兵器のスペックは公表されていないことが多く、SM-3の最高迎撃高度もそのひとつです。これまでのイージスBMD(弾道ミサイル防衛)実験におけるSM-3の迎撃高度は160km前後が多いのですが、この数値がすなわちSM-3の到達高度の限界というわけではありません。2008年の偵察衛星USA-193の破壊は高度247kmで実施され、2011年4月の迎撃試験にいたっては標的が中距離弾道ミサイル(射程:3,700km)ですから、迎撃高度は400km+にも達します。しかし、こうした実験結果から最高迎撃高度を推定するのは難しいものです。

この数値を明示した資料としては、Richard McMillan氏が2002年に修士論文として発表した『Aegis TMD : some implications for Australia』があります。

The SM-3 Block 1 missile is being developed to achieve exoatmospheric intercepts of medium to long range ballistic missiles at ranges to 1,200 km and altitudes of 70-500 km. Based on the SM-2 Block 4 design, the SM-3 also employs a third stage dual-pulse rocket motor as well as a fourth stage autonomously manoeuvring 23 kg kinetic warhead to impact the target at a speed in excess of 4 km/s.

Richard McMillan, Aegis TMD : some implications for Australia, Australian Defence College Monograph Series, No. 1., 2003, p.18.

これによると、SM-3ブロック1A開発に要求されたスペックは、射程1,200km、迎撃高度70〜500km、迎撃時の速度は秒速4kmとなっています。

もうひとつ、2011年の冬にFAS(米科学者同盟)から発表された資料はとても興味深いものです。

[PDF] The Anti-Satellite Capability of the Phased Adaptive Approach Missile Defense System (FAS)

著者はUCS(憂慮する科学者同盟)のLaura Grego氏です。UCSそのものはややいわくつきというか微妙なところもありますが、Grego氏は宇宙物理学を修め、長年宇宙の兵器・安全保障やミサイル防衛問題に科学的に取り組んでいる研究者です。決してミサイル防衛システムに甘い見方をする方ではありません。その彼女がこの資料で提示しているSM-3の最高迎撃高度は、私が考えていたよりも高性能です。

sm-3_spec02

SM-3ブロック1Aは600kmまで到達するとしています。そしてなんと、ブロック2Aの最大射高は2,350km(!)と見積もられています。ここまでくるとにわかには信じられないレベルですが、ブロック2AはEPAA(欧州ミサイル防衛構想)においてイランから発射される中距離弾道ミサイルを迎撃する役目を担います。ここで迎撃すべき弾道ミサイルは最大到達高度が1,000kmを超えるものであることを考えると、ブロック2Aが2,000km余りの射高を持っているのも不思議ではありません。

Grego氏の論文が発表された2011年冬といえば、すでにSM-3ブロック1Bの迎撃実験も始まっている時期です。2002年のMcMillan氏の論文よりもデータ的裏付けのある資料と見ることができるでしょう。ただ、SM-3の高い能力を示す資料という意味で、私個人として「受け入れやすい」数字であり過ぎるために、まだ半信半疑です。技術的に詳しい方からのご教示などあれば幸いです。

なお、日本のミサイル防衛の焦点である北朝鮮の準中距離ミサイル「ノドン」は最大射程が1,300kmで、経路角30〜45度で発射された際の弾道頂点は約180〜330kmです。つまり、単純に数値だけ見た場合、SM-3の現行バージョンであるブロック1Aでさえノドン迎撃にはすでに十分な射高を持つことが実証されているわけですね。


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