「中国のミサイル」と聞くと、弾道ミサイルが取り上げられることが多いのですが、陸海空の諸相において巡航ミサイルの質も量も増強されています。『National Interest』に入門編的な記事が寄せられていたのでご紹介。
以下、要約です。これも自分のメモ用に。
巡航ミサイルの特性
対艦巡航ミサイル開発
対地巡航ミサイル開発
台湾有事における運用法
中国の課題
結論
ざっとメモしたので、読みづらいですが(^_^;)
アンドリュー・エリクソン米海軍大学准教授のいつもの主張・論調を考慮しながら読む必要はありますが、参考になる論考です。ユアン先生もお懐かしい^^
以下、要約です。これも自分のメモ用に。
China’s Cruise Missiles: Flying Fast Under the Public’s Radar(2014/5/12 National Interest)
By Dennis Gormley, Andrew S. Erickson, Jingdong Yuan
- 中国の巡航ミサイル戦力の数と能力は、地域の安全保障と抑止に大きな影響を与えている。
- 台湾有事はもちろん、各所で係争中の海洋領有権問題においても巡航ミサイルはインパクトがある。
- にもかかわらず、米軍を含めて巡航ミサイル脅威への対応は驚くほど疎かにされている。
- 中国の軍事力近代化は陸・海・空・ミサイル戦力を信息化局地戦争(local wars under “informatized conditions”:情報環境下の局地戦争)に勝利することが焦点である。
- 最優先シナリオは、台湾に対する軍事作戦。米国の介入を抑止もしくは失敗させることが求められる。
- そのために中国は、非対称な“暗殺者の矛(assassin’s mace)”を得ようとしている。
- 接近阻止/領域拒否(A2AD)のカギとなるのが、対艦巡航ミサイル(ASCM)と対地巡航ミサイル(LACM)。
- 中国のLACMは、グアム、ダーウィン、ディエゴ・ガルシアを射程に収める。
巡航ミサイルの特性
- 精密通常攻撃任務に汎用性の高い兵器である。
- 陸・海・空から発射可能で、射程も長い。
- キャニスターに収納され、過酷な環境下でも配備できる。
- コンパクトなため地上発射プラットフォームは高い機動性を持つ。射撃パッドの安定性も基本的なもので良く、撃っては移動する “shoot-and-scoot” 戦術が可能となり、発射前の生残性につながっている。
- 超音速、レーダー断面積の小ささ、地を這うような飛行経路といった各性能の組み合わせにより、敵の海上/陸上配備型防空システムや航空監視、追跡レーダーにストレスを与え、ひいては敵防空網を突破する可能性を高める。
- 弾道ミサイルとの併用若しくは短時間で特定目標へ大量に撃ち込むことによって、敵防衛力を飽和させうる。
- 巡航ミサイルを最適に運用するには、正確かつタイムリーなインテリジェンス、生残性の高いプラットフォーム、作戦計画、指揮・統制・コミュニケーションシステム、正確な攻撃評価手段などが必要。
- 中国は自らの巡航ミサイル戦力充実だけでなく、米国のような地域諸国の巡航ミサイル開発にも注目していることが知られている。
- 第1列島線に対艦巡航ミサイルを配備することを提案したランド研究所の報告書(楽観的なものではあるが)も、中国では関心を引いている。
対艦巡航ミサイル開発
- 中国はロシアの超音速ASCMを輸入しているが、高性能な国産ASCM「YJシリーズ」も開発してきた。
- 中国海軍のほぼすべての最新型水上艦及び通常動力潜水艦はASCM発射能力を持つ。
- 中国海軍はこれらのプラットフォームをASCMの「TEL」として運用する、と米海軍大学のW・マーレー教授が指摘している。
- 中国は巡航ミサイルの誘導能力を改善し、衛星によるナビゲーション能力向上も進めている。
- しかし、水平線以遠のターゲッティングは依然として課題である。
- 中国の研究者たちは、いかにイージス防空網を打ち破るか、敵の脆弱性を狙うかについて考えている。
- ASCMを大量に撃ち込み、イージス防空システムを飽和させることで米軍水上艦に挑戦しようと備えている。
- 中国国内の著作物に一貫したテーマは、中国の艦船自身が巡航ミサイル攻撃に脆弱である点だ。
- しかし、敵艦を大量の火力で脅かすことによって自らの弱点を補うことができると、北京は考えている。
対地巡航ミサイル開発
- 中国は2種類のLACMを配備している;「YJ-63」空対地巡航ミサイル(射程200km)、「DH-10」地対地巡航ミサイル(射程1,500km)。
- 第一世代のYJ-63の終末誘導はTV誘導方式。
- 第二世代のDH-10はGPS誘導/慣性航法方式で中間誘導に地形照合システムを取り入れ、半数必中界(CEP)は10メートル。
- 北斗/コンパス衛星測位システムの開発により、巡航ミサイル誘導に必要な米GPSへの依存を減らそうとしている。
- 国産のLACMを補完するために、中国は外国のシステムを購入している。
- イスラエルからは、対レーダー無人機「ハーピー」を購入。
- ロシア製「3M-14E クラブ」を保有している可能性もある。発射機はキロ級(636M)潜水艦。
- DH-10の空中発射型を「CJ-10」といい、H-6K爆撃機(CJ-10を4発搭載可能)からの発射試験も報告されている(訳者注:H-6Kなら6発、H-6Mなら4発搭載可のはずです)。
- CJ-10はトマホーク ブロックIVに匹敵する性能であると報告されている。
