライヤマネジメント=購買業務と捉え
ているのです。多くの企業では競合見積をとったり、コスト削減交渉をしたり、それが
調達購買業務と捉えていますが、この企業は選ばれたサプライヤと取引をしている
のだから競合見積をとる必要すらないという考え方なんでしょう。つまりサプライヤ
評価やサプライヤマネジメントが調達購買業務そのものであると捉えているのです。

これらの企業に共通しているのは、サプライヤ評価はあくまでもツールや手段であり、
目的ではないということです。

前回集中購買やサプライヤ集約によるボリュームメリットについて、
「購入するモノの種類や作り方によって、また個別企業の工場や設備の稼働
状況によってもボリュームメリットが出て生産コストが下がるモノとそうでないモノが
ある」ということを書きましたがサプライヤマネジメントも同じです。

購入する品目群やサプライヤマネジメントの目的によって評価軸は変わってきます。
私が以前在籍したGEという会社ではCTQ(Critical To Quality)という言葉がよく使われ
ていました。これはシックスシグマの用語ですが「経営成果に重大な影響を与える
要因」という意味です。私は目的のない総花的なサプライヤ評価ではなく、その品目
群でサプライヤや購入品に何を求めるのか、それがCTQであり、CTQを見極めて
それをサプライヤ評価項目にすべきと考えます。

多くの複雑で一般的な評価項目を設定するよりも少数でも重要なCTQとなり得る
評価項目を設定すれば良いのです。(これは教科書には全く載っていないことです)
全てのサプライヤを同じ軸で評価しようとするからおかしなことになるのです。

次回は、誤解その3.「複社発注」=「リスクマネジメント」の誤解について述べていく予定
です。



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2016年08月29日

調達購買改革を巡る誤解 その1

その1.「集中購買」=「サプライヤ集約」=「コスト削減」の誤解

最近調達購買関連でお客様や身の回りのバイヤーの方々と話をしている時に違和感
を感じることがあります。それは、言葉が一人歩きしているように感じるのです。
まるで新聞や雑誌、Web記事の見出しのよう。

例えば「『集中購買』推進で『コスト削減』」とか、「『サプライヤ集約』で半減し『コスト
削減』」とか、「『マルチソース』で『リスクマネジメント、BCPを推進』」などなど。

多くのケースでこれらのキーワードは目的(後者)と手段(前者)を示しています。しかし
この目的と手段ですが、よく考えてみると実は因果関係がないことも少なくありません。
もっといえば手段が目的化してしまい、目的が不明確なことも多いようです。

「どこそこの企業がこういうこと(例えばサプライヤ集約)をして大幅なコスト削減を実現
したようだから、うちでも検討してみなさい」という経営陣からの指示で調達購買部門が
動きだしました、とか。このような企業の多くは経営陣や調達購買本部長には調達購買
部門の経験がなかったりします。

今後何回かに渡ってこのような調達購買改革を巡る誤解についていくつかのテーマを
取り上げてご説明していきましょう。

まず一回目の今回は『1.「集中購買」=「サプライヤ集約」=「コスト削減」の誤解』について
取上げます。

2007年7月に「集中購買は何故進まないのか」というレポートを執筆しましたが、
http://www.agile-associates.com/2007/07/post_20.html
その中で集中購買の定義について私どもはこのように定義しました。

「集中購買とは?「購買機能のうち少なくとも契約業務がある部門に集約されている
状態であり、全社もしくはグループ企業を含む量的な集約を前提に、より有利な契約
を行い、またその契約条件を適用させることを目的にした活動」。

これをもう少し簡単に言ってしまうと、契約業務をある部門に集約させて量的な集約を
図りボリュームメリットを出しましょう、ということです。

集中購買が何故進まないのか、例えば本社調達本部が集中契約したにも関わらず
各事業部や工場ではその契約を無視し、既存の取引先に価格を下げさせて発注を
続けるなどが失敗事例の典型になりますし、それを防ぐためには、トップダウンでの
ルール徹底や事業部主導の緩やかな集中購買の仕組みがポイントとなりますよ、等
は上記のレポートで詳細を書かせていただいております。

