2014年09月17日

もしアンドロイドが車を作ったら?

前回は、日本の電子産業が衰退したのは世界的な水平分業モデルからの遅れが
その原因の一つであると、元日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの
西村吉雄氏がhttp://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20131120/317532/
で分析していることを取り上げました。

私はこの状況を「日本企業が個別企業の枠内で国内企業同士のシェアなどの
近視眼的な競争に夢中になっていて、海外メーカーは「あそこは品質が悪いから
問題外。」などと高をくくっているうちに新しいルールやビジネスの仕組みが作られ
てしまい、その新しいルールでやられてしまう、よくあるパターン」だと述べています。

同じ様な動きが自動車業界でも出てきているようです。

「もしアンドロイドが車を作ったら」のアンドロイドはGoogle社の開発しているOSの
”Android”ではありません。アンドロイド・インダストリーズという自動車生産会社の
ことです。アンドロイド・インダストリーズ社(以下アンドロイド)は自社ブランドを持たず
、GM、クライスラーなどの米自動車大手3社を顧客に持ち生産を委託されている
企業です。言い換えると自動車版EMSでしょう。
8月5日付けの日経新聞に同社の記事が掲載されています。それによるとアンドロイド
は車のなんでも工場であり、「どのメーカーのどの車、どの部分でも同じやり方で
作っているのだ」そうです。そのため生産ラインでは、ラインを流れる台車の台の
部分を工夫することで混流生産を可能にしている。また従業員も2時間半毎に担当を
変えることで、多能工スキルを身に付けさせているとのことです。

その生産性の高さから、米ビッグ3が生産の外部委託を増やしたこともあり、
アンドロイドはこの5年で工場数が12から20に拡大するほど、業績も好調に推移して
います。現在は米国内での生産が主流であるものの、日本向け自動車メーカーへの
売込みも積極的に推進しているようで、近い将来にアジア地域で工場を持つことに
なるとのことです。
アンドロイドは2013年で約10億ドルの売上をあげており受託生産会社としては米国
最大手になります。また現在は三井物産が筆頭株主になっているようです。

従来自動車産業は摺合せ型の典型例であり、標準化やモジュール化は(会社に
よって多少異なりますが)当初考えていたようには進んでいません。そのため、
多数の部品を設計段階から作り込み、自社工場でじっくり摺合せながら仕上げていく
工程が日本型「ものづくり」に適合していると考えられています。最近は複数の自動車
メーカーで部品の標準化や統合化が進み始めましたがそれも一部の品目だけです。
そういう意味では生産の外注化や水平分業などの動きは、現在は米国を中心とした
取組みであることは確かなこと。

しかし、2つの要素が生産の外注化・水平分業の進化につながると言えます。

一点目は電気自動車の普及です。
先日米国テスラ・モーターズが日本での高級電気自動車の納車を始めたという発表
がされています。電気自動車はエンジン付きの自動車やハイブリッド車に比べて
非常にシンプルな構造となっています。例えば先のテスラ・モーターズの高級
スポーツ電気自動車「モデルS」のモーター回りの部品点数は約100個であり、
エンジン部品の点数の1万〜3万点に対して比べものにならない位シンプルな
構造です。日経新聞によるとi-phoneの組立てを中国でやっている台湾の鴻海精密
工業がテスラの組立てをやるという噂も流れていたようです。
このように電気自動車の普及は自動車産業の参入障壁を一気に低くするものです。

もう一点はボディーメーカーの存在です。ボディーメーカーは一般的にはOEMメーカー
と呼ばれます。あまり知られていませんが、日本の自動車メーカーは数多くのOEM
メーカーに生産を委託しています。OEMメーカーは設計の(一部を)担当しているケース
とそうでないケースがあります。特にトヨタ系列のOEMメーカーはボディメーカーの数も
多く、各ボディメーカー間で生産性を高める競争に数十年も前から置かれています。
つまり設計と生産などの摺合せは生産会社が設計会社と別会社であろうと、比較的
スムーズに行えるような下地(仕組み)が既にできているのです。
1995年頃に私がある外資系コンサルティング会社にいた時に自動車業界向けの
レポートを発表しました。そこでの分析はバブル経済崩壊後の自動車メーカーの収益
と保有する工場の稼働率に強い相関が見られる、という内容でした。つまり自動車産業
はバブル崩壊後装置産業化が進展している。その中で工場稼働率を上げるための
混流生産や生産方式の採用が有効であり、また在庫を最適化するサプライチェーン
マネジメントが収益向上には求められるというものでした。
このような点から現在は系列のボディメーカーに生産委託していたものをより混流生産
などで優位な生産効率を持つ非系列会社に委託することは容易に考えられます。

