2013年06月11日

「サプライヤマネジメントとSVR理論」

「海外調達は難しい」や「グローバル調達は難しい」というキーワードを最近よく聞きます。
しかし私にはピンときません。バイヤーとして世界中から最適なモノを最適なサプライヤから
最適な価格で購入しようとしていたら結果的にそのサプライヤがたまたま海外のサプライヤ
でした。ということですよね。何か難しいですか。

しかし唯一海外のサプライヤとの付合いで日本と大きく異なる点があります。
それは「買う側のプレゼンスの低さ」です。
日本国内で専門的な調達・購買部門を持つような比較的中〜大規模の企業であれば
日本国内のプレゼンスは高いです。サプライヤに会社の説明すらする必要はないでしょう。
つまりサプライヤに売ってもらうための努力はしなくてよかったのです。
しかし、海外だとこれでは通用しません。売ってもらうための努力をしなければ取引できない
のが一般的です。正に「買ってあげる」から「売ってもらう」へ転換しなければならないのです。

こういう世界では、会社のプレゼンスだけでなくバイヤー個々人のプレゼンスが求められます。
つまり「XX株式会社だから・・」ではなく「YYさんだから取引する」という世界なのです。
以前VOS(ボイス・オブ・サプライヤ)について私は「VOSをやることが相手が自分の会社を
どう思っているか知ることにつながる」と書きました。一言で言うと「両想い」なのか「片思い」
なのかが分かるということです。また今後サプライヤマネジメントを進める上で相手の思いを
知ることが非常に重要であることは何度も述べている通りです。

こういう話をある友人としていて面白い話を聞きました。
対人関係の進化論で「SVR理論」というものがあるのだそうです。
これは1977年にマースタインという人が発表した人間関係の深まりをモデル化したものだそうです。
 一般に人間関係の深まりは,以下の3つの状態をたどるとされるそうです。
 1.S(Stimulus) 外見からの刺激
 2.V(Value) 価値観の共有
 3.R(Rule) 適合し,役割を担う
これを男女の恋愛を例にとって説明すると、最初は外見から惹かれあい、次に共有の価値観を
持つことで付合いが深まり、結婚を経て最後にはロール(役割)を分担しあうことで関係性が進化
するとのだそうです。

ちょっとかんがえると正に今日のバイヤーとサプライヤの関係そのものです。(特に海外)
また目指さなければならない関係性作りの方向を示唆しているように感じます。

そもそもサプライヤとは両想いであるべきです。
また最初は派手な売り込みや低価格、高品質などのStimulateな関係から取引がスタートすることも
あるでしょう。それはValueを共有する関係にならなければ長続きしません。
しかしロールを分担し合うという関係性ができているバイヤー企業がどれだけあるでしょうか。

ロールを分担するということの根底にはイコールパートナーの意識が欠かせません。
企業としてそれを実現するためにはまずはトップがそう考えなければなりません。
もちろん部門としてもそうですし、バイヤー個人もそうです。
口では「イコールパートナー」と言いながら実は知らず知らずのうちに「買ってやっている」意識が
入っていないでしょうか。
海外に赴任している方曰く、中国のサプライヤは「YYさんのため」という意識が日本よりも強い
とのことです。一緒に井戸を掘った人間に対する信頼は日本以上のモノがあるとも言います。

正にサプライヤマネジメント=対人進化論=恋愛も同じなのだと感じる今日この頃でした。



nomachi0306 at 12:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年05月28日

「調達・購買人材向けトレーニングセミナーのすゝめ」

自分で言うのも何ですが、私はかなり商売が下手なコンサルです。
できないことはできないとはっきり言います。また例えば他社の情報を知りたいという
ような時には適任の方や企業を紹介しちゃいます。(勿論無料で)
また同業他社についても、「こういう案件であればこれこれこういう会社があります
からコンタクトされたらどうですか」とか平気で紹介しちゃいます。
またこれは購買ネットワーク会に出れば足りることだな、と考えれば
「コンサル依頼するまでもないですから、一度この会に出席してみてください。」
と言っちゃいます。だからと言ってやり方を変えられるか、というと多分変えられませんし、
変えたくありません。