一方で「サプライヤ集約」の定義は言葉通り、支払をしているサプライヤの口座を減らし
ましょう、またできればこの活動でボリュームメリットを引出そうということでしょう。

このように集中購買もサプライヤ集約もボリュームメリットを活かしてコスト削減を実現
しましょう、というのが目的になります。しかし、このボリュームメリットというのがクセモノ
なのです。ここでは、このボリュームメリットについてもうちょっと深く考えてみましょう。

ボリュームメリットとは要するに多く買うことでコスト削減を実現しましょう、ということです
が、例えば全く同じモノをたくさん購入(生産)すればサプライヤの生産コストは下がり
ます。しかし、これは金型などを仕様・図面に基づき製作するカスタマイズ品に関して
言えることです。金型などの準固定費は生産量が増えれば増える程1個当たりのコスト
は薄まります。また生産効率も習熟されるため、生産コストも下がるでしょう。一方で
汎用品はどうでしょうか。汎用品は生産規模によります。現状の生産規模が100あって
それがある一社のボリュームが増えることで110になればコストは下がるでしょう。しかし
100から101になったとしても殆どコストは下がりません。
違うモノでも作り方が同じようなカスタム品(例えばプラスチック射出成形品)などは生産
コストの大きい部分を設備加工費が占めるので、総生産量が増えれば設備の稼働率が
高まりその分コストは下がりやすくなります。

このように購入するモノの種類や作り方によって、また個別企業の工場や設備の稼働
状況によってもボリュームメリットが出て生産コストが下がるモノとそうでないモノがある
のです。

そうは言っても沢山買うと言えば安くしてくれるだろう、というご意見もあると思いますが、
それはそれで理由があります。この場合、サプライヤ集約などがいい例になりますが、
ある品目(群)の取引サプライヤを10社から5社にしますと1社当たりの売上は平均2倍
になります。これらのサプライヤがこのバイヤー企業に対する売上依存度が高ければ
高いほどサプライヤ企業の売上高の増加率は高くなります。売上が増加するということ
は固定費が増えなければ売上から変動費を指しひいたものが収益の増加です。
あくまでも固定費が増えなければですが、この場合、サプライヤの集約などによる売上
の増加でサプライヤの収益が向上します。この場合にはサプライヤの販売価格を値下
げしてくれという交渉が成りたちます。
しかし気をつけなければならないのは、このケースはあくまでもサプライヤの収益を
買い手企業に還元してください、ということであり、純粋に生産コストが下がっている訳
ではないということ。

そもそも自社が発注金額を増やしたところでサプライヤの売上増加に貢献できるか
どうかも個別企業によって異なりますし、売上が増えれば追加的な投資や人員などの
固定費の増加も予想されますので、イロイロなモノをまとめて買えばコストが下がるとは
言い難いでしょう。

そうすると同じモノを今まではバラでいろんなサプライヤから買っていました、それを
集めて同じモノを同じサプライヤから購入しましょう、というのがサプライヤのコスト削減
にもつながる手法となりますが、こういう機会は非常に限定的であることが理解できます。

このように考えると集中購買は初期のころは効果が出やすい活動と言えるでしょう。
例えば同じモノを買っているのにサプライヤが分散している場合にはメリットが出やすい。
またチェンジコスト(サプライヤ切り替えにかかるコスト)が低いモノの方がコスト削減効果
が出やすくなります。何故ならチェンジコストが低い場合には現状購入しているモノを含む
全ての契約に関して多事業所の契約を集中できるからです。
一方でサプライヤの切り替えによって金型の新規製作が必要になるなどチェンジコストが
高い品目は現状購入品についてはサプライヤの切り替えが難しくなり、新規案件から
サプライヤ間で競争させましょう、ということになります。ですから集中購買やサプライヤの
集約を行ってもコスト削減効果は出にくいです。