このように自動車業界でも電子ハイテク業界と同様の水平分業、生産専門会社の発展
という動きが進展する可能性は低くないのです。逆にグローバルでのこのような流れを
見誤ると電子ハイテク産業同様に日本の自動車産業の競争力が低下し、産業全体が
衰退するリスクを含んでいることもあり得るわけです。
今後はこのような事業モデルとの競争を想定した上で事業モデルを再構築していく必要
があると言えます。
そう、アンドロイドが車を作り高生産性、低コストを実現している状況は既におこりつつ
あるのです。



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2014年09月03日

もしマイクロソフトが車を作ったら


私が外資系コンサルに勤務していた時ですから、多分15-6年前のことでしょうか。
面白いジョークが同僚から流れてきました。
題して「もしマイクロソフトが車を作ったら。」
このころはウィンテルと表現され、マイクロソフトとインテルが非常に強い時代でした。
一説によるとマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツが「もしGMがコンピューター
業界のような絶え間ない技術開発競争にさらされていたら,私たちの車は1台25
ドルになっていて,燃費は1ガロン1000マイルになっていたでしょう。」と言ったこと
に対してGMが出したコメントとのことです。

たくさんの項目がありますが、面白いところだと、
「特に理由がなくても,2日に1回はクラッシュする。」
「高速道路を走行中,ときどき動かなくなることもあるが,これは当然のことであり,
淡々とこれをリスタート(再起動)し,運転を続けることになる。」
「エアバッグが動作するときは「本当に動作して良いですか?」という確認がある。」
「取り扱い説明書は1,300ページ以上、重さが3ポンド以上になる。」
等々。
この当時は「あるある」とバカウケしておりましたが、今考えてみると「こんなことも
あったな」と感じます。
例えば「アカバツ」。我々は2日に1回位この「アカバツ」に悩まされていましたが、今は
そんなことはありません。本当に昔のようにクラッシュしなくなりましたね。
そう考えてみるとデジタル系のデバイスの信頼性はこの10数年で格段に上がって
います。
このジョークが流れてきた当時は、「パソコンなんてそんなもの」という認識が強く、
それに対して同じ消費財組立製品である自動車は格段に信頼性が高いというのが
通念だったことも顕しているのです。一昔前と比べ、電子デジタル系産業の製品も
信頼性が格段に高くなってきたことは間違いありません。
i-phoneやi-padのようにワンプッシュでスイッチが入り、ツープッシュでメールが読め、
様々な情報が誰でも取れる、また様々なアプリが殆ど無料で入手できる。
これはデジタルデバイド(パソコンやインターネットなどの情報技術(IT)を使いこな
せる者と使いこなせない者の間に生じる機会の格差)を排除することにつながり
ました。
その前提となったのは、繰り返しになりますが、技術的な信頼性が高くなったという
のが最大の理由です。
このように電子産業がデジタル化し、技術としても産業としても成熟し、自動車の
信頼性と変わらなくなってきているのが、昨今の状況と言えます。

しかし一方で、日本の電子産業の衰退には歯止めがかかりません。従来は自動車
と並ぶ外貨の稼ぎ頭であった電子産業は2013年に貿易収支がとうとう赤字になり
ました。
また国内生産額は2000年の26兆円をピークとして2013年には約11兆円と半分以下
に落ち込んでいます。生産の海外移転という要因もありますが、その代表的な製品
であるテレビ、半導体については海外メーカーとの競争に負けていることは事実です。

手元に日経テクノロジーonlineの記事「電子立国は、なぜ凋落したか」という記事が
あります。この記事は元日経エレクトロニクス編集長で技術ジャーナリストの
西村吉雄氏が書かれたもので、日本の電子産業が何故衰退したのか、を論理的に
分析したものです。http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20131120/317532/

