2014年10月15日

間接材購買は何故上手くいかないのか。- その3

今回は「間接材購買」の第三回目(最終回)となります。

前二回では「間接材購買」は進歩がない、その内容と理由について述べてきました。
今回はそれをうけてそれではどうすればよいか、ということを述べていきます。

今回の内容は単に「間接材購買」だけでなく直接材購買も含む、企業の最適な支出管理
につながる話なので、多くの直接材購買担当者にも是非とも読んでいただければ幸いです。

「間接材購買」の活動は多くの企業で「コスト削減」中心であり、購買システムの導入
においても活用があまりできていない、という指摘をしました。それに対し我々は何を
目指していけばよいのでしょうか。

それは「支出の可視化」であり、「管理できている支出を増やすこと」です。

日本企業の今の状況を申し上げますと、コスト削減し易い品目は何度もコスト削減の対象
として上げられ、チームメンバーが一新される度にコスト削減活動を行っています。
しかし、その傍らでは訳の分からない支出がダダ漏れになっている、こういう状況なのです。
これって怖くないですか。

例えば自宅の家計について、奥さんがとてもしっかりしている方で毎日の買いモノについて
も色々工夫しながら値引きしてもらい購入している、でもその傍ら子供が無駄使いをして
いて、あげくの果てに借金までしている、こういう状況に近いのです。

また、同じ品目のコスト削減はそう何回も効果が出る訳がありません。もしコスト削減を
継続的に続けるのであれば、難易度が高い支出まで調達購買部門が管理できている
品目を拡大していくことが重要です。
例えば営業系の広告宣伝費用や研究所の研究費用等はある種の聖域として捉えられて
いる企業があります。このような費用は一般的にコスト削減の難易度が高いと言われます。
その要因は社内の力関係です。
ですから管理品目を拡大していくことは従来の社内の力関係をぶっ壊すことが前提となり
ます。しかし多くの企業ではこのハードルが高く、トライをする前に諦めるてしまっています。

このメルマガでも数回触れましたが、欧米では「Spend Under Management(管理可能支出)」
の拡大が企業の調達購買部門の大きな評価指標になっています。具体的な定義は企業毎に
異なりますが、一般的には「調達部門がソーシング業務を行った支出」と「調達部門が作成
したガイドライン、ルールに基づき適正なソーシング業務を他部門が行った支出」の合計が
その定義となります。
そして全支出に占める管理可能支出の比率の平均が60.6%であり、85%以上の企業が
目指すべきところである、と分析しています。

この比率を100%にすることは非常に難しいことです。またガイドラインやルールに基づ
いたソーシング業務をしていたとしても適正かどうかは分かりません。価格の妥当性なども、
例えば市場価格に比して価格の妥当性があるかどうかチェックができて初めて適正な
ソーシング業務と言えますが、そこまで徹底できている企業は殆どありません。
しかし、少なくとも管理可能支出の比率を高めていくことが企業としての主要な目的の一つ
であることは間違いないでしょう。

10年前位の購買システムが世の中にでてきた当時には、購買システムを導入すれば
発注段階で調達購買部門が必ず承認をするので、すくなくとも発注の段階で100%支出を
把握できる、と考えられていました。
しかし、単にシステムを導入しただけでは支出を100%把握できません。何故なら発注行為
を伴わない支出(例えば毎月事前に行った契約に基づき使用料に応じた請求が行われる
ような電力料、通信費など)もありますし、ルールを無視してシステムを通さずに(もしくは
調達購買部門を通さずに)支出していることはごくごく一般的に発生しているからです。
そもそも口頭で発注し請求書払いを許しているような企業では発注プロセスの定義すら
できません。また個人で立替えている経費精算などもそうです。出張に行くのに領収書は
ともかく自社のシステムから発注書を発行してJRに発注をしているなんてことは通常の
商習慣上あり得ません。
つまり購買システムを導入しシステム経由でサプライヤに発注をするようにしてもシステム
で発注を行わない支出は普通に発生するのです。

システム経由で100%支出を把握することは難しいですが「支出の可視化」や「管理可能支出」
で特に問題なのは、ルールでは発注をしなければならないのにそれを無視した発注を
行っている場合や、複数社コンペが義務付けられているにも関わらず相応の理由なしで
コンペを行っていないなどのルールを無視した支出です。
このような確信犯的な支出にこそ企業にとっての無駄が含まれています。

