2021年06月02日

コンサルタントとして心がけていること

今回は私が今まで20年以上従事しているコンサルタントという
仕事で心がけていることについてお話します。

著名な未来学者であり、様々な企業経営者のコンサルタントと
して活躍したP.F.ドラッカーは自身のコンサルタントとしての
能力についてこう言っています。

「コンサルタントとしての私の最大の強みは、無知になり
いくつかの質問をすることである。」

これは非常に重要なことです。コンサルタントは、質問力を持ち
素朴な疑問を行うことで、新しい発見を生み出すからでしょう。
コンサルタントの仕事の多くは質問をおこない、現状の課題を
定義し、それに対して解決方策を提案し、実現していくこと
になります。そのためドラッガーの発言はとても頷けるもの
です。

他方で、コンサルタントは日々顧客の状況を把握し、顧客を
ストレッチさせるような提案をしていくので、顧客を説得し、
行動に移してもらうために、説得力のある資料の作成と、
説明が欠かせません。その為には、論理的でわかりやすい
資料が必要です。また説明のし方も重要な能力になってきます。

また、顧客に説明を行う場面では、多くの質問を受けます。
それらの多くの質問に対してどのように答えるか、これも、
とても重要です。

私が常日頃、心がけているのは、質問に対して「全力で
正面から答えること」と言えます。

様々な場面で、よく質問に対して質問で返す人もいるでしょう。
しかし、これは実は簡単な話法のテクニックです。ある程度
話すことを、常にやっている人であれば、答えがわからない
時に、誤魔化すのは、実は簡単なことでしょう。皆さんも、
気をつけて観察してみると、質問に質問で返す人がとても多い
ことに気が付きます。

しかし、私は質問に質問で返すことはやりません。

「全力で正面から答えること」を、心がけているのです。

「わからないことはわからない、無理なことは無理、難しい
ことは難しい、知らないことは知らないと、」正面から全力
で答えるのです。また、これは自分自身だけでなく、コンサル
ティングプロジェクトのメンバーや部下に対しても、そう
指導徹底させます。

経験を積んだコンサルタントは、質問に対して誤魔化したり、
質問で返したりするのは案外容易です。コミュニケーション力
や話術は日頃の業務で、かなり鍛えられますし、自分の発言が
責任を問われないようなコミュニケーションをすることにも
長けていきます。

経験を積めば積むほど何か質問されると、その質問に対して
答えを持っていない、もしくは分からない場合に、質問返し
をする方がいますが、私がこれをやるのは、唯一、質問の
意味がわからないときだけです。

そういう時には、「ご質問の趣旨はこういうことですか。」
という確認はします。

何故、このようなことを心がけているか、と言いますと、
質問に対して誤魔化したり、はぐらかし対応することで、
顧客からの信頼が得られないからです。短期的には誤魔化
せても、それが繰り返されると、次第に信頼されなくなって
いきます。

ですから、私は質問に対しては全力で正面から、できる限り
相手が理解できるように答えることを心がけているのです。

全力で正面から答えることは相手の信頼を得る為ことに
つながります。また、全力で正面から回答することで、
次の疑問が生まれてくることも多くあるでしょう。

こういったやり取りを繰り返すことで、信頼関係が深まり、
新たなアイディアや発見が生まれてきます。

そんなこと、当たり前でしょ、、と言われるかも知れません
が、これ、意外とできていない人が多いです。また、全力で
正面から答えることは、自身の経験や考えを常に頭の中で
整理しておかなければならないでしょう。

こういう点からも、私はコンサルタントとして、心がけて
いることとして、「質問に全力で正面から答える」ことを
意識しています。

nomachi0306 at 10:00|PermalinkComments(0)

2021年05月13日

調達購買部門が目指すこと Vol.3

今回は調達購買の組織論についての最終回になります。

初回は分散購買化の動き、2回目は集中購買化の動きについて
述べてきました。今回はこのような様々な動きを受けて、今後
調達購買部門が目指すべきこと、について述べていきましょう。

調達購買組織は、企業毎の状況や求められる機能によって最適
な姿が変わってきます。前者である分散化の動きについて
は、どちらというと製品・事業のニーズにフォーカスし、主に
スピードや魅力的な製品・事業作り、技術購買や開発購買を
目的として進められるケースが多いです。

