米海軍が発行した水上艦戦略に関するレポートを読んでみました。




「Return to Sea Control(シー・コントロールへの回帰)」という副題が冷戦感を漂わせていて興味をそそられました。

「シー・コントロール」の定義については本レポートで何度か説明されています。いわく"sea control is the pre-requisite to achieving the Navy’s objectives of All Domain Access, Deterrence, Power Projection and Maritime Security"、また、"Sea control does not mean command of all the seas, all the time. Rather, it is the capability and capacity to impose localized control of the sea when and where it is required to enable other objectives and to hold it as long as necessary to accomplish those objectives"とされており、マハンではなくコーベット的アプローチですね。


西太平洋を主舞台としたエア・シーバトル(現JAM-GC)構想ともつながっています。「Return to Sea Control」という語感とは異なり、内容な冷戦時代的ではありません。戦略の階層的にみても、戦術・作戦レベルなので、JAM-GCと重なります。ですので、回帰というよりも現在の戦略環境に合わせて微調整という印象です。

想定している敵も"low-end piracy to well-armed non-state militant groups, to the navies of high-end nation-states"とされ、"sea denial technologies including state-of-the-art anti-ship ballistic and cruise missiles, integrated and layered sensor systems and targeting networks, long-range bombers, advanced fighter aircraft, submarines, mines, advanced integrated air defenses, enhanced electronic warfare, cyber and space-based technologies, and asymmetric tactics"を駆使することを念頭に置いています。「anti-ship ballistic missile」なんて某五星紅旗なところしか運用していないはずですから、やはりJAM-GCとリンクします。

シー・コントロールを維持する方策として本レポートでフォーカスされているのが、「Distributed Lethality構想です。この構想自体は以前から存在するものです。

【参照】Thomas Rowden, Peter Gumataotao, and Peter Fanta, 'Distributed Lethality' Proceedings Magazine, vol.141/1/1,343, 2015/1 

本レポートでは「Distributed Lethality」構想についてまとめられており、簡潔な説明としては、"The concept of Distributed Lethality enables the goal of sea control at the time and place of our choosing. It is achieved by increasing the offensive and defensive capability of individual warships, employing them in dispersed formations across a wide expanse of geography, and generating distributed fires."となります。

「Distributed Lethality」構想に関する日本語資料としては、米海軍大学客員教授1等海佐の下平拓哉氏のレポートが大変分かりやすいかと思われますので、ブログ主の下手な訳よりもそちらの解説をご覧ください。

「Distributed Lethality」構想を下平氏は「武器分散コンセプト」と訳されています。各種水上艦戦力すべてに攻撃能力を付与し、地理的に分散配置、必要な時に必要な場所へ最適な部隊を構成するのが「Distributed Lethality」構想の基本なので、「武器分散コンセプト」は端的な良い訳語だと思います。個人的にはLethality(致死性)という語の意味合いを加味した訳語があればもう少し伝わりやすいかな、とも思うのですが、日本語でそのニュアンスを含んだ言葉ってないものですかねえ・・・。NIFC-CAだとかDWESだとかもそうですが、 米軍のコンセプトの名称って日本語にし辛いものが多いですね。

海軍レポートの紹介を兼ねたメモ代わりの更新でした。