西村氏はこの中で日本の電子産業が衰退した大きな要因をいくつかあげています。
一つ目は2000年後半における日本のテレビ・メーカーの巨額な設備投資です。これ
はあくまでも国内における地デジ特需による国内需要の急伸を「地デジ移行後に
売れなくなったらどうするか」というこを考えずに大型投資を行ったため、供給過多な
状況になってしまい現在の収益悪化につながった、ということです。
最近家電量販店に行くと中国、台湾、韓国製のテレビが多く売られています。西村氏
はテレビは既に外国から買うものになった、言っています。
大きな要因の二つ目は世界的に進行した水平分業型モデルに乗り遅れたことを上げ
ています。世界の電子産業では1980年代後半から設計と製造の分業が色々な製品
分野で進みました。それに対して日本企業は一般的にこの分業を嫌い、「垂直統合」
と「自前主義」に固執したと西村氏は分析しています。結果的に進化した水平分業
モデルは特にEMS側(製造側)に多額の設備投資を可能とし、結果的には低コスト、
高生産性を実現することができました。つまり電子機器の製造は装置産業化したと
いうことです。

その典型的な業種が半導体です。1980年代後半には世界生産の半数のシェアを
占めていた日本メーカーの半導体生産は専業2社に集約され、その2社も苦戦を
強いられています。1980年代後半から半導体産業は水平分業が進みファブレスと
ファウンドリによる分業が広まりました。今や設計と製造を統合した事業形態である
米インテル、韓国サムスン電子ですらファウンドリ事業に積極的に取り組むことで
投資負担リスクを低減する方向にあるようです。
特に最近の半導体は製造技術が高度化しているため、製造装置は高額になり、以前
より一層装置産業化しつつあります。これに対応するためには、なるべく多数の会社
から製造を受注し稼働率を上げられるファウンドリ事業でなければ勝てなくなって
しまったのです。
一方で2000年代後半には日本企業の中にも一部のベンチャー企業でファブレスが
立上がったものの、日本の半導体メーカーはファウンドリになろうとはしなかったとの
ことです。その要因の一つとして上げられるのが日本的な「ものづくり礼賛」神話だと、
西村氏は指摘しています。

西村氏は「日本の半導体メーカーはファウンドリを見下ろす姿勢を続けるうちに、
ファウンドリに製造技術で追い越され、自らファウンドリになることも、ままならなくなって
しまった。」と述べています。

これらの分析が正しいかどうか、様々なご意見があることでしょう。しかし、この記事を
読んで私は日本企業のガラパゴス的な観点を感じざるをえません。
日本企業が個別企業の枠内で国内企業同士のシェアなどの近視眼的な競争に夢中に
なっていて、海外メーカーは「あそこは品質が悪いから問題外。」などと高をくくっている
うちに新しいルールやビジネスの仕組みが作られてしまい、その新しいルールでやられ
てしまう。よくあるパターンなのです。

そう、冒頭のマイクロソフトに関するジョークのように、ややもすればこのような電子
デジタル業界を見下していた相手が今はその問題を解決し、彼らが作ったルールの
元でやられてしまう。私は西村氏のこの執筆を読んで、このような思いを感じ、冒頭の
ジョークを思い出したのです。

そう、これはどこの業界でも起こり得ること。

次回は電子産業と並ぶもう一つの日本産業の柱である自動車産業の競争力の展望に
ついて述べます。



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2014年08月20日

販売先の多様化と調達ソースの多様化

前回も引用させていただきましたが、岩城真さんが自分のメルマガでこういうことを
おっしゃっていました。
「調達ソースの多様化はバイヤー企業にとってみると、コスト削減等に非常に効果的
であるが、一方でサプライヤにとって販売先を多様化するという取組みは昔から
言われているものの中々上手くいっていない」と。非常に興味深い御指摘です。
実際には企業毎に状況は異なるでしょうし、やはり昔から営業にとって顧客開拓が
最重要視されていることは間違いありません。

私は20年程前に大手企業の新規事業開発ということで事業企画をやっていたことが
あります。そういう仕事に従事していたこともあり、新事業や経営に関する基礎を学ぶ
中で必ずでてくるのがアンゾフマトリクスでしょう。
ご存知な方も多いでしょうが、アンゾフはアメリカの経営学者で特に経営戦略に関して
の著書や研究で知られています。アンゾフマトリクスとは「製品開発や市場開拓、
多角化といったさまざまな成長戦略を企業が考えるとき、リスク要因を理解するための
ツールとして人気を維持している。」ものです。
縦軸に既存製品/新規製品、横軸に既存市場/新規市場をとり、この2×2=4つの
戦略代替案を示しています。つまり「既存製品で既存市場のシェア拡大をする」
「既存製品で新規市場を開拓する」「新規製品で既存市場に深耕する」「新規製品で
新規市場を開拓する」という4つの戦略になるのです。

