2014年12月10日

自動化の合理性

先日興味深い記事を読みました。http://diamond.jp/articles/print/19218
「改札を機械化する日本、改札をなくす韓国−情報化の本質とは何か」という記事です。

韓国の新幹線にあたるKTX(韓国高速鉄道)には改札がないとのこと。改札がなくても
車掌は手元のハンディターミナルを見ればどの席が空席かわかり、もし予約やチケット
なしで乗車したとしても電車の中でチェックできるから、というのがその理由です。また
もし不正乗車があったとしても駅と駅の区間が長いので取り締まることはできるし、
その為に高額な改札装置を設置するよりもコスト的にもメリットがある、ということです。

確かに日本でもスカイライナーや新幹線などの一部の電車予約で、予約方法などの
制約はあるものの車内改札をしていない電車もあります。しかしそもそも改札をなくして
しまうという発想は日本ではなかなか出てこないでしょう。

昭和の世代から考えてみると日本の社会や生活の現場では人を減らすことが、その
大きな変化の一つということに気が付かせられます。以前は駅の改札には必ず多くの
駅員さんがいました。ファミリーレストランは、今も人は居ますが昔に比べるとお店の
面積当たりの店員さんの人数はかなり少なくなっているでしょう。ゴルフをやるにしても
以前はキャディさんが必ず付きましたが今ではゴルフカートが自動走行し、またGPS
ナビがカートにつけてあるのでキャディさんが居ないゴルフ場も増えています。
企業に訪問して気が付くのは受付の人がおらず端末が置いてあるだけという企業が
増えていることです。工場や倉庫などでも自動化・機械化は間違いなく進展しています。

このように日本では経済発展とともに人件費が高騰し「自動化、機械化することが
合理的である」という真理が大きな疑問なく受け入れられてきたと言えるでしょう。
これはIT(情報技術)についても同様です。ERPを導入するには莫大な投資がかかる
にも関わらず業務の標準化、自動化、を進めることで人件費を削減できれば莫大な
投資を賄うことができる、というのが疑いのない真理でした。

そのような真理に対して冒頭に取り上げたKTXの事例はとても興味深いものです。
自動改札を導入することで単に改札に必要な人員を削減するだけでなく、情報技術を
活用することでその改札すら不要にするという発想は「自動化、機械化することが
合理的である」という真理からは出てこないからです。ここでは改札を設置しない
リスクやロス、手間と(自動)改札を設置することの費用を比べ合理性のある選択を
していると言えます。

KTXの事例を読んで思い出した過去の経験が二つあります。
一つ目は日産自動車の座間工場を見学した時のことです。その当時ある自動車
メーカーの企画部門に勤務していたのですが、たまたま工場見学する機会があり
ました。その当時の日産座間工場はとても最先端の工場として有名であり、1986年
にはチャールズ皇太子とダイアナ妃が工場見学にご訪問する程でした。この工場の
素晴らしいところは徹底的な自動化がなされている点です。特に車体組立て(溶接)
ラインは殆どラインに人がいず、徹底的に自動化されていたように記憶しています。
当時私が日頃見ていた自社および自社関連の自動車工場とは全く違うことに驚き
が隠せなかったことを鮮明に思い出すことができます。
ご存知のように座間工場はその後1995年に閉鎖され今は座間事業所として型・
治工具・設備・電子機器の生産設計開発及び製造、電気自動車のリチウムイオン
バッテリーの開発・生産を行っています。工場閉鎖の理由は様々であり、一概には
言い切れませんが、必ずしも自動化=合理性ではなかったことが類推されます。
特に自動車はその当時どのメーカーも車種を増やし結果的に少品種多量生産から
多品種少量生産化しており、そういう点からも自動化よりも生産柔軟性が求められ
たとも思われます。

