北朝鮮が今月15日の軍事パレードで披露した新型長距離弾道ミサイルが「模型である」とする分析が欧米の専門家から寄せられています。
26日の『クリスチャン・サイエンス・モニター』でも数人の専門家のコメントが掲載されていますが、ここで紹介されている「憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)」のデビッド・ライト氏やマサチューセッツ工科大学(MIT)のセオドア・ポストル教授は、これまでミサイル防衛関係で少なからず的外れな分析をしている方々なので、私個人としてはあまり信用しておりません。
本稿で紹介するMarkus Schiller 氏とRobert H. Schmucker 氏についてはあまり詳しくないのですが、何らかのバイアスがかかっているかもしれません。ただ、この両氏の見解が「北朝鮮の新型長距離ミサイルが偽物である」と主張する人たちの最大公約数的分析ですので、ご紹介しておきます。
北朝鮮が発表した「KN-08」の諸元等が不明である以上、あらゆる分析は推測の域を出ません。「模型だ」と断定できるほどの情報も現時点では揃っていないと思います。ただひとつ、この弾道ミサイルが仮に本物であったとしても、発射実験を経ていないことだけは事実です。たとえ北朝鮮がどれほど追いつめられようとも、ただ組み上げただけのようなミサイルを発射するなんてことはできません。そういう意味では、KN-08が今すぐに対処を考えなければならない差し迫った脅威というわけでないことも確かでしょう。
日本にとってはノドンという明らかな脅威があり、ミサイル防衛を始めとした対北朝鮮リソースはそちらに向ける方が優先順位が高いのです。
本稿の通り、専門家の間ではモックアップ(原寸大模型)だという分析があります。しかし、いくつかの意見を踏まえた上で、これらは地上試験用ではないかという見方(38North)が、個人的には一番納得のいくものでした。ハリボテだとか偽物だとかではなくて、研究&人員訓練用の初期配備モデルだ、というものです。
26日の『クリスチャン・サイエンス・モニター』でも数人の専門家のコメントが掲載されていますが、ここで紹介されている「憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)」のデビッド・ライト氏やマサチューセッツ工科大学(MIT)のセオドア・ポストル教授は、これまでミサイル防衛関係で少なからず的外れな分析をしている方々なので、私個人としてはあまり信用しておりません。
本稿で紹介するMarkus Schiller 氏とRobert H. Schmucker 氏についてはあまり詳しくないのですが、何らかのバイアスがかかっているかもしれません。ただ、この両氏の見解が「北朝鮮の新型長距離ミサイルが偽物である」と主張する人たちの最大公約数的分析ですので、ご紹介しておきます。
A Dog And Pony Show:North Korea’s New ICBM [PDF]
BY Markus Schiller, Robert H. Schmucker
◆ 外見から判断される特徴
西側の専門家が「KN-08」と名付けたミサイルは、8軸式移動発射車両(TEL)に搭載されており、北朝鮮が従来使用していたロシア/ベラルーシ製のものとは明らかに異なっている。外見から、固体燃料型三段式弾道ミサイルとみられる。全長18m、第一、第二段の直径は2mほど。重量は約40トン。つまり、約1トンの弾頭を搭載して10,000km飛翔する能力があり、まさしく大陸間弾道ミサイル(ICBM)ということになる。
◆ 移動発射車両(TEL)
すでに周知のとおり、TELは中国の湖北三江航天万山特殊車両有限公司製の「WS51200」である。車両最大積載重量は122トンであり、トラック自身の重量(注:42トン)やその他の積載装備品を含んでいるとしても、40トン未満のロケットを積むには過剰なTELである。
◆ 弾頭設計
従来の北朝鮮のあらゆる弾頭と比べて、KN-08の弾頭はデザインも形状も全く異なる。「スカッド」、「KN-02」、「ノドン(円錐型(conical)と三重円錐型(triconic)の2種類)」、「ムスダン」と合わせて北朝鮮は6種類の弾頭形状を ‘開発’ してきたことになる。しかし、核弾頭の設計は、重心、動圧の中心、空気力学、弾頭内外の熱制御、熱防護システム、起動機構など考慮しなければならない要素が多い。これは生物・化学弾頭にも同じことが言える。もし北朝鮮が非通常弾頭を開発する場合、ひとつの弾頭設計に固執し、異なる形状の弾頭開発を何度も何度も繰り返すことはない。
本当に核弾頭開発計画があるなら、6種類もの弾頭形状を開発するはずがない。真の核脅威を生み出すのではなく、ただのショーとしてミサイル計画を進めている証拠ではないか。この考え方は単純ではあるものの、無視するのは難しい。