弊社で実施している調達・購買人材向けのトレーニングセミナーについても同じこと
が言えます。正直儲けるためにはやってません。
どちらというと義務感からスタートしました。
トレーニングセミナーの事業は2008年頃から始めたのですが、それまでは調達・購買
について体系的に学びたくてもそういう機会が多くはありませんでした。
研修プログラムが全くなかった訳ではありませんでしたが、研修を受ける側、企画
する側の方々と話をしていると、やはり体系化された学ぶ機会を整備する必要性を
感じたのがそもそものきっかけだったのです。

セミナーというと多くのコンサルタントやサービス提供者は少額もしくは無料で参加者
を募り、バックエンドで自社の(高額な)サービスを販売する機会につなげる企業も
少なくありません。またかなり高額で多くの集客をして研修自体で生計をたてている方
もいらっしゃいます。(これはこれで素晴らしい能力ですが。。)

しかし、私はどちらも志向していません。繰り返しになりますが、現状の調達・購買・資材
の世界に必要だからという義務感でスタートしましたし、これは今でも変わりません。
ですからもし他にもっと素晴らしいプログラムができてきて、こういう役割が必要
なくなったり、常に新しいコンテンツや事例を盛り込めなくなったらすぐにでもやめます。
逆に今はまだ自分がやらなければならない、もしくは弊社のトレーニングセミナーが皆様の
お役に立っているから是非活用してほしいのです。

トレーニングセミナーの場合、コンテンツや講師によって品質が決まります。これでも
結構色々考えながらやっています。
まずは人数。一部の研修を除いては最大人数15名を定員としています。昨年度の実績
でも13回の実施で123人の参加者ですから1回あたりの平均参加人数は9.46人です。
「ただ単に集客できていないだけじゃないの?」と言われそうですが、私の経験から10人を
超えるとそのセミナーでは質問が大幅に減ります。一番積極的に参加者が発言できる
人数は6人以下です。これは参加者が増える程質問し難い雰囲気になってしまうから
です。そういう点から全ての参加者が理解しながら進められる限界が理想的には10人
以下なのでしょう。こういう点から少人数制に拘っています。
次はコンテンツです。私はだいたい毎回コンテンツの見直しを行います。毎回毎回
講師をしていてこのコンテンツは外してその代わりにこれを入れよう、とか考えています。
またレベルによってコンテンツの内容を変えています。
基礎系はある程度コンテンツを詰め込みます。これはその時は理解できなくても
後でテキストを読み返してもらうことができるよう考えているからです。
中級(実践)系はポイントを突っ込んで説明します。これはだいたいできていないことが
わかっているからです。できていることの説明に時間をかけるのは無駄です。
リーダー研修は事例中心に説明します。これは参加者に考えて欲しいからです。
リーダーは何をやるか、よりもどうやるか、が重要だからです。

このようなことを考えながら常に調達・購買人材のお役にたてるトレーニングセミナーを
実施しようとしていますが、果たして今でもその役割を果たせているのでしょうか。
宣伝のようになってしまいますが、トレーニングセミナーの参加者のアンケートを集計
してみましたのでその一部をご紹介します。
まずは「講義の内容は役に立ちましたか?」という設問です。
大変役に立った(4)、役に立った(3)、普通(2)、役に立たなかった(1)の4択ですが、
123名の参加者のうち、未回答者の2名を除く121名の回答の平均は3.53ポイントです。
非常に高い満足度です。しかし正直この手のアンケートで2とか1をつける人は
あまりいらっしゃいません。ので別の設問についても見てみます。
次は「セミナーで学んだことで明日からすぐに実践できることはありますか?」という設問
です。この設問は結構本音ベースで満足度を判断するのに役立ちます。
すぐに実践できることがある(3)近い将来実践できそう(2)いつか実践できるとよい(1)
という選択肢ですが、参加123人中67人(54.5%)の方が「すぐに実践できることがある」を
選択しています。未回答を除く回答者の平均スコアは2.52ポイントなので、これは多いに
自慢できると考えます。
あと「本セミナーをどこで知りましたか?」という設問ですが、参加者123人中60人と
ほぼ半数の方が「上司、知人の紹介」を選択しています。これは具体的な数字には
落としていませんがリピート率(同じ企業からの参加者が多い)の高さにつながっています。
トレーニングセミナーは一回参加して満足度が低ければ同じ企業からの参加は殆ど
望めません。喜ばしいことです。