もう一つの経験は私が自動車会社の購買にいた時の話です。当時最量産車種向け
のある部品は2社発注となっていました。これは1社だけでは生産能力が不足して
いたこともありますが、2社競合させることで競争状況を作るということを目的として
いたのです。この2社は本当に対照的な2社でした。同じ部品なのに全く作り方が
異なります。1社は工場に殆ど作業員がいません。殆どの作業が自動化されている
からです。その工程は実に見事で見ていてもその自動化の工夫にはとても驚かさ
れます。もう1社は10人以上の若い女性が寄ってたかって作業を。しかし驚くべき
は、完全自動化している工場よりも多くの人手作業を採用しているメーカーの方が
低コストだったということです。正に自動化が必ずしも合理的でないという実例。

このようなケースは今後も起こり得ることです。特に事業活動、生産、調達活動が
よりグローバル化している時代ですから、自動化するよりも海外も含む低賃金の
労働力を活用した方がメリットがある、ということは当然起こり得ることだからです。
最近は情報技術を活用しても導入のための投資がかかり過ぎるのでオフショア
アウトソーシングを活用する方が合理性があるという場面もでてきています。
いずれにしてもどのような自動化を行うのか、行わないのかは人件費のレベルや
高騰の状況、為替の動向、技術革新などの様々な要因でその時々に最善な意思
決定を行うことが求められています。
このような意思決定時には冒頭で述べたような改札自体を廃止してしまう、という
ような事業や製造などのやり方自体を変えるような発想が重要です。単に自動化・
機械化・情報化を進めるのではなくやり方自体を変えその上で合理性のある自動化
・機械化・情報化を進めていくことが今後益々求められていくでしょう。



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2014年11月26日

サプライヤモチベーションと三感主義

SNSの出現は情報収集に大きな影響を与えてました。世の中にあるどのメディアより
もSNSの即時性は秀でています。また情報の広さや深さという点でもSNSからリンク
が貼られていて多くの情報にいとも簡単にアクセスできます。テレビ番組で毎日放送
される情報も元はSNSやYouTubeからネタを収集していることも日に日に増えている
ようです。
しかし最近はSNSを介した情報も信憑性がないもの、情報取得する価値がないもの
まで広く出回っていることを感じます。特に一部の報道やニュースソースを元に
自ら情報収集や分析することなく断定的な書き方をしているブログや情報発信も増え、
また「いいね」や「シェア」が雑多なニュースソースを広めているとも言えるでしょう。。

特に私が違和感を感じるのは「日本人は素晴らしい民族だ!」的な記事です。
日本人の規律の良さをとらえて、「日本人は素晴らしい!」的な記事に触れる機会は
特に最近増えているように感じます。表面的には日本人は規律正しく、礼節を尊ぶ
民族に見えるかもしれません。
しかし私は日常逆のことを感じる場面が多くあります。例えばスマホ、携帯の使い方。
電車内の優先席付近では必ず「電源を切りましょう」という掲示がありますがスイッチを
切るどころか、優先席に座ってスマホを操作している人も多く見かけます。歩きスマホ
も皆迷惑で危ないと思いながらやっていますし、最近怖いなと感じるのは信号無視
当たり前の暴走自転車です。電源問題に関しては携帯の電波がペースメーカーの
動作に影響を与えないことが近年分かってきたようですが、それでもルールはルール。

このように日本人は「規律が良くて礼節を尊ぶ」のではなく「皆でやれば怖くない」
「皆がやっているからやる」的な思考なだけではないか、と私は特に最近感じています。
特にこの「皆がやっているから、やる。皆がやっていないから、やらない。」的な価値観
が以前よりも強くなっている気がするのです。SNSで見られる美談には乗っかり、
そうでない話は炎上させるという状況はその典型的な状況ですし、一方で異論を唱え
にくい世の中になってきていると感じています。