それではこのような無駄な支出を抑制するためにはどうすればよいでしょうか。

支出の可視化をしていく上で考えられる方法は以下の4つの段階(方法)が考えられます。
1.見積りの段階
2.予算承認の段階
3.契約・発注の段階
4.支払の段階

しっかり支出管理や支出の見える化をしていこうと考えている企業はこれらの何れの段階
かで支出を可視化することを進めています。

1.見積の段階とは全ての購買案件について見積取得及び最終価格、サプライヤ選定を
調達購買部門が行うようなプロセスをルール化していることです。直接材と同じプロセスを
間接材にも適用するというと分かりやすいでしょう。しかし、このやり方では実際の
契約・発注はユーザーが行う訳ですから最終的な契約・発注が調達購買部門の意思決定
通り行われないリスクは存在します。
しかし、お金を使うときは調達・購買が必ずサプライヤ選定するというシンプルなプロセスを
適用することで管理できる、というメリットもあります。

2.予算承認の段階での管理というのは、例えば稟議申請の際に調達購買部門の承認を
得た上で支出を行うというやり方です。この場合は予算執行承認はあくまでも稟議規定等
で縛られますし、サプライヤ選定自体は予算執行側が何らかのガイドラインに基づいて
実施するというプロセスになりますので「1.見積の段階での管理」に比べ事後承認的な
プロセスになってしまいます。

3.契約・発注の段階での可視化ですが、ある企業では調達購買に係る契約書の締結は
基本的に調達購買部門で行うというルールを作り、契約の段階で支出を管理する方法を
とっています。しかし、これも調達購買部門の負荷が高くなる点や「2.予算承認の段階での
管理」同様に事後承認的になることは否めません。また金額や案件によっては契約を
行わない支出もあるので、どうしても管理できていない支出は発生してしまいます。
そうすると発注の段階で管理するのがよい訳ですが、このルールでも発注行為を伴わない
支出は出てきますし、そもそも全ての発注を調達購買部門を通して行うことや購買システム
を介して実施することには、業務負荷がかかるという問題を避けることはできません。

4.支払の段階での管理ですが、これをシステム的に行おうとすると会計システムと購買
システムを連携させておく必要がありますので多額の投資が必要となります。一方で
外資系企業などがよくやっている支払依頼に発注書を必ず添付させておくことという
ような「No PO, NO PAY」ルールなどを適用させることは比較的容易です。この場合
には支払部門との協調が必要ですし、管理できたとしても事後確認でしかないことは
理解できるでしょう。

このように支出の可視化や管理可能にする方法論はいくつか考えられますが、いずれ
もユーザー、支払部門および仕様設定部門との協調が必要になります。特にユーザー
部門に対しては、従来のやり方にはなかった手間を強いることになります。このような
手間をかけてでも全社の支出全体の可視化を行っていくんだ、というマネジメントの
意思がここには必要になってきます。

ここまで書いてきて既に読者の皆さんは理解されたことでしょう。
間接材の支出可視化や管理には「購買システム」や「品目別のコスト削減活動」だけ
では達成できないのです。それ以外にも間接材購買や支出に係るルールやガイドライン
の作成と社内での徹底が必要になってきます。
ですから一過性のプロジェクトで推進するのは無理です。
もっと腰を据えた改革を調達購買部門だけでなく、ユーザー部門や経理・財務部門など
にも手間をかけてもらって実施させていく「覚悟」が必要となります。

それではそのためには何が必要なのでしょうか。
まずは目的の再確認です。
間接材購買を何を目的に進めるのか、単なる一過性のコスト削減なのか。
購買システムの導入は手段であり目的ではありません。
経営者にとって支出の可視化、管理の範囲や精度を上げ「継続的に適正な買いモノが
できる企業体質や仕組みを作っていく」
これが本当に重要なことであり本来の目的ではないでしょうか。

言うまでもなくこの目的は間接材、直接材関係なく共通する目的です。
しかし、この目的を100%達成することは容易ではありません。
当然のことですが、全ての品目、全ての金額、できれば事後ではなく事前に関与したい、
これらは当たり前の話です。しかし、まずは事後でデータだけでも収集できればよい、
とか、金額基準をもうけて幾ら以上の案件から把握していきましょう、でも構わないの
です。重要なのは、目的(100%)に向けて一歩ずつでも良いのでそこに向って前進して
いることです。

