2014年11月26日

サプライヤモチベーションと三感主義

SNSの出現は情報収集に大きな影響を与えてました。世の中にあるどのメディアより
もSNSの即時性は秀でています。また情報の広さや深さという点でもSNSからリンク
が貼られていて多くの情報にいとも簡単にアクセスできます。テレビ番組で毎日放送
される情報も元はSNSやYouTubeからネタを収集していることも日に日に増えている
ようです。
しかし最近はSNSを介した情報も信憑性がないもの、情報取得する価値がないもの
まで広く出回っていることを感じます。特に一部の報道やニュースソースを元に
自ら情報収集や分析することなく断定的な書き方をしているブログや情報発信も増え、
また「いいね」や「シェア」が雑多なニュースソースを広めているとも言えるでしょう。。

特に私が違和感を感じるのは「日本人は素晴らしい民族だ!」的な記事です。
日本人の規律の良さをとらえて、「日本人は素晴らしい!」的な記事に触れる機会は
特に最近増えているように感じます。表面的には日本人は規律正しく、礼節を尊ぶ
民族に見えるかもしれません。
しかし私は日常逆のことを感じる場面が多くあります。例えばスマホ、携帯の使い方。
電車内の優先席付近では必ず「電源を切りましょう」という掲示がありますがスイッチを
切るどころか、優先席に座ってスマホを操作している人も多く見かけます。歩きスマホ
も皆迷惑で危ないと思いながらやっていますし、最近怖いなと感じるのは信号無視
当たり前の暴走自転車です。電源問題に関しては携帯の電波がペースメーカーの
動作に影響を与えないことが近年分かってきたようですが、それでもルールはルール。

このように日本人は「規律が良くて礼節を尊ぶ」のではなく「皆でやれば怖くない」
「皆がやっているからやる」的な思考なだけではないか、と私は特に最近感じています。
特にこの「皆がやっているから、やる。皆がやっていないから、やらない。」的な価値観
が以前よりも強くなっている気がするのです。SNSで見られる美談には乗っかり、
そうでない話は炎上させるという状況はその典型的な状況ですし、一方で異論を唱え
にくい世の中になってきていると感じています。

これは企業経営でも同様です。コンサルタントをやっていて企業の方からまず聞か
れるのは他社事例であり、実績。他者もやっているから当社もやる、他社並みに
したいという声は今も多くの企業から聞かれます。
調達購買でもその流れは否めません。集中購買の推進、プロセスの標準化、
テクノロジ(IT)の活用、間接材購買の取組み推進、等々これらは殆ど欧米企業の事例
の後追いです。欧米企業の事例を先進企業が取組み、その数年後に多くの企業が
後を追いかけます。(このやり方が全て悪いとは言いませんが)欧米的なドラスチックな
改革を多くの企業が指向しているのです。
これは我々のようなソリューション提供企業側も同じ。焼き直しで多くの企業にその実績
や経験を展開できればそれが一番リスクも低く、売りにもなります。
しかし、果たしてこのようなやり方が本当に最善なのでしょうか。

あるバイヤーからとても興味深い話を伺いました。サプライヤのやる気を如何に引き出
していくかというサプライヤモチベーションについてです。このバイヤーが働いている
企業は現状人手不足が激しい業界。数年前サプライヤに対しての依頼事項は
「コスト削減」が第一優先だったのですが、今は仕事を受けてくれる先を探すのが調達
購買部門の重要な役割になっているとのことです。つまり「どうしたらサプライヤのやる気
を引出し、仕事を受けてもらえるか。」役割が変わりました。

私はそのバイヤーに「サプライヤは御社に何を望んでいるのでしょうか。」と。
そのバイヤー曰く「意外にも儲けたいとか、受注が欲しいというサプライヤだけでなく、
うちにしかできない仕事をやりたいと言うサプライヤが多い」とのことでした。
そうサプライヤはその企業の仕事をやって金を儲けるだけでなく達成感を得たいのです。
私はこれを三感主義(感動、感謝、感情)と言っています。サプライヤはその仕事を
成し遂げることで「感動」したいのです。また難しい仕事をやり遂げて「感謝」されたい
のです。

