お互いに相反する内容のエントリ。前者が問題提起をし、後者が、それを例にとり批判・反論する形。どちらを読んでも、なんだかなーという感想しかわかない。
僕は、医療側に肩入れしてしまう人間なので、両者を対比させたとき、批判は後者に集中してしまう。もちろん、後者に対する批判は自分なりに確固たるものあってであり、だからこそTBは後者にしか送っていない。
内科開業医のお勉強日記 :
ジェネリック主流なのは・・・世界でもごく一部の国?
http://intmed.exblog.jp/4273763
世界一小さい新聞 - nikkansports.com :
医師と患者のガチンコ相撲
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/09/post_157.html
要は、ジェネリック医薬品って本当に世界で受け入れられてるの?と思った開業医が実際はそうでもないと示された論文を紹介し、
それを、情報の取捨選択による世論操作だ、そもそもなぜそこまでジェネリック医薬品を排除したがるのか?という反論。
どちらも資料として提示してあるものは結果をまとめたグラフでしかないし、用いられている論文のほかに、国による保険制度、薬の流通形態なども考慮する必要があるだろうから、それをもってジェネリック医薬品が世界的なスタンダードであるか否かなんて判断はできない。その点で、開業医(前者)の結論は確かに言い過ぎである。
ただ後者の方は、反論の形としては正しいのだけれど、そもそもジェネリック医薬品がどのようなものであるか、薬価差益とはどのようなものであるか、そして薬に関して開業医(前者のブログ主)が考えていることに関しては、不勉強なのか確信的なのか、全く的を射ていない。そこでここでは、「薬に関して開業医(ブログ主)が考えていること」に重点をおいて、更なる考察を重ねていこうと思う。
ジェネリック医薬品がなぜ安いかは、なぜ先行医薬品とジェネリック医薬品がそんなにも薬価差があるのか、と同時に考えていかかなればならない。
先行医薬品が高いのは開発費が高く、それに対する先行者利益として特許期間が定められているには間違いはない。
いきなり話がそれるが、この開発費は販売促進におけるマーケティング費用なども含んだものを指すので、純粋に薬の研究開発費として使用されているお金の金額は、せいぜいこの数十%くらいなものだ。であるから、先行医薬品の薬価がそもそも高すぎるのでは?ということこそがまず議論されるべき内容である。
閑話休題
ここで頭に入れておきたいのは、先行医薬品がもっているものは、ただ単に薬としての特許だけには限らないということである。
新薬を販売する際には、第1相から第3相までの試験を段階的にパスしていく必要がある。新薬はこれら試験のデータすべてが蓄積されて開発される。これらのデータは、人体に対する悪影響を知る上でも特に重要なデータである。先行医薬品には市販の段階で、安全性に関する多くのデータが蓄積されているのである。
さて、ジェネリック医薬品(後発医薬品)。
散々言われているように、ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは「同一有効成分、同一投与方法、同一用法用量、同一効能効果」な薬である。
ここで注目すべきは「同一有効成分」と、「同一効能効果」という点。
有効成分が同じなら効能効果も同じ、と安直に結び付けてはいけない。
有効成分が同じということは、非有効成分は同一でない、と言っているのと同義である。
非有効成分の影響なんて、最後は実際に飲んでみないと分からない。先行医薬品は、試験の段階でそのデータを得ている。ジェネリック医薬品には、それらがない。そんなの大したことないだろうと考える人は、人体を甘く見すぎである。
次に同一効能効果だ。そもそも何をもって同一効能効果と言っているかというと、プラセボ(偽薬)と後発医薬品を比較対照し、先行医薬品の試験結果と同一かそれに近いかで、同一効能効果と判定される(すべてがそうとは言い切れないが)。
本来行われるべきは先行医薬品と後発医薬品との比較対照試験であるのだが、そのような試験が実際に行われているのかは分からない。ってか、聞いたことがない。