これは企業経営でも同様です。コンサルタントをやっていて企業の方からまず聞か
れるのは他社事例であり、実績。他者もやっているから当社もやる、他社並みに
したいという声は今も多くの企業から聞かれます。
調達購買でもその流れは否めません。集中購買の推進、プロセスの標準化、
テクノロジ(IT)の活用、間接材購買の取組み推進、等々これらは殆ど欧米企業の事例
の後追いです。欧米企業の事例を先進企業が取組み、その数年後に多くの企業が
後を追いかけます。(このやり方が全て悪いとは言いませんが)欧米的なドラスチックな
改革を多くの企業が指向しているのです。
これは我々のようなソリューション提供企業側も同じ。焼き直しで多くの企業にその実績
や経験を展開できればそれが一番リスクも低く、売りにもなります。
しかし、果たしてこのようなやり方が本当に最善なのでしょうか。

あるバイヤーからとても興味深い話を伺いました。サプライヤのやる気を如何に引き出
していくかというサプライヤモチベーションについてです。このバイヤーが働いている
企業は現状人手不足が激しい業界。数年前サプライヤに対しての依頼事項は
「コスト削減」が第一優先だったのですが、今は仕事を受けてくれる先を探すのが調達
購買部門の重要な役割になっているとのことです。つまり「どうしたらサプライヤのやる気
を引出し、仕事を受けてもらえるか。」役割が変わりました。

私はそのバイヤーに「サプライヤは御社に何を望んでいるのでしょうか。」と。
そのバイヤー曰く「意外にも儲けたいとか、受注が欲しいというサプライヤだけでなく、
うちにしかできない仕事をやりたいと言うサプライヤが多い」とのことでした。
そうサプライヤはその企業の仕事をやって金を儲けるだけでなく達成感を得たいのです。
私はこれを三感主義(感動、感謝、感情)と言っています。サプライヤはその仕事を
成し遂げることで「感動」したいのです。また難しい仕事をやり遂げて「感謝」されたい
のです。

これには私も全く同意です。「難しい課題であればあるほど成し遂げたい。そしてお客様
のお役に立ててお客様に感謝してほしい。一言『有難う』と言って欲しい」。
これがサプライヤの本音ではないでしょうか。
サプライヤモチベーションの向上にはこのような人間としての本質的な部分を大切にする
ことが求められているのです。私はサプライヤ訪問し声を聞くことも多いですが
「パートナーとして見てくれない」というサプライヤの声を聞くことがあります。もし失注した
としてもパートナーとして考えてくれているのならそれなりの対応があるだろう、ということも
言われます。
実はこのような三感主義的な要素は従来の日本企業の企業と企業、企業と個人の
つながりにおいてとても大切にされてきたことなのではないでしょうか。
このような日本的な何かが「皆が・・」という価値観で忘れ去られてしまった気がしてなら
ないのです。
日本的経営と言いますと 1.終身雇用 2.年功序列 3.企業別組合の3つがその特徴と
言われています。しかしむしろその底辺にあるのは日本人が従来大切にしてきた
「三つの感(感動、感謝、感情):三感主義」にあったのではないでしょうか。
社員に対する感謝、顧客に感動を与える、考えるのではなく感じさせる、感じる。こういう
日本ならではの要素が欧米流の合理的な経営と上手くミックスすることで、サプライヤ
だけでないスイテイクホルダーとのつながりを大切にする新しい日本的な経営が生まれて
くることを期待しております。



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2014年11月13日

調達購買スキル−品目ナレッジは必要か−

昨今多くの企業で調達購買人材のスキル育成が求められています。スキル育成の
ためにはそもそも自社の調達購買人材にどのようなスキルが求められるかを棚卸し
することが必要です。
それではどのようなスキルが必要でしょうか。私共は調達購買をやられている方に
求められるスキルは大きく3種類に分類されると考えています。

一つ目は「調達・購買共通スキル」です。
これは支出分析やコスト分析、ソーシング、ネゴシエーションやサプライヤマネジメント、
ユーザーマネジメントなど担当する品目に関係なく調達購買で必要となるスキル。
またこの共通スキルは管理者や企画部門として必要となる戦略マネジメントスキルと
実務スキルに分けられます。

