北朝鮮が準中距離弾道ミサイル「ノドン」を日本海へ発射しました。

「ノドン」発射 日本の防空識別圏に (2016/3/18 毎日新聞)

短距離弾道ミサイル「スカッド」シリーズ、中距離弾道ミサイル「ムスダン」、大陸間弾道ミサイル「KN-08」など各種弾道ミサイルを保有している北朝鮮ですが、このノドンこそが日本攻撃用です。

全長: 16m
直径: 1.35m
ペイロード: 700〜1,000kg
推進方式: 1段式液体燃料ロケット
射程: 800〜1,300km
CEP: 最新情報では190m?と推定(従来は2,000〜3,000m)

射程範囲は以下の通り。
射程ノドン
(東部・舞水端里(ムスダンリ)の東海衛星発射場を中心に1,300kmの範囲)

すっぽり日本を覆います。

今回の発射は、北朝鮮西部の平安南道粛川あたりから発射し、朝鮮半島上部を通過、800km飛翔して日本海へ落ちたようです。
粛川郡〜800km

東京には届かないところから飛翔距離を抑えて発射していますが、それでも日本国土を射程範囲に収めています。もちろん、舞水端里の東海衛星発射場あたりからなら800kmの射程であっても大阪や京都を攻撃可能です。

前稿で、今年に入って北朝鮮の挑発が頻繁であることに触れました。

  • 2016/1/6 4度目となる核実験(北朝鮮は水爆実験と発表)。
  • 2016/2/7 人工衛星ロケット「光明星4号」発射。
  • 2016/2/23 朝鮮人民軍最高司令部による「重大声明」を発表(核の先制使用宣言)。
  • 2016/3/3 KN-09 300mmロケット砲×6発を発射(金正恩立ち会い)。
  • 2016/3/9 核弾頭の小型化成功と発表。
  • 2016/3/10 スカッド×2発を発射。
  • 2016/3/15 核実験の早期実施を宣言。再突入実験成功を発表。さまざまな種類の弾道ミサイル試射を予告。
  • 2016/3/18 ノドン発射。

今回のノドン発射も加え、2/23の「重大声明」以降に関しては、米韓合同軍事演習に対する反応です。演習は4月いっぱい続くので、まだ北朝鮮の挑発は続くかもしれません。


ノドンの数と発射機数


日米の弾道ミサイル防衛(BMD)は、北朝鮮やイランらの「ならず者国家」の弾道ミサイル脅威に備えることが主目的です。ロシアや中国といった国の弾道ミサイルに対しても対処は可能ですが、こちらはあくまでも限定的なものです。

先述したとおり、北朝鮮のもつ弾道ミサイルのうち、我が国にとってはノドンが主脅威です。そのノドンを北朝鮮は何発持っているのでしょうか? 各種報告書によると、ミサイル保有数は200発。かなりな脅威ですね。発射は移動式発射車両(TEL)を用います。


(移動式発射車両によるノドン発射イメージ。自作CG。)

衛星などに見つかりづらいような場所へ移動し、発射するわけです。

一方、ノドンを発射する肝心のTELは50基ほどと見積もられています。つまり、一斉発射できるノドンは最大でも50発程度でしょう。同時に、今回の発射でも2発発射して1発が不具合を起こしたように、実際に50発すべてを無事に発射するというのはなかなか難しいものだ、ということは北朝鮮自身がよく分かっているはずです。


日米の迎撃ミサイル数


これに対して我が国と在日米軍の迎撃ミサイル態勢はどのようなものでしょうか?

我が国のミサイル防衛の主役は、イージス艦とSM-3のイージスBMDです。海上自衛隊がそろえるSM-3は32発(こんごう型護衛艦4隻に8発ずつ)。さらに、あたご型イージス護衛艦2隻もSM-3を搭載するべく改修が決定されています。あたご型のBMD改修が終了すると、48発となります。

SM-3が万一撃ちもらした場合は、PAC-3が対応します。航空自衛隊の全24高射隊(各高射隊に発射機5基)で384発のPAC-3が発射できます(高射教導群および術科学校の配備分を除いて)。

加えて、在日米軍のイージスBMD艦は5隻。1隻に配備されるSM-3は9発なので、現在計45発。2017年までにはBMD艦が7隻体制になるので、63発に増加します。PAC-3は約400発。

