メモ代わりに。

北朝鮮の新たな弾道ミサイル戦力として、移動発射式の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「KN-08*1」があります(参考記事)。米ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮分析サイト「38North」によると、今年の3〜4月に「KN-08」の1段目エンジンの燃焼実験を行っていた模様です。次なる技術的な行程としては、初の飛行実験ではないか、との分析もありますね。

「KN-08」はICBM級の射程距離を持っていると言われますが(5,500km)、米本土の都市を攻撃するにはまだ届きません*2。しかし、いずれ北朝鮮はロサンゼルスなど米本土主要都市を射程に収めるICBMを保有すると見られています。その際、米本土をICBMから防衛するのが、GMD(Ground-based Midcourse Defense:地上配備型ミッドコース防衛)です。GMDで使用される迎撃ミサイルは、GBI(Ground Based Interceptor)と言い、現在フォートグリーリー基地(アラスカ)に26基とバンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア)へ4基配備されています。北朝鮮の弾道ミサイルの長射程化を受け、さらに14発のGBIを2017年までにフォートグリーリーへ追加配備することが2013年3月に決定しました。

GBIには、「CE-I」と「CE-II」の2種類の大気圏外迎撃体(EKV)があります。

GMDtest record_2014
(CE-I と CE-II の実験履歴*3米政府監査局(GAO)より [リンク先PDF注意])

「CE-I」は2005〜2010年に5回の実験を行い、そのうち3回が迎撃実験です。3回の迎撃実験はいずれも成功とされています*4。ただ、「CE-I」は十分な持続可能性を持たないと評価され、2004〜2005年から「CE-II」の開発が始まっています。

現在、特に開発が難航しているのが、「CE-II」です。「CE-II」は2008年から配備が始まり、配備中のGBI×30発のうち、10発が「CE-II」です。しかし、「CE-II」は2010年に行われた2度の迎撃実験(FTG-06、FTG-06a)にいずれも失敗しています。開発費も2億3600万ドルから13億ドルへと膨らんでしまいました。

FTG-06a(2010年12月)の失敗は、「CE-II」の設計上の欠陥によるものと判明しています。EKVの慣性誘導ユニットが姿勢制御ロケットモーターによって過度の振動を与えられていたのですが、これをクリアするのが難しいようですね。GAOはこの問題の解決を大変重要視しており、国防総省及びミサイル防衛局の議会に対する説明が不十分であると指摘しています。

FTG-06aの失敗の結果、問題解決と迎撃実験の成功までは「CE-II」の調達が停止されることとなりました。2013年に決定した14発のGBI追加も、「CE-II」迎撃実験成功まで待たれることとなっています。

今のところ、2014年1月に「CE-II」の飛行実験が成功裏に終わったことを受けて、2014会計年度第3四半期に迎撃実験FTG-06bが予定されているのですが、実はもうひとつ厄介な問題があります。というのも、「CE-I」を用いた2013年7月の実験FTG-07が失敗した原因がEKVのバッテリー・システムにあることが判明したからです。「CE-I」と「CE-II」のバッテリー・システムは同じものを用いており、これが新たな技術上の懸念とされています。FTG-07の実験評価は現在も終了していないため、今後の状況次第でFTG-06bはさらに延期されるかもしれません。



*1 米国防総省による北朝鮮の軍事力に関する年次報告書([PDF] 2014 Military and Security Development Involving the Democratic People's Republic of Korea)において、KN-08は、「火星13(ファソン13)」というコードネームが付されているようです。また、射程は3,400マイル(約5,500km)以上で、少なくとも6基の移動発射車両が確認されています。
*2 ハワイやグアムは十分射程範囲です(参考記事)。
*3 より詳細な実験履歴は過去記事「GBIの今後: ICBM迎撃実験は2015年か? 」でまとめてあります。
*4 詳細は過去記事「GBIの今後: ICBM迎撃実験は2015年か? 」で。


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