二つ目は「ファンダメンタルスキル」です。
これはビジネスパーソンに共通して必要な基礎的スキルであり、例えばコミュニケー
ションスキルや調整能力、ファシリテーションスキルやプレゼンテーションスキル、
プロジェクトマネジメントやベーシックなビジネスマナーの理解などもここに属します。

最後のスキルは「品目/業種スキル」です。
これはスキルではなく知識と言い換えてもよいでしょう。担当する品目のサプライヤ
の情報、新技術や新サービスの情報、市場環境や市況情報、購入品がどのように
作られているか、などの製造に係る知識なども含まれます。この「品目/業種スキル」
はとても重要なスキルですが購入する品目に依存するため幅広い品目のスキルを
持つことはとても難しいことです。

最近調達の現場の声でよく聞かれるのがこの「品目/業種スキル(知識)は必要
ですか?」ということ。
これに関しては二通りの考え方があります。一つは「専門性を極める必要がある」
という考え方です。
外資系企業などが調達購買職の採用を行う際には購買経験だけでなく、品目の
専門性を持っているか、が一般的に求められます。例えば物流専門とかIT専門とか
特定分野の専門性です。むしろ求められるのは品目や業界の専門性が主になる
ため、調達購買経験よりも、対象品目や業界の経験の方が求められることもあり
ます。最近ではより技術的に進んでいる買いモノをすることもありますので、日本的
な事務技術職の分け方から言うと技術職が求められるというのも一つの傾向です。
ある方がこの専門スキルについておっしゃられていたのは、自動車などのカスタマ
イズ化された部品の購入は、摺合せ型製品なので専門知識よりも調整能力が重視
され、一方でハイテク製品はモジュールの組立てなので、部品についての専門知識
がより求められ品目によっては技術職でないと手に負えなくなるということがありま
した。おっしゃられる通りです。最近は自動車も部品の開発自体をサプライヤに
丸投げしており、ブラックボックス化が進んだため社外から専門の技術者を調達購買
のサポート役として置いているという企業もあるようです。

一方で「深い専門性はあまり必要ない」という考え方もあります。
優秀なバイヤーはどんな品目を担当しても優秀なバイヤーであることからもこの意見
には頷けます。これらの優秀なバイヤーに共通して言えることは「必要な情報が何か
を理解してその情報を揃える(入手する)のが上手い」ことです。自分が担当している
品目について何を理解しておく必要があるかが分かれば、後は効率よくサプライヤ
から聞き出したり、社内から聞き出すことが上手ければよいので、購入品に関して
詳細な技術的知見などがなくても調達購買としての仕事はできるという考え方なの
です。
あるバイヤーによると全く経験したことがない品目でも三回案件を回せばプロフェッ
ショナルバイヤーになれるとおっしゃっています。その際に重要なのは何社競わせ
るか、ということです。最終的には最低でも3社の真剣な見積りを入手したい、その
ためには見積依頼は最低でも5社にしたい、そのためには7-8社の候補先に引き
合いを出したい。この7-8社の引合先を見つけるのが一番のポイントだとそのバイヤー
は言っています。そのためにはサプライヤの情報やサプライヤを見つける能力は
必要だが、購入品の詳細な技術的知見などはなくても競争環境を作ることはできる
とのことです。また三回案件を回せば自然と見積書の項目(構成や工程)を定義する
ことができるようになると言います。そのためには購入品や購入サービスの中味が
分からないとできないのは当たり前ですが、素人でも工夫したり確認したりすることで
早期キャッチアップは可能であるとおっしゃっています。これはこれで尤もな意見です。