これには私も全く同意です。「難しい課題であればあるほど成し遂げたい。そしてお客様
のお役に立ててお客様に感謝してほしい。一言『有難う』と言って欲しい」。
これがサプライヤの本音ではないでしょうか。
サプライヤモチベーションの向上にはこのような人間としての本質的な部分を大切にする
ことが求められているのです。私はサプライヤ訪問し声を聞くことも多いですが
「パートナーとして見てくれない」というサプライヤの声を聞くことがあります。もし失注した
としてもパートナーとして考えてくれているのならそれなりの対応があるだろう、ということも
言われます。
実はこのような三感主義的な要素は従来の日本企業の企業と企業、企業と個人の
つながりにおいてとても大切にされてきたことなのではないでしょうか。
このような日本的な何かが「皆が・・」という価値観で忘れ去られてしまった気がしてなら
ないのです。
日本的経営と言いますと 1.終身雇用 2.年功序列 3.企業別組合の3つがその特徴と
言われています。しかしむしろその底辺にあるのは日本人が従来大切にしてきた
「三つの感(感動、感謝、感情):三感主義」にあったのではないでしょうか。
社員に対する感謝、顧客に感動を与える、考えるのではなく感じさせる、感じる。こういう
日本ならではの要素が欧米流の合理的な経営と上手くミックスすることで、サプライヤ
だけでないスイテイクホルダーとのつながりを大切にする新しい日本的な経営が生まれて
くることを期待しております。



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2014年11月13日

調達購買スキル−品目ナレッジは必要か−

昨今多くの企業で調達購買人材のスキル育成が求められています。スキル育成の
ためにはそもそも自社の調達購買人材にどのようなスキルが求められるかを棚卸し
することが必要です。
それではどのようなスキルが必要でしょうか。私共は調達購買をやられている方に
求められるスキルは大きく3種類に分類されると考えています。

一つ目は「調達・購買共通スキル」です。
これは支出分析やコスト分析、ソーシング、ネゴシエーションやサプライヤマネジメント、
ユーザーマネジメントなど担当する品目に関係なく調達購買で必要となるスキル。
またこの共通スキルは管理者や企画部門として必要となる戦略マネジメントスキルと
実務スキルに分けられます。

二つ目は「ファンダメンタルスキル」です。
これはビジネスパーソンに共通して必要な基礎的スキルであり、例えばコミュニケー
ションスキルや調整能力、ファシリテーションスキルやプレゼンテーションスキル、
プロジェクトマネジメントやベーシックなビジネスマナーの理解などもここに属します。

最後のスキルは「品目/業種スキル」です。
これはスキルではなく知識と言い換えてもよいでしょう。担当する品目のサプライヤ
の情報、新技術や新サービスの情報、市場環境や市況情報、購入品がどのように
作られているか、などの製造に係る知識なども含まれます。この「品目/業種スキル」
はとても重要なスキルですが購入する品目に依存するため幅広い品目のスキルを
持つことはとても難しいことです。

最近調達の現場の声でよく聞かれるのがこの「品目/業種スキル(知識)は必要
ですか?」ということ。
これに関しては二通りの考え方があります。一つは「専門性を極める必要がある」
という考え方です。
外資系企業などが調達購買職の採用を行う際には購買経験だけでなく、品目の
専門性を持っているか、が一般的に求められます。例えば物流専門とかIT専門とか
特定分野の専門性です。むしろ求められるのは品目や業界の専門性が主になる
ため、調達購買経験よりも、対象品目や業界の経験の方が求められることもあり
ます。最近ではより技術的に進んでいる買いモノをすることもありますので、日本的
な事務技術職の分け方から言うと技術職が求められるというのも一つの傾向です。
ある方がこの専門スキルについておっしゃられていたのは、自動車などのカスタマ
イズ化された部品の購入は、摺合せ型製品なので専門知識よりも調整能力が重視
され、一方でハイテク製品はモジュールの組立てなので、部品についての専門知識
がより求められ品目によっては技術職でないと手に負えなくなるということがありま
した。おっしゃられる通りです。最近は自動車も部品の開発自体をサプライヤに
丸投げしており、ブラックボックス化が進んだため社外から専門の技術者を調達購買
のサポート役として置いているという企業もあるようです。