チェンジコストが低いモノも集中購買実施の初期は効果は出やすいですが、何度も
サプライヤの切替えを行うことは考え難いし、一度削減された価格から追加で何度も
コスト削減がでできるとは考えにくいでしょう。

このように集中購買を続けていても継続的にボリュームメリットが出続けることは考え難い
ということなのです。だからと言って集中購買をやめるかというと、それはまた、違った議論
になります。集中購買集中契約を行うことによる様々なメリットが他にもあるからです。

しかし集中購買を続けていればコスト削減が継続的にできるというのは幻想。何故なら、
サプライヤのコストが下がリ続けない限りコスト削減は有限だからです。

次にサプライヤ集約ですが、定義を読んでも「集中購買」=「サプライヤ集約」でないことは
明確です。サプライヤ集約は「集中購買」や「競争化」を図ることであくまでも結果的に
「サプライヤが集約されていた」ということになると考えるのがよいでしょう。

サプライヤ集約とコスト削減については、先ほどもふれましたが、サプライヤが集約される
ことで1社当たりの発注金額が大幅に増え、売上が増えれば、固定費が薄まり、あくまでも
収益還元という形でボリュームメリットを享受することは可能です。しかしこのような機会に
つながらないことも多いでしょう。もっと言えばサプライヤの集約自体が難しいです。
例えばチェンジコストが高い場合、新規案件から集約せざるを得ません。またサプライヤ
集約をしたくても地域性が強く結果的に集約できないこともあります。繰り返しになります
がサプライヤ集約は競争の結果にしかすぎません。競争した結果、強いサプライヤ2社に
集約されました、というのが定石なのです。

一方でサプライヤ集約の目的をモノのコスト(単価)削減ではなく業務コスト削減を目的と
しているケースもあります。所謂口座数を減らすことで管理コストを削減していきましょう、
ということです。管理コストの測定は非常に難しいという点はあるものの、これはこれで
ありでしょう。
しかし、業務コスト削減を目的としたサプライヤ集約であれば別のアプローチをとる必要
があります。例えばトップダウンでヘッド(発注金額の多い企業)を残しテール(発注金額
の少ない企業)部分を切り取る、とか、商社は商社でまとめる、とかメーカー直接では
なく商社経由の取引にする、とか、メーカーとの取引であれば代替品の有無から集約する
か否かの判断をする、などです。いずれにしてもこの場合はかなりの力技が必要になり
ますし、現場主導で動かなければ様々なリスクが残ってしまいます。

このように「集中購買」=「サプライヤ集約」=「コスト削減」と厳密な意味で繋がらないこと
は理解していただけたでしょう。集中購買を進めているのに何故サプライヤ集約が進んで
いないのか、サプライヤ集約を進めているのに中々すすまないのは何故なのか、集中購買
やサプライヤ集約を進めているにも関わらずコスト削減が進まないのは何故か、という
疑問に対してこのような課題設定自体に誤解が含まれていることが理解できます。

次回はその2.「サプライヤ評価」=「サプライヤマネジメントの誤解」について述べていく
予定です。



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2016年08月12日

鏡の向こう側の視点

私の社会人生活のスタートはある自動車会社の原価管理部というところでした。
原価管理部には大きく分けて原価企画チームと総合原価管理(予実管理)チームの
2つのチームがあり、私は原価企画チームに属していました。

原価企画チームは新製品の原価企画だけでなく様々な車の営業見積(お客様に提出
する見積書の作成)をやっているチームです。自動車会社では手間の問題もあり、全て
の車種について原価企画を推進しているわけではありません。しかし、当然ながら量産
後に立ち上がった派生車や様々な要因から出てくる仕様変更、設計変更による新規車種
の見積りなど日々新車の営業見積をする必要性があります。最終的には販売価格は
営業や企画部門が決定しますが、その元となる原価見積りを専門にやっているのが
原価企画チームの一つの役割になっているのです。