このように品目/業種スキルの専門性については様々な意見があります。
ここでもいくつかの共通する考え方は存在します。以下はこの共通する事項について
述べていきます。
一つ目は購入品もしくは業種により求められる専門性は異なる。これは先の自動車と
ハイテク業種の違いしかり、非常に専門的なサービスである例えばCRO(製薬業界の
治験等の委託)のような専門的サービスと汎用的な事務用品の購入ではやはり求め
られる専門性のレベルにも差があることは当然です。
次に言えることは「専門性は持っていればいるほど良い」ということです。これは誰も
異存はないことです。しかし全ての購入品に関して詳細の技術情報や専門性を持つ
ことは不可能です。ここで言いたいことは「専門性を持つ努力や情報収集を怠っては
ならない」ということです。事務系バックグラウンドのバイヤーが「私は技術屋じゃない
から専門的なことは分からない」ということがありますが、それは学習するための機会
を自ら放棄していることです。品目担当になったということはその品目に関しては社内
で一番の専門家であると自負できる位の知識習得への意欲は欠いてはいけないの
です。
最後に取り上げたいのは最低限必要な専門性があるということです。つまりある程度
の専門性は必要だと言うことです。それはどのレベルでしょうか。
購入品は何らかの原材料や構成品を加工したり組立てたりプロセスを踏むことで
製品化されます。図面はあくまでも完成した姿でしかありません。その完成した姿
(製品やサービス)は多くの原材料や構成品とそれらの加工工程が必要です。これは
あらゆる購入品や購入サービスについて言えることです。
もしあなたがその品目のバイヤー担当であればその品目を製品化する加工工程を
理解し購入品のコスト構造を理解することは必要なスキルです。

例えば樹脂部品であれば射出、ブロー、真空成型の大きく三種類の成形方法があり
ますが、これらの成形がどのような設備でどのような工程が行われるのか理解して
おくことは最低限必要です。それにより図面から樹脂部品がどのような工法で作る
のが適しているか、また対応可能なサプライヤがどこなのか、概算のコストがいくら位
なのか知ることができるのです。
あなたの社内の技術者は必ずしも購入品の製造技術を理解しているとは言えません。
購入品がどのような工程を経て作られているのか、またそれがどのような工場や設備
で作られているのか、イメージができることで社内の技術者に対する技術的なアド
バイスは少なからずできるのです。またこのようなスキルを習得するためには多くの
経験は必要ありません。必要なのは現場を見ることです。「現地現物」の確認が
バイヤーに求められる最低限必要な専門知識を育成するのに役立つことなのです。



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2014年10月29日

調達購買の役割を超えて!

「公共工事、入札不調相次ぐ、北関東、資材高や人手不足影響、膨らむ事業費、
整備に遅れ。」
「公共投資は有効か 供給制約の壁」

よくニュースになっているのが工事建設関連の人手不足。
特に最近は現場の職人さん獲得競争だけでなく、建設会社の現場監督や設計者
などの人手が不足しており仕事を取りたくても取れないような状況のようです。

このような人手不足は震災からの復興需要と所謂五輪特需によるものと言われて
いますが、背景には建設投資額が底をついた2010年頃から多くの技能労働者が
廃業や転職を行ったためと言われています。

確かに一度廃業や転職をした職人がまた建設業に戻らないことは容易に想像
できます。また一方で低賃金や労働条件が他業種に比べても厳しい建設業界は
若者にとっても魅力が高くない職種のようです。労働者の高齢化はどの業界も
少なからず抱える問題ですが、建設業の場合はより深刻です。
これは建設業従業者全体で29歳以下の若手が占める割合がバブル時代の20%
から、現在は約10%にまで低下してしまっている状況が示しています。

現状新しい職人の担い手として女性の活用や外国人の活用を目指すべきという
声も出てきていますが、女性の活用については建設業が持つ3Kイメージが活用を
遅らせているとの指摘もあるようです。現在建設業における就業者全体に占める
女性の割合は14%だそうで、製造業の30%や販売・小売業の51%と比べると、
その少なさは目立ちます。一方外国人の活用については期間限定で事実上の
外国人労働者に対する門戸開放が実施されることになりましたが現行の法体系
の中でどこまで活用できるか疑問視する声も出ています。
このように現状の建設業界においては如何に職人を獲得していくか、それから
同じ職人の数で如何に生産性を上げていくか、が大きな課題となっているのです。

