2015年08月19日

調達購買人材はプロフェッショナルかゼネラリストか

人材育成は調達購買部門に限らず全ての部門にとって大きな課題となっています。
一方で人材育成という観点からキャリアについてよく聞かれることがあります。

それは「調達購買人材はずっと調達購買部門を経験(事業部や事業所間の調達購買
部門での異動はあるものの)していくのが良いのか、それともローテーションの一環
として調達購買部門にある一時期属するのが良いのか、」という投げかけです。
要するに「調達購買人材はプロフェッショナルなのか?ゼネラリストなのか?」

また中でもよく聞かれることとしては「どちらのパターンが日本企業の中でより一般的
(多い)か?」ということです。これに対しては一概にどちらがよいとは言えません。
またどちらが多いかと言われても、「両方のパターンが混在している」というのが答え
になります。また同じ企業の中でも両方のパターンの人材が混在している、というのが
実情です。

欧米企業では、調達購買人材はプロフェッショナル型です。ここでは調達購買職は
専門職であり、場合によっては自身のスキルを活かして多くの企業を渡り歩くことも
ごくごく普通に行われます。
こういったプロフェッショナルをまとめるマネジメントになるためには、マネジメントの
勉強やスキル育成を行わないとその職には就けません。これが一般的であり、調達
購買部門出身でない人材がCPO(最高購買責任者)や部門長に就くことはあり得ない
ことです。

日本企業はそうとは限りません。
実際に調達購買部門長は、調達購買プロパーの人材もいれば開発、営業部門から
異動してくる人材もいます。また調達購買部門から一度他の部門に異動し、また
戻って来る人も少なくありません。

欧米企業型と日本企業型、日本企業型の中でもプロフェッショナル型とゼネラリスト型
が混在していますが、人材育成という面や企業に対する貢献ということを考えると
どういう方向が良いのでしょう。

あくまでも私自身の経験等を踏まえての私の考えですが、プロフェッショナルにしても
ゼネラリストにしても共通して言えることは、「違う仕事の経験はすべき」ということです。
つまり調達購買部門から外に出て違う職種や部門の仕事を経験することで人材育成に
つながると考えています。

私は調達購買職の経験は社会人として必要なスキル育成にたいへん役立つものと
考えます。特に、正しいモノや目指すべきトコロが単純明解でないという点が人を育てる
要因の一つです。調達購買職は常に自社の利益だけでなく、取引先の育成や利益確保
もしなくてはいけません。つまりトレードオフな状況の中で様々な検討や最適な意思決定
をしなければならない、このような環境は他の部門にはない環境です。

また特に調達購買職は限られたリソースの中でやりくりを迫られます。経営資源や時間
は有限です。その有限な資源や環境下で最適解を見出していく、このスキルも社会人と
して非常に重要なスキルと言えます。常に多忙でプレッシャーのかかる状況下で様々な
ことを検討し、考え、意思決定を行い、それを実行する。そのためにはもちろん社内外の
調整や説得力も必要になります。

このように調達購買職は改めて考えても色々なスキルを身に付けるきっかけになるの
です。

一方で、調達購買職の方にややもすれば言える共通するネガティブな点もいくつか
上げられます。例えば「上から目線になる(最近は少なくなりましたが)」、「アンテナが
低い」(情報は待っていても誰かが持ってきてくれる)、「受け身になる」(仕事は待って
いても降ってくるもの)、等々です。まとめて言うと自ら考え生み出していくということに
苦手な人材になってくる傾向があります。

このように調達購買職が自分にとってどのようなスキルを伸ばしてくれているのか、逆に
どのような点が不足しているのか、ということは調達購買部門内にずっといるとわかり
ません。外に出る(違う仕事を経験する)ことが改めてそれを理解するきっかけになります。
振り返ると私自身そうでした。また、外に出ることで調達購買職の仕事の面白さも分かっ
てくるようになりました。

