2026年05月27日

開発購買の新しい流れ_後編

昨年の10月に「開発購買の新しい流れ」で、開発購買は「やらなければ
ならないが上手くいかない」活動であり、その理由は、意識のギャップ、
仕組みのギャップであり、何より「人に頼らざるを得ない」属人性の

また、AIの活用によって、従来はキーパーソンの知見・経験でしか
対応できなかった活動をサポートできる可能性についても触れました。

今回は、その「可能性」が少しずつ現実のものになりつつある動きを
紹介しながら、開発購買の新しい形について、さらに考えを深めて
いきたいと思います。

前号でAIによるVEVA提案支援については「あまり聞いたことがなく
課題も多い」と書きましたが、昨今のAI活用事例で、興味深いユース
ケースが出てきました。

開発購買先進企業であるトヨタ自動車の事例です。トヨタ自動車は
2024年11月にマイクロソフトと共同で「O-Beya(大部屋)」という
AIエージェントの発表をしました。

これは、設計・生産技術・購買・サプライヤが一室に集まり情報共有
しながら開発を進める「大部屋方式」をAI化したもので、振動・燃費・
エンジン・バッテリーなど9つの専門分野に特化したAIエージェントが
搭載されており、開発部門のエンジニアが24時間いつでも相談できる
環境を実現しています。

その最大の目的は、定年を迎えるベテランエンジニアの「暗黙知」を
AIに継承することです。まさに「過去の知見・経験をデータベース化
し、AIに学習させる」というアプローチそのものです。

開発購買に直接関係するシステムではないものの、「属人的な技術
ノウハウを組織知としてAIに実装する」という発想は、開発購買での
AIユースケースである、VEVAアイデアデータベース化や部品情報基盤の
構築と、まったく同じ方向性と言えます。

さらにトヨタは2025年から本格活動を始めている「AREA35」は、
開発・生産・販売が一体となった部品種類・仕様削減・適正化を
図るもので、これによって工場内に35%の余剰スペースを創出する
ことを目標に掲げています。実際にスマートキーでは部品種類を138
→54種類に部品種類を約6割削減し、工場内スペースも約15%削減した
などの成果を上げています。

トヨタ自動車は開発購買と捉えていないかも知れませんが、開発・製造
・調達・サプライヤが一体となって部品種類の削減や、設計ノウハウを
共有し、開発上流段階からQCDを作り込んでいく―これはまさに開発購買
そのものであり、AIや組織横断活動を組み合わせた先進モデルと言える
でしょう。

もう一つ、私が注目している事例があります。マツダと日本製鉄の
提携による「共創活動」です。

2024年に発表されたこの取り組みでは、マツダが車1台分の鋼板を
集約して日本製鉄に発注し、新車のデザイン段階から両社が要求
性能や用いる鋼材を話し合って決める仕組みを作りました。その
結果、開発車の鋼材重量を前モデル比10%削減することに成功し、
同程度のコスト削減効果も達成しています。

従来、素材サプライヤは仕様が決まってから発注を受けるのが普通
でした。しかしマツダは、系列関係のない独立系サプライヤである
日本製鉄を、デザイン段階から開発の共創パートナーとして巻き込ん
だのです。マツダはこれを「焼畑農業」的な発注の見直し、と評して
います。毎回競争入札で最安値を取るだけでは、サプライヤとの関係
が疲弊し、長期的には自社の調達力を損なうという問題意識です。

従来の方法と異なるポイントは2つあります。

1つ目は「調達単位の変更」です。従来は部品ごとに価格競争による
個別発注だったものをクルマ1台分を集約発注する手法へ切り替え
ました。これによって鉄鋼メーカーが持つ素材の知見をクルマ全体の
構造づくりに反映でき、車両全体で最適化が図れたのです。

2つ目は「調達時期の早期化」です。従来はデザイン決定後に鋼材
メーカーに開発支援をしてもらっていたものを、デザイン前の商品
企画段階へと前倒ししました。それによって集約発注の効果を最大化
できるとともに、手戻りなどの抑制が実現でき、サプライチェーン
全体での最適化が図れました。

このような共創活動ですが、私は前回述べた2つのギャップを埋める
要素があることに着目しています。

まずは、意識のギャップですが、これは誰と組むかという点で、
クリアしています。日本製鉄という系列外であるが、国内トップの
鉄鋼メーカーと「共創パートナー」として組む、という段階で、
マツダも日本製鉄もこの取組みを成功させる必要があり、バイヤー
企業とサプライヤという関係性を超えた共創が実現しています。

