潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の発射実験か

北朝鮮が弾道ミサイルの発射実験を行いました。
本日午前7時10分頃、北朝鮮東岸より2発の弾道ミサイルが発射されました。このうち1発は7時17分頃に北朝鮮沿岸の我が国の排他的経済水域外に、また1発は7時27分に島根県島後沖、日本海上の我が国の排他的経済水域内に落下したものと見られます。なお、現時点において、付近を航行する航空機や船舶への被害報告は確認をされておりません。
北朝鮮による弾道ミサイル発射事案について(2019/10/2 首相官邸) 

1.北朝鮮は、本日7時10分頃、北朝鮮の東岸から、弾道ミサイルを東方向に向けて発射した模様です。詳細については現在分析中ですが、発射されたミサイルの1発は、7時27分頃に島根県隠岐諸島の島後沖の北約350kmの我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下したものと推定されます。飛翔距離は約450km、最高高度は約900kmと推定されます。
北朝鮮によるミサイル等関連情報(続報)(2019/10/2 防衛省)
1発撃ってブースターと再突入体の2つの落下物があった模様です。
統合参謀本部の発表によると、潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)「北極星」型のミサイル("a type of Pukkuksong, a North Korean SLBM")ではないかという見方があるようです。2015年に実験を行った「北極星1(KN-11)」の改良型と思われますが、まだ詳細は分かりません。

飛翔距離450km、最高高度約900kmとなると、極端なロフテッド軌道で発射したことになります。ラフに計算すると、発射角度は82.9度くらい。ほとんど直上に打ち上げたと考えられます。そして、このミサイルを最小エネルギー軌道(MET)で発射すると、1720km飛翔します。
20191002_SLBM
(北朝鮮・元山沖から半径450kmと1720km。)

「第二撃能力」構築へ

核の小型化技術開発、そしてSLBMの開発を見ると、北朝鮮が第二撃能力の構築に真剣に取り組んでいることが分かります。 

移動発射式のミサイルもそうですが、北朝鮮はただ核弾頭+弾道ミサイルという核抑止力を保有するだけで良しとしていた時期を過ぎ、これら核戦力の生残性を確保する時期に移行しつつあるようです。 


実戦配備までは時間がかかる

中国も長年かかって2013年にようやくSLBM「JL-2」の初期作戦能力(IOC)獲得にこぎつけました。北朝鮮よりもはるかに高い技術力を持ち、資金力に富み、SLBMに不可欠の原子力潜水艦を運用する中国でさえも、水中からの「第二撃能力」は必ずしも信頼性の高いレベルに達していません。 

北朝鮮としても、発射台としての潜水艦+SLBM+運用(整備など諸々)などを考えると、ハードルは高く多過ぎるものです。北朝鮮の旺盛な弾道ミサイル開発意欲は日本としても常に警戒し、注視しておくべきものだと思います。同時に、たとえ開発計画が順調であるとしても、日米の脅威として対応にリソースを割く必要が出るのはかなり先の話ではないか、というのが愚見です。


いかなるロケット/ミサイル発射も安保理決議違反

他方、北朝鮮のSLBMが喫緊に対応を迫られる脅威ではないという理由から、「ミサイル発射凍結(モラトリアム)」違反ではないし挑発的ではない、というような考えは危険を伴います。現在の北朝鮮は、そもそもミサイル技術に関する活動を厳しく制限されています。人工衛星だろうと核兵器だろうと、北朝鮮によるロケット/ミサイル発射は、国連安全保障理事会決議1695、1718、1874への違反ということになります。さらには、昨年4月に結ばれたばかりの「板門店宣言」にも違反していますし、形骸化しているとはいえ「日朝平壌宣言」にも違反しています。

このように、北朝鮮によるミサイル発射が国際秩序に挑戦するものであることは、毎回押さえておきたいところです。安倍首相はすでに「国連決議違反である」(2019/10/02 首相官邸)と明言しました。北朝鮮が堅実にミサイル技術を確立させてきていることは事実で、今回のミサイルは明らかに準中距離弾道ミサイル(MRBM)相当の能力を備えており、日本にとっては直接的な脅威となります。安倍首相の姿勢はより正しいものと評価できます。ところが、米国の対応、とりわけトランプ大統領の受け止め方には日本と温度差があります。北朝鮮とミサイル実験を「ICBM・IRBMとそれ以外」と分類しているふしがあり、北朝鮮による短距離〜準中距離弾道ミサイル開発への対応が甘く、「北朝鮮版イスカンデル(KN-23)」や今回のミサイルはそこを利用された形ですね。

我が国と米国が異なる対応をすることで、北朝鮮に誤ったメッセージを送っているといえるでしょう。