調達購買職で身につく多くのファンダメンタルスキルの育成は、それを意識するかしない
かでスキルアップのスピードも変わってきます。もちろんスキル育成の機会と捉えることで
短期間で意思決定力や調整力、説得力が身につくのです。ですから一度外に出て、また
戻って来たときにこのようなことに気がつくことでより一層のスキルアップが図れます。

こういう点から一度は外に出たほうがいい、というのが私の考えなのです。

外に出る上で日本企業の海外駐在の経験はスキル育成につながるということを多くの方
から伺います。特に大企業の場合は高度に分業が進んでいますので、調達購買部門に
ずっといると仕事に関係のない知識や経験を積む機会が少なくなります。それに対し、
海外に行くと仕事の守備範囲が広くなり、また場合によっては係長が課長、課長が部長
や役員などの一段階上の仕事をせざるを得ません。
例えば経理、財務、法務、人事関連の仕事を兼務したり、場合によっては事業戦略、製品
企画にも絡み事業計画等も作らざるを得なくなるのです。こういう幅広い業務経験を積む
ことが一層のスキル育成の糧になることは間違いありません。また外から調達購買職を
見ることで、その特性や良さを再認識することにもつながります。

調達購買部門人材の育成やキャリア形成で悩まれている部門長やご自身のキャリア
プランに活かしていただければ幸いです。



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2015年08月05日

共同調達でコストが下がるのか?

先日(7/27日)日経新聞で西日本の電力会社が共同調達を進めていくという記事が
掲載されていました。
この記事は関西電力が(中心となり)西日本の電力会社4社と送配電設備を共同調達
することで将来的には合計で年間1000億円規模の費用削減を目指すというものです。

共同調達については概念はともかくあまり上手くいっている事例を私は知りません。
特に資本関係がない企業間の共同調達は、成果が出る以前にコンセンサスが得ら
れずに失敗に終わってしまうケースが殆どです。
今回は共同調達のメリットや成功へのポイントについて考えてみます。

記事にも出ていますが共同調達は基本的には費用削減、つまりコストを下げるために
進めるものです。そこで一つ疑問が出てくるのは、「果たして共同調達は本当にコスト
削減につながるのだろうか。」ということ。

サプライヤにとってみるとある特定のサプライヤの生産量、販売量が増加する訳です
から、総論的にはメリットがないことはないでしょう。しかし、共同調達のコスト削減
メリットを捉えるときには、メリットが出る場合と出ない場合など、もう少し細かく層別化
して考える必要がありそうです。

例えばメリットが出たとしても
\源採漫販売量の増加によってサプライヤのコストが下がる
▲汽廛薀ぅ箚屬龍チ茲厳しくなるので、サプライヤがマージンをはき出す
サプライヤが営業戦略上値下げに応じる
というようにその要因が違うのです。

\源採漫販売量増加によりサプライヤのコストが下がる、という場合ですが、
これは生産数量、販売数量増加によりサプライヤがモノを作るための設備投資の償却
コストが下がること、生産習熟度が高まるため生産コストが下がること、量が増えること
で単位当たりの管理コストが下がることや、段取り替えに掛る単位当りの加工費が
下がることなどがあげられます。この場合はサプライヤにかかるコストが確かに下がっ
ているのですから、共同調達のメリットありです。

しかし、これらのサプライヤのコスト削減についても以下の4つ位のケースにわけて
考える必要があります。

1)100の生産、販売数量が101に増える程度のマーケットが大きい汎用品、標準品
2)マーケットやサプライヤの規模が小さく100の生産、販売数量が110になる位の
汎用品、標準品
3)カスタマイズ品であり、数社の数量を合わせると50の生産、販売数量が100になる
ような品目
4)カスタマイズ品であった買いモノを共同調達することをきっかけに買うモノを揃え
サプライヤの標準品を買うようにすること

上記のうち、1)や2)はサプライヤのコスト削減は非常に限定的になります。特に1)の
パターンは共同調達をすることで100の生産、販売数量が1増加する程度なので、
サプライヤにとっては殆どコストメリットはありません。
3)や4)の場合は先に上げたようなサプライヤのコスト削減につながります。ここでの
ポイントは共同調達を推進するときに「同じものを買う」ということが条件ということ。