日本企業における新規事業の場合、成功するパターンはこの4つの戦略の中でも
既存市場に対して新製品や新技術を投入するというパターンが王道と言われて
います。それは予想以上に新規市場の開拓が難しいからです。
実際に新規事業の企画や立上げを当時担当していた私も、特に販売チャネルや
新規顧客開拓が相当難しいことは身を持って感じていました。
一方で多くの新規事業の成功事例を紐解くとまずは、技術革新のシーズ(種)を
持っていることがKFSになっていることは間違いありません。圧倒的な技術革新が
ないのであれば新規市場に既存製品や既存技術を販売するのではなく、既存の
顧客(既存市場)に対して関連するサービスや製品を拡販するのが無理のない
事業展開と言えるでしょう。
最近はインターネット等の技術革新やチャネルの革新も始まっており、新規市場
開拓のハードルが下がっているかもしれませんが、それでも既存市場からの事業
展開は一種のセオリーと言えます。

そういう点からもサプライヤが販売先を多様化する取組みは中々上手くいかない、
というのは頷けます。私が自動車メーカーの購買に勤務していた当時、自分が
担当していたある樹脂成形メーカーが電気業界の顧客開拓に成功しました。
樹脂成型は樹脂の材質や大きさなどの違いはあれ、基本的には射出成型機で
成形するモノで技術はほぼ共通です。またそのサプライヤは自動車部品の中でも
どちらかというと小物の樹脂成型が得意であり、成形した部品の組立工程を非常に
得意としているメーカーでした。
しかし暫くするうちにそのサプライヤの営業部長さんからこういう話を聞いたのです。
電気メーカーから新規で受注はしたものの撤退する方向であると。理由は様々です。
例えばモデルライフの短さや発注情報の精度の悪さ、開発サイクルの短さ、など
でしたが、単価的に儲からないというような話は一切ありませんでした。
以前日本の貿易黒字が解消しないのは、日本市場に非関税障壁が存在するからだ、
という指摘を米国から日本が受けていた時代がありましたが、これらの理由はまさに
非関税障壁そのもの。

日本企業にとって既存製品(技術)を新市場(新規顧客)に拡大していくということは、
これらの非関税障壁を乗り越えなければならないのです。もし時代がそれほど変わ
っていなければ、日本企業はまだ業界や個別企業でしか通用しないプロトコルや
仕組みが多く残っており、その障壁を乗り越えるのが売る側にも買う側にも課題と
して残っているということでしょう。

一方で調達ソースの多様化という点ではどうでしょうか。バイヤーが進んで新しい
サプライヤを開拓することは一昔よりは進んできたかもしれません。しかし一方で、
できるだけ既存のサプライヤに受注させたい、新規は見積だけ入手して価格は
引き下げたいというのが実態ではないでしょうか。また国内のサプライヤではなく
一気に海外サプライヤへ切り替えをする。そのためにはバイヤーをサポートする
ための新規サプライヤや新技術の開拓部隊を持ちましょう、という企業が増えて
いるようです。

いずれにしてもプロトコルや仕組みの違いやそれが参入の障壁になっているという
話は今でもよく聞きますしこれらの障壁が公平・公正な競争機会を生み出すことの
妨げになっているのであれば、バイヤーも進んでそれを改善していく必要がある
のではないでしょうか。



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2014年08月06日

購買手法の普遍的な考え方と交渉力

私の購買界の友人である岩城氏の「中国調達とものづくりの現場から」というメルマガ
http://archive.mag2.com/0000241825/index.html
はとても面白く深く毎回楽しませてもらっています。

中でも先週号のメルマガは非常に興味深く読ませていただきました。

岩城さんの会社は受注生産型の製造業で所謂少量で単発の部品購買をしています。
一般的に調達・購買の世界ではセミナーや先進事例として自動車や電機、その他の
量産型モデルを中心とした話が殆どです。また、基本となるのは量をまとめてボリューム
メリットを活かすということ。