多くの企業は誤った目的の元にあまりにも近視眼的な活動を何度も繰り返しているだけ
ではないでしょうか。これがこの十数年間の間接材購買の過ちと私は確信しております。



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2014年10月08日

間接材購買は何故上手くいかないのか。-その2

先週に引き続き「間接材購買」についてです。

今回の三週にわたる「間接材購買」については私の現場体験を踏まえて本音を書いて
います。これは多くの企業で間接材購買に従事している人たちが報われておらず、
そういう方々やマネジメントに対して気づきや動機づけの一途になればと考えている
からです。
ご批判やご意見もあるでしょうがそういうことも含め将来に繫げていくために書いている
ことをご理解いただければと存知ます。またもしご批判やご意見がありましたら是非とも
いただければ幸いです。

前回書かせていただいた通り、同じ企業で10年前と現在でも同じこと(やりやすい品目の
コスト削減活動)をやっているだけで、多少対象品目の入れ替わりはあるものの、目的や
活動は殆ど変わっていないことを指摘しました。
その一つの大きな理由として人の問題を上げました。人の問題とは異動によって何年か
に一回人が入れ替わりスキルの継承や仕組みの構築ができている企業は少ないという
こと、それから間接材プロフェッショナルを単なる便利なコスト削減要員としてしか活用
できていない、ことを上げました。

また前回外部企業の活用によるコスト削減の実行、という点もスキルが継承されない理由
の一つだと申し上げましたが、一方でサプライヤ側はこのような活動をどのように捉えて
いるのでしょう。
私はVOS(ボイスオブサプライヤ)を推奨しサプライヤの声を聞きなさい、と常に申し上げて
おります。何故なら今後益々間接材であってもサプライヤやパートナーの力を活用し
なければならないからです。しかしサプライヤのパフォーマンス評価も含む包括的な
サプライヤマネジメントを間接材領域で実行している企業は数えるほどしかありません。
外部企業にコスト削減実行を委託している企業は本来であれば最も大切なサプライヤとの
コンタクトポイントを他社に委託している訳ですから、サプライヤマネジメントなどできている
筈はないのです。
またどちらかというと社内でも力が強くない間接材購買チームですから、社内的な抵抗が
あまり多くない「やり易い」品目が繰り返しコスト削減のターゲットになるので、その対象
品目のサプライヤにとっては至って面倒な状況であることは容易に想像できます。
実際にそのような対象品目になりやすい競争環境の激しいマーケットのサプライヤから
は悲鳴に近いような声を良く聞きます。彼らの言いたいことはこういうことです。

「競争が激しいのは止むを得ないが、業者ではなくパートナー、少なくともサプライヤとして
みて欲しい」
「価格だけでなくその他のことも評価して欲しい」
当たり前と言えば当たり前。
あるサプライヤから本音ベースでこのような話を聞いたことがあります。

「あの会社は我々をパートナーなんて考えていない、自分の会社だけよければそれでよい、
彼らにとって我々は業者の一つにしかすぎないから。そういう会社とは本音では付合いたく
ない。」ショッキングなことですが、事実です。

調達・購買の仕事とは外部資源の有効活用です。自社にないものを外部の最適なリソース
で埋めていくことが基本的な役割。こういう状態でそれができていると言えるでしょうか。
サプライヤにとって、もっと困るのは、コスト削減活動の波に襲われ大がかりなコンペを実施
し、競争の結果利益をはき出しました。それで落ち着くかなと思ったらいきなり担当が変わり
ます。変わった担当とのリレーションをまた1から作っていく必要があるだけでなく、その新しい
担当は過去のコンペのことなど知らずにまた同じようなコンペがスタートする。
このような状況でついていけるサプライヤはいるでしょうか。サプライヤにとっては迷惑な話
でしかありません。

