昨日発射された北朝鮮の弾道ミサイルについて、「北朝鮮が日本海に弾道ミサイル発射 ノドンかムスダンか新型か」に追記を重ねていたのですが、稿を改めることにしました。

昨夜追記したのは以下の通り。

【2017/2/12 23:40追記】

専門家による興味深い指摘を見つけました。 
国際戦略研究所(IISS)のマーク・フィッツパトリック氏によると、500km飛翔した今回のミサイルは、KN-14(KN-08改良型)の一段目ブースターと合致しているとのこと。『38North』の記事で示されているKN-14の一段目は着水距離は明示されていないものの、確かに日本海に落ちていますね。 

KN-14trajectory
(Michael Elleman, Can the US Prevent North Korea from Testing an ICBM?, 38North, 27 January 2017より転載。)

同氏は、"であるなら、ICBM開発は次の段階に進んだ"としています。 

このツイートを受けて、モントレー国際大学院/Arms Control Wonkのジェフリー・ルイス氏は以下のようにツイートしています。 

なるほど。KN-14の一段目と同じ軌道でかつ陸上配備型KN-11とも一致する、と。 

12日23時現在、今回のミサイルは「ムスダン改良型」との見方が韓国軍などから出てきていますが、この二人はムスダン改良型というよりも、ICBM技術の試験であったと考えているようです。 

【2017/2/13 追記】

ジェフリー・ルイス氏が指摘したとおり、陸上発射型KN-11の試射だったと北朝鮮が発表しました。

지상대지상중장거리전략탄도탄 《북극성−2》형시험발사에서 완전성공(朝鮮労働新聞 2017/2/13)

これによると、名称は「北極星2号」。「北極星1号(KN-11)」の改良版であることが分かります。

掲載されている写真を見ると、まずノーズコーンの形状がKN-11とは異なりますね。
KN-11nosecone
(KN-11のノーズコーン。「Jeffrey Lewis, KN-11 AND THAAD, August 28, 2016 」より画像転載。)

KN-11v_nosecone
(北極星2号のノーズコーン。「朝鮮労働新聞 2017/2/13」より画像転載。)

TEL(起立式移動車両)もこれまでのムスダンなどのものとは違って、装軌式です。
KN-11v_TEL
(北極星2号のTEL。「朝鮮労働新聞 2017/2/13」より画像転載。)

ムスダンを搭載していたMAZ-547にもサイズ的には搭載できると思いますが、どのような意味があるのでしょうか。

KN-11v_coldlaunch
(コールドローンチする北極星2号「朝鮮労働新聞 2017/2/13」より画像転載。)

SLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)の改良型らしく、コールドローンチしています。

KN-11v_lofted
(ロフテッド軌道が映し出されたモニター。「朝鮮労働新聞 2017/2/13」より画像転載。)

労働新聞にははちきれんばかりの笑顔で満足そうな金正恩同志が写されたショットがいくつかあり、その後ろのモニターに北極星2号が描いたであろうロフテッド軌道が誇示されています。

朝鮮中央通信など北朝鮮メディアの報道を要約すると、12日のミサイルは固体燃料を使用する新型の戦略兵器であり、昨年8月に発射実験に成功したとされる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の体系を土台に射程を延長した新たな形態の中長距離ミサイルということになる。
 北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が公開した北極星2型の発射の写真を見ると、昨年8月に水中発射した全長約9メートルのSLBM「北極星」とほぼ同じだった。
 専門家らはこのミサイルについて、固体燃料を使用する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に向けた中間段階の兵器体系である「新型IRBM(中長距離弾道ミサイル)」だと分析している。IRBMは射程2400〜5500キロの弾道ミサイルを指す。
 北朝鮮が公表した写真を見ると、SLBMと同様に円筒の発射管から飛び出したミサイルは10メートルほど上がった空中で点火され、正しい姿勢を取って浮上した。SLBMと発射方式や全長(12メートル)は同じだが、エンジン体系が全く異なる新たな地対地IRBMと分析される。北極星2型を1段目として2段目の推進体を組み合わせれば、ICBMとしての性能を発揮できるとみられている。
韓国紙によると、北極星2号は中距離弾道ミサイル(IRBM)で、射程は2,400〜5,500km。全長は12mということは、噂されていた全長15m未満のICBM級弾道ミサイルとは、北極星2号のことだったのでしょうか。

いずれにしても、即応性を持つ固体燃料式で秘匿性と生残性の高い移動発車式の中距離弾道ミサイルを北朝鮮はその弾道ミサイルリストに加えることになったようです。IRBMですから単体ではグアム攻撃用となりますが、専門家が指摘する通り北極星2号はICBM開発のステップのひとつですので、いずれハワイ(平壌〜ホノルルは約7,500km)を射程に収めたミサイルも登場しそうです。

また、今回のようなロフテッド軌道で北極星2号を在日米軍基地めがけて発射することもできなくはないわけです(TELの数やミサイルの数から考えてまだ蓋然性は高くないですが)。もちろん、固体燃料式の準中距離弾道ミサイル「ノドン改」のようなものが配備される可能性もあり、それは日本にとって直接的な脅威を増すことになってしまいます。

これまで日本攻撃用だったノドンは液体燃料だったこともあり常時発射状態にはありませんでしたが、仮に固体燃料式であるKN-11が陸に上がれば、ノドンよりも柔軟な運用が可能になるでしょう。

北朝鮮が目指すのはあくまでも対米核抑止体制の確立ですから、核搭載ICBMを配備するまで歩みを止めることはないでしょう。その技術開発の途上で、日米のミサイル防衛を脅かし、敵基地攻撃(米国によるTEL狩り)を難しくする能力が高まっていくことは避けられそうにありません。




【2017/2/13 19:30追記】

憂慮する科学者同盟(UCS)のデビッド・ライト氏による論考です。ライト氏は射程や軌道による比較からノドンとの類似性を指摘しています。
KN-11170213trajectory
(赤: ロフテッド軌道、黒: 最小エネルギー軌道)
今回の実験で用いられた北極星2号をMETで発射すると、射程が1,200kmちょっとだと分析しています。ライト氏は準中距離弾道ミサイル(MRBM)とみているようです。

同時に、KN-11との関連性を指摘したルイス氏にも触れ、いずれにしてもノドンが固体燃料式のものに替われば、北朝鮮にとっては大きな発展となるとしています。



【過去記事でノドン、ムスダンについて】