▲汽廛薀ぅ箚屬龍チ茲厳しくなるので、サプライヤがマージンをはき出す
これはどういうことでしょう。多くの汎用品、標準品の場合、共同調達を進めても
サプライヤのコストメリットは限定的です。しかし、共同調達を進めることで今まで
競争環境が厳しくなかったものが厳しくなる、今まではA社と取引があったサプライヤ
例えばb社だけが競争相手だったものが、購買企業B社と取引があるc社、d社も
新たな競争相手になるということですから、どうしてもコスト的に厳しくなります。
そうするとサプライヤa社は受注を取るためにどうしても従来のマージンを削らざるを
得ない。
つまりこれはそれまでサプライヤが儲けていたマージンをはき出させるだけにすぎま
せん。間接材の集中購買活動などでコスト削減が果たせる状況の多くはサプライヤ
のコストは下がらずにマージンを削っている△両況と言えます。

サプライヤの営業戦略上値下げに応じる
多くの場合、生産量、販売量が増えるとサプライヤから重要な顧客として捉えられ
ます。例えば外資系企業などでは一般的な概念ですが、グローバルアカウントとして
奉られ、本社に営業担当が設けられたりするのです。こういう企業の場合、サプライヤ
の生産コストなどのコスト削減が実現されていなくてもより有利なディスカウント率が
適用されたりします。これがのケースです。しかし、のケースでは資材費の高騰
などの値上げ局面では影響度が高いために真先に値上げの要請をされる立場に
なります。

このように共同調達のメリットと言ってもその要因からサプライヤのコストが確かに
下がるケースとそうでないケースまで、いくつかのパターンが想定されるのです。また、
当然のことながらサプライヤのコスト削減につながらない共同調達はそのメリットは
長続きしませんし、将来的に何らかの反動が起こり得ることも想定されます。
つまり,3)、4)のようなメリットの出し方が求められるのです。

その上で、今回の新聞記事のケースを当てはめて考えるとどうなるでしょう。私は
今回報道にあった企業のコンサルをやっていませんし、購買状況もよく知りません。
ですからあくまでも仮説になりますことをご理解ください。

まずは電力会社が今回進めようとしている共同調達の対象品目ですが、多分同じ
ような仕様のモノを購入しているでしょう。しかし、各社のカスタマイズ品であり、微妙
に仕様が異なっていたりするのではないかと。こういう買いモノであれば、もし仕様を
揃えられるのであれば,3)、4)のケースに当てはまりサプライヤにとってもコスト
削減が図れるようなメリットがでてくるでしょう。

もう一つ考慮しなければならないのは、特定のサプライヤにそのようなコスト削減
メリットが生じるかどうか、ということです。例えば関西電力はサプライヤa社、中国
電力はサプライヤb社との取引だったものを、共同調達することでサプライヤa社に
集約できれば特定のサプライヤに生産増、販売増のメリットが生じます。
しかし(あくまでも仮説ですが)工事等の地域特性があるものではなく、送配電設備と
いうことになると、産業構造を考えると、関西電力も中国電力も現状、同じサプライヤ
から購入しているモノも少なくないと考えられます。
こういうケースではサプライヤは変わらず、特定のサプライヤにとって全体の仕事量
は増えないのですから、メリットは出にくくなります。そうするとやはり,3)、4)の
ように「同じモノを買う」ということをしないとサプライヤのコスト削減は実現できません。

しかし「仕様を揃え同じものを買う」ということは購買資材部門だけで進められる訳
ではなく、難易度がとても高いこと。例えばどこかの企業がリーダーシップをとり、
参加企業間の調整を強力に進めていくことが必須です。全社で合意形成しながら
進めるというやり方は頓挫する主要因となります。

そういう意味から今回の共同調達についての成功要因はサプライヤにとっても
メリットが出やすい品目選定とどこかの企業(多分関西電力になると推察しますが)
が主体となって仕様調整やソーシング業務を推進すること、この2点になります。
いずれにしても調達購買手法の中でも注目すべき動きの一つであることは間違い
ありません。

しかし、この新聞記事の最後に「(送配電部門)の部門統合は共同調達より大きな
合理化効果を見込める」と書いてありましたが、全くその通りでして、そもそもこんな
にたくさんの電力会社が必要なの、という疑問を感じるに至りました。



nomachi0306 at 14:53|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2015年07月23日

課長は不要な存在なのか?