もう一点は「仕組みのギャップ」ですが、マツダが開発ロードマップ
やコスト目標を早期に共有することで、日本製鉄も自社の技術開発を
マツダの要求に合わせて計画できるようになる。情報の非対称性を
崩したことで共創を可能にしました。

特に、マツダと日本製鉄という連携が従来にない考え方であり、
日本製鉄側もマツダが最初にこの構想を持ちかけた際に、半信半疑の
反応だったものが、マツダの熱意を伝えると「本気に答えるべき」
という取組みになったと言われています。

このような、新しい開発購買の流れはこの先も広がっていくと考え
ます。新しい開発購買は、「テクノロジー(AI・データベース)」
+「新しいサプライヤとの共創(誰と・どう共創するか戦略的連携)」
によって進化します。

従来の開発購買は、優れた人材がいれば動き、いなければ止まり
ました。新しい開発購買は、AIが属人的なノウハウを補い、戦略的に
選ばれたサプライヤを開発上流に参加させることで、「人に頼らず
仕組みとして機能する」活動に転換しつつあります。

そしてもう一つ付け加えると、この方程式を成り立たせるためには、
誰と戦略的に連携するかという点から、調達購買部門の目利き力が
欠かせません。また、AI・情報基盤の整備といった従来、調達購買
部門が不得意であった領域での仕組み化も必要となってきます。

AI・情報基盤整備の点は、外部コンサルやテクノロジーパートナーの
支援や開発部門との連携も必要です。いずれにせよ、これから数年で、
この新しい開発購買の形は、一部の先進企業の事例から、より広い
製造業の実践へと広がっていくでしょう。

コスト高騰という強い外圧の中で、「コストを設計する」活動に
再度、本格的に向き合う時機が、今まさに来ているのです。


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2026年05月08日

MVVアプローチのすすめ

従来、私は調達方針や調達戦略というものに対して、どちらかというと
否定的でした。

「公平公正な取引」や「開かれた取引機会」といった美辞麗句的な言葉、
あるいは「3年で◯%のコスト削減」といった定量目標は、あっても
なくても大差がなく、部門としての真のゴールとは言えないと感じて
いたからです。結果として、どの会社も似たような方針・戦略となり、
調達購買部門としての差別化にはつながらない、そう考えていました。

一方で、品目・品種別に策定するカテゴリー戦略は、個別最適な
調達購買を実現するうえで極めて重要なものです。調達戦略は、この
ような具体的なカテゴリーごとに作成されるべきものだと考えて
いました。

しかし、2017〜2018年頃からでしょうか。

優れた調達購買部門には、目指すべきゴールとしてのMVV(ミッション
・ビジョン・バリュー)が明確に存在していることに気づきました。
何がミッションで何がビジョンかといった厳密な定義は本質ではあり
ません。調達購買部門として目指すゴールや、果たすべき役割・機能を
部門内で共有するための「共通の価値観」、それがMVVなのだと思い
ます。企業によっては、これをフィロソフィーや中期経営計画という形
で共有している場合もありますが、いずれにせよ、このような価値観の
共有が重要であることが分かってきました。

これまで調達購買部門の改革は、他の業務改善プロジェクトと同様に、
現状調査 → 課題抽出 → ToBe検討 → 施策への落とし込み → 施策
実行といったステップで進められてきました。ただ、このアプローチ
には限界があります。なぜなら、どうしても「現状の課題をどう解決
するか」に主眼が置かれてしまうからです。

何度も申し上げている通り、調達購買部門を取り巻く事業環境の変化は、
近年とくに激しくなっています。人件費や市況の高騰、地政学リスクや
政情不安による供給リスクの顕在化、構造的にサプライヤ優位な時代の
到来、さらにはGHG排出量管理や人権デューデリジェンスなど、サプライ
チェーンにおけるサステナビリティへの対応強化など、枚挙にいとまが
ありません。

このような時代においては、新たな課題や業務が次々と生まれます。
それに対し、課題解決型のアプローチだけでは、もはや対応しきれま
せん。今後は、MVVアプローチによる部門改革が不可欠になってくるの
です。

MVVアプローチとは、まずMVVを策定・明文化し、とくにミッションから
将来的に必要な機能や役割を抽出します。そして、それらを具体的な
業務課題へと落とし込み、ミニプロジェクト方式で解決を進めていく
アプローチです。