有事には米本土からTHAADが来援します。我が国もTHAADやイージスアショアといったさらなる多層防衛の構築を検討しているようです。

  • SM-3: 日本×32(48へ増加予定) + 米海軍×45(63発へ増加予定)
  • PAC-3: 日本×384 + 米陸軍×約400

迎撃に際して、これらのBMD部隊がどの程度迎撃に適切な場所に展開できているかがキモです。急に撃たれたら対応できないとする意見もありますが、北朝鮮が日米韓にまったく発射の兆候を悟られずに数十発の弾道ミサイル発射という大規模な奇襲に成功する可能性がそれほど高いのか?とも言えます。今回も発射された18日には対応可能なように、日本政府は自衛隊に対して「破壊措置命令」を発令しています。


どのように迎撃する?


大変に大雑把な迎撃の流れですが、以下のようなイメージです。

ノドン発射後、衛星や早期警戒機をはじめ日本海や東シナ海に展開した日米韓のイージス艦、AN/TPY-2レーダーやFPS-5などの前方展開センサーで発射後の弾道軌道が追跡され、迎撃に最適な地点が割り出されます。BMDにとって重要なのは、迎撃ミサイルよりも目・耳・鼻の役割を果たすこれらセンサー群である、という専門家もいます。

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ノドンの射程は1,300kmですから、弾道頂点は発射から約320秒前後に高度約360kmの大気圏外に達します。燃料が燃焼完了した時点での速度が、秒速3.2km(マッハ9.4)。

イージス艦がミッドコース迎撃に最適な地点に配置され、弾道頂点から降下しはじめたところ(高度350kmあたり)で待ちかまえられるようSM-3ブロック1A/1Bを発射します(※迎撃高度や時間は、射手の配置によって変わるので、ここでの数字はこういうタイミングで迎撃できるというサンプルとしてとらえておいてください)。

現行のSM-3ブロック1Aの射程は1,200kmで、到達高度は500km(600kmという資料も)、速度は秒速3〜4km。すでにSM-3ブロック1Aは、ノドンの射程を超える中距離弾道ミサイル(秒速4+km、マッハ数11.7)の迎撃実験にも成功しています。

もしもSM-3の網をすり抜けてしまった場合は、PAC-3が補完します。これらをすべてくぐり抜けなければならないとなると、迎撃側に分があると考えるのが妥当です。

現在日米で共同開発中のSM-3ブロック2Aは、射程2,000km、迎撃高度が1,000km(2,350kmという資料も)、速度は秒速4.5〜5.5km。ノドンにはかなり余裕を持って対応できるようになります。ブロック2Aは2018年までに配備される予定です。


ミサイル防衛の迎撃試験


以前、イージスBMDの試験成績をまとめました。


SM-3を用いたイージスBMDの迎撃試験はこれまで32回実施され、そのうち26回の迎撃に成功
しています(2006年12月のFTM-11はカウントしていません。また、2008年11月のPacific Blitzは1発成功・1発失敗でMDAは失敗扱いとしています。)。

迎撃率は81%です。高い数字だと言い切ってよいでしょう。

試験の成功率はあくまでも試験だけのもの、という見方も否定はしませんが、過去記事の通り、イージスBMD試験の多くは発射時刻などを伏せた実戦に近い条件で行われています。それに、コンバット・プルーフ(実戦での能力証明)がない点は北朝鮮のノドン、ムスダン、テポドン、そしてKN-08なども同じです。

ちなみに、PAC-3とTHAADについてはさらに成績は優秀です。PAC-3は2009年以降、失敗がありません。現行のPAC-3MSEも同時多目標迎撃試験などを何度も成功させています。THAADは、2006年に現在のコンフィギュレーションになって以降、13回すべての迎撃試験を成功させています

◇ ◇ ◇

移動発射式のノドンは、たとえ策源地攻撃能力を持っていても潰しきるのは難しいものです(過去記事)。湾岸戦争でイラク軍の移動式スカッドミサイル発射機を米軍は最後まで破壊しきれませんでした。現在はUAV(無人機)による偵察・監視能力が向上しているとはいえ、砂漠が広がるイラクと山岳部の多い北朝鮮ではどちらがかくれんぼに適しているかは言うまでもありません。策源地攻撃能力も多層防御の一部ですので、検討に値するものではありますが、発射されてしまった弾道ミサイルを迎撃し、損害を限定するする手立ては、ミサイル防衛システム以外に選択肢はありません。