一方で、集中購買化の動きについては、グローバルでの購買統制
やサービスのシェアード化などの経営ニーズに基づき、進められ
ます。

どちらの方向が正しいとは言えません。個々の業種、企業毎に
最適な機能強化の方向性とその方向性にあった組織体制整備が
求められるからです。

しかし、調達購買部門が目指すことは両者ともに同じです。
それは「最適な調達購買(外部支出)が行われている状況を
つくりあげる」ことでしょう。

しかし、しっかりした調達購買業務を行うことは工数とリード
タイムがかかります。また、調達購買がもたらす成果は通常、
大きな効果をずっと継続して出すことは難しいです。この点
から、ある時点で調達購買は手間はかかるが、それほど大きな
効果は出ない、という評価がされることが多くなります。

それでは手を抜いていいか、というと、そうではありません。
手を抜けば、かならずQCDのバランスは崩れていきます。
知らない間にコストが上がっていったり、品質が悪くなったり
することがしばしばおこるでしょう。

多くの企業で調達購買の組織体制の見直しや再整備が行われて
いるのは、このような状況にあるからです。

それでは、どうすればよいでしょうか。

結論から言いますと、適度に最適な調達購買が行われていること
を担保できる仕組みを持つことと、かける工数やリードタイム
を削減することです。

例えば、依頼元へ購買権限を移譲することもその一つの方策です。
しかし、それによってQCDのバランスが崩れないような仕組みを
持つことが求められます。ある企業の調達購買部門は、従来は
殆どの調達購買権限を集中して持っていましたが、事業ニーズ
やスピードアップのために、依頼元へ権限移譲を進めました。
しかし、適度に最適な調達購買を担保するために、依頼元に
対して積極的に様々な情報提供を行うとともに、それらの情報
を活用して依頼元が調達購買業務ができるようにしていきました。

一方で、グローバルでカテゴリーマネジメントを進めている企業
などは、集中購買化することによるメリットが未だに大きいから
でしょう。特にどちらかというと今までグローバル化が進んで
いないで、M&Aなどでグローバル化を進めている企業などは、
このような経営環境であると言えます。これらの企業は集中化を
進めることで、最適な調達購買を担保する仕組みを作ろうとして
いると言えるでしょう。

このように一見正反対に進んでいるように思いますが、実は
どの企業も調達購買部門が目指すことは共通しているのです。

よくあるパターンは調達購買組織が立ち上がり、当初はコスト
削減で大きな効果がでている。これを元に集中化が益々進みます。
調達購買権限(どこのサプライヤにいくらで発注するかの権限)
は非常に重要な権限ですが、人や組織は一度持った権限を手放す
ことに抵抗感を持つでしょう。そのため、調達購買部門は経営
から指摘されるなど、何らかの全社的な改革がない限り。自分
達の特権(調達購買権限)を手放そうとはしないのが通常です。

一方で、依頼元は、毎年予算制約もあり、年々人も減らせれて
いる。調達購買部門は益々官僚的になり、自分達の特権を声高く
主張し続けるのです。こういう状況に陥っている企業や人、
組織は少なくありません。

以前、私があるバイヤーと話した時に、そのバイヤーがこういう
ことをおっしゃっられていました。

「依頼元が最適な調達購買業務ができるのであれば、自分達は
何もやる必要はない。我々が目指さなければならないのは、
このような世界だ」

調達購買部門が今、目指さなければならないのは、
「最適な調達購買業務ができている状況を作り出す仕組みの
構築」ではないでしょうか。私はこのような基本的な考え方を
調達購買部門も持つべきであると考えます。

このような姿を目指す上で大きな課題となるのは、どのように
最適な調達購買業務を担保していくか、です。最適な調達購買
業務のためには、どこから、いくらで買うか、の仕組みを整備
する必要があるでしょう。

どこからという視点からは、サプライヤマネジメントが欠かせ
ません。例えば調達購買部門がサプライヤの評価を行い、品目別
に推奨サプライヤを予め選んでおき、依頼元はサプライヤから
どこから買うかを決める、というような仕組みになるでしょう。

いくらで買うか、という点については、査定や交渉のスキルを
習得する必要があります。そのためには、査定や交渉手法を
体系化し、スキルとして共有していく仕組みづくりが欠かせま
せん。

調達購買部門はこれらの仕組みを自ら持つだけでなく、会社
全体の能力としてスキル育成していかなければならないのです。



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2021年04月21日

調達購買部門が目指すこと Vol.2

前回に引き続き、今回も調達購買組織論について、最近の
動向やそこからのインサイト、そしてそもそも調達購買部門
は今後何を目指していけばよいか、ということについて考察
を述べていきます。

