(2)の続き。

◆CPGS以外の通常兵器
  陸上配備型弾道ミサイル(LBBM:Land-Based Ballistic Missile)
  • 地上配備型長距離弾道ミサイルは運用面での信頼性が高く(注:核弾頭型の運用を通じた技術・経験の蓄積のため)、前方基地への依存なく脅威に即応できる。
  • PGS計画が想定するすべての状況に対処可能である。
  • 欠点は、誤認問題。つまり、米国の発射したミサイルの弾頭が核であると他国が認識することである。
  • LBBMの弾道軌道が核弾頭型も通常弾頭型も同一であるため、この誤認は起こりやすい。

  潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM:Submarine-Launched Ballistic Missile)
  • 即応性、信頼性、指揮・管制システムなどは上記LBBMと同様に優れている。
  • 極超音速PDVが搭載されれば、精密性や即応性はさらに高まる。
  • 欠点は、通常弾頭型LBBMと同じく、誤認問題
  • 現在、潜水艦が核弾頭を運用していることからも、誤解を生みやすい。
  • 米国のSLBM発射に対するロシアのモニタリング能力は、ICBM発射をモニタリングする能力よりも劣るため、誤認問題が起こる危険性が高い。
  • 一方で、発射地点を変更することでロシアなどの上空通過を避け、誤認問題を緩和することができる。
  • ただし、そのためには潜水艦は新しい発射地点まで移動することを余儀なくされ、それによりPGSの求める即応性が阻害される懸念がある。

  潜水艦発射型中距離弾道ミサイル(SLIRBM:Submarine-Launched Intermediate-Range Ballistic Missile)
  • 紛争地域に近接した海から発射されることから、第三国の領空侵犯を回避することができる。
  • しかし、弾頭の核/非核を識別することができないという誤認問題はつきまとい、発射から着弾までの時間が短いことから、他国が最悪の決断をする危険性がある。
  • 一方で、米海軍関係者は「核トライデントと通常型SLIRBMの違いは簡単に識別できる」と主張する。というのも、核トライデントが多弾頭であるのに対し、通常型SLIRBMは単弾頭であるからだ。
  • また、開発段階の弾頭は、トライデントに搭載するには細長過ぎた。
  • CTMの代替として最も可能性があるオプションではあったが、現在では海軍予算に含まれていない。

  長距離爆撃機
  • 爆撃機は、射程、ペイロードともに優れているが、PGS構想に適した運搬手段ではない。
  • 遠隔地までの移動に時間がかかり、給油機が必要となる。
  • 長距離の飛行は乗組員の疲労を伴い、敵防空網による人員の損耗もある。
  • 空中発射型巡航ミサイルによって爆撃機が敵防空システムの外から攻撃することも可能だが、これもまた時間の面でPGSの所要を満たさない。
  • 一方、長時間のフライトは、情報の更新や再評価をする時間があるということでもあり、精密性の向上にはつながる。

  トマホーク巡航ミサイル
  • 海軍が現在保有する、1,500カイリ(2,778km)の射程を持つ海上配備型巡航ミサイル。
  • 20年にわたり紛争地に配備され、人員や航空機を危険にさらすことなく攻撃することを可能にしている。
  • 現在、4隻のオハイオ級原潜が、22基(全24基)のトライデント発射管に7発ずつのトマホークを搭載し、1隻につき154発保有している。
  • しかし、トマホークの速度は時速550マイル(時速885km)、射程は1,500カイリ(2,778km)で、PGSの要求する環境下では性能不足である。

  極超音速巡航ミサイル
  • 1990年代以降、海軍はマッハ3〜5の極超音速巡航ミサイルの開発を手掛けてきた。
  • 水上艦や潜水艦から発射され、500〜600カイリ(926〜1,111km)内にいる標的を15分以内で攻撃することを目指す。
  • 即時攻撃能力には優れているが、射程が短い。
  • そのため、紛争発生時に発射母艦がすでに戦域内にいるか、または数日か数週間かけて移動することが求められ、その際には即応性も損なわれる。

  スクラムジェット技術
  • 空軍、海軍、そしてDARPAやNASAも開発に参加している。
  • 燃焼に必要な酸素は外気から取り入れるため、重い酸素タンクは不要で、従来のロケットよりもより小型で軽く早い飛翔体となる。
  • 理論上の上限速度はマッハ15に達する。
  • スクラムジェット飛翔体は、極超音速で衝突する運動エネルギーで標的を破壊できるが、空軍はこれを運搬手段として運用することも構想している。
  • 現在空軍が具体的に開発を進めているのは、「X51Aウェーブライダー」。
  • 運用までにはまだ年月を要するが、大気圏内を飛翔し、弾道軌道も描かないことから、核ミサイルであるとの誤認問題は引き起こさないであろう。