◆ ミサイルの詳細
誘導システムは白線より少し上の円錐部に搭載されなければならないが、白線が示す三段目のブースター・タンクの上部には分離機構を収める余裕がない。
次に弾頭表面構造も模型であることを示唆している。写真でわかるとおり、弾頭表面が波打っている。まるで内部に何重にも張り巡らせたフレームを薄い金属で覆っているかのようである。実際の弾頭カバーは再突入時の熱や空気圧に耐えうる構造を要するため、このように設計されることはない。
また、ミサイルは発射時に直立させられるため、発射台にしっかりと配置されていなければならないが、サイズが合っていない。通常、ミサイルはボルトで固定されるはずだが、発射台とミサイルの直径がそぐわないためにボルト留めができない。
より重要でしかも混乱するポイントとして、このミサイルが固体燃料推進と液体燃料推進の2つの特徴を持っている点がある。前述の通り、このミサイルが移動発射式であることやサイズ、構造などから考えて固体燃料推進式であると考えるのが妥当である。液体燃料注入前ならばミサイル輸送は可能だが、燃料注入後のミサイルを直立させるのは1時間ほどかかり、その間、TELとミサイルは敵にとっては格好の標的となる。
ミサイルに取り付けられているケーブル・ダクトも全ステージ固体燃料であることを示している。第一段と第三段のケーブルは各段の最端部でミサイル内部を通っており、ケーブルの長さがタンクの長さを示していることから、液体燃料を積載するスペースはない。これは固体燃料推進式ロケットに典型的な特徴である。
同様のケーブル・ダクトで液体燃料推進ミサイルがある。例えば旧ソ連の「R-27/SS-N-6」である。この場合、ロケットエンジンは推進タンクに隠される形になるが、この技術は実現が非常に難しく、なによりミサイルのサイズにおいて著しい制限を受けてしまう。そのため、この方式はSLBMのみで使用され、ICBMや別のロケットでこの技術を適用する必要はない。
にもかかわらず、各段に液体燃料注入口のようなものが確認できる。注入口は旧ソ連スタイルで白い円で囲まれ、短い説明書きもある(文字は朝鮮語だが解像度の問題か解読できない)。つまり、このICBMは液体と固体燃料両方の推進機構の特徴を有している。
これらの混乱をもたらす要素は、「6基のミサイルそれぞれ細部が異なる」という点で無意味な分析となるかもしれない。パレードに登場した6基のミサイルは、それぞれケーブル・ダクトの位置やカバーの上下左右、白線の位置などが少しずつ違う。白線などは見た目のために取り付けられたもので、機能的な意味はないかもしれないが(観察する側には分離部の位置を示唆し、TEL搭載作業の目印にもなったかもしれない)。
◆ 結論
北朝鮮は世界初の液体・固体燃料ミサイルを6種類開発したのか? 北朝鮮のICBMに関しての分析はいずれも推測の域を出ないが、6基のミサイルが模型であることは疑いがない。2010年に発表されたムスダンの模型よりは精巧であるが、それでも下手くそだ。
問題は、本物を真似てこれらの原寸模型を作ったのか、それとも金日成生誕100周年を祝うショーのためにこれらのプレゼンテーションをしたのか、という点だ。北朝鮮のミサイル計画に関する他の考察から判断すれば、後者である可能性が高いのではないか。
ICBMの開発と配備までには何度もの発射実験と莫大なコストが必要となる。ムスダンでさえまだ一度の発射実験が確認されておらず、北朝鮮の経済状況を考えれば、最初の発射実験もいつになるかは不明だ。
現時点では、ICBMのプレゼンテーションは子供だまし以外の何物でもない。
北朝鮮が発表した「KN-08」の諸元等が不明である以上、あらゆる分析は推測の域を出ません。「模型だ」と断定できるほどの情報も現時点では揃っていないと思います。ただひとつ、この弾道ミサイルが仮に本物であったとしても、発射実験を経ていないことだけは事実です。たとえ北朝鮮がどれほど追いつめられようとも、ただ組み上げただけのようなミサイルを発射するなんてことはできません。そういう意味では、KN-08が今すぐに対処を考えなければならない差し迫った脅威というわけでないことも確かでしょう。
日本にとってはノドンという明らかな脅威があり、ミサイル防衛を始めとした対北朝鮮リソースはそちらに向ける方が優先順位が高いのです。
【追記:2013/4】
本稿の通り、専門家の間ではモックアップ(原寸大模型)だという分析があります。しかし、いくつかの意見を踏まえた上で、これらは地上試験用ではないかという見方(38North)が、個人的には一番納得のいくものでした。ハリボテだとか偽物だとかではなくて、研究&人員訓練用の初期配備モデルだ、というものです。