前回は本田技研工業の購買組織改編について取り上げ、事業
や車種別の軸を重視し、どちらかというと分散購買化する
方向であることや、そのような動きが他社でも見られること
を述べてきました。

今回は前回とは反対の方向とも言える組織体制の事例に
ついて述べていきます。

多くの日本企業では調達のグローバル化が遅れていました。
特に自動車、電機などの一部の業種を除いては海外拠点での
調達は殆ど現地に任せきり、だったと言えるでしょう。
そのため、海外拠点において、何をどこのサプライヤから、
いくらで購入しているか、という情報すら共有できていない
ことが、つい最近までの状況でした。

一方で欧米企業においては、グローバルで集中購買をしていく
ことは経営にとって当たり前のことであり、それによって量の
メリットを引き出し集中化、集約化によってコストの最適化
を実現しています。

昨今、日本企業においてもグローバル化の波が押し寄せており、
海外企業のM&A(In-Out型)などで、海外市場拡大を実現する
ような業種が増えています。代表的な業種は食品、飲料や製薬
などでしょう。また一部サービス業においても国内市場が飽和
するなか、積極的にIN-OUT型M&Aを行っています。

このような企業ではM&Aにより海外企業を買収したものの、
調達購買機能に関しては、欧米的な経営手法が徹底されており、
買収された企業の方が集中購買や購買統制が効いている場合も
多く、グローバルでの集中購買メリットを自然と追及していく
方向に向かいます。

そうすると、グローバルでのカテゴリーマネジメント
(カテゴリー毎の戦略に基づき、サプライヤ選定やコスト削減
の推進等をグローバルカテゴリーリーダーが責任を持って推進
していく)を実現する体制への改革を進めている企業も少なく
ありません。このように、カテゴリーマネジメントを軸とした
組織体制の整備を進めている企業が増えています。

それと共に、最近増えているのは、間接材調達のグローバル
統制強化の動きです。直接材は事業や製品戦略に紐づくもの
なので、調達購買はどちらかというと分散化しスピードを重視
する傾向が強いと言えます。一方で、標準となるプロセスや
システムを活用することで、集中化することによるメリットが
高く、グローバルでの購買統制や見える化を、間接材購買に
おいて実現する日本企業が増えているのです。このような企業
においては、間接材調達のグローバル統制に適した組織体制
整備が進められているようです。

また同様に、昨今のホールディング化に伴い、ホールディング
傘下にシェアードサービスとして調達購買機能を持つ企業も
増えています。
しかし、多くの企業では、ホールディング傘下の調達購買機能
は完全な集中購買を指向しているわけではなく、集中購買の
メリットが高い品目についてのみ、集中化したり、一部の
サービスの共用(シェアード化)を行っているケースが多い
ようです。
共用するサービスに関しては、人材育成や教育、調達システム
などのインフラの提供、様々な情報収集管理などの企画管理
業務のなどが主たるものとして上げられます。

今回取り上げた事例については、いずれも集中化することに
よるメリットを生かすための組織体制整備が進められている、
ということではないでしょうか。従来の議論では集中or分散
と言った二極化した議論が多かったですが、今回取り上げた
グローバルカテゴリーマネジメント組織や間接材購買の
グローバル統制への対応、ホールディング傘下でのシェアード
サービスなどに共通するのは、それぞれの企業がおかれた
状況に対し、集中化によりメリットを生かすための組織づくり
と言えるでしょう。

次回はこれまでの事例を踏まえ、今後調達部門が目指すべき
方向とそのための課題について私の考えを述べていきます。



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2021年03月31日

調達購買部門が目指すこと

かなり久しぶりのメルマガです。ご愛読者の方にはたいへん
失礼いたしました。1-3月はかなり業務が忙しく、メルマガを
執筆する時間が取れなかったのと、緊急事態宣言が発出されて
おり、情報のインプットがあまりなく、ネタに困っていた、
というのもその理由として上げられます。

今回は、調達購買組織論について、最近の動向やそこからの
インサイト、そしてそもそも調達購買部門は今後何を目指して
いけばよいか、ということについて3回シリーズで考察を述べ
ていきましょう。

