071 YUZHAO Class Amphibious Transport Dock LPD Number Three Launched (China Defense Blog)中国の071型Yuzhao級ドック型揚陸艦(LPD)の3番艦が進水した模様です。
071型の諸元・兵装等についてはこちらのサイトで。
071型と081型揚陸艦
中国では071型よりも航空機運用能力を向上させた排水量2万トンほどの081型ヘリコプター強襲揚陸艦(LHD)も建造段階にあると見られています。あるソースによると、081型は、仏ミストラル級強襲揚陸艦と同サイズで搭載能力もほぼ同じ、と伝えられています。米国際評価戦略センターのリチャード・フィッシャー氏は、輸送人員は500名、ヘリボーンによる強襲揚陸能力を持つと見ているようですね。『艦船知識』(2010)では、081型はさらに大型なものであるとみなしていて、ワスプ級と同サイズ(約4万トン)で、同じ搭載・輸送能力(最大で40機ほどのヘリコプターの搭載と1,000名ほどの人員輸送が可能)があるとしています。固定翼機を運用する設備はないようです(ワスプ級はV-22、AV-8B、F-35などを運用する)が、081型については当局からの発表やリークもなく、今のところ確定情報がありません。
中国が将来配備するとみられるこれら強襲揚陸艦の数は、071型×6隻、081型×3隻です。071型×2隻、081型×1隻によって構成される3個強襲揚陸群を組織するのではないかという見方もあります。『当代海軍』は、米海軍がLPD、LSD、LHA/LHDを揃えていることを引き合いにし、相互に補完的能力を有するドック型揚陸艦(LPD)とヘリコプター強襲揚陸艦(LHD)両タイプのバランスのとれた戦力増強をすべきだと主張しています。081型LHDが就役すれば、確かに中国海軍の戦力投射能力は飛躍的に向上しますね。
中国海軍の近代化が台湾を主眼としていることは明白ですが、それでもやはり、大型揚陸艦の任務として本来最適なのは、陸上配備ヘリの戦闘行動半径を超えた珊瑚島強襲揚陸作戦です。例えば、2008年11月と2009年6月、071型1番艦「崑崙山」は、駆逐艦、フリゲート、補給艦等を引き連れて、スプラトリー諸島の係争海域の長距離哨戒活動を行いました。そこで離島占拠演習を少なくとも1度実施しているのですが、これは、071型の実際の運用環境を示唆するものではないでしょうか。
まずは非伝統的安全保障活動で運用
071型や081型といった大型揚陸艦の開発状況が伝えられるたびに、台湾有事やはたまた日本本土への上陸作戦に使うのでは?と取り沙汰されたりもします。中国の指導者層・軍関係者が、実際のところどのような考えを持っているのかについては公式発表がないために推測の域を出ません。したがって、台湾有事や日本本土への揚陸作戦に071型や081型を投入することも否定できませんし、日本に関して言えば、本土上陸の蓋然性こそ低いものの、尖閣諸島などの離島奪取のための戦力としてこれら揚陸艦が有力候補であることは言うまでもありません。しかし、台湾本島や日本本土への本格的上陸作戦を遂行するとなると、中国の揚陸戦力はまだ不十分だと見られています。中国の将来の外洋展開型強襲揚陸艦隊の主要任務は台湾侵攻であると推測するアナリストもいますが、中国海軍が071型やその種の艦船を台湾侵攻に用いる可能性は低い、という見方がアメリカでは多数派のようです。
その理由として、第一に、071型などで台湾の東海岸を狙うためには中国海軍の新鋭艦を大量にフィリピン海に展開させなければいけませんが、その海域に潜む米攻撃型潜水艦に極めて脆弱であること。第二に、10隻に満たない揚陸艦では、1個海兵旅団(4,500〜6,000人)を輸送するに過ぎないこと。橋頭堡を築いた後にも、継続的な作戦行動をとれるような体制を構築しなければ、台湾本島や日本本土上陸作戦の戦略目標を達成することは不可能でしょう。第三に、中国海軍が台湾海峡のような狭い海峡で伝統的な強襲揚陸作戦をこれらの艦船に従事させるというようなリスク――台湾の高速戦闘艇や対艦巡航ミサイルにさらされる――を冒す蓋然性は低い、というものです。
現状、アメリカや中国の研究者やシンクタンクでは、中国の揚陸艦が地域紛争における戦闘任務よりもむしろ、非伝統的安全保障任務のプラットフォームとして運用されると見ているようです。海上における対テロ活動、大量破壊兵器の海上輸送阻止、海上における平和維持活動、人道支援/災害救助(HA/DR)活動、非戦闘退避任務(NEOs)、そして軍事外交(外国への寄港、訪問)というように、中国海軍の非伝統的安全保障活動の幅は拡大し、そこで大型揚陸艦が果たし得る役割も年々大きくなっています。
もちろん、中国海軍はこれらを主要任務と捉えているわけではありませんが、非伝統的安全保障活動は、「中国脅威論」を煽ることなくオペレーションを実施する良い機会ですから、これを活かさないはずがありませんし、国際平和への貢献も果たせるという、まさに一石二鳥ミッションなのです。そして、こうした「戦争以外の軍事作戦(MOOTW)」で得られた経験や練度は、今度は兵員やシステム全体の戦闘能力として還元されます。中国の戦力投射能力は、現時点では満足なレベルにはありません。しかし、近い将来、こうした活動を通じて東シナや南シナ海の周辺海域における権益を確保するには十分なものとなることは間違いありません。
【参考資料】
- Ronald O'Rourke, China Naval Modernization: Implications for U.S. Navy Capabilities—Background and Issues for Congress, [PDF] August 26, 2011. (FAS)
- Daniel J. Kostecka, From the Sea: PLA Doctrine and the Employment of Sea-Based Airpower, Naval War College Review 64.3 (Summer 2011): 10-30.
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