次に間接材購買システムについて述べていきます。
間接材の特徴の1つに関連する人(会社)の多さを上げました。関連する人や会社が多いこと
はそれだけ情報伝達や情報共有の必要性がある訳ですから、インターネット技術の活用等
システム化によるメリットは大きいです。しかし一方で間接材購買システムを上手く活用
できている企業はほんの一握りです。
もし、御社が何らかの間接材購買システムを導入し使っているとしたらこういう質問に答えて
ください。
「それは全支出のどの程度をカバーしていますか?」
「そのカバー率は過去に比べて上がっていますか?」
この2つの質問に対して即答できる企業も多くないでしょうし、即答できたとしても当初想定
していたカバー率には到底いたっていないというのが実態でしょう。
当初、間接材購買システムは間接材購買の集中購買化を進めていくのに必須だと考えら
れていました。購買システムを導入することで、集中購買が進みコスト削減の実行に
つながるので、システム導入でコスト削減が間接的に実現できるという誤った理解が
そこにはあったのです。
そのため、2000年頃から大手企業を中心に間接材購買システム導入に数億円も投資
するといった状況が生まれました。しかし導入企業側もシステム導入をしても自動的に
支出カバー率が100%になる訳ではないことにようやっと気が付き始めました。

そうなると数億円もの投資をすること自体がナンセンスになります。リーマンショックの
影響やクラウド環境の整備もあり、当初のインストールベースの購買システムは売れなく
なりました。
売れなくなるとシステム開発会社は(だいたいのケースで)買収という形でお亡くなりに
なります。2000年当初に片手では足りないほどの数もあった間接材購買システムの
開発会社ですが、今はインストールベースでの商売をやっているシステム開発会社は
数社しか思い当たりません。
一方で、SaaS形式の安価なサービスが主力になってきます。

システムというものはとてもやっかいなものです。一度お客さんがつくとお客さんが
使い続ける限り新たな投資を行い、バージョンアップをしなければなりません。しかし、
会社がなくなる場合にはその限りではありません。
システム開発会社が統廃合されると一度大金をかけて導入した購買システムを
リプレイスしなければならなくなります。「そもそもあまり使われていないのだから、
リプレイスもしないで捨ててしまう」という考え方もありますが、例え部分的にでも
間接材購買システムを導入し運用を始めた企業が、またメールとワークフローでの
半マニュアル的な運用に戻しましょうというケースを私は殆ど知りません。

このように使いこなせないシステムとそのシステムのサポートも終わり、止むを得ず、
また再投資を行う、しかし未だにカバー率は伸びておらず、使いこなせていない状況は
変わらないのです。
ここにも間接材購買の進歩がない典型的な状況が見られます。

先進的な企業の中には会計システムと購買システムを連携させてどのサプライヤーに
毎年いくら支出しているかを全バイヤーが自分のパソコンから見られるようにしています。
またある企業では購買システムをカスタマイズし、直接材同様に全ての購買をマスター
登録することでほぼ100%のシステムカバー率を達成しています。
しかし、このような企業の事例は非常に稀です。

これまでの二回で人の問題、サプライヤマネジメントの問題、購買システムの問題を
取り上げてきましたが、いかに10年前と同じ繰り返しをしていて進歩がないことが
よく理解できたと考えます。

じゃあどうすればいいのか、この点は次回のメルマガで示せればと考えております。
次回は私が考える間接材購買の今後の方向性について述べていきます。



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2014年10月01日

間接材購買は何故上手くいかないのか。- その1

今回から3週に渡って「間接材購買」について書きます。

「間接材」購買とは、製品に直課されない支出であり企業によっては「経費購買」とか
「非生産材」とか「インダイレクト」購買とか表現されることもある支出です。
「間接材」購買は2000年頃から日本企業でも着目され、従来であれば分散購買だった
ものを集中購買し、専門の調達購買部門を設置することでコスト削減を図る活動が
進められてきました。

今回何故このテーマを取り上げたかといいますと、私も間接材購買に関して自身も
外資系企業のバイヤーとして携わってきましたし、その後コンサルタントとしても多くの
プロジェクトを支援してきましたが、この十数年の総括として、「実は昔も今もやって
いることは全く変わっていないのでは。」という印象を感じざるを得なかったからです。

一言で言うと進歩していないのです。
どのように進歩していないのでしょうか、また進歩していない理由は何なんでしょうか。
この話に入る前にまず、ここでは間接材購買についてもう一度ふりかえってみます。
2003年9月に発表されている米国調達関連のシンクタンクであるCaps Researchの資料
「Critical Issues Report」内でIndirect Spendというテーマの中でこのような記述があり
ます。

