ロンドンでの同時多発テロにすべて持っていかれましたが、大事なことなので、振り返ってまとめてみます。
 
 
これは、先日紹介した「職業選択における年齢制限」の続きです
 
 
 
不合格とされた方は、群馬大学医学部を相手に訴訟を起こされたようです。
 
 
この問題に対しては様々な方が意見を述べられていて。やはり提訴した女性を擁護する意見が多かったように思えます。
 
 
 
ポイントは、
?群馬大学医学部のHPには「年齢制限はありません」とあるのに、
 年齢のみを理由に不合格とできるのか
 
?そもそも試験には合格した(しかも、平均を上回って)のに、年齢だけで落とすことは許されるのか
 
?いくら55歳とはいえ、並々ならぬ努力で試験を突破した女性を、年齢だけで落とすとは何事だ
 
こんなところでしょうか
 
 
 
 
スタンスをはっきりさせるために、結論から述べておきます。
 
 
 
今回の訴訟に関しては、不合格とされた主婦に分があると思っています。やはり、「年齢制限はありません」と載せている以上、年齢のみを理由に不合格としたことは不当な合格判定権の乱用でしょう。合格にするべきです。
 
 
 
しかし、それ以上の擁護はできません。前回のエントリーから意見は変わっていません。
 
 
 
 
この問題に対してマイスターさんは、
 
 
において、これは憲法違反ではないか?という提起をなされています。
 
 
 
確かに群馬大学は、この女性が入学を拒んだわけですが、それはあくまで「彼女が群馬大学で医学を学ぶことを」拒否したにすぎません。高齢者医療に興味があるならば、それに関する書籍はそこら中にあります。だれも彼女が学ぶことを止めてはいません。医者以外にも、医療に携わることはできます。
 
 
また、国立とはいえ、国立大学の法人化によって、国立大学にも自主性は認められています。
 
 
 
憲法違反はちょっと違うかな〜と思ったものの、やや抽象的な反論しか浮かばず、またこのような意見は他に見られなかったので紹介しました。話を戻します。
 
 
 
 
 
マイスターさんも疑問に思われていましたが、そもそもなぜ高齢の方が医学部に行くことが問題になるのか。
 
 
 
 
一つは、医者一人を誕生させるのにかかる手間とお金。
 
 
 
 
もう一つは、 医者一人を一人前にするのにかかる時間。
 
 
 
 
 
 
お金というのは、学費のことではありません。周りがその人に投資するお金のことです。
 
 
前回も載せたように、学生一人が卒業するのに実際かかるお金は、数千万とも一億とも言われています。一般に高いと言われている私立医大ですら、補助金なしでは経営できないそうです。学費が六年合計でも数百万しかかからない国立では、その差額を埋めるために莫大なお金がかかっていることは、誰でも容易にわかります。そのお金は、人一人を医者にするためだけのものです。そしてそれは、もちろん税金です。
 
 
 
 
 
あなたは、数年でダメになってしまうかもしれないのに、莫大な
お金を投資したいと思いますか?病院実習を始め、手間をかけたいと思いますか?
 
 
 
 
 
 
 
そして、時間。
 
 
 
 
どこでも同じですが、社会に出たからといってすぐに一人前になれる職業はありません。ましてや、医者です。5年でも足りないでしょう。
 
 
それに現行制度では、卒後2年間はローテートといって、外科・内科を始め、定められたいくつかの科を回ることが義務付けられています。いくら高齢者医療を目指していようと、それを始める頃には、そのため体力があるかすら疑問です。
 
 
 
 
 
もちろん、何も考えていない若者が医学部に入って、だらだらと6年間をすごして医者になるのと、高齢であっても高い意識を持っている人が医学部に入り医者になるのとだと、後者の方がいいかもしれません。
 
 
 
しかし、試験に合格したる高齢者すべてが高い意識を保つ保証もありません。初めはだめな若者が、大学に入ってから意識が変わらないとも限りません。
 
 
 
 
 
投資に見合うリターンとはすなわち、卒後どれだけ医療に貢献できるか、ということです。医学部を卒業するということは、医者になれてよかった、ではいけないのです。
 
 
そして、その貢献度の一つの目安が、卒後どれだけの年数を働けるかです。若い人ほど長く医者として活躍できると考えるのは、至極当然なことです。群馬大学関係者が、「国立大学には長い年月をかけて社会に貢献できる医師を育てる使命がある。しかしあなたの場合、卒業時の年齢を考えたとき社会に貢献できるかという点で問題がある」と述べた一番の理由は、そこにあるのです。
 
 
 
 
 
医学部は今、医学を学ぶところではなく、医者を養成するための場所になっているのが実情です。その事実は、他の学部と大きく異なるところではないでしょうか?そしてその事実が、今回の問題を生んだとも思えます。
 
 
 
 
 
この際だから、全医学部に、この問題をどのよう捕らえているかはっきりしてもらいたいですよね。本当に年齢を考慮しないのならば、それはその大学の方針なのですから、それ以上は言えません。
 
 
 
そして訴訟で争う意思があるのなら、群馬大学医学部は速やかにFAQを直しましょう。これは群馬大学の信用問題で、今回の問題とはまた別の話です。 
 



追記(2006/10/27)

のーないすこうぷ:地裁で判決、群馬大学医学部不合格問題
http://blog.livedoor.jp/nonaiscope/archives/50915207.html