(1)の続き。

◆CPGSの理論的評価
  核兵器依存の低減
  • ブッシュ政権下で核兵器の通常弾頭化計画が着手された際、それは米国の核戦力の削減を促し、さらには核戦力への依存を軽減するものとして期待された。
  • しかし一方で、通常戦力がどれほど精密性を高め、核兵器と同等の破壊力を得たとしても、核兵器の持つ心理的効果までは帯びることができず、抑止力の面で劣るという主張がある。
  • 結果として、CPGSは「ニッチ」な兵器システムであるとしている。(注:核戦力と従来の通常戦力の隙間をCPGSが埋めることを指している。)
  • つまり、大統領が従来の通常戦力では対処できず、核兵器を使用するしかない状況を減らし、通常戦力がカバーする領域を拡大するものであるという。
  • 「NPR2010」において、オバマ政権はこの論理を地域抑止や同盟国への安全保障政策にまで拡大した。
  • 核兵器使用のハードルが高いため、核兵器でしか実現できない抑止は形骸化していると言われていたが、通常戦力の能力向上はそうした米国の抑止力の信頼性を増すことにもなる。
  • しかし、このような通常戦力の能力向上が本当に米国や同盟国にとって必要なのかと疑問を呈する識者もいる。
  • 実際、過去に大統領が核兵器しか選択肢のない状況に追いやられてことがあっただろうか?
  • 攻撃までに何時間、何日かかったとしても、大統領には常に幅広い通常戦力の選択肢が与えられてきた。
  • また、CPGSが戦略バランスを乱し、ひいては核戦争の蓋然性を高めると警告する識者もいる。
  • 米国は通常戦力による攻撃を選択しても、敵方は飛来するミサイルの弾頭が通常弾頭であるかどうかを明確に確認できない恐れがある。(誤認問題
  • 米国は敵国の反応や紛争のエスカレーションまでをコントロールすることはできない。ましてや敵が核保有国であればなおさらである。
  • つまり、通常弾頭の配備によって戦争の開始が「容易」になり、それが核兵器使用の可能性を高めることにつながるかもしれないのだ。
  • ロシアは米国のCPGS戦力開発に懸念を示している。
  • CPGS能力は、核の先制使用に訴えることなくロシアの核抑止力を低下させ、攻撃することを可能にする。
  • さらに、仮にロシアを狙った攻撃ではなくとも、弾頭が核か非核かを判別することはできず、ロシアを狙ったものかどうかも分からないかもしれない。

  PGS
  • PGS計画が想定する将来の紛争は、以下の通り。
  • 在外米軍基地や展開中の海上配備部隊から遠く離れた場所で発生する。
  • そうした紛争は急速に悪化し、部隊を派遣する時間はほとんどなく、紛争地域周辺での拠点設置や基地使用の権利を得ることも難しい。
  • 標的は隠れ、移動するために、脆弱な状態にある時間が短く、迅速に発射し迅速に着弾する能力が重要となる。
  • また、米軍が「接近阻止」に遭い、防空網により航空機の活動が阻害される状況も想定される。
  • 2001年のアフガニスタンが実例である。
  • こうした状況下で要求されるのは、即時・長距離攻撃を可能にする兵器であり、米国がPGS計画を進めることは合理的である。
  • 他の兵器ではこの状況に同時に対処することはできない。
  • 爆撃機は到着までに時間がかかり、防空システムに対し脆弱。
  • 海上配備型/空中発射型巡航ミサイルも到着まで時間がかかり、遠隔の敵に対して射程が足りない。
  • 海上配備型システム(長距離弾道ミサイルを除く)も、突発的な紛争に際して即応攻撃を仕掛けるには遠い。
  • しかし、上記のPGS計画で想定されているような状況全てが同時に要求されるようなことは、将来においても起こりにくいのではないか?
  • 軍を展開させる時間がなく、開戦劈頭数時間内に複数の標的への攻撃を要求されるような突発的で予期しない紛争に米国が直面することなどありえるのか?
  • 数時間・数日の遅れによって標的を攻撃する価値が下がるものなのか?
  • 他の兵器システムでもPGS計画が想定する多くの状況に対処し得るだろう


◆CPGSに潜む誤認問題
  • PGS構想に対する最も多い批判は、CPGSミサイルが発射されたことを他国が検知し、それが核攻撃であると誤認する危険性があるということだ。
  • また、潜在的な攻撃対象の多くがロシアの南方や中国にあるため、米国の弾道ミサイルは北極を超えてこれら両国上空を経由して攻撃することになる。
  • ロシアや中国にしてみれば、こうしたミサイルのアセスメントを少ない時間の中で行い、脅威度を測り、軍隊に命令を下さなければならないために、過程の中で誤認が起こり得る。
  • ロシアと中国が核戦力による対応を選択する危険性すら否定できない。
  • 米議会がCTM計画に懸念を抱いたのは、まさにこの点である。

  リスク緩和
  • 米国内の研究によると、誤認問題の対象はロシアだけである
  • というのも、ロシア以外の核保有国は、米国の弾道ミサイル発射を検知・追跡する能力がないからだ。
  • したがって、米国は通常弾頭化したシステムの配備・運用方式を変え、これらのシステムが核弾頭を運搬しないものであるという認識をロシアとの間で構築することで誤認問題を回避できる。
  • 例えば空軍はバンデンバーグ基地などで通常弾頭を運用しているが、核弾頭を貯蔵していない。
  • PGSシステム配備予定の基地では、核兵器を貯蔵・維持・管理・操作する施設や器材を備えていないのだ。
  • 米国はロシアや他国に対し、これらの施設で運用するシステムが通常弾頭であると公表すればよい。
  • 米ロ両国間での軍同士の接触や高級幹部会、さらにはミサイル発射試験への招待などを通じ、CPGSの運用手順や発射過程を熟知してもらうことも重要。
  • また、通常型弾道ミサイルの発射に先立ち、弾頭が核ではないこと・攻撃対象がロシアでないことをロシアへ通知する「ホットライン」のようなシステムを設ける。
  • ロシアが核弾頭と通常弾頭を識別する情報を得られるように、米ロで早期警戒データ共有施設のようなものを設立する。

  残る懸念
  • 平時に積み上げられた情報や有事における頻繁なコミュニケーションは、紛争時の情報の乱れや不十分さからくる問題に対処するには十分ではない。
  • そもそも、PGSシステムの運用は迅速な発射が求められる状況であり、米国にとって他国との協議や通知を行う時間がほとんどない。
  • 核攻撃にさらされるかもしれないという驚きと恐怖に駆られた他国が、米国の通知を待たずに反応するかもしれない。
  • 平時には通常弾頭を搭載していても、核弾頭に切り替えていないということを相手に信用させることは容易ではないのだ。

(続く)