「Indirect Spendとは、企業活動を続ける限り発生し続ける間接材の調達コスト。企業
支出全体に占める間接材支出の割合は、製造業で36%、サービス業で60%にも及ぶ
という調査結果も出ています。しかも、コスト削減が着実に進展している直接材に対し、
間接材の調達コストについては、多くの企業が有効な解決策を見出せないまま、
というのが現状です。この間接調達コストの見直しこそ、総コスト削減の大きなカギと
なっています。」
このレポートにもあるように支出全体に占める間接材購買の比率は低くありません。
また品目も多岐に渡ります。大きく分けると物品とサービスに分けられます。物品は
事務用品からパソコン、サーバーなどのITハードウエア、工具や様々な消耗品、
理化学用品、試薬から燃料、設備に至るまで様々です。サービスは物品以上に多様
な品目があります。建設工事や運送、ファシリティ関連費用、不動産賃貸、印刷費用、
通信費、広告宣伝費、システム開発、コンサルティング費用、調査費用などの
業務委託費用、人材派遣費用、通信費、リース費用などです。

間接材購買の特徴は大きく2つ上げられます。1点目は支出の把握がし難いことです。
間接材は管理会計上では固定費に含まれますが、まれに生産高や売上高などに
応じて発生する変動費用的な支出もあります。また財務諸表上は製造原価、販売
管理費、償却費の3つの部分に含まれており、全体像の把握が難しいという特徴が
あります。
また直接材と異なり、品番という概念がありません。ですから必要量の管理もできま
せんし単価とか原単位という概念もありません。つまり精度の高い管理がし難いの
です。
2点目の特徴は関連する人(会社)の多さです。先ほども触れたように間接材は非常に
多岐に渡るため、支出金額や買いモノをする回数も品目毎に大きく異なります。
また多岐に渡る品目のため、多くのサプライヤとの取引が発生しています。また社内
で実際に支出を行う人間も多岐に渡るのが一般的です。品目によっては例えば
事務用品など社員全員が支出をする場合もあります。所謂社員全員がユーザーに
なり得るのです。

このような2つの特性を持つために、間接材購買は今まで企業が管理してきた直接材
購買とは異なったアプローチが必要になります。

やっと本題に入りますが、10年前と比べて間接材購買は進歩がない、と述べましたが
いったい、何が進歩していないのでしょう。
まず上げられるのは間接材購買の活動内容です。

先のCaps Research社のレポートでも取り上げられていますが、間接材購買の活動は、
まずはコスト削減活動を中心に進められます。コスト削減機会があるのですから、当然
と言えば当然です。その場合最初に実施するのが支出分析です。どのような品目の
支出が大きいのか、当然のことながら支出金額が大きくコスト削減の期待値が高い品目
から取組みます。また品目によってコスト削減がし易い品目とそうでない品目がある
でしょう。例えば、マーケットの状況で、そもそも競争相手がいない、とか集中契約が結べ
ないような品目はコスト削減が難しいことは誰もが理解できます。
このように期待効果と難易度のマトリクスでコスト削減を進めていくのが、ごくごく一般的
なコスト削減のアプローチになります。しかし、このようなアプローチでコスト削減を推進
すると多くの企業で優先順位が高い品目は自然と共通化してきます。
また、各社で共通してでてくる課題は社内の調整です。多くの企業で間接材購買チーム
はマネジメントの思いつきで2-3名のチームとして初期の立上げを行う場合が多く、
このようなチームが社内的に強い立場である訳がありません。
ですからコスト削減の機会として抽出されてもコスト削減の実行が必ずしも進められる
訳ではないのです。自然と各社ともやり易い共通した品目のコスト削減活動から推進し
ましょう、というのが通常の初期の取組みになります。
初期の取組みは長い企業でだいたい3年程度取組みます。しかし多くの企業では1-2年
でチーム自体が無くなったり、チームのメンバー全員が入れ替わったりします。3年程度
取り組み続けているチームの中にはコスト削減の品目範囲を広げることに成功したり、
恒久的な組織作りができる企業もありますが、多くの企業では取組みは続けている
ものの、なかなか成果が長続きしないという状況に陥ります。
一方で、多く見られるのは、チームがなくなったり、チーム全員が入れ替わった企業
です。
こういう企業では、再度景況悪化などの事業環境が悪化した際に同じ活動を始めます。
今までの支出分析や品目コスト削減のノウハウなどが全く活かされずに、新しいチーム
でまたコスト削減の目標を設定して、やり易い品目からコスト削減活動を再スタートする
のです。

