
(Wikipediaより)
本日はジェームズタウン財団から記事の紹介です。
元・在北京米国大使館付武官で、中国の軍事にまつわる論文も多い Dennis J. Blasko 氏による寄稿『China’s Marines: Less is More 』です。
中国の海兵隊の基礎的な情報がほどよくまとめられています。
以下、和訳&要約。
海兵隊史
- 現在、中国の海軍陸戦隊(People's Liberation Army Marine Corps:PLAMC)は、2個旅団で構成され、12,000名の兵員を有する組織である。
- 創設は1954年12月。
第1次台湾海峡危機における江山島戦役(Battle of Yijiangshan Islands)のために1個師団が配備された。 - その後、朝鮮戦争から戻った11万人を編入し、8個海兵師団を組織。
- 1950年代後半の軍再編に伴い海兵隊は解体され、人員等は陸軍へ移された。
- しかし、1974年の西沙諸島の戦いにおける陸軍の拙劣さを見た中央軍事委員会は、海兵隊組織の必要性を考慮し始める。
- 1980年5月、南海艦隊に属する形で第1海兵旅団が再配置され、以降20年間唯一の海兵隊組織となった。
- 1997〜99年の3年間で兵員が50万人削減されるという計画の下、陸軍第164師団が縮小され、第164海兵旅団へと改組(南海艦隊所属)。
- なお、両旅団(第1、第164)の訓練内容及び装備内容から想定される作戦域は、南シナ海である。
組織と装備
- 中国が2008年に発行した『国防白書』にPLAMCの概要が言及されており、それによると、「海兵隊は旅団で構成され、主として海兵、水陸両用部隊、砲兵隊、工兵、そして水陸両用偵察部隊から成る」とされる。
- 両旅団は装備面で違いが見られるものの、組織機構は概ね共通(下記)である。
(2)4〜5個歩兵大隊:水陸両用歩兵戦闘車(IFV)や装甲兵員輸送車(APC)が30-40両。
(3)水陸両用偵察部隊:潜水工作員(2名〜)、特殊作戦部隊、女性隊員(約30名)。
(4)自走砲大隊
(5)ミサイル大隊:対戦車ミサイル中隊、対空ミサイル中隊
(6)工兵・化学防護大隊
(7)警備・通信大隊
(8)整備大隊
- 旅団本部では、水陸両用連隊本部が機甲大隊や1〜2個機械化歩兵大隊、自走砲大隊を指揮しており、この連隊が水陸両用旅団の主な攻撃単位と考えられる。なお、大隊の人員数は連隊の編成によって変わる。
- 各旅団の総数は5,000〜6,000名。
- 米海兵隊とは違い、航空機を保有していない。その代わり、南海艦隊に属するヘリコプター連隊が輸送と火力支援を行う。
- 第1海兵旅団は、77式水陸両用戦車(63A式水陸両用戦車の後継)や86式歩兵戦闘車から、05式水陸両用歩兵戦闘車へと近代化が進んでいる。
- 第1海兵旅団は07B式122mm水陸両用自走榴弾砲を配備。
- PLAMCは中国軍の即応部隊のひとつであり、着上陸作戦と敵の着上陸阻止が主な任務である。
訓練
- PLAMCは特殊作戦部隊基準に則って人員を募集する。
- 高卒以上で、身長は5フィート6インチ(167.3cm)以上。
- 訓練は、完全武装で5km遠泳(2時間半以内)、5km走(23分以内)、毎日500回の腕立て伏せ、腹筋、スクワットなどが課せられる。
- 全員が白兵戦の指導を受ける。
- 新人の訓練は各旅団で12月から3ヶ月間行われ、その後、専門技術の訓練を受ける。
- 雷州(Leizhou)半島、汕尾(Shanwei)、広東省北部などの水陸両用訓練場で2〜3か月の上陸戦の訓練を行う。
- 水陸両用偵察部隊と特殊部隊の訓練は、陸海空協同(triphibious)能力構築を目的として行われる。
