米中経済安全保障検討委員会において、米国家航空宇宙情報センター(NASIC)のLee Fuell氏が中国空軍とミサイル運用部隊である第二砲兵について証言しています。
中国空軍と第二砲兵のおおまかな現状を説明した入門編テキストとしてよくまとまっているので紹介しておきたいと思います。短い報告書ですので、是非一読してみてはいかがでしょうか。お時間のない方は拙稿で^^
中国空軍(PLAAF)について
中国軍の近代化を我々(米国)のものと直接的に比べて対称性を論じるべきではない。中国は米国と“システム対システム”で対決するつもりはない。彼らは、“システム・オブ・システムズ”、つまり敵の弱点や脆弱性を利用するアプローチを追及している。
過去5年の中国空軍(PLAAF)の近代化はどのような特徴があるのか?
この質問には3つの観点から説明したい。
PLAAFが保有する航空機の数と現在開発中の航空機とは?
これらの機体は空中給油なしでどのくらい遠くまで飛べるのか?
どのようなレーダーを装備しているのか?
これらの航空機の電子戦能力はいかほどか?
先進型プラットフォームや装備の製造能力をどう評価しているか?
設定されたばかりの防空識別圏(ADIZ)に関して
第二砲兵について
過去5年の弾道ミサイル及び巡航ミサイルの近代化はどのような特徴があるのか?
弾道ミサイルの多弾頭(MIRV)化は中国のミサイル戦略を変えるのか?
対地巡航ミサイル(LACM)は中国のミサイル戦略上どのような役割があるのか?
弾道ミサイル及び巡航ミサイルはどのようなものがあるのか?開発中のものは?保有数は?
中国のミサイルのうち核弾頭を搭載できるのは?
人員、訓練、統合作戦
PLAAFと第二砲兵は、ともに大きな過渡期にあり、近年著しく生残性と攻撃力を向上させている。訓練分野は特に力点を置いている。近年の中国軍は実戦経験の不足を認識しており、現実の戦闘に備えられるようできるだけリアリスティックな訓練を施そうとしている。
<PLAAF>
パイロット育成に力を入れており、プロフェッショナルで大変よく訓練されている。PLAAFは訓練の機会が多く、近年は大規模化し複雑化している。例えば、年一回の「レッドソード演習」は数日にわたって行われ、全軍種が参加する大規模なものである。この演習では、敵軍との交戦シナリオも設けられている。
電子戦や対電子戦分野における情報優勢獲得のための訓練も重視している。
大きな障害は、統合訓練。戦術的な訓練も、西側の先進的な軍に比べて遅れている。パイロットのエリート幹部養成においても自主的なものではなく、事前にプロットのある訓練が大半を占めていることなどが一例である。これでは現実の空戦に必要な力量が養われない。当然、これらの問題を空軍指導部は認識しており、対策に乗り出している。その結果のひとつが、「ゴールデンヘルメット競技会」である。これは、戦闘機パイロットを互いに繰り返し自由に競わせ、その技量を表彰するものだ。
さらに重要な取り組みとして、PLAAFは他国軍との訓練も実施し始めている。2010年以降、第4世代戦闘機をトルコやパキスタンとの演習に派遣している。
<第二砲兵>
軍種を超えないユニットレベルの演習は役に立たないかもしれないが、第二砲兵は定期的な訓練の数そのものはこなしている。
過去数年、中国軍は統合機構を設立し、統合プロセスの調査においても多大な進歩を遂げた。こうした進歩の成果のひとつが、2008〜2010年に行われた一連の Lianhe(联合:統合作戦)演習である。この演習では、三軍(PLA、PLAAF、PLAN)の司令部が1年ごとに交代で指揮を受け持った。2009年には、PLAAFと第二砲兵が初めての統合実弾射撃大規模演習を実施している。
我々(米国)は、太平洋の固定目標に対してPLAAFと第二砲兵が行う事前に計画された協同攻撃能力に関しては、ある程度のレベルに達していると評価している。なお、軍種間で協同して戦略・戦域目標を攻撃する際には、「Firepower Coordination Center」で役割が調整される。センターにはPLAAFと第二砲兵以外にも、特殊部隊、陸・海からも人員が派遣され、それぞれの間で必要な連絡をとる。
第二砲兵と他軍種の協同作戦能力から判断すると、事前計画にはない短時間または突然現れた目標(fleeting or pop-up target)に対する攻撃はかなり難しいものとなるだろう。
PLAAFと第二砲兵の相互運用能力は大部分で今なお進歩の過程にある段階だと判断している。
明日は中国海軍について更新予定です。
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[PDF] Broad Trends in Chinese Air Force and Missile Modernization, DEPARTMENT OF THE AIR FORCE PRESENTATION TO THE U.S.–CHINA ECONOMIC AND SECURITY REVIEW COMMISSION, January 30, 2014.