これらのデータから見ましても今のところ私や弊社のトレーニングセミナーはまだまだ
皆様のお役に立てているのでは、と考えております。
やや宣伝じみてしまいましたが是非多くの方にご参加ご活用いただけましたら幸いです。



nomachi0306 at 12:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年05月14日

「中途半端なトップダウンはやめなさい」

業務改革を進める上でいくつかの欠かせない要素があります。
以前このメルマガでも書きましたがその一つは「業務改革リーダーの存在」です。
業務改革リーダーは「信念と情熱」を持っています。短期的な視点だけでなく
中長期的な視点から会社の成長や体質強化を目指す、それを実現することに
信念を持っています。また、改革にかける情熱も相当なものです。
企業体質の改革を順次行っていくシナリオを頭の中に描いています。

最近それに加えて感じる場面が増えているのはやはりトップのリーダーシップです。
「うちはトップダウンは機能しないから。」と多くの企業の方がおっしゃいます。
しかし私にはそれが自分が改革できない言い訳にしているとしか思えないことも
少なくありません。
特に「集中購買の推進」「開発購買の推進」は社内の多くの関連部署を巻き込み
推進する必要があります。このような改革については「人員を増強し体制を整え」
「プロセスを整備しルールを作り」、「それを守らせる」ことを一気呵成にトップダウン
で推進することが一番の早道であると言えます。
多くの企業では「そんなことは無理」という状況でしょう。次善の策はあるかも
しれません。しかし結果的に投資対効果が上がりやすいのは、このような
一気呵成方式での推進であることは間違いありません。

先日ある企業で集中購買推進についての相談を受けました。その企業も事業部が
強く基本分散購買であるものの、今まではできるところから集中購買を進めて
きました。トップからは「集中購買をもっと進めなさい」という指示はあるものの
強力なトップダウンは期待できないとのことです。一方で集中購買を進めると
どの程度のコスト削減機会が望まれるのか、ということをトップから打診
されているようです。
私はこれは極めて中途半端なトップダウンだと考えます。
トップは「これ位の効果が見込めるのであればこうしなさい」ではなく
「これ位の効果を上げるためにはどうすればよいか、考え推進しなさい。」
でなければならないのです。
そのために必要な施策があれば「人を増強したり」「制約を排除したり」する
のが正にトップの仕事なのです。
中途半端なトップダウンは業務改革の妨げになるだけでなく現場のやる気を
失わせることにもつながります。また、やる気ある業務改革リーダーを潰す
ことにもつながります。様々な弊害につながるのです。

一方最近それとは対照的なトップの話を改めて聞く機会もありました。
一社はN自動車です。N自動車では経営危機を通じてカリスマ経営者が
トップに就任しました。彼がやったことの一つが購買部門の地位向上です。
カリスマ経営者は購買部門に対して3つの指示をしたと聞いています。
「購買は社内と取引先の癒着を失くす役割を果たすこと」
「全ての取引先選定の権限は購買が持つこと」「購買は原価低減目標を達成すること」
非常にシンプルです。特に「購買は社内と取引先の癒着を失くすこと」ということは
興味深いです。まさに先日メルマガでも書いた「精神的癒着」の排除そのものです。
またそのために「何か制約があればそれを取り除くのがトップの役割」という
考えを徹底しています。脱系列(実際には意思をもった系列作りですが)もその制約を
取り除く一つの施策でしょう。