先ごろカナダで行われたサッカー女子ワールドカップでは日本女子チームの活躍が
話題になりました。残念ながら今回はなでしこジャパンは優勝はできませんでしたが、
最後まで諦めないで戦う姿は多くの人に感動を与えたものです。
今回のなでしこジャパンで一番輝いていたのは間違いなくキャプテンの宮間選手
でした。宮間選手のインタビューを聞いていると彼女はビジョンを持ったチームリーダー
であることが分かります。「女子サッカーをブームに終わらせずに文化として育てたい」
という発言など、先代のキャプテンであった澤選手が「背中を見せてついてこさせる」
タイプに対して、よりその時代にあったリーダーシップや意識の高さを感じるのです。
宮間キャプテンの言動を聞いていて感じたのは、彼女は企業で言えば「マネジャー」
の仕事をしているな、ということ。企業のマネジャー(課長)はプレイングで現場を知る
でけでなく、企業の戦略やもっと言えば企業の改革のきっかけを作りだす役割を担っ
ています。そういう意味からも宮間選手はなでしこジャパンの課長の役割を果たして
いるのです。

というようなことを考えていたところ、面白い特集が雑誌AERAで取上げられました。
「日本から課長が消える」と言う記事です。この特集はニュースアプリであるNews Picks
でも取り上げられており、かなり話題を読びました。

AERAの記事を読むと「課長が消える」というよりも職階としての課長職がなくなる、
もしくは見直されていくだろうという論調です。確かに部下なし課長という方は私の周り
にも少なくありません。そういう方が課長でなくなる、また今後日本企業も米国型の
ポストに報酬がリンクする方式に変わっていくのがトレンドであるとの内容でした。

1990年代の中ごろからでしょうか。日本企業の人事制度は大きく変わってきました。
フラット化、権限移譲、さんづけ運動、チーム制、成果主義、こういう波の中で所謂
従来の課長の多くは既にいなくなってしまいました。マネジャーのプレイング
マネジャー化です。課長がプレイングマネジャー化するにつれて部下なし課長は
増えました。場合によってはやっている仕事自体は変わらないものの残業代を減らす
ことを目的に課長職に昇格させるというようなことも行われていたようです。

このような課長は本当に不要な存在なのでしょうか。確かに意思決定のスピードや
人件費の削減、権限移譲という点から今までの管理職としての課長はいない方が
よいのかも知れません。また特に名前だけ課長、部下なし課長はあまり企業にとって
メリットがある制度とは言えないでしょう。しかし、90年代からの課長のプレイング
マネジャー化が日本企業に対していくつかの弊害をもたらしたことを指摘することは
容易です。

ここでは昔を思い返し、私なりに考える3つの弊害を指摘します。

一点目は人材育成の問題です。日本企業の強みは人です。管理職や課長の仕事は
人材育成が全てと言ってもいい位。今まではラインの課長だけでなく、課内には必ず
うるさ方の役割を担う課長職がいました。こういう人が皆いなくなってしまい、今は誰
にも育てられていない人達が課長になっています。自分たちが育てられていないの
ですから、後輩を育てることができる訳がありません。よくオンザジョブトレーニングと
言いますが、継続的計画的で目標や目的がないオンザジョブは単なる放し飼いです。