一方で「深い専門性はあまり必要ない」という考え方もあります。
優秀なバイヤーはどんな品目を担当しても優秀なバイヤーであることからもこの意見
には頷けます。これらの優秀なバイヤーに共通して言えることは「必要な情報が何か
を理解してその情報を揃える(入手する)のが上手い」ことです。自分が担当している
品目について何を理解しておく必要があるかが分かれば、後は効率よくサプライヤ
から聞き出したり、社内から聞き出すことが上手ければよいので、購入品に関して
詳細な技術的知見などがなくても調達購買としての仕事はできるという考え方なの
です。
あるバイヤーによると全く経験したことがない品目でも三回案件を回せばプロフェッ
ショナルバイヤーになれるとおっしゃっています。その際に重要なのは何社競わせ
るか、ということです。最終的には最低でも3社の真剣な見積りを入手したい、その
ためには見積依頼は最低でも5社にしたい、そのためには7-8社の候補先に引き
合いを出したい。この7-8社の引合先を見つけるのが一番のポイントだとそのバイヤー
は言っています。そのためにはサプライヤの情報やサプライヤを見つける能力は
必要だが、購入品の詳細な技術的知見などはなくても競争環境を作ることはできる
とのことです。また三回案件を回せば自然と見積書の項目(構成や工程)を定義する
ことができるようになると言います。そのためには購入品や購入サービスの中味が
分からないとできないのは当たり前ですが、素人でも工夫したり確認したりすることで
早期キャッチアップは可能であるとおっしゃっています。これはこれで尤もな意見です。

このように品目/業種スキルの専門性については様々な意見があります。
ここでもいくつかの共通する考え方は存在します。以下はこの共通する事項について
述べていきます。
一つ目は購入品もしくは業種により求められる専門性は異なる。これは先の自動車と
ハイテク業種の違いしかり、非常に専門的なサービスである例えばCRO(製薬業界の
治験等の委託)のような専門的サービスと汎用的な事務用品の購入ではやはり求め
られる専門性のレベルにも差があることは当然です。
次に言えることは「専門性は持っていればいるほど良い」ということです。これは誰も
異存はないことです。しかし全ての購入品に関して詳細の技術情報や専門性を持つ
ことは不可能です。ここで言いたいことは「専門性を持つ努力や情報収集を怠っては
ならない」ということです。事務系バックグラウンドのバイヤーが「私は技術屋じゃない
から専門的なことは分からない」ということがありますが、それは学習するための機会
を自ら放棄していることです。品目担当になったということはその品目に関しては社内
で一番の専門家であると自負できる位の知識習得への意欲は欠いてはいけないの
です。
最後に取り上げたいのは最低限必要な専門性があるということです。つまりある程度
の専門性は必要だと言うことです。それはどのレベルでしょうか。
購入品は何らかの原材料や構成品を加工したり組立てたりプロセスを踏むことで
製品化されます。図面はあくまでも完成した姿でしかありません。その完成した姿
(製品やサービス)は多くの原材料や構成品とそれらの加工工程が必要です。これは
あらゆる購入品や購入サービスについて言えることです。
もしあなたがその品目のバイヤー担当であればその品目を製品化する加工工程を
理解し購入品のコスト構造を理解することは必要なスキルです。

例えば樹脂部品であれば射出、ブロー、真空成型の大きく三種類の成形方法があり
ますが、これらの成形がどのような設備でどのような工程が行われるのか理解して
おくことは最低限必要です。それにより図面から樹脂部品がどのような工法で作る
のが適しているか、また対応可能なサプライヤがどこなのか、概算のコストがいくら位
なのか知ることができるのです。
あなたの社内の技術者は必ずしも購入品の製造技術を理解しているとは言えません。
購入品がどのような工程を経て作られているのか、またそれがどのような工場や設備
で作られているのか、イメージができることで社内の技術者に対する技術的なアド
バイスは少なからずできるのです。またこのようなスキルを習得するためには多くの
経験は必要ありません。必要なのは現場を見ることです。「現地現物」の確認が
バイヤーに求められる最低限必要な専門知識を育成するのに役立つことなのです。



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2014年10月29日

調達購買の役割を超えて!

「公共工事、入札不調相次ぐ、北関東、資材高や人手不足影響、膨らむ事業費、
整備に遅れ。」
「公共投資は有効か 供給制約の壁」

よくニュースになっているのが工事建設関連の人手不足。
特に最近は現場の職人さん獲得競争だけでなく、建設会社の現場監督や設計者
などの人手が不足しており仕事を取りたくても取れないような状況のようです。

このような人手不足は震災からの復興需要と所謂五輪特需によるものと言われて
いますが、背景には建設投資額が底をついた2010年頃から多くの技能労働者が
廃業や転職を行ったためと言われています。

確かに一度廃業や転職をした職人がまた建設業に戻らないことは容易に想像
できます。また一方で低賃金や労働条件が他業種に比べても厳しい建設業界は
若者にとっても魅力が高くない職種のようです。労働者の高齢化はどの業界も
少なからず抱える問題ですが、建設業の場合はより深刻です。
これは建設業従業者全体で29歳以下の若手が占める割合がバブル時代の20%
から、現在は約10%にまで低下してしまっている状況が示しています。