  前方配備型グローバル攻撃(Forward-Based Global Strike:FBGS)
  • グアム、ディエゴ・ガルシア、アラスカへ地上配備型長距離弾道ミサイルを展開するという構想。
  • ロケットモーターは2段、ペイロードは1,000ポンド(453kg)、25分以内に着弾し、CEPは5m以内とする。
  • CTMやCSMと同じ弾頭を採用する。
  • 現行の技術を利用するため、2012年には運用可能となる。
  • 配備位置の関係から、地上配備型ICBM(核弾頭)とは軌道経路が異なるため、誤認問題を回避しうる。


◆軍縮問題
  • 2010年、米ロ間で「新START」が署名された。
  • この交渉の間、ロシアは、通常弾頭化した弾道ミサイルが戦略的安定を損ね、核戦争のリスクを招くものであるとして、米国による配備に懸念を示してきた。
  • 米国は、PGSシステムがロシアを標的としたものでないこと、ロシアの戦略抑止力へ脅威を与えるには十分なものでないことを伝えてきた。
  • 米国は、CPGS計画自体は新STARTに縛られるものではないとしている。
  • ただし、弾道ミサイルに搭載するタイプの弾頭数に関しては、通常弾頭であったとしても新STARTの制限内に収めるべきであるとしている。
  • 具体的には、5,500km以上の射程があり、飛翔経路の大半が弾道軌道である場合、地上配備型の通常弾道ミサイルも新条約の制限条項に従わなければならない。
  • 潜水艦発射型の弾道ミサイルもまた、600km以上の射程と弾道軌道を持つ場合は、同様の扱いとなる。
  • ただし、空軍のCSM計画の下で進められているようなブースト滑空(boost-glide)システムは弾道軌道を描かないため、新条約の制限数にカウントされない。
  • ロシアは新たな戦略兵器に対する質問の場として、二国間協議委員会(Bilateral Consultative Commission)の開催を要求することができる。
  • 新条約は、新兵器に対する疑念を抱く国(この場合はロシア)に対する質問の機会を与え、新兵器を開発した国(この場合は米国)による問題解決の努力を明記しているが、問題解決のために新兵器の配備を延期することは求めていない。


◆メリット/デメリット
  • 米国が不測の紛争に巻き込まれ、その開戦と同時に迅速な長距離攻撃を要求されるような事態に直面することなどあるのだろうか?
  • もしその攻撃開始に数時間または数日を要してしまったり、移動に時間がかかってしまえば米国はどれほどの損害を受けるというのだろうか?
  • 爆撃機や海上発射型ミサイルの母艦到着を待つことでリスクが高くなるのであれば、その時は「誤認のリスク」を受け入れ、長距離弾道ミサイルを即応させれば良い。
  • 爆撃機などの到着を待てる状況であれば、「誤認のリスク」を回避するために長距離弾道ミサイルの使用を控えればよい。
  • 米国は、PGS計画の所要を満たすために、兵器システムの幅広い運用を考慮すべきである。

◇ ◇ ◇

この報告書を読むと、CPGSは核兵器が担っている抑止力をそっくりそのまま引き継ぐ種類のものではなく、核抑止力の「一部」の代替、もしくは通常戦力と核戦力の「隙間」を埋めるものとして期待されていることがわかります。より厳密に選択された標的に対し、より小さな規模の通常戦力で即時長距離攻撃を可能にするということは、通常戦力のカバー・エリアの拡大とも言えるでしょう。

他方、核軍縮の背景の1つに、核戦力維持の財政的負担があり、そのために通常戦力への転換が図られる中でCPGS構想が進められてきました。したがって、CPGSシステムの開発が現行核戦力の維持よりも高価なものになる場合、計画の廃止もしくは見直しがなされる可能性も大いにあるということです。

そう言えば国防費の削減と抑止力の維持という問題について、ゲーツ長官も去り際にそのジレンマを吐露したばかりでしたね。

CPGSは確かに興味深いオプションではありますが、それほど大規模な戦力となることはなさそうです。米国の抑止力の根幹を支えるものは、やはり「核戦力」であり続けるというのが私の見解です。

(終わり)