中国空軍と第二砲兵のおおまかな現状を説明した入門編テキストとしてよくまとまっているので紹介しておきたいと思います。短い報告書ですので、是非一読してみてはいかがでしょうか。お時間のない方は拙稿で^^
中国空軍(PLAAF)について
中国軍の近代化を我々(米国)のものと直接的に比べて対称性を論じるべきではない。中国は米国と“システム対システム”で対決するつもりはない。彼らは、“システム・オブ・システムズ”、つまり敵の弱点や脆弱性を利用するアプローチを追及している。
過去5年の中国空軍(PLAAF)の近代化はどのような特徴があるのか?
- PLAAFの近代化は堅実なペースで進んでいる。
- 第4世代マルチロール(多用途)機や新しいH-6K爆撃機の導入は、第5世代戦闘機とともにPLAAFの攻撃能力を増すものだ。
- 偵察や早期警戒任務を行うために、早期警戒管制機「KJ-2000(空警2000)」や無人機(UAV)を配備してきている。
- パワー・プロジェクション(戦力投射)能力の不足に対処するものとして、限定的ながらIL-76輸送機をロシアから購入。Y-20大型輸送機、Y-9中型輸送機も配備している。
この質問には3つの観点から説明したい。
- 台湾有事
- PLAの作戦関連の文献に取り上げられることの多い2つのシナリオが、封鎖(blockade)と侵攻(island invasion)。
- 封鎖作戦でPLAAFが担当するのは、台湾の飛行場や地上配備防空網、沿岸防衛用巡航ミサイル、C4ISR施設を攻撃することと、それによって「飛行禁止区域」を設けることである。
- さらには、情報優勢(information superiority)、海上優勢を獲得するために台湾の司令機能を攻撃したり、海軍(PLAN)のエアカバーをする。
- 航空攻撃の前に、第二砲兵によるミサイル攻撃が行われる。この段階ではサイバー攻撃や特殊作戦なども進められる。
- 封鎖作戦において、PLAAFの主任務は本土の防空である。この任務では、地対空ミサイルや戦闘機が用いられる。
- 台湾へ侵攻する作戦のシナリオにおいては、上記任務に加えて、海峡渡海や着上陸部隊に対するエアカバーが必要となる。この場合、米軍のような近接航空支援(CAS)ではなく、事前に計画した阻止攻撃(航空阻止)を行う。
- 空挺部隊はPLAAFに属し、侵攻作戦時には台湾の飛行場や重要施設の確保任務に従事する。
- 南シナ海有事
- スプラトリー(南沙)諸島のように遠い場所での紛争となると、空中給油機の不足などからPLAAFの能力に強い制限がかかる。
- 海軍のために制圧攻撃やエアカバーが要求される。攻撃には、事前計画された目標に対し、H-6Kから巡航ミサイルが発射される。
- 戦闘機によるエアカバーは短期間のもので、持続的なものにはならない。将来的には空母がこの作戦に加わることになる。
- 介入阻止(Counter-Intervention)
- 台湾と南シナ海の有事において、米軍の介入に対する中国軍の反応は、あくまでも台湾封鎖 or 台湾侵攻が主作戦であるというバランスである。
- 「強力な敵(米国)」を抑止することと必要なら攻撃するというスタンスで主作戦を支え、紛争の拡大を避ける。
- かつての中国は、米国の介入に対しては先制攻撃の必要性を過度に強調するものであった。しかし、この思考は消え、近年は、米国の介入に耐えて主目的を達成し得るという自信が深まりつつある。中国はより成熟した観点から軍事作戦を見るようになり、台湾や他の敵に対する主作戦に集中し、米国の介入を抑止したりその効果を局限しようとしている。
- 米国の介入があると見た場合には、PLAAFと第二砲兵が米軍とその施設を攻撃する。そこでは大量の戦闘アセットが投入され、計画とリハーサルも怠りがない。この段階には米軍や政府関係のネットワークに対するサイバー攻撃も付随する。
PLAAFが保有する航空機の数と現在開発中の航空機とは?