製造業では部品・原材料などの供給リスクを回避することが調達購買部門の
重要な役割の一つです。同様に建設業においては人員確保が調達購買部門の
重要な役割の一つとなっています。

この様な時代背景からとても興味深い製品の販売が発表されています。それは
調達購買部門が旗振り役として製品開発したものです。製品開発というと建設業
でいう製品とは建築物や土木工事なのですが、今回の製品は「疲労軽減ウェア」。
今年の9月16日に竹中工務店がプレスリリースした「職人DARWING(ダーウィン)」
というウェアです。http://www.takenaka.co.jp/news/2014/09/03/index.html
これは建設作業を楽にする疲労軽減を可能にしたウェアであり、実際の製品開発
及び製造は様々なサポーター・コルセットなどの医療用品のトップメーカーである
ダイヤ工業http://www.daiyak.co.jp/という企業と共同開発をしたものとのこと。

最近は疲労軽減のための機能性ウェアがランニングなどのスポーツ用として普及
し初めています。私も何着か機能性ウェアを愛用しているところです。一方でこの
「職人DARWING」は本格仕様であり、下半身用と上半身用に分かれ上半身用は
作業によって3種類のタイプが用意されています。また医療用品メーカーが開発
製造していることからもわかるように疲労度の軽減に関しても大きな効果(作業
によって40%〜50%)があることが実際の効果検証により実証されています。
プレスリリース後まだ1ヶ月しか経っていませんが建設業だけでなく様々な企業
から問合せがよせられているとのことです。

この「職人DARWING」の開発については非常に興味深い裏話があります。
元々「職人DARWING」の開発はある研究者のアイディアからスタートしたものです。
彼らは建設作業の省人化や生産性向上を目的にして当初は建設ロボットや建設
作業をアシストするマッスル系のデバイスの開発を検討していたようです。
しかし、これらを実用化するにはまだまだ時間がかかります。そういったことから
この研究者が「アンダー・ザ・テーブル」的にボトムアップで1年前に検討をスタート
したのがタネだったのです。この研究者からアイディアを相談されたのが調達
購買部門のキーマンでした。このキーマンは研究者の面白いアイディアを具現化
するために研究者とタッグを組んで社内調整を進めながら製品開発を支援
推進し約1年という非常に短期間で「職人DARWING」の発表にいたったという
ことです。

アイディアを持ち開発をスタートさせた研究者も凄いですが、このアイディアを
支援推進し、短期間で製品化のサポートをした調達購買マンも凄い。
このような役割を担った調達購買人材は日本企業の中でも数少ない人材と
言えます。

現場人材の確保が急務の経営課題であるとは言え、自社の製品やサービス
とは程遠い製品の開発を支援するだけでなく、それを短期間で成し遂げている、
また拡販の為の役割まで担っている。従来の調達購買の役割を超えたことを
実行しているのです。

私は従来から調達購買部門の役割はようやく「便利なコスト削減請負人」に
なったが、それだけではなく「自社製品やサービスの競争力強化に寄与」する
役割を持つようにならなければならない、つまりこれが「イノベーション調達
モデル」であるということを以前から述べてきました。
この調達購買キーマンは「職人DARWING」を今後建設現場だけでなく製造業の
工場現場や女性向けにもラインナップし、疲労軽減だけでなく人手不足の解消
や疲労軽減ウェアという新しい製品市場創造を考えています。今回の疲労軽減
ウェア「職人DARWING」の開発製品化は今までの調達購買部門の役割を超えた
新しい調達購買の姿につながる活動であるでしょう。



nomachi0306 at 16:34|PermalinkComments(0)TrackBack(0)