結局、同一効能効果ということも、開業医のブログでも引用されていたように、「あくまで同一であることが予想される」にすぎない。
厚生労働省が同一とみなせばOKという考えも、医師側からすれば危険極まりない。それで起きた問題だっていくらでもある。日ごろ頼りにすることない役所を、ここぞというときだけ頼りにするのはやめてもらいたい。
結局何が言いたいのかというと、ジェネリック医薬品を製造する製薬会社が力を入れているのは、第4相試験と言われる市販後臨床試験だけであり、これはつまり、先行者のデータがありますからという理由で大した検証もなく世に送り出された薬のその後だけを調べているということである。(ちなみにアメリカでは義務化されていないこの第4相試験は、マーケティング拡大の戦略にしか用いられていないという批判が絶えない。)
開業医のブログでも最後に指摘されているように、ジェネリック医薬品が安価な理由は、ここまで書いた種々の試験における安全性の検証を省略している、医師に情報提供を行うMRという役職を置かない、マーケティングの拡大だけを狙い大規模な再検証を行わないといったことすべてが要因となっているのである。
もちろん、すでに輸液や一部の薬のように、安全性も問題なしとされた後発医薬品はあり、それらを用いることは患者の金銭的負担を減らす。これを用いない理由はない。
しかしながら、安価な医薬品を用いることを患者の利益だと真っ先に考えることは、医療者からすれば医療を、ひいては患者自身の体・健康をあまりに安く、簡単に考え過ぎといわざるをえない。
開業医(前者のブログ主)を始め多くの医師が「命はお金に変えられない」と考えるからこそ、安いだけが先行し安全性が検証されていない後発医薬品の使用をためらっていることを理解してもらいたいし、おそらくはそれ抜きに金銭面だけで患者側へ歩み寄ることは不可能であろう。
患者の利益とは、ただ安価な薬剤を用いることなのだろうか?
そして、途中にも述べたが、真に検証されるべきはそもそも先行医薬品の薬価が適正であるかということではないか、という問題提起も残しておきたい。
僕は、医療側に肩入れしてしまう人間なので、両者を対比させたとき、批判は後者に集中してしまう。もちろん、後者に対する批判は自分なりに確固たるものあってであり、だからこそTBは後者にしか送っていない。
内科開業医のお勉強日記 :
ジェネリック主流なのは・・・世界でもごく一部の国?
http://intmed.exblog.jp/4273763
世界一小さい新聞 - nikkansports.com :
医師と患者のガチンコ相撲
http://blog.nikkansports.com/general/yoshida/2006/09/post_157.html
要は、ジェネリック医薬品って本当に世界で受け入れられてるの?と思った開業医が実際はそうでもないと示された論文を紹介し、
それを、情報の取捨選択による世論操作だ、そもそもなぜそこまでジェネリック医薬品を排除したがるのか?という反論。
どちらも資料として提示してあるものは結果をまとめたグラフでしかないし、用いられている論文のほかに、国による保険制度、薬の流通形態なども考慮する必要があるだろうから、それをもってジェネリック医薬品が世界的なスタンダードであるか否かなんて判断はできない。その点で、開業医(前者)の結論は確かに言い過ぎである。
ただ後者の方は、反論の形としては正しいのだけれど、そもそもジェネリック医薬品がどのようなものであるか、薬価差益とはどのようなものであるか、そして薬に関して開業医(前者のブログ主)が考えていることに関しては、不勉強なのか確信的なのか、全く的を射ていない。そこでここでは、「薬に関して開業医(ブログ主)が考えていること」に重点をおいて、更なる考察を重ねていこうと思う。
ジェネリック医薬品がなぜ安いかは、なぜ先行医薬品とジェネリック医薬品がそんなにも薬価差があるのか、と同時に考えていかかなればならない。
先行医薬品が高いのは開発費が高く、それに対する先行者利益として特許期間が定められているには間違いはない。
