SLBM_2


米中経済安全保障調査委員会の年次議会報告書が発表されました。

[PDF] 2014 REPORT TO CONGRESS of the U.S.-CHINA ECONOMIC AND SECURITY REVIEW COMMISSION

本稿では一部しか取り上げていませんが、他にも空軍や宇宙、C4ISRなどにも言及されています。報告書全体の概要としては、中国の2000年以降くらいからの軍事力の増強を警戒する一方、米国の相対的な抑止力低下を懸念するものとなっています。

この種の報告書は、実はあまり専門的に込み入ったことは書いてないんです。米国の議員に向けた要旨説明なので、中国の軍事力の現状を分かりやすく解説したものとなっています。


海軍の現状戦力


潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)「JL-2」を搭載した094型晋級が今年末までに初の戦略パトロールに出る(以前から伝えられているもの)ことが再確認されています。昨年の報告でも取り上げられていた096型にはJL-3が搭載されるとのこと。JL-3なんて話があるんですね。

中国海軍は対地巡航ミサイルを配備していませんが、5〜10年後には052C型/旅洋II型駆逐艦や095型SSGNへ搭載する予定と見られます。


短距離・準中距離弾道ミサイル


対台湾用である短距離弾道ミサイルの主力は、DF-11とDF-15。
日本や韓国にある米軍基地を攻撃する戦域(準中距離弾道ミサイル)の主力は、DF-21C。

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(中国の保有する短距離/準中距離弾道ミサイル。報告書をもとに作成)

他に、射程150〜280kmのCSS–9、CSS–14、CSS–X–15、CSS–X–16を開発中。

3,000〜5,500kmの中距離弾道ミサイル(IRBM)を5年後までに配備する計画もあり、これはグアム、北オーストラリア、アラスカ、中東、インド洋にある米軍基地を射程に収めます。

対艦弾道ミサイル(ASBM)のDF-21Dはすでに広東省清遠市と山東省莱蕪市に配備されているとの情報もあるようです。個人的にはASBMはあくまで港湾に停泊中の艦船を対象にしたものとしか考えてません。極超音速ミサイル開発や最近明らかになったCX-1超音速巡航ミサイル(まるでブラモスでした)などの話もあわせて、いずれは米国のCPGSのようなところに収斂されていく話なのかな、と考えています。


注目される核戦力増強


本報告書では、中国の「核の先制不使用 (no first use)」政策に疑問を投げかけています。第二砲兵のドクトリンなどが理由となっています。中国の核政策は定量化して見ることが難しいですが、定量化できるはずの核ミサイルの保有数なども“戦略的曖昧さ”で明確になっていません。

2006年以来、米国防総省もまた中国の核戦力についての分析を発表していません。このことも中国の核戦力をますます不透明にしていると報告書は指摘しています。実際、国防総省は2013年に「約50〜75発のICBMがあり15年以内に米国を攻撃する能力のあるものは100発に到達する」と報告したに過ぎません。本報告書はさらに、中国は国防総省の発表以上の核弾頭数を保有していると評価する専門家やシンクタンクもある、と言及しています。しかしながら、こうした外部機関・組織による評価や数字は、国防総省の年次報告書に追認する形で盛り込まれていることを付け加えておきたいと思います。

いずれにしても、本報告書は中国の核戦力が3〜5年以内にさらに増強すると評価し、晋級SSBNが搭載する12発のJL-2やMIRV(多弾頭)化したICBMなどがその中心となると見ています。

【 J L - 2 】
JL-2は昨年末に初期作戦能力(IOC)を獲得したと伝えられていますが、射程距離が7,500kmほどなので、中国近海から発射するとアラスカまでしか届きません。日本の南方にまで進出すればアラスカとハワイを射程に収め、ハワイの西方沖から発射すれば米国本土西部を、ハワイの東方沖から発射してはじめて米本土全域を攻撃することができます(過去記事参照)。第1列島線内はもちろん、第2列島線内でも日米のASW戦力に対して優勢を維持する能力が必要ですね。

【 M I R V 】
MIRV化される弾道ミサイルは、DF-5、DF-31A、そしてDF-41と見られています。DF-5Aは6基、DF-31Aは3基、DF-41は10基のMIRVを搭載可能です。

今年9月には新たにDF-31Bの実験も行われ、これもおそらくMIRV化される見込みです。

201411report_table2
(中国の保有するMRBM、IRBM、ICBM、SLBM。報告書をもとに作成)


【関連過去記事】