基本的に原価企画チームに配属された新人は、まずは派生車種や日々の営業見積業務
を担当しながら、原価や管理会計について学び、同時に新製品原価企画の担当をします。
一方で総合原価管理チームは主に工場原価の予実管理と日々の合理化推進を担当する
チームです。

ですから総合原価管理チームは主に工場や生産管理部門とのやり取りが多くなります。
一方で私が配属された原価企画チームは営業とその先にいる顧客の購買部門、それから
自社の購買部門とのやり取りが多いのです。(もちろん営業見積や原価企画をやっている
ので開発部門や工場とのやり取りもありますが。。)

ですから私の社会人初めての仕事は購買部門とのコンタクトがとても多かった。ここでは
色々なことを学びました。なかでも顧客の購買部門の方とのコンタクトは衝撃的なもの
だったと覚えています。いきなり電話がかかってきて見積の内容について確認させて
欲しいと、マシンガントークが始まるのが常日頃です。私も新人であり、ミスもしましたが
ミスがあると顧客の購買部門の方から、直接人格を否定される位のことを言われたました。

一方自社の購買部門もなかなか言うことを聞いてくれません。営業見積を行うためには
部品の見積りがないとできないのです。ですから購買部門に見積依頼をします。購買から
期限通りに見積りが出てくることは稀でした。また出てきた見積りもサプライヤから提出
されたそのもので何のチェックもしていない、というのが日常です。

そうすると自社の購買部門からもらった見積りの内容を顧客の購買部門の(怖いバイヤー)
から突っ込まれないように事前にその内容を確認しようとします。例えば、見積明細を元に
この工程はどういう工程ですか、とか、この工程は必要ですか、とか、図面を見ると材料費
が高いようですけど、あっていますか、とか、、このような具合です。

そのうちに自社の購買部門の一部のベテランバイヤーからめちゃくちゃ怒られました。
「お前は人に質問する仕方がなっていないと。。」

こんな経験が私の社会人人生の原体験なのです。そう、購買部門の方は怖い、というのが
私の原体験でした。

しかし次第に顧客の購買部門の方ともまともに会話できるようになりました。彼は彼で
上司に説明すると同じ様に突っ込まれていて、それに答えられるように私に質問して
いるんだ、ということが次第に分かってきたのです。また彼(元をたどると彼の上司)の
突っ込み所とそうでない所が分かるようになり、段々と仕事の進め方や優先順位の
付け方も分かってきました。

一方で自社の購買部門の方からも怒られ続けながらも協力してくれる人が増えてきました。
後で聞いた話ですがその頃の私は「何でなんですか」の野町、と呼ばれ購買部門の中でも
有名だったそうです。このように怒られ続けながら購買とは逆の立場で仕事をしてきたのが
この頃の私です。この頃学んだ管理会計の知識や予算管理の知識、原価企画の知識は
今でもたいへん役にたっています。

そして3年過ぎたある日、突然上司に異動を言われるのでした。購買部門へ異動と。

購買部門へ異動し発注担当にならないと分からないことも多くありました。しかし、逆の立場
(サプライヤとして、社内ユーザーとして)購買部門にコンタクトしなければ分からないことも
多くあったのです。
このように、「逆の立場になって考える、行動する、理解する」所謂「鏡の向こう側の視点」
はとても大切なことだ実感したのが私の社会人最初の経験でした。

最近は営業の方に対して購買部門の人の立場や考え方を逆の立場で話をする機会も増え
ました。また交渉力研修でも「相手の本来のニーズを知ること」が重要だと、皆さんに教え
ます。このような「鏡の向こう側の視点」をできる限り大切にすることを最近でも感じています
し、その原点が私の社会人での最初の仕事だと考えています。



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