- PLAAFとPLANはあわせて約2,300機の航空機を運用中である。そのうち500機が近代型か近代化されたもの。さらに、1,450機の旧型機、爆撃機、練習機が訓練・研究・開発に利用されている。輸送機は475機、監視・偵察機は100機保有している。
- 第5世代機のJ-20やコンセプト機、4種類の第4世代戦闘機が開発中である。第2、第3、第4世代機は近代化改修中である。
- 長距離・低被観測性能力を持つ様々なタイプのUAVを開発中。
- 大量の輸送機も開発中である。
これらの機体は空中給油なしでどのくらい遠くまで飛べるのか?
- 中国沿岸から300〜500海里(555〜926km)。ロシアから購入したフランカー系が長い航続距離を持つ。H-6K爆撃機なども航続距離を伸ばしており、脅威である。
どのようなレーダーを装備しているのか?
- 第5世代と現行第4世代戦闘機にはAESA技術を取り入れる計画だ。先進型第4世代戦闘機は、パッシブESAレーダーを搭載している。
これらの航空機の電子戦能力はいかほどか?
- PLAAFは電子戦を空戦のキー・コンポーネントと位置づけるほど重要視している。近代型機の多くにDRFMジャマーを搭載している。
先進型プラットフォームや装備の製造能力をどう評価しているか?
- 中国の航空産業は進んでおり、近代型第4世代戦闘機・爆撃機を製造するしっかりとした基盤がある。また、精密兵器などを製造する先進技術へも投資してきている。最近は、望ましい技術を持つ企業を全面買収するアプローチが取られる。改善されつつあるが、システム工学やマネージメント技術の不足が最大の障害となっている。
設定されたばかりの防空識別圏(ADIZ)に関して
- 中国は空中での継続的なプレゼンスを維持できない。そのかわり地上レーダーでADIZをカバーするだろう。また、多様な海洋アセット(注:海軍や海洋局や民間船?)が、継続的にADIZにプレゼンスを維持するのだろう。ADIZの監視・マネージメントは主に南京軍区が受け持つ。すでに監視活動は始まっており、何度も即応機を飛ばしている。
- PLAAF・PLANAFは、どちらもスクランブル可能な機体を所有している。邀撃能力はあるが、今後KJ-2000AWACSのような機体の追加が必要になる。しかし、中国の計画がどうあれ、彼らのADIZを拒否するという我々の政策に影響はない。
第二砲兵について
過去5年の弾道ミサイル及び巡航ミサイルの近代化はどのような特徴があるのか?
- 弾道ミサイル及び巡航ミサイルの近代化もまた堅実なペースで進んでいる。
- 中国沿岸から第1列島線の範囲を攻撃するために、通常弾頭の準中距離弾道ミサイル(MRBM)の射程を拡大している。
- 第2列島線を超えて精密攻撃する能力を加えるために、通常弾頭の中距離弾道ミサイル(IRBM)を開発している。
- 空中/陸上発射型対地巡航ミサイル(LACM)の開発ペースも堅実である。空中発射巡航ミサイルとしては、YJ-63、KD-88、CJ-20など。精密誘導兵器の近代化は加速度的に進んでいる。
- 精密誘導爆弾や通常弾頭ミサイルの開発は今後も継続され、技術投資額も高いままだと見られる。
弾道ミサイルの多弾頭(MIRV)化は中国のミサイル戦略を変えるのか?
- MIRV化された移動発射式弾道ミサイルは、中国の戦略抑止力の生残性を保証するだろう。より少ないミサイル数でより多くの目標を攻撃できるようになる。なお、中国はすでに多様な通常兵器による攻撃手段を持っており、コストや能力の点から、通常弾頭をMIRV化しないだろうと判断している。
対地巡航ミサイル(LACM)は中国のミサイル戦略上どのような役割があるのか?
- LACMは弾道ミサイル部隊や航空部隊の負担を減らす。
- 自分たちが選んだ有利な地点から長距離スタンドオフ攻撃ができ、敵の防空網・ミサイル防衛網の対処を複雑化させる効果がある。
- 同じ目標を弾道ミサイルと巡航ミサイルによって攻撃すれば、さらに防衛を複雑にする。
- LACMはまだ中国の複合兵器システムの構成要素となっていないが、いずれその一部となるだろう。
弾道ミサイル及び巡航ミサイルはどのようなものがあるのか?開発中のものは?保有数は?