二点目はコワーク経験の欠如です。最近はチームで仕事をやるというよりも一人で
一から十まで仕事を進めることが少なくありません。一方で協働の機会が以前より
少なくなっているように感じます。ですから自然とチーム内での調整や合意形成など
やらなければならない機会が減っているのです。多くの人間が集まっているにも
関わらず、集団無責任体制になるのはもっての他ですが、一方で協働が不得意な
若手が増えているように感じるのは私だけでしょうか。

最後はボトムアップイニシアチブの欠如です。社内の改革はトップダウンでないと
上手くいきませんが、改革のそもそものきっかけを作っているのは多くの場合課長
です。現場を知り且つマネジメントの視点でモノを捉え、また多方面から情報収集が
できる立場にあり、またそのようなスキルを持っているのが課長だからでしょう。
社内の多くの改革はある一人の課長がきっかけになっている、というケースを私は
今まで多くの企業で経験しています。またこのような改革キーマンを支援していく
のが我々の役割だと認識しているのです。

以前にも取り上げた調達購買改革における日本的サプライヤマネジメントへの回帰
や今回の日本的課長制度など、このような日本的なるものを見直していきましょう
という動きは今後益々増えてくると私は考えています。何故なら90年代中ごろから
日本企業はドラスチックに欧米型を指向し、その多くの歪みが現時点で生じてきて
いるのが現実だからです。行き過ぎたモノは必ず元に戻るのです。

そして私はこれからも企業内で頑張っている改革キーマンである課長を支援して
いきます。



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2015年07月08日

戦略的購買とリワイヤリング

先日、あるIT企業のパネルディスカッションに参加させていただきました。そのパネル
ディスカッションにもご登壇されていた一橋大学イノベーションセンターの西口教授の
話を間近でお伺いする機会があり、たいへん興味深い話だったので私なりの理解も
含めシェアさせていただきます。
西口教授はネットワークや組織論を専門とした社会学者で様々な著書を出している
先生です。今回西口教授のお話しの中で興味を持ったキーワードは2つあります。

「戦略的購買」と「リワイヤリング」です。

「戦略的購買」は1980年代の日米自動車業界の比較研究を行い1994年に西口教授
が使われた言葉とのこと。1980年代米国自動車業界のサプライヤマネジメントは、
とにかく激しい「競争」でした。単年度契約で常に複数社購買を行っており、毎年価格
優位な取引先を採用することを行っており、結果的に「安かろう悪かろう」の世界に
陥ったそうです。
それに対する反省から生まれたのが「戦略的購買」という概念です。「戦略的購買」
は「協業的」で「体系」だった仕組みと定義されています。取引先ではなく重要なソース
先としてサプライヤを捉え、サプライヤと共存共栄の関係を築いていく。これが
「戦略的購買」であり、実はこの発祥はトヨタ自動車等の日本企業の取組みである、
とのことでした。

会場でも申し上げましたが、私は正にこれからの日本の調達購買には「戦略的購買」
が必要となる、と繰り返し述べています。昨年末にメルマガ(ブログ)でも書きましたが、
今後の調達購買をあらわすキーワードは「協働」と「サステナビリティ」です。

2000年位の日本企業の調達購買は一部の先進的企業を除きここで言う「戦略的購買」
や80年代米自動車産業のような「競争」さえも行われていませんでした。このころの
日本の調達購買は「単なる買いモノ係」のようなもの。社内で指定されたものをどこ
からか探してきて、買う。価格については見積書をもらい赤鉛筆で査定をして見積り
よりも安くなってコスト削減しました、という世界感だったと記憶しております。
以降、現在に向けての調達購買改革はどちらかというと「集中化」「競争化」「集約化」
といった欧米型の体系化が中心となっていました。

ところが、その世界観が昨近急激に変わりつつあります。如何に優秀なサプライヤを
囲い込んでいくか、サプライヤとの関係性を築いていくか、がとても重要な時代になり
つつあるのです。大きな理由は2つ上げられます。一つはグローバル化により日本
での買う立場が通用しなくなってきていること、それから場合によっては他の新興国に
買い負けしてしまうこと。もう一点は国内での人手不足です。
このような理由から(以前から申し上げていますが、、)サプライヤとの「協働」が求め
られており、西口教授がおっしゃっている「戦略的購買」が求められる時代になって
きているのです。