- 中国メディアの主張では、H-6Kは日本の軍事基地をCJ-10による一斉攻撃ができることから、戦略的抑止力を持つとのこと。
- いくつかの中国国内の情報によると、H-6Kに搭載できる核弾頭搭載LACM「CJ-20」も開発中らしい。
- 最近の報道によると、海軍はASCM「YJ-18」とDH-10をデッキ・キャニスターに搭載し、海上試験を実施した模様。
- 多くの中国海軍水上艦のキャニスターは8〜16セルで、ASCMとLACMはトレードオフの関係にある。
- 海軍が海上発射型DH-10に寄せる関心は、将来、052D型のような最新駆逐艦がASCMとLACMを同時に搭載できるVLS(垂直発射システム)を装備することを示している。
- すでに052C型駆逐艦において、YJ-18ランチャーはYJ-62と入れ替わることができる。
台湾有事における運用法
- 中国のASCMとLACMは、台湾有事の際に米海軍戦力や基地を攻撃するA2AD能力として用いられる。
- 大量の通常型弾道ミサイルとの併用によって、LACMは台湾の防空処理能力を複雑にさせる。
- 中国の作戦計画者たちは、空港のハンガーや指揮・統制施設への精密攻撃にLACMが効果的であると見ている。
- 彼らはまた、敵のミサイル防衛を破る最良の手段がLACMと弾道ミサイルによる大規模一斉攻撃であるとも考えている。
- さらに、LACMと弾道ミサイルの同時使用は敵空軍基地に衝撃と麻痺を与え、後続の航空攻撃の効果を高めると強調する。
- 中国は、台湾の重要施設を射程に収めるLACM・弾道ミサイルランチャーを255〜305基配備している。
中国の課題
- 中国がASCMやLACMの利点を最大限発揮するにはいくつかの課題がある。そのうちの主要な3つを挙げる。
- 1つは、十分なC4ISR能力を持っているかどうか。
- 前出のマーレー教授は、「長射程精密攻撃兵器であるASCMは、リモート・ターゲッティングに大きく依存している。中国は何が必要かを正しく評価し、要求を満たすべく積極的に投資している。超水平線(OTH)レーダーと偵察衛星がその証拠である」と指摘する。
- マーレー教授はまた、ターゲッティング・データを各プラットフォーム間でやり取りする能力が中国には必要だと言う。
- 亜音速のDH-10/CJ-10は、1,500km先の目標まで1時間以上かかり、先進的なレーダーや防空システムを備えた国を相手にした場合は、途中で撃ち落とされるかもしれない。
- 2つめの課題は、数日にわたるかもしれない複雑かつ多面的な航空・ミサイル攻撃作戦の組織化である。
- 作戦の成否は、人と技術の両ファクターに依る。
- 中国は、協同火力運用センター(Firepower Coordination Center(FCC))を統合戦域司令部(Joint Theater Command)の内部に設立しようと構想している。
- ミサイルの波状攻撃という繊細なタイミングを成功させるには、担当の各部署間の調整が死活的に重要となる。
- 中国が複雑な統合作戦を調整する自信を持っているのかどうかは不明である。
- もちろん中国は、そのような調整は不必要であると感じ、兄弟殺し(fratricide:ミサイル同士がぶつかりあったりすること)を考慮する価値などないと結論付けているかもしれない。
- 3つめの課題は、ミサイルの効率的な運用である。
- GPSのような情報技術における革命は精密誘導攻撃を容易にした。
- しかし、重要なのは技術へのアクセスだけではない。効果的かつ正確な攻撃判定(bomb damage assessment(BDA))なども効率的なLACM運用に必要である。
- トマホークの最新型であるブロックIVでさえ、最初のトマホークが配備された1970年代からこれまでの運用データの蓄積を分析することで今日のパフォーマンスを得られているということだ。
- LACM運用に高い自信を得るまでに中国は30年も必要ないだろうが、それでも時間と労力は必要である。
- 中国は実戦経験が不足しているため、独自の学習プロセスにフィードバックを反映する能力に乏しい。
- 実践的な訓練環境において、さらなる経験を得るまで中国がどのくらい指揮・統制目標を達成したのかは不明のままとなる。
結論
- 中国は、外国の巡航ミサイル技術と独自開発技術の両方を獲得すべく多大なリソースを注いでいる。
- これらは成果を結びつつあり、現代的な陸・海・空のプラットフォームに先進型ASCM/LACM配備が進んでいる。
- ミサイル運用のさらなる効率化のためにはまだ投資が必要。
- インテリジェンス・サポート、指揮・統制、ステルス技術、攻撃後の効果判定などが不足しており、それらすべてが作戦に不可欠である。
- ASCM/LACMは中国の戦闘能力を向上させ、A2ADにとってのキー・コンポーネントである。
- 中国は、ASCM/LACMと他の攻撃システムとの相乗効果を目論んでいる。
- ASCMの利点を考えると、米海軍水上艦がハープーンしか持っていないのは怠慢と言える。しかも少量に過ぎない。
- 米海軍と中国のカウンターパートの運用上の優先項目が異なるとはいえ、米側がASCMの種類も量も制限しているのはよろしくない。
- 2014QDRでは、巡航ミサイルと弾道ミサイルに対抗するシステムや技術への投資を優先している。
- 中国の巡航ミサイル能力に対する防衛力は存在するが、技術上・作戦上の対抗策を開発する努力を続けなければならない。
ざっとメモしたので、読みづらいですが(^_^;)
アンドリュー・エリクソン米海軍大学准教授のいつもの主張・論調を考慮しながら読む必要はありますが、参考になる論考です。ユアン先生もお懐かしい^^