岩城さんがメルマガで指摘されたのは、このような手法は量産型の製造業では通用する
が、自分達のような少量で単発の生産を行っているサプライチェーンモデルでは限界が
あるとのことでした。
また、それではどのようなやり方がよいかというと、サプライヤの生産余力に小口の
スポット案件をあてはめることでサプライヤにとって美味しい商売にすることだ、と
おっしゃっています。
つまり、少量単発の調達・購買で安く買う購買手法はサプライヤを多様化し、相手にとって
自分たちの案件を美味しい商売にさせることだ、ということになります。

目からウロコです。
このような手法を取るとサプライヤは既に固定費を既存の(大口の)取引でカバーしている
ので、上手くいくと限界利益(売上高から変動費を引いたもの)スレスレの安いコストで購入
する事ができます。しかしその為には多くのサプライヤとの関係があって彼らの生産余力
の状況を理解していないと上手く当てはめることができません。
またそのためには「闇雲に多ければ良いという訳では」なく、「ともかく多様でなくては
ならない。」と書かれています。

調達・購買手法の教科書的には、サプライヤを集約し、1社あたりの発注量を増やし、
ボリュームメリットを活かしてコスト削減を図りましょう、ですから真逆になことがわかります。

以前私が外資系企業の調達部門にいた時にある国の調達部門の責任者から、こういう
話をされたことがあります。
「我々が目指しているのはコバンザメ購買だ」と。
これはこの責任者が所属する企業は自国ではあまり大きな企業ではなく、サプライヤとの
交渉力は決して強くありません。ただし全世界的に見ると巨大な企業であり、本社サイドで
有利な条件で契約しているケースが少なくないのです。この有利な条件を如何に自社の
契約に活用するか、これによってコスト削減につなげていく、というのです。
大きな企業全体やコーポレート機能を上手く活用していく、「まるでコバンザメのような
購買手法だ」と、言っていたのが印象的でした。
ここで取り上げたコバンザメ購買も調達・購買手法の教科書には書かれていないことです。

このように少量購買ならではの購買手法は、やはりあります。逆に言うと全ての企業や
品目に普遍的に通用できる手法は多くないのかもしれません。

しかし、これらの手法に共通している普遍的な考え方はあります。それはサプライヤの
メリットです。『サプライヤが何を求めているか、を的確に捉え、もしくはこちらが与えられる
ことを求めているサプライヤを探し出すことでサプライヤの本質的な要求とこちらの要求を
適合させること』、これが普遍的な考え方。

例えばサプライヤの生産余力にスポット発注を当てはめることは、サプライヤの生産
稼働率を上げて、より収益にメリットを与えます。
コバンザメ購買の例では、サプライヤ(特に営業パーソン)にとってみると全世界での
契約だから何の努力もせずに拡販ができ、またそれもグローバルカンパニーとの取引
実績という企業イメージの向上にもつながるのです。
他の事例もつきつめて考えると何らかのサプライヤの本質的な要求につながることだから
何らかのメリットを受けることができると言えます。

ここで注意しなければならないのは、サプライヤが何を求めているか、のサプライヤにも
様々なレイヤーがあること。
営業パーソンの立場としての本質的な要求、会社としての短期的な要求、もっと中長期
の企業の存続に係わる要求、また先ほどのコバンザメ購買の事例ではグローバル企業
の中のローカル企業としての要求となります。このように様々な要求レベルがあることを
理解し、また自分達の本質的な要求も理解することで、その本質的な要求を埋めること
ができればお互いにとってウインの状況を作ることができるのです。

ここまで書いてきて気が付いたのは、これは「交渉」そのものだということ
相手の本質的なニーズを理解しそれをうめる手伝いをする。自分の本質的なニーズも
理解し、それを達成するための手段を講じる。これらのバランスをとって調整を進める
ことでお互いにとって一番よい解決策を導き出す。つまり「必要な準備を行い、交渉
(調整)プロセスを管理し、創造的な結果を導きだす」交渉力そのものです。

最近は調達・購買部門にとって、社内の調整もサプライヤとの交渉同様に重要な役割
となっています。つまり社内外との利害調整とであり、これは対サプライヤだけのこと
ではありません。このように益々調達・購買部門に交渉(調整)能力が求められる時代
です。そのための基本が相手及び自分の本来の要求を理解することでしょう。



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