『Aviation Week』にて、航空専門家のビル・スィートマン氏が中国のステルス機「J-20(殲-20)」に関する見解を述べています。

Chinese J-20 Stealth Fighter Advances (Aviation week)
By Bill Sweetman

  • 初飛行(初公開でもあった)の2011年1月11日までに確認されている所では、J-20は2機のプロトタイプ(試験機)が存在する。
  • 2機は排気ノズルの形状によって見分けられ、ひとつはロシア製AL-31Fエンジンを搭載し、もうひとつは中国製WS-10エンジンが搭載されていると見られる。


  • J-20は大きい機体である。全長自体は66フィート(約20.11m)であり、F-22の62フィート(18.92m)よりわずかに大きい程度だが、機首からノズルまではJ-20の方がかなり長い。
  • F-22と同じく、胴体下面に大型ウェポンベイ、左右側面にやや小さいウェポンベイを持ち、後者には空対空ミサイルが搭載されると見られる。


  • J-20は、カナード翼を取り入れている。
  • 米国にはカナード付の有人ステルス機はないが、初期JSF計画やX-36無人戦闘機研究機の特徴は先尾翼(カナード)であった。


  • 外形のステルス設計はF-22やX-35に近い特徴を備える。
  • 特に、ロッキード・マーチンによって開発されたダイバータレス超音速インレット(DSI)を採用している。
  • DSI技術はすでにJ-10BやJF-17に採用され、ある報告ではグリペンJAS-39E/Fにも用いられている模様。
  • J-20の後方面は非ステルス設計で、T50(PAK FA)と同様である。これは意図的にF-22の重い二次元ベクターノズルを除こうとしたものである。
  • T-50やJ-20は、80年代のATF計画(先進戦術戦闘機計画)の哲学を反映している。すなわち、「高速かつ高度を機敏に飛行する航空機は、後方からの攻撃に比較的強い」という考え方だ。


  • 中国の論文によると、設計の主要目標は、将来的に高速・高機動性能を誇るエンジンを開発することのようだ。
  • AL-31FやWS-10は、西側の最新型エンジンの持つ推力重力比を備えていない。その結果、デルタ翼を採用し超音速抗力を低減するために機体は長くなり、大型で高偏向カナードによって機動性を実現している。全遊動式垂直尾翼も通常の設計より40%程小さいと言われる。
  • 既存のエンジンではスーパークルーズはおそらくできないが、中国の技術力の向上次第では可能である。


  • 今年は、J-20の飛行試験が行われ、そのたびにステルス技術に関する問題に直面することになるだろう。
  • ステルス戦闘機は標的を検知・追跡する各種センサーが必要であり、同時にセンサーからの放出を抑えて被探知性を管理することも要求される。
  • また、ステルス機はネットワークリンク・システムの一部として機能することが求められ、低被遮断性のデータ通信技術の開発も重要となる。
  • これらは米国が25年かかっていまだに悪戦苦闘している分野である。


  • J-20はどのような目的を持っているのか?という疑問がある。
  • 地理的条件上、中国はF-22が迎撃しなければならないような敵戦闘機と戦うことはない。
  • 同時に、J-20のウェポンベイはスタンドオフ空対地兵器を搭載するには十分な容量がない。
  • 考えられる用途としては、ISRアセット(情報、偵察、監視のための資産)を脅かしたり、タンカーの護衛を攻撃することなどである。

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J-20はまだまだ謎が多く(というか実験機に近いのでは?)、そのステルス性がどの程度なのかも分かりません。スィートマン氏の言うとおり、用途も依然として不明です。本稿引用記事では、空対地ミサイルを搭載するにはウェポンベイが小さいのではないかという指摘もなされていますが、攻撃機専門という使い方ができないと言うだけで、マルチロール能力がないわけではありません。

機体サイズが大きいことから、戦闘行動半径は大きなものになると考えられます。しかし、中国空軍(PLAAF)の電子戦能力やAWACS戦力、J-20のアビオニクス開発能力はいずれもまだ貧弱で、外部情報との連携や支援にあまり依存できないでしょう。したがって、中国がJ-20を領空内で運用するとしても、インフラの不十分さからステルス性の利点などを活かすことはできませんし、中国の領空を大きく超えた戦域での活動はより限定的なものになるのではないでしょうか。

「中国のステルス戦闘機!」というインパクトはそれなりですが、単機のアビオニクス、編隊間のデータリンク、優秀なミサイル、それらを運用するシステムなどがそろって初めてステルスも活きるのであって、ステルス機の導入が、即、戦力大幅アップというほど単純なことではありません。これは、日本のF-35A導入に際しても同じことが言えます。スィートマン氏が指摘する通り、今後J-20の実験を重ねるにつれて中国は様々な問題に直面するでしょうね。



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