MVV策定における最大のポイントは「自立的な改革推進」にあります。
そのためには、一部のメンバーだけでMVVを作るのではなく、若手を
含めた多くのメンバーで議論し、進むべき方向を自分事として捉えて
いくことが重要です。

その際の進め方のポイントを、ここでは2点ほど挙げておきます。

1点目は、インプット情報の収集です。

インプット情報とは、社内マネジメントや事業部門のユーザー、そして
サプライヤの声です。私はこれらをVoC(Voice of Customer)、VoS
(Voice of Supplier)と呼んでいますが、調達購買部門に対する期待
や不満を改めてヒアリングすると、驚くほど辛辣な意見が出てきます。
こうした声を踏まえ、「自分たちはどうあるべきか」を多くのメンバー
で議論することは、非常に有効です。

もう1点は、ワークショップの実施です。

ワークショップは自由闊達な議論の場ですが、可能であれば合宿形式で
複数回実施することをお勧めします。それにより、少なくとも参加者の
間で共通の課題認識と方向性を持つことができます。私たちが支援する
際には、3〜4回程度のセッションに分け、
問題意識の共有 → ミッションの明確化 → ビジョン・バリューの
明文化 → 業務課題の抽出 → 施策実行計画の策定
といった流れで、MVV作成と全体課題の整理を進めていきます。

全体課題の解決を推進するにあたっては、部門全体の改革として捉えて
いくための仕掛けが欠かせません。具体的には、課題ごとにミニプロ
ジェクトチームを立ち上げ、プロジェクトを自分事として進めるメンバー
を広げていくこと。また、部門内外への広報活動や顧客満足度調査の
実施なども、非常に有効な手法となります。

MVVアプローチによる改革は、単なる業務改革ではありません。
これは部門改革であり、組織改革であり、意識改革でもあります。皆で
作成した自分たちのゴールを自分事として捉え、改革を推進していく
アプローチだからです。

これまでも多くの企業で、MVV策定と業務課題解決を組み合わせた
部門改革のご支援をしてきましたが、ビジョンとして明文化された内容
は、私の想定を超えるレベルのものになるケースが少なくありません。

MVVアプローチは、このようなドラスチックな部門改革を進めるうえで、
非常に有効な手法だと感じています。先行きが見えない時代だからこそ、
このような逆転の発想による改革が、今まさに求められているのでは
ないでしょうか。


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2026年04月22日

ニュースや情報に接する視点と感性

前回、前々回のメルマガでも触れましたが、バイヤーにとって「目利き力」
は欠かせない能力であり、日々の業務を通じて育成されていくものです。
もちろん、それを意識して業務に向き合っていることが前提となります。

しかし、この「目利き力」は、単に会社や工場、モノの価値やコストを
見極める力だけを指すものではありません。

私はこれを、広い意味での「情報に対する感性」も含めた能力だと考えて
います。ニュース、日常の会話、市況情報、景況、政治、紛争、さまざま
な事案―バイヤーは日頃から外部との接点が多く、活きた情報に触れや
すい立場にあります。さらに近年は、AIを活用することで、多様な
ニュースや情報を簡単かつ低コストで入手できるようになりました。

重要なのは、それら膨大な情報の中から「本当に重要なもの」を見極め、
関係するステイクホルダーに展開していくことです。私はこの機能を
「インテリジェンス機能」と呼んでいますが、これは今後ますます
重要性が高まる役割だと考えています。

私自身、新聞や雑誌、Webサイトなどで目にしたニュースや情報を、
コメント付きでチームメンバーに共有することを心がけています。
なぜなら、日々流れていく出来事の中に、自分たちの仕事に直結する
トレンドの芽が隠れているからです。

例えば、最近特に興味深いと感じたニュースを2つ挙げてみます。

1つ目は、レアメタル調達における代替材として、リサイクル材が注目を
集めているという動きです。中国との関係悪化をきっかけに、代替材料の
採用を検討する企業は増えています。その中で、日本企業がリサイクル材料
を新たな代替材として積極的に検討する動きが加速し、関連ニュースが
日々流れてきています。

サステナブル調達が企業戦略の重要テーマとなる中、リサイクル材料は
「エコだが高価なもの」から、「サステナブルで、エコで、安価な新たな
供給源」へと捉え直されつつあります。いわば、一石三鳥の可能性を
秘めた材料です。