実際にある企業の調達部門担当役員からこういう話を聞きました。
評価が低いがこちらを向いてくれているサプライヤと、評価が高いがこちらをさほど
向いてくれないサプライヤでは、躊躇なくこちらを向いてくれるサプライヤを選択する、
これは当社の調達方針である、と言っています。
またある企業ではサプライヤモチベーションを向上させるためにどのような施策を打て
ば効果的か、サプライヤ毎に調査を行い、モチベーション向上施策を取っているという
状況です。
このように「協働」とそのためにどうしたら良いか、という世界感が今でこそ広がって
いますが、1994年という時代に「戦略的購買」という概念を確立しているという西口教授
の先見性には頭が下がります。

次は「リワイヤリング」です。

西口教授は”近所づきあい”的な、どちらかというとクローズで親密なネットワークを
レギュラー・ネットワークと言っています。そしてレギュラーネットワークの一部が他の
レギュラーネットワークや新しい参加者と交流することで「リワイヤリング」が行われ、
膨大な情報が流れ、可視化する現象がおきる現象が一般的であり、そのようなネット
ワークをスモールワールドネットワークや”遠距離交際”と呼んでいらっしゃいます。

確かにその通りです。社会に存在するネットワークの多くはレギュラー・ネットワーク
です。レギュラー・ネットワークの多くはかなりの確率で時間と共に衰退します。そこに
流れる情報はそのネットワークにいる人に依存する訳ですから、新しい人がどんどん
参加するようなネットワークでなければやはり陳腐化するからです。
私自身購買ネットワーク会という調達購買に携わる異業種・異企業間のの交流会を
2005年に立上げ、幹事を長くやっていました。ここでこころがけたのはネットワークの
固定化を防ぐことです。具体的にはネットワークメンバーを固定化しないで常に
新しい人に門戸を開く、主幹事を固定化しない、東京だけでなく地域に新しいネットワ
ークを作ることを推奨する、レギュラーネットワークだけでなく派生した分科会のような
ネットワークを推奨する、等々。
もちろん私はこれを「リワイヤリング」と意識してやってきたわけでもありません。また、
私一人でできたこと、やってきたことでもありませんが、結果的には「リワイヤリング」
そのものであり、「リワイヤリング」の重要性を改めて感じた次第です。
おかげさまで、先のネットワーク会は今でも地域版も含めると4地域で開催されており、
個人では先日ネットワーク会から派生した分科会活動の発起人として学会で発表を
するまでに進化しました。

「リワイヤリング」については「戦略的購買」や「協働」の実現にも関係します。
これは未来調達の牧野さんがよくおっしゃっていることですが、サプライヤと自社の
コンタクトポイントを見える化し、複合化することが重要だというのは正に「リワイヤ
リング」そのものです。これは従来であればサプライヤと自社の営業と購買、それも
担当間のコンタクトが中心だったものを複合化し、範囲を広げることでコミュニケー
ションを良くし、サプライヤとの関係性作りにつなげていくこと。営業-購買だけでなく、
生産管理、製造、生産技術、品質管理、開発、企画などの他部門間、また担当、
課長、部長、マネジメントなどの多階層間にネットワークを広げるということです。
正にサプライヤとの関係やネットワークを「リワイヤリング」することにつながります。

「戦略的購買」も「リワイヤリング」というネットワーク論も決して新しい概念ではない
かも知れません。またこのような手法はどちらかと言えば協力会システムやCFTなど
日本企業が得意としてきた手法、概念です。しかしソーシャルメディアやIoT(モノの
ネットワーク化)という世界が進展する中でも、実はこのような原点回帰の方向が
現在求められている、ということがとても興味深く感じています。



nomachi0306 at 14:20|PermalinkComments(0)TrackBack(0)