企業によってはその度に外部のコンサルティング会社に多くの費用を払っています。
この費用こそ真先に削減すべき支出と言えるでしょう。

何故こんなことになってしまっているのでしょうか。
様々な問題があるとは思いますが、ここではまずは、人材の問題を取上げます。
間接材購買は多岐な品目があり、支出の把握がし難い費用であると述べました。
そうすると当然のことながら品目の専門家、調達・購買の専門家などがどの企業でも
不足しています。一方で品目毎にコスト削減のコツやノウハウはありますので、人材
の数および質が慢性的に不足している状況はどこの企業でも共通することです。
それに対して多くの企業ではマネジメントの一言で2-3名の人員をかき集めプロジェクト
をスタートします。このチームのメンバーとして集められた人材は自分達の与えられた
環境下で精一杯やっているのですから、この人たちを責めるつもりはありませんが、
彼らの仕事の環境を見ると、モチベーションがあがる訳がありません。今まで一線の
営業部隊や企画職の人間をいきなり連れてきてチームを作っても、まるで閑職に追い
やられたような状況になるのは当り前のことです。
チームメンバーは長くて2-3年でだいたいは異動します。そしてチーム全体が短くて2-3
年位で全員入れ替わります。要するに常に新しいチームになっているのと同じような
状況です。
また専門家が不足しているので、外部人材を活用する企業もよく見られます。弊社も
過去にそのようなプロジェクトを支援していたことがあるので大きな声では言えませんが、
最近は「コスト削減請負います」的な企業が正に雨後の筍のように多く存在しています。
こういう企業を使うことが悪いとは言いませんが、どうなんでしょう、短期的にはいい
ですが、中長期的には問題ありませんでしょうか。社外を活用しコスト削減のノウハウを
社内の人材に移転していく、ことが目的であればいいでしょう。
このような「コスト削減請負会社」は成果報酬制(コスト削減成果に対する報酬)の企業
が多いので、中長期的にどうしても報酬を得るためには無理なコスト削減活動が出始
めるのです。考えてみたら当たり前のことでしょう。そうして外部を活用した結果、3年後、
5年後には何も残っていませんでした。マネジメントから今年はきついから間接材コスト
削減しなさい、とまた何年に一度かの恒例行事のように指示されて、新しいチームが
できる。またノウハウもないので、また外部を使いましょう。。この繰り返しをしている
企業があまりにも多くないでしょうか。

私自身外資系企業で間接材購買を担当していましたが、この領域には私の周りにも
数人のプロフェッショナルがいます。しかし、彼らの殆どは4-5年に一回転職しています。
彼らはある特定の品目のコスト削減やもっと幅広い間接材購買に関するプロフェッショナル
です。しかし私が感じる限りこのようなプロフェッショナルの人数が増えているか、というと
そうでもありません。ここで何を述べたいかというと、こういうプロフェッショナルを上手く
活用するとともにプロフェッショナルを育てられる企業が極めて少ないということです。
腰を据えて間接材購買改革を進めている企業があまりにも少なすぎるのが実態ではない
でしょうか。多くの企業でこのような間接材購買プロフェッショナルを短期的なコスト削減
プロジェクトを担う一品目バイヤーとしか見ていない、このようなプロフェッショナルの無駄
使いが行われているのが実態と言えるでしょう。

今回は間接材購買改革の状況について進歩がなく、その状況を顕しているものが繰り返し
特定品目のコスト削減活動を数年に一回やっているだけであり、その理由の一つが人の
問題であることを述べてきました。
次回はサプライヤー側の状況、そして調達購買システムの限界について述べていきます。



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2014年09月17日

もしアンドロイドが車を作ったら?

前回は、日本の電子産業が衰退したのは世界的な水平分業モデルからの遅れが
その原因の一つであると、元日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの
西村吉雄氏がhttp://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20131120/317532/
で分析していることを取り上げました。

私はこの状況を「日本企業が個別企業の枠内で国内企業同士のシェアなどの
近視眼的な競争に夢中になっていて、海外メーカーは「あそこは品質が悪いから
問題外。」などと高をくくっているうちに新しいルールやビジネスの仕組みが作られ
てしまい、その新しいルールでやられてしまう、よくあるパターン」だと述べています。