- 短距離弾道ミサイル(SRBM):射程<1,000km。2012年末時点で、1,100発保有。増強進度は控えめ。
- 準中距離弾道ミサイル(MRBM):射程1,000〜3,000km。中国沿岸から第1列島線までの範囲をカバーする。対艦弾道ミサイル(ASBM)「DF-21D」は1,500kmの射程を持ち、機動弾頭(MaRV)搭載。PLANは超水平線(OTH)レーダーや衛星によって、OTH攻撃能力を向上させようとしている。
- 中距離弾道ミサイル(IRBM):射程3,000〜5,000km。通常弾頭IRBMを開発中。第2列島線を超えて精密攻撃する能力を増強中。
- 第二砲兵は、サイロ発射型と移動発射型大陸間弾道ミサイル(ICBM)による核戦力の近代化を継続している。移動発射式固形燃料ICBMのDF-31/31Aが配備中。DF-31Aは射程11,200kmを超え、米本土のほとんどを射程に収める。
中国のミサイルのうち核弾頭を搭載できるのは?
- 地域核抑止力として、DF-2(注:退役したのでは?)とDF-21/21A
- 戦略核抑止として、DF-4、DF-5、DF-31/31A
人員、訓練、統合作戦
PLAAFと第二砲兵は、ともに大きな過渡期にあり、近年著しく生残性と攻撃力を向上させている。訓練分野は特に力点を置いている。近年の中国軍は実戦経験の不足を認識しており、現実の戦闘に備えられるようできるだけリアリスティックな訓練を施そうとしている。
<PLAAF>
パイロット育成に力を入れており、プロフェッショナルで大変よく訓練されている。PLAAFは訓練の機会が多く、近年は大規模化し複雑化している。例えば、年一回の「レッドソード演習」は数日にわたって行われ、全軍種が参加する大規模なものである。この演習では、敵軍との交戦シナリオも設けられている。
電子戦や対電子戦分野における情報優勢獲得のための訓練も重視している。
大きな障害は、統合訓練。戦術的な訓練も、西側の先進的な軍に比べて遅れている。パイロットのエリート幹部養成においても自主的なものではなく、事前にプロットのある訓練が大半を占めていることなどが一例である。これでは現実の空戦に必要な力量が養われない。当然、これらの問題を空軍指導部は認識しており、対策に乗り出している。その結果のひとつが、「ゴールデンヘルメット競技会」である。これは、戦闘機パイロットを互いに繰り返し自由に競わせ、その技量を表彰するものだ。
さらに重要な取り組みとして、PLAAFは他国軍との訓練も実施し始めている。2010年以降、第4世代戦闘機をトルコやパキスタンとの演習に派遣している。
<第二砲兵>
軍種を超えないユニットレベルの演習は役に立たないかもしれないが、第二砲兵は定期的な訓練の数そのものはこなしている。
過去数年、中国軍は統合機構を設立し、統合プロセスの調査においても多大な進歩を遂げた。こうした進歩の成果のひとつが、2008〜2010年に行われた一連の Lianhe(联合:統合作戦)演習である。この演習では、三軍(PLA、PLAAF、PLAN)の司令部が1年ごとに交代で指揮を受け持った。2009年には、PLAAFと第二砲兵が初めての統合実弾射撃大規模演習を実施している。
我々(米国)は、太平洋の固定目標に対してPLAAFと第二砲兵が行う事前に計画された協同攻撃能力に関しては、ある程度のレベルに達していると評価している。なお、軍種間で協同して戦略・戦域目標を攻撃する際には、「Firepower Coordination Center」で役割が調整される。センターにはPLAAFと第二砲兵以外にも、特殊部隊、陸・海からも人員が派遣され、それぞれの間で必要な連絡をとる。
第二砲兵と他軍種の協同作戦能力から判断すると、事前計画にはない短時間または突然現れた目標(fleeting or pop-up target)に対する攻撃はかなり難しいものとなるだろう。
PLAAFと第二砲兵の相互運用能力は大部分で今なお進歩の過程にある段階だと判断している。
明日は中国海軍について更新予定です。
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