昨年の4月に本田技研工業は4輪事業の組織変更を行いました。
プレスリリースによりますと、
「2030年ビジョンの実現に向けて、現在取り組んでいる
「既存事業の盤石化」と「将来の成長に向けた仕込み」を
さらに加速させるために、事業運営体制の変更を行います。」
「従来の「営業(S)・生産(E)・開発(D)・購買(B)」
の自立した各領域による協調運営体制から、SEDB各領域を
統合した一体運営体制へ変更します。これにより、四輪事業
全体を捉えた戦略を立案し、より精度の高い企画に基づく
開発を実現するとともに、開発から生産まで一貫した効率の
よいオペレーションを通じてものづくりを進化させます。」
「これらの事業運営体制の変更に伴い、生産本部、購買本部
は発展的に解消します。」という発表内容になっています。

ホンダは従来、開発は技術研究所で行い、製造販売は技研
工業で行っており、購買機能は技術研究所と技研工業で
役割分担をしていました。それを四輪事業全体を捉えた
一貫したオペレーションの確立を目的に、技研工業に
その機能を持たせ、技術研究所は先進技術を中心とした
技術開発を行う、という役割分担に移行したのです。

この役割分担は他自動車メーカーでは既にこのような形に
なっており、それを導入するものでした。

一方で「生産本部、購買本部は発展的に解消します。」と
あり、生産本部は四輪事業本部の生産統括部に移管され
ました。それでは、購買機能はどこに行ったか、といいます
と、四輪事業本部の「ものづくりセンター」へ主たる機能を
移管したようです。「ものづくりセンター」は所謂開発機能
であり、購買が開発機能と統合されたのが今回の組織改編
でした。

従来、多くの企業では、調達購買部門の役割を経営は評価し、
どちらかというと、その重要性の高まりから、従来生産部門
や開発部門、場合によってはコーポレート部門の一機能
という位置づけから調達本部、購買本部のように本部化する
傾向が強かったのがその傾向と言えます。

それに対して、今回の本田技研工業の組織変更は、購買本部
を発展的に解消し、依頼元である開発本部と統合という、
従来ではあまり見られない改革となっているでしょう。
調達購買部門にとっては、たいへん興味深い組織改革と
言えます。

一方で集中購買か分散購買か、という点に関しては組織内の
体制がどのようになるかによるので、一概に、この本田技研
工業のケースが分散購買化につながる、とは言えません。
しかし、自動車の開発組織は、おそらく車種別、部位別の
組織となるケースが多いと言えます。そのため、品目別、
サプライヤ別組織(従来の調達購買機能)である横串機能は
弱まる方向です。つまり、依頼元(開発部門)による分散
購買化の方向に向かうと言ってもよいでしょう。

このように、2012年位からでしょうか、調達購買の本部化の
流れとは別に、行き過ぎた集中購買から、事業への貢献を
目的に、縦の機能強化を行い、調達購買の分散化を進める
動向は顕著に出始めてきています。

所謂、調達購買改革の第一次の波であった集中購買化が
2000年以降進んできたわけですが、(何でも)集中化し、
コスト削減を、という流れから、事業スピードを重視し、
コストよりもスピードやデリバリー、変革への対応を
重視することで分散購買化する傾向が、様々な企業で出て
きています。

実名を上げるのは避けますが、某重工メーカや電機メーカ
など、一時期は本部化したものを再度事業所毎に分散化を
進めたり、コーポレート調達センターから事業毎の調達に
戻すなどの事例が上げらるでしょう。

今回の本田技研工業の組織改編は分散購買化の一つの事例
として上げられます。しかし、このような分散購買化の
動向において、調達機能の弱体化を防ぐために様々な仕組み
を作っている企業も出てきています。例えば、価格の妥当性
をチェックするための情報提供を行ったり、購買監査の仕組み
をつくり、依頼元の購買統制のPDCAを回す仕組み、などです。

これらの仕組みを構築することで、誰が購買しても適正な購買
ができるような仕組みを作り、購買統制を担保しています。
このような仕組みによって事業スピードを損なわずに、分散
購買でも適正な購買が実行できる仕組みを構築しているのです。

このように事業軸を重視し、過度な集中購買から分散購買化
する動向が見られる一方、グローバルでのカテゴリー
マネジメントで組織体制を整備する方向の企業や、
ホールディング傘下の調達体制の整備を進める企業も多く
出てきています。

次回はそれらの企業の組織体制整備の動向について述べて
紹介していきましょう。



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