もっとも、リサイクル材料の本格採用には
・サーキュラーデザイン(リサイクルしやすい設計)
・リサイクル技術の開発
・リサイクルサプライチェーンの確立
という3つの課題があります。先進企業は、これらの課題をクリアすべく
着実に取り組みを進めています。

もう1つ、最近のニュースで非常に興味深かったのが、マツダと日本製鉄の
アライアンスによる開発購買推進の取組みです。これは、マツダが日本製鉄
とアライアンスを組み、新車の外板周りを一括受注する前提で、車両構造
そのものを見直し、素材メーカーのノウハウを開発初期段階から取り込む
ことで、QCDを作り込んでいく取組みです。

従来の開発購買は、どちらかといえば社内の開発・設計経験者を中心に
進められるケースが一般的でした。一方、この取組みは、非系列サプライヤ
と対等な立場で共創を行う「上流関与型」の新しい開発購買モデルと言え
ます。このような取組みは、今後さまざまな企業に広がっていくと考えら
れます。

一方で、若い世代を見ていると、ニュースや情報に対して貪欲に触れよう
とする意識や、それらを「自分事」として捉える視点が弱いように感じる
ことがあります。なぜでしょうか。

現代はSNSやインターネットを通じて情報が溢れています。トレンドの
キャッチアップは非常に早い一方で、社会ニュースについては
「どこか遠くの出来事」として受け止められているケースも少なくあり
ません。

背景には、「知っている」ことと、「自分の仕事や生活にどう影響するか」
を考えることの間に、大きな壁があるように思います。つまり、So What?
(だから何なのか)を考える訓練が不足しているのではないでしょうか。

So What?を考えることは、事象を「自分事化」することに他なりません。
それが難しい理由として、タイムライン型の情報消費に慣れ、ニュースの
背景や文脈を読み解く思考が弱くなっていること、また情報を点として捉え、
自社や自分の専門分野のトレンドという「線」で結びつける訓練が不足して
いることが挙げられます。

これはバイヤーだけでなく、コンサルタントを含むあらゆるビジネス
パーソンに共通する課題です。ニュースや情報に対する感性を高めることは、
自身の成長や成果に直結します。そのためには、情報の読み解き方を意識的
に鍛える必要があります。

例えば、
「このニュースが起きたことで、次に困る人は誰か。喜ぶ人は誰か」と自分
に問いかけてみる。あるいはニュースを見た際に、「もし自分が担当者
だったら、どう動くか」という仮説を1つだけ立て、後日その仮説が正しか
ったかを検証してみる。こうした小さな訓練は非常に有効です。

また、SNSやAIの要約、他人の感想といった二次情報だけに頼らず、元の
ニュース記事や統計データにあたること、あるいは自身のネットワークを
通じて第三者の意見を聞くなど、「自分の考えの確からしさ」を検証する
姿勢も重要です。

ニュースや情報に接する視点や感性が変われば、行動が変わります。仕事は
「やらされるもの」から「トレンドへの対応」へと変わり、一気に面白さを
増します。

その第一歩は、ニュースや情報に接する感性を高めることの重要性に気づく
ことです。ぜひ、日々のニュースや情報との向き合い方を、少しだけ変えて
みてください。


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2026年04月09日

サプライヤモチベーションマネジメントはどう進めるのか

前回のメルマガでは、調達購買部門が持つ目利き力と、サプライヤを
「自社のファン」にするエンゲージメント力によって、サプライヤ
基盤を強化することが、今後求められるという話をしました。

一方で、昨今の地政学リスクの高まりや深刻な人手不足、原材料価格
の高騰など、調達・購買を取り巻く環境は、かつてないほど厳しさを
増しています。こうした時代において、企業の競争力を左右するのは、
個々のサプライヤとの強固な信頼関係、すなわちサプライヤエンゲー
ジメントを高める力です。

サプライヤは常に「どの企業と組むのが自社にとって最も得策か」を
見定めています。それでは、彼らから選ばれ、共に成長するためには、
どのような手法が考えられるでしょうか。

私は、このサプライヤエンゲージメントを高める仕組みをサプライヤ
モチベーションマネジメントと呼んでいます。

なぜなら、個人任せではなく、仕組みとして定着させることが必要
だからです。サプライヤモチベーションマネジメント手法には、
「これをやっておけば大丈夫」という万能策はありません。

