米国が南シナ海人工島12海里内へ海軍派遣を計画か』というエントリを書いたばかりですが、『Foreign Affairs』で示唆的な記事があったので、簡単に要約してみました。メモ代わりの更新です。

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All in Good FON - Why Freedom of Navigation Is Business as Usual in the South China Sea (2015/10/12 Foreign Affairs)
By Mira Rapp-Hooper
  • FON作戦(freedom Of Navigation Operation)が実施されるという話だが、これについて2つの誤解がある。
  • 1つは、FONOPは外交と対立するものであるということ。
  • もう1つは、FONOPが中国の南シナ海領有権主張に挑戦するものであるというもの。
  • この2つの誤解により、FONOPは南シナ海問題をエスカレートさせるという主張がある。
  • しかし、FONOPは外交の補完であり、また中国の海空での主張に対しては国連海洋法条約(UNCLOS)に基づいて異議を唱えるものではあるが、彼らの領有権主張について争うものではない。


  • 米国は極めて頻繁にFONOPを実施している。
  • 2013年には19回、2014年には35回。2014年はそのうち19回が太平洋軍の担当地域である。
  • にもかかわらず、ワシントンにはFONOPが外交を超えた非常手段であるという考えがある。
  • FONOPと外交は補完関係にあり、対立するものではない。
  • FONOP実施は軍の民に対する勝利ではないし、外交努力が尽きた証でもない。
  • 中国当局が「米国が南シナ海の中国領土12海里内において活動することは中国の主権に挑戦するものである」と声明を出し、いかなる活動に対しても激しく反発する構えを見せた。
  • このように、中国もまたワシントンと同じくFONOPの目的を誤解していることが問題である。


  • 数日もしくは数週間以内にFONOPが実行されるかもしれないが、これは南シナ海における米国の政策が大きく変わったわけではないのだ。
  • 第一に、UNCLOSの無害通航原則において、外国船は沿岸国の平和を害しない限り12海里領海内を通過する権利を有している(訳者注:UNCLOS第19条)。
  • つまり、米国が南シナ海における中国の主権を認めていようとなかろうと、国際法は平和に通過することを禁じていない。
  • 中国は今年9月にベーリング海の米国領海を通過する際、この権利を行使したばかりだ。
  • 国際司法裁判所(ICJ)はFONOPのような活動が無害通航権と合致するものと確認している。
  • 第二に、南シナ海の領有権問題が論争になっていること、並びに米国が領有権問題に関してはどちらにも与さない立場であることの両面から、中国の人工島に限らず、その他の係争国の岩礁周辺の海や空の領有権を認識する必要がない。
  • 第三に、南シナ海が議論の余地なく中国のものであったとして、中国の7つの島は人工的なものである。UNCLOSでは、人工島は領海や領空を規定しない(訳者注:3〜16条)。500メートルの安全圏を設けることができる程度である(訳者注:60条)。
  • 7つのうちの3つは、低潮高地(訳者注:13条)であり、岩や島ですらなく領有権主張の対象にはならない。
  • したがって、領有権問題がなかったとしても、ミスチーフ、ガベン、スビなどの岩礁は領海・領空を規定する資格がなく、周辺を通航することが認められる。


  • 米国がFONOPを実行するにあたり、この行為がエスカレーションを招くものではなく、国際公共財における通常活動であることを2つの手段で示すことができる。
  • 1つは、地域諸国に計画についての注意喚起と支持を呼びかける。日豪印は中国の人工島建設に強い懸念を表しており、これらの国からの支持は、FONOPが米中の論争ではなく地域外交と法の支配の問題であると示すことになる。
  • もう1つは、中国以外の国、フィリピンやマレーシアやベトナムが支配している岩礁や低潮高地周辺でもFONOPを実行することである。これらの国が航行の自由への懸念を抱いているというのなら、国際法に基づいたFONOPに反対するはずがない。


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「FONOPの実施は通常活動の範囲であり、南シナ海でエスカレーションを招くものではない」と筆者は強調していますね。しかしながら、人工島12海里内を通過することに関しては、筆者も触れているとおり、すでに中国側から反発する声明がありました。それだけでなく、これまた筆者も認めているとおり、FONOPに対する中国の認識が筆者が説明するようなFONOPの主旨とは食い違っていますし、UNCLOSに対する理解というか受け止め方にも中国と米国とでは隔たりがあります。

こうした誤解と見解の相違の積み重なりを眺めてみると、中国に「FONOPは国際法に基づいた適切な処置だ」と納得させるのは難しいように思えます。そもそも、中国がUNCLOSに従わないところに南シナ海問題の一端があるわけですから、人工島12海里内への米艦船通過がどれほどUNCLOSにのっとった行為であっても、何の波風も引き起こさないというのはやや楽観的か、というのが個人的な印象です。もちろん、中国がおとなしく受け入れてくれることを望みますが。

一方、筆者の提案するフィリピン、マレーシア、ベトナムの支配する岩礁・低潮高地周辺でのFONOP実施は、公平性や透明性を確保する上でも必要なことだと思うので大いに賛同するところです。