- 掃海訓練も行われる。
- ほとんどの水陸両用訓練は南シナ海で、南海艦隊の揚陸艦やヘリコプターとともに行われる。
- 「Peace Mission 2005」は例外的にロシアと合同で実施された演習である。PLAMCからは第1海兵旅団の水陸両用装甲連隊が派遣され、ロシア海軍とともに強襲上陸訓練を行った。
- 2010年10月28日〜11月11日に行われたタイとの合同軍事演習「Blue Strike 2010」は、PLAMCにとって初の海外演習となった。演習の焦点は、上陸作戦、ハイジャック対処、人質救出任務であった。
- 「Blue Strike 2010」の開催中、第1海兵旅団は南シナ海で演習「Jiaolong-2010」を行い、複数の大隊を配備した。『解放軍報』によると、1,800名を超える将兵が参加し、装甲ヘリ、掃海艇、駆潜艇、揚陸艦、水陸両用装甲車両、強襲用舟艇、その他火器が「Jiaolong-2010」に投入された。中国国営CCTV-5は、ジャンフーV型ミサイルフリゲート2機、Z-8ヘリ2機、Z-9ヘリ2機が火力支援し、大・中5隻の揚陸艦が10人乗りの小型揚陸艇を搭載、さらに10数隻の05式水陸両用戦車と05式水陸両用歩兵戦闘車が水上航行している様子を報じた。
- 「Jiaolong-2010」は比較的大規模な演習ではあったものの、確認し得る情報からみて、旅団の半分ほどが参加したに過ぎない。
外国軍との交流と非伝統的安全保障任務
- 第1海兵旅団は、定期的に外国の軍隊/軍人を湛江駐屯地(広東省)へ招いている。
- 2006年と2008年に米太平洋艦隊司令官と米海兵隊総司令官が訪問している。
- PLAMCはパキスタンやナイジェリアの海兵隊特殊部隊と合同で訓練をしている。
- フランス、ドイツ、イギリス、メキシコからのオブザーバーを招いた「Jiaolong-2004」(2004年9月)が、中国軍が外国に向けて開放した初めての演習。
- 主要任務である戦闘に備えた訓練をするかたわら、PLAMCは非伝統的安全保障任務への準備も始めている。
- 近年では、2008年の四川大地震での災害救助活動のために部隊が動員されたり、海兵隊潜水夫が北京オリンピックの際に水中のセキュリティ確保に貢献した。
- 海兵特殊作戦部隊の分遣隊がアデン湾の海賊対処任務のために派遣されている。
- これらの非伝統的安全保障任務を通して、海兵は小型艇やヘリコプター活動などの経験を積んでいる。
- 国連平和維持活動はPLAMCが即応的な軍事能力を有している性格から、これまで派遣された実績はない。
- また、PLAMC数個中隊が南シナ海の西沙(パラセル)諸島や南沙(スプラトリー)諸島の岩礁や島にある前哨基地に駐屯している。
結論
- PLAMCは規模が小さいことによって他部隊よりも高い即応能力を持つ。
- PLAMCは急速に近代化しつつあるものの、水陸両用部隊や揚陸艦の数が少ないことからみて、中央軍事委員会が短・中期的に大規模上陸作戦を想定していないことがうかがえる。
- 民間商船を大規模に徴用しなければ、陸海軍の水陸両用部隊の揚陸能力では全海兵戦力の3分の1程度しか輸送できず、しかもせいぜい数百マイル先にしか投入できない。ただし、条件にもよるが、PLAMCが海兵戦力のほとんどを投入するためにそれほど大掛かりな準備は必要としないだろう(小規模であるため)。
- さらなる能率向上のためには、歩兵ではなく、むしろロジスティクスや航空支援といった面での補強が必要である。
- 今後10年で、中国軍全体の機構はさらに縮小(人員削減)され、戦力配分の見直しが行われだろう。軍隊の少数化・小規模化が進むにつれて、これまでの中国軍よりも強力な軍隊となる。