同じ様な動きが自動車業界でも出てきているようです。

「もしアンドロイドが車を作ったら」のアンドロイドはGoogle社の開発しているOSの
”Android”ではありません。アンドロイド・インダストリーズという自動車生産会社の
ことです。アンドロイド・インダストリーズ社(以下アンドロイド)は自社ブランドを持たず
、GM、クライスラーなどの米自動車大手3社を顧客に持ち生産を委託されている
企業です。言い換えると自動車版EMSでしょう。
8月5日付けの日経新聞に同社の記事が掲載されています。それによるとアンドロイド
は車のなんでも工場であり、「どのメーカーのどの車、どの部分でも同じやり方で
作っているのだ」そうです。そのため生産ラインでは、ラインを流れる台車の台の
部分を工夫することで混流生産を可能にしている。また従業員も2時間半毎に担当を
変えることで、多能工スキルを身に付けさせているとのことです。

その生産性の高さから、米ビッグ3が生産の外部委託を増やしたこともあり、
アンドロイドはこの5年で工場数が12から20に拡大するほど、業績も好調に推移して
います。現在は米国内での生産が主流であるものの、日本向け自動車メーカーへの
売込みも積極的に推進しているようで、近い将来にアジア地域で工場を持つことに
なるとのことです。
アンドロイドは2013年で約10億ドルの売上をあげており受託生産会社としては米国
最大手になります。また現在は三井物産が筆頭株主になっているようです。

従来自動車産業は摺合せ型の典型例であり、標準化やモジュール化は(会社に
よって多少異なりますが)当初考えていたようには進んでいません。そのため、
多数の部品を設計段階から作り込み、自社工場でじっくり摺合せながら仕上げていく
工程が日本型「ものづくり」に適合していると考えられています。最近は複数の自動車
メーカーで部品の標準化や統合化が進み始めましたがそれも一部の品目だけです。
そういう意味では生産の外注化や水平分業などの動きは、現在は米国を中心とした
取組みであることは確かなこと。

しかし、2つの要素が生産の外注化・水平分業の進化につながると言えます。

一点目は電気自動車の普及です。
先日米国テスラ・モーターズが日本での高級電気自動車の納車を始めたという発表
がされています。電気自動車はエンジン付きの自動車やハイブリッド車に比べて
非常にシンプルな構造となっています。例えば先のテスラ・モーターズの高級
スポーツ電気自動車「モデルS」のモーター回りの部品点数は約100個であり、
エンジン部品の点数の1万〜3万点に対して比べものにならない位シンプルな
構造です。日経新聞によるとi-phoneの組立てを中国でやっている台湾の鴻海精密
工業がテスラの組立てをやるという噂も流れていたようです。
このように電気自動車の普及は自動車産業の参入障壁を一気に低くするものです。

もう一点はボディーメーカーの存在です。ボディーメーカーは一般的にはOEMメーカー
と呼ばれます。あまり知られていませんが、日本の自動車メーカーは数多くのOEM
メーカーに生産を委託しています。OEMメーカーは設計の(一部を)担当しているケース
とそうでないケースがあります。特にトヨタ系列のOEMメーカーはボディメーカーの数も
多く、各ボディメーカー間で生産性を高める競争に数十年も前から置かれています。
つまり設計と生産などの摺合せは生産会社が設計会社と別会社であろうと、比較的
スムーズに行えるような下地(仕組み)が既にできているのです。
1995年頃に私がある外資系コンサルティング会社にいた時に自動車業界向けの
レポートを発表しました。そこでの分析はバブル経済崩壊後の自動車メーカーの収益
と保有する工場の稼働率に強い相関が見られる、という内容でした。つまり自動車産業
はバブル崩壊後装置産業化が進展している。その中で工場稼働率を上げるための
混流生産や生産方式の採用が有効であり、また在庫を最適化するサプライチェーン
マネジメントが収益向上には求められるというものでした。
このような点から現在は系列のボディメーカーに生産委託していたものをより混流生産
などで優位な生産効率を持つ非系列会社に委託することは容易に考えられます。

このように自動車業界でも電子ハイテク業界と同様の水平分業、生産専門会社の発展
という動きが進展する可能性は低くないのです。逆にグローバルでのこのような流れを
見誤ると電子ハイテク産業同様に日本の自動車産業の競争力が低下し、産業全体が
衰退するリスクを含んでいることもあり得るわけです。
今後はこのような事業モデルとの競争を想定した上で事業モデルを再構築していく必要
があると言えます。
そう、アンドロイドが車を作り高生産性、低コストを実現している状況は既におこりつつ
あるのです。



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