現状新しい職人の担い手として女性の活用や外国人の活用を目指すべきという
声も出てきていますが、女性の活用については建設業が持つ3Kイメージが活用を
遅らせているとの指摘もあるようです。現在建設業における就業者全体に占める
女性の割合は14%だそうで、製造業の30%や販売・小売業の51%と比べると、
その少なさは目立ちます。一方外国人の活用については期間限定で事実上の
外国人労働者に対する門戸開放が実施されることになりましたが現行の法体系
の中でどこまで活用できるか疑問視する声も出ています。
このように現状の建設業界においては如何に職人を獲得していくか、それから
同じ職人の数で如何に生産性を上げていくか、が大きな課題となっているのです。

製造業では部品・原材料などの供給リスクを回避することが調達購買部門の
重要な役割の一つです。同様に建設業においては人員確保が調達購買部門の
重要な役割の一つとなっています。

この様な時代背景からとても興味深い製品の販売が発表されています。それは
調達購買部門が旗振り役として製品開発したものです。製品開発というと建設業
でいう製品とは建築物や土木工事なのですが、今回の製品は「疲労軽減ウェア」。
今年の9月16日に竹中工務店がプレスリリースした「職人DARWING(ダーウィン)」
というウェアです。http://www.takenaka.co.jp/news/2014/09/03/index.html
これは建設作業を楽にする疲労軽減を可能にしたウェアであり、実際の製品開発
及び製造は様々なサポーター・コルセットなどの医療用品のトップメーカーである
ダイヤ工業http://www.daiyak.co.jp/という企業と共同開発をしたものとのこと。

最近は疲労軽減のための機能性ウェアがランニングなどのスポーツ用として普及
し初めています。私も何着か機能性ウェアを愛用しているところです。一方でこの
「職人DARWING」は本格仕様であり、下半身用と上半身用に分かれ上半身用は
作業によって3種類のタイプが用意されています。また医療用品メーカーが開発
製造していることからもわかるように疲労度の軽減に関しても大きな効果(作業
によって40%〜50%)があることが実際の効果検証により実証されています。
プレスリリース後まだ1ヶ月しか経っていませんが建設業だけでなく様々な企業
から問合せがよせられているとのことです。

この「職人DARWING」の開発については非常に興味深い裏話があります。
元々「職人DARWING」の開発はある研究者のアイディアからスタートしたものです。
彼らは建設作業の省人化や生産性向上を目的にして当初は建設ロボットや建設
作業をアシストするマッスル系のデバイスの開発を検討していたようです。
しかし、これらを実用化するにはまだまだ時間がかかります。そういったことから
この研究者が「アンダー・ザ・テーブル」的にボトムアップで1年前に検討をスタート
したのがタネだったのです。この研究者からアイディアを相談されたのが調達
購買部門のキーマンでした。このキーマンは研究者の面白いアイディアを具現化
するために研究者とタッグを組んで社内調整を進めながら製品開発を支援
推進し約1年という非常に短期間で「職人DARWING」の発表にいたったという
ことです。

アイディアを持ち開発をスタートさせた研究者も凄いですが、このアイディアを
支援推進し、短期間で製品化のサポートをした調達購買マンも凄い。
このような役割を担った調達購買人材は日本企業の中でも数少ない人材と
言えます。

現場人材の確保が急務の経営課題であるとは言え、自社の製品やサービス
とは程遠い製品の開発を支援するだけでなく、それを短期間で成し遂げている、
また拡販の為の役割まで担っている。従来の調達購買の役割を超えたことを
実行しているのです。

私は従来から調達購買部門の役割はようやく「便利なコスト削減請負人」に
なったが、それだけではなく「自社製品やサービスの競争力強化に寄与」する
役割を持つようにならなければならない、つまりこれが「イノベーション調達
モデル」であるということを以前から述べてきました。
この調達購買キーマンは「職人DARWING」を今後建設現場だけでなく製造業の
工場現場や女性向けにもラインナップし、疲労軽減だけでなく人手不足の解消
や疲労軽減ウェアという新しい製品市場創造を考えています。今回の疲労軽減
ウェア「職人DARWING」の開発製品化は今までの調達購買部門の役割を超えた
新しい調達購買の姿につながる活動であるでしょう。