エンゲージメント力を高めるために、さまざまな手法のアイディアを
抜け漏れなく検討し、実践し、効果を確認しながら定着させていく
ことが重要なのです。

サプライヤモチベーションマネジメントの手法は、6つの軸で捉えられ
ます。1つ目の軸は「パーパス共有と信頼関係づくり」です。

従来、サプライヤに対する情報共有は、短中期的な生産情報の共有が
中心でした。それに対して現在求められているのは、経営目的や
経営理念、将来展望、製品・事業のロードマップの共有です。
これは、バイヤー側がサプライヤに情報を共有するだけでなく、自社
がサプライヤの経営目的や理念に合っているか、という逆の視点も
求められます。

信頼関係づくりという点については前回のメルマガでも触れましたが、
サプライヤを自社のファンにしていくことが重要です。一緒に新しい
事業・技術・製品で、新しい時代をつくっていく。そんな想いを共有
し、サプライヤを自社のファンにしていく必要があります。

2つ目の軸は「コミュニケーションの進化」です。従来は担当者間
のやり取りや、年次総会などの1対nのコミュニケーションや挨拶中心
の表敬訪問が中心でしたが、これを、マネジメント同士で双方向の
課題解決を話し合う1対1のビジネスレビューMTGへと引き上げていく
ことが求められます。

さらに、定期的なサプライヤ本社・主要工場への訪問、VoS(Voice 
of Supplier)の活用など、新たな取り組みを試していくことが肝要
です。

3つ目の軸は「契約・インセンティブの提供」です。評価が良い
サプライヤに対しては、発注シェアを拡大するなどのインセンティブ
提供が不可欠です。また、場合によっては、プリファードサプライヤ
契約やLTA(長期供給契約)の締結など、サプライヤへの約束を明文
化することも重要な施策となります。

4つ目の軸は「情報共有と協働」です。従来の生産情報の共有に加え、
技術情報や、自社顧客を含むサプライチェーンの下流が何を求めて
いるのかといった顧客情報の共有も含まれます。

協働の観点では、代替品提案を含むVAVE提案や、提案採用時のゲイン
シェアの仕組み整備に加え、近年では、バイヤー企業が課題を提示し、
提案を募る、リバース展示会の開催なども、協働が進んだ形と言える
でしょう。

5つ目の軸は「QCDの最適化」です。品質面では、過剰品質や自社規格
の見直し、デリバリー面では、リードタイムやMoQの適正化、支払
条件の見直しなどが挙げられます。また、従来の調達購買部門では
タブー視されがちな適正価格への見直しも重要です。ここは、サプラ
イヤの営業担当者にとって、関係性強化の障壁となっているケースも
多く、適正なニーズの見極めと、自社製品への価格転嫁の仕組みと
つなげていく必要があります。

最後の6つ目の軸は「育成・支援によるサプライヤ体質強化」です。
特に、東南アジアなどの新興サプライヤに対しては、技術・生産・
品質管理といった自社ノウハウを提供し、改善を共に進めていく
ことが有効です。

また、サプライヤの人材育成支援や金融面での支援も効果的です。
重要なのは、改善推進を上意下達で一方的に行うのではなく、
バイヤー企業とサプライヤが双方向で、一緒に進めていくという点
です。

このように、サプライヤモチベーションマネジメントの6つの軸を
紹介してきましたが、まずは、自社がサプライヤから選ばれる
買い手になっているかどうかを、以下の5項目で振り返ってみま
しょう。

透明性:評価基準や発注根拠を明確に示せているか。
双方向性:相手の課題解決に対して、自社も汗をかいているか。
迅速性:見積回答や支払、問い合わせ対応が滞りなく行われているか。
心理的安全性:失敗や懸念を隠さず相談できる関係か。
リスペクト:相手をプロとして尊重し、感謝を言葉にしているか。

最後にお伝えしたいのは、バイヤー担当者のマインドセットです。
サプライヤは会社ですが、最終的には個々人の想いの集約で動きます。
バイヤー担当者は、サプライヤに対して、自社を売り込む一番の
営業マンであるべきです。
「御社のこの技術が、私たちの製品を通じて、世界をこう変えて
いくんです」そう熱く語れるバイヤー担当者がいる企業に、サプラ
イヤは最高の経営資源を投下したいと考えます。

皆さんは、サプライヤの心を動かす活動ができているでしょうか。

今一度、パートナーとの向き合い方を見直すきっかけになれば
幸いです。


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