いきなり話がそれるが、この開発費は販売促進におけるマーケティング費用なども含んだものを指すので、純粋に薬の研究開発費として使用されているお金の金額は、せいぜいこの数十%くらいなものだ。であるから、先行医薬品の薬価がそもそも高すぎるのでは?ということこそがまず議論されるべき内容である。
閑話休題
ここで頭に入れておきたいのは、先行医薬品がもっているものは、ただ単に薬としての特許だけには限らないということである。
新薬を販売する際には、第1相から第3相までの試験を段階的にパスしていく必要がある。新薬はこれら試験のデータすべてが蓄積されて開発される。これらのデータは、人体に対する悪影響を知る上でも特に重要なデータである。先行医薬品には市販の段階で、安全性に関する多くのデータが蓄積されているのである。
さて、ジェネリック医薬品(後発医薬品)。
散々言われているように、ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは「同一有効成分、同一投与方法、同一用法用量、同一効能効果」な薬である。
ここで注目すべきは「同一有効成分」と、「同一効能効果」という点。
有効成分が同じなら効能効果も同じ、と安直に結び付けてはいけない。
有効成分が同じということは、非有効成分は同一でない、と言っているのと同義である。
非有効成分の影響なんて、最後は実際に飲んでみないと分からない。先行医薬品は、試験の段階でそのデータを得ている。ジェネリック医薬品には、それらがない。そんなの大したことないだろうと考える人は、人体を甘く見すぎである。
次に同一効能効果だ。そもそも何をもって同一効能効果と言っているかというと、プラセボ(偽薬)と後発医薬品を比較対照し、先行医薬品の試験結果と同一かそれに近いかで、同一効能効果と判定される(すべてがそうとは言い切れないが)。
本来行われるべきは先行医薬品と後発医薬品との比較対照試験であるのだが、そのような試験が実際に行われているのかは分からない。ってか、聞いたことがない。
結局、同一効能効果ということも、開業医のブログでも引用されていたように、「あくまで同一であることが予想される」にすぎない。
厚生労働省が同一とみなせばOKという考えも、医師側からすれば危険極まりない。それで起きた問題だっていくらでもある。日ごろ頼りにすることない役所を、ここぞというときだけ頼りにするのはやめてもらいたい。
結局何が言いたいのかというと、ジェネリック医薬品を製造する製薬会社が力を入れているのは、第4相試験と言われる市販後臨床試験だけであり、これはつまり、先行者のデータがありますからという理由で大した検証もなく世に送り出された薬のその後だけを調べているということである。(ちなみにアメリカでは義務化されていないこの第4相試験は、マーケティング拡大の戦略にしか用いられていないという批判が絶えない。)
開業医のブログでも最後に指摘されているように、ジェネリック医薬品が安価な理由は、ここまで書いた種々の試験における安全性の検証を省略している、医師に情報提供を行うMRという役職を置かない、マーケティングの拡大だけを狙い大規模な再検証を行わないといったことすべてが要因となっているのである。
もちろん、すでに輸液や一部の薬のように、安全性も問題なしとされた後発医薬品はあり、それらを用いることは患者の金銭的負担を減らす。これを用いない理由はない。
しかしながら、安価な医薬品を用いることを患者の利益だと真っ先に考えることは、医療者からすれば医療を、ひいては患者自身の体・健康をあまりに安く、簡単に考え過ぎといわざるをえない。
開業医(前者のブログ主)を始め多くの医師が「命はお金に変えられない」と考えるからこそ、安いだけが先行し安全性が検証されていない後発医薬品の使用をためらっていることを理解してもらいたいし、おそらくはそれ抜きに金銭面だけで患者側へ歩み寄ることは不可能であろう。
患者の利益とは、ただ安価な薬剤を用いることなのだろうか?
そして、途中にも述べたが、真に検証されるべきはそもそも先行医薬品の薬価が適正であるかということではないか、という問題提起も残しておきたい。