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2014年10月15日

間接材購買は何故上手くいかないのか。- その3

今回は「間接材購買」の第三回目(最終回)となります。

前二回では「間接材購買」は進歩がない、その内容と理由について述べてきました。
今回はそれをうけてそれではどうすればよいか、ということを述べていきます。

今回の内容は単に「間接材購買」だけでなく直接材購買も含む、企業の最適な支出管理
につながる話なので、多くの直接材購買担当者にも是非とも読んでいただければ幸いです。

「間接材購買」の活動は多くの企業で「コスト削減」中心であり、購買システムの導入
においても活用があまりできていない、という指摘をしました。それに対し我々は何を
目指していけばよいのでしょうか。

それは「支出の可視化」であり、「管理できている支出を増やすこと」です。

日本企業の今の状況を申し上げますと、コスト削減し易い品目は何度もコスト削減の対象
として上げられ、チームメンバーが一新される度にコスト削減活動を行っています。
しかし、その傍らでは訳の分からない支出がダダ漏れになっている、こういう状況なのです。
これって怖くないですか。

例えば自宅の家計について、奥さんがとてもしっかりしている方で毎日の買いモノについて
も色々工夫しながら値引きしてもらい購入している、でもその傍ら子供が無駄使いをして
いて、あげくの果てに借金までしている、こういう状況に近いのです。

また、同じ品目のコスト削減はそう何回も効果が出る訳がありません。もしコスト削減を
継続的に続けるのであれば、難易度が高い支出まで調達購買部門が管理できている
品目を拡大していくことが重要です。
例えば営業系の広告宣伝費用や研究所の研究費用等はある種の聖域として捉えられて
いる企業があります。このような費用は一般的にコスト削減の難易度が高いと言われます。
その要因は社内の力関係です。
ですから管理品目を拡大していくことは従来の社内の力関係をぶっ壊すことが前提となり
ます。しかし多くの企業ではこのハードルが高く、トライをする前に諦めるてしまっています。

このメルマガでも数回触れましたが、欧米では「Spend Under Management(管理可能支出)」
の拡大が企業の調達購買部門の大きな評価指標になっています。具体的な定義は企業毎に
異なりますが、一般的には「調達部門がソーシング業務を行った支出」と「調達部門が作成
したガイドライン、ルールに基づき適正なソーシング業務を他部門が行った支出」の合計が
その定義となります。
そして全支出に占める管理可能支出の比率の平均が60.6%であり、85%以上の企業が
目指すべきところである、と分析しています。

この比率を100%にすることは非常に難しいことです。またガイドラインやルールに基づ
いたソーシング業務をしていたとしても適正かどうかは分かりません。価格の妥当性なども、
例えば市場価格に比して価格の妥当性があるかどうかチェックができて初めて適正な
ソーシング業務と言えますが、そこまで徹底できている企業は殆どありません。
しかし、少なくとも管理可能支出の比率を高めていくことが企業としての主要な目的の一つ
であることは間違いないでしょう。

10年前位の購買システムが世の中にでてきた当時には、購買システムを導入すれば
発注段階で調達購買部門が必ず承認をするので、すくなくとも発注の段階で100%支出を
把握できる、と考えられていました。
しかし、単にシステムを導入しただけでは支出を100%把握できません。何故なら発注行為
を伴わない支出(例えば毎月事前に行った契約に基づき使用料に応じた請求が行われる
ような電力料、通信費など)もありますし、ルールを無視してシステムを通さずに(もしくは
調達購買部門を通さずに)支出していることはごくごく一般的に発生しているからです。
そもそも口頭で発注し請求書払いを許しているような企業では発注プロセスの定義すら
できません。また個人で立替えている経費精算などもそうです。出張に行くのに領収書は
ともかく自社のシステムから発注書を発行してJRに発注をしているなんてことは通常の
商習慣上あり得ません。
つまり購買システムを導入しシステム経由でサプライヤに発注をするようにしてもシステム
で発注を行わない支出は普通に発生するのです。

システム経由で100%支出を把握することは難しいですが「支出の可視化」や「管理可能支出」
で特に問題なのは、ルールでは発注をしなければならないのにそれを無視した発注を
行っている場合や、複数社コンペが義務付けられているにも関わらず相応の理由なしで
コンペを行っていないなどのルールを無視した支出です。
このような確信犯的な支出にこそ企業にとっての無駄が含まれています。