もう一社はある大手素材製造企業です。
その企業は「集中化」「標準化」「競争化」というキーワードの元集中購買を推進
しています。その企業では調達部門がトップに部門目標を示した時にトップから
言われたそうです。「何故頂上を目指さないのか?」と。この企業のトップは中間指標
である「集中購買率」や「競争購買率」にこだわったそうです。
最終的な目的はコスト削減ですがこのような中間指標の達成はより重要です。
何故なら仕組みの定着度を測定できるからです。(無論意味のない数値管理は避けるべきです)
米国でもSpend Under Management (管理できている支出)の比率が高い企業
ほど調達・購買の先進企業だと言われています。

このような大所高所からモノが見えるトップは中途半端なトップダウンはしません。
またそのトップに共通した要素は極めてシンプルでわかりやすい考え方や目標を
もっているという点です。
多くの企業が残念な「中途半端なトップダウン」から脱せることを願っています。



nomachi0306 at 12:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2013年05月01日

物を買うことは難しい

物を買うということは易しいことでしょうか?
「物を売ることに比べたら易しい」
「物を買うことは万人がやっている(やれている)」

 
こういう言葉が返ってくるかもしれません。

確かに万人が物を買っています。小学生からお年寄りまで。

しかし、企業として大量かつ継続的に物を買うことは思った以上に難しいことです。
特に昨今の原材料市況高騰や東日本大震災などの事案の直後、安定的に調達を
することは思った以上に難しいことです。鉄を1キロ買うことはそれほど難しくないでしょう。
でもそれが月間1000トンで、それを安定的に調達する、という話になると全く難易度が変わってきます。
最近、このような調達することの難しさを体感する機会がいくつかありました。

まずは、関西のある企業さんの事例です。

彼らはグローバル企業の100%子会社で地域に根差した企業です。
歴史もそれ程古くなく、話をした相手も会社設立し、間もなく入社し、ずっと調達部門に従事された方でした。
彼らは大企業がよくやるような「付き合いの深いサプライヤに同じ地域に工場を進出させる」というやり方
をせずに、地場で優秀な企業を探し出して今のサプライヤベースを築いてきたとのことでした。
彼らは設立後もそのような方針で調達を行ってきたことから、調達の難しさをよく理解
しており、決して「買う」という強い立場でサプライヤと接してきませんでした。 
今でもサプライヤをパートナーと位置づけ「声を聞く」のではなく
「双方向のコミュニケーションを行う」ことを重要視しています。
これらの活動の基本になっているのは、彼らが「調達することの難しさ」を知っていたことでしょう。

次はある銀座の焼鳥屋さんでの出来事です。そのお店は90年の歴史を持つ有名な焼鳥屋さんです。一口食べると感動する位美味しいお店です。

私は店主に「なんでこんなに美味しいのですか?」と尋ねました。すると店主は「素材がいいからです」と一言答えました。「素材もそうでしょうけど、焼き方もあるのでは?」私が繰り返し尋ねると店主はこう答えました。
「いや、素材だけです。いい鳥を90年育て続けてくれている養鶏家の方が素晴らしいんです」
私はびっくりしました。このお店は90年間契約している養鶏家から安定的に鶏肉を調達し続けているのです。その間に戦争があったりオイルショックがあったり、バブルがあったり、それでも調達し続けているのです。
その店主は今でも毎月2回この養鶏家を訪問して自分の目で鳥を確かめに行っているそうです。
「素晴らしい素材や物を調達し続けるのは難しいし、手間もかかる」

調達することって難しいことです。もっと言えば素晴らしい素材を調達できることはそれだけで製品や商品、サービスの価値を高めることにつながるのです。

今回は2009年に発行しましたメルマガを再掲いたしました。



nomachi0306 at 09:45|PermalinkComments(0)TrackBack(0)