それではこのような無駄な支出を抑制するためにはどうすればよいでしょうか。

支出の可視化をしていく上で考えられる方法は以下の4つの段階(方法)が考えられます。
1.見積りの段階
2.予算承認の段階
3.契約・発注の段階
4.支払の段階

しっかり支出管理や支出の見える化をしていこうと考えている企業はこれらの何れの段階
かで支出を可視化することを進めています。

1.見積の段階とは全ての購買案件について見積取得及び最終価格、サプライヤ選定を
調達購買部門が行うようなプロセスをルール化していることです。直接材と同じプロセスを
間接材にも適用するというと分かりやすいでしょう。しかし、このやり方では実際の
契約・発注はユーザーが行う訳ですから最終的な契約・発注が調達購買部門の意思決定
通り行われないリスクは存在します。
しかし、お金を使うときは調達・購買が必ずサプライヤ選定するというシンプルなプロセスを
適用することで管理できる、というメリットもあります。

2.予算承認の段階での管理というのは、例えば稟議申請の際に調達購買部門の承認を
得た上で支出を行うというやり方です。この場合は予算執行承認はあくまでも稟議規定等
で縛られますし、サプライヤ選定自体は予算執行側が何らかのガイドラインに基づいて
実施するというプロセスになりますので「1.見積の段階での管理」に比べ事後承認的な
プロセスになってしまいます。

3.契約・発注の段階での可視化ですが、ある企業では調達購買に係る契約書の締結は
基本的に調達購買部門で行うというルールを作り、契約の段階で支出を管理する方法を
とっています。しかし、これも調達購買部門の負荷が高くなる点や「2.予算承認の段階での
管理」同様に事後承認的になることは否めません。また金額や案件によっては契約を
行わない支出もあるので、どうしても管理できていない支出は発生してしまいます。
そうすると発注の段階で管理するのがよい訳ですが、このルールでも発注行為を伴わない
支出は出てきますし、そもそも全ての発注を調達購買部門を通して行うことや購買システム
を介して実施することには、業務負荷がかかるという問題を避けることはできません。

4.支払の段階での管理ですが、これをシステム的に行おうとすると会計システムと購買
システムを連携させておく必要がありますので多額の投資が必要となります。一方で
外資系企業などがよくやっている支払依頼に発注書を必ず添付させておくことという
ような「No PO, NO PAY」ルールなどを適用させることは比較的容易です。この場合
には支払部門との協調が必要ですし、管理できたとしても事後確認でしかないことは
理解できるでしょう。

このように支出の可視化や管理可能にする方法論はいくつか考えられますが、いずれ
もユーザー、支払部門および仕様設定部門との協調が必要になります。特にユーザー
部門に対しては、従来のやり方にはなかった手間を強いることになります。このような
手間をかけてでも全社の支出全体の可視化を行っていくんだ、というマネジメントの
意思がここには必要になってきます。

ここまで書いてきて既に読者の皆さんは理解されたことでしょう。
間接材の支出可視化や管理には「購買システム」や「品目別のコスト削減活動」だけ
では達成できないのです。それ以外にも間接材購買や支出に係るルールやガイドライン
の作成と社内での徹底が必要になってきます。
ですから一過性のプロジェクトで推進するのは無理です。
もっと腰を据えた改革を調達購買部門だけでなく、ユーザー部門や経理・財務部門など
にも手間をかけてもらって実施させていく「覚悟」が必要となります。

それではそのためには何が必要なのでしょうか。
まずは目的の再確認です。
間接材購買を何を目的に進めるのか、単なる一過性のコスト削減なのか。
購買システムの導入は手段であり目的ではありません。
経営者にとって支出の可視化、管理の範囲や精度を上げ「継続的に適正な買いモノが
できる企業体質や仕組みを作っていく」
これが本当に重要なことであり本来の目的ではないでしょうか。

言うまでもなくこの目的は間接材、直接材関係なく共通する目的です。
しかし、この目的を100%達成することは容易ではありません。
当然のことですが、全ての品目、全ての金額、できれば事後ではなく事前に関与したい、
これらは当たり前の話です。しかし、まずは事後でデータだけでも収集できればよい、
とか、金額基準をもうけて幾ら以上の案件から把握していきましょう、でも構わないの
です。重要なのは、目的(100%)に向けて一歩ずつでも良いのでそこに向って前進して
いることです。

多くの企業は誤った目的の元にあまりにも近視眼的な活動を何度も繰り返しているだけ
ではないでしょうか。これがこの十数年間の間接材購買の過ちと私は確信しております。



nomachi0306 at 17:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0)