北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射しました。

北朝鮮による弾道ミサイルの発射について(第2報)(防衛省 2017/2/12)

北朝鮮は、本日7時55分頃、北朝鮮西岸の亀城(クソン)付近から、1発の弾道ミサイルを東方向に発射した模様です。発射された弾道ミサイルは、約500卮翔し、北朝鮮東岸から東に約350劼瞭本海上に落下したものと推定されます。詳細については現在分析中ですが、我が国及び地域の安全保障に対する明らかな挑発行為であり、断じて容認できません。

北朝鮮西部:亀城(クソン)付近から東に向けて発射。500km飛翔して海に落下させたようです。
20170212kusong

北朝鮮では先ごろから大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射準備をしていると報じられてきました。そのミサイルの全長は15m未満と伝えられていて、少なくともこれまで確認されてこなかったタイプのようです。ICBMと推定されてはいますが、「ムスダンER(射程延長型)」といった位置づけかな、などとも考えていたので、今回の発射の一報を見たときは、このミサイルを打ち上げたのかと思いました。

しかし、今回発射されたミサイルは、ICBMと推定されていた新型ミサイルとは異なっていたようです。飛翔距離が短いために、当初から「ムスダン」をロフテッド軌道で打ち上げ、近くに落としたのかもしれないとの見方がありますね。

ロフテッド軌道

2016年6月のムスダン発射では高度1,000kmを超えたことが発表されましたが、今回は少なくともそこまでの弾道頂点には達していないようです。稲田防衛大臣の見解は以下のとおりです。
稲田朋美防衛相は12日午前、北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、「専門家が分析中だが、昨年6月に発射された弾道ミサイルのような1000キロを超える特異な高度ではなかった」と述べ、高い高度に打ち上げて迎撃を困難にする「ロフテッド軌道」での発射ではないとの見解を示した。

現行のSM-3ブロック1Aにとって迎撃の難しい弾道頂点高度1,000kmを超えるものではないようですが、スカッドのような短距離弾道ミサイルでないならば、やはり高く打ち上げて近くに落とすロフテッド軌道のような軌道をとった可能性はありますね。

韓国軍では「ノドン」との見方も出ています。
韓国軍合同参謀本部は12日、北朝鮮が同日発射したミサイルについて、中距離弾道ミサイル「ノドン」と推定したが、新型ミサイルの可能性も排除しなかった。

同本部関係者は会見で、「北が発射した弾道ミサイルの飛行距離が大陸間弾道ミサイル(ICBM)とは異なる。ICBMの発射実験の可能性は低い」との見方を示した。その上で、射程距離、高度、方向などから「ノドン」ではないかと推定した。

別の韓国紙ではムスダンの改良型では?との見方も示しています。
韓国軍消息筋は「北が発射したミサイルは射程距離からして大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではないとみられる」と述べた。その上で、弾道ミサイルの持続的な性能向上のため、中距離弾道ミサイル「ノドン」 または「ムスダン」の改良型を発射した可能性があるとの見方を示した。

北朝鮮がムスダンに新型のICBM用エンジンを装着し発射実験を行った可能性もあるとの見方も一部である。

米戦略軍(USSTRATCOM)の発表では、準中距離〜中距離弾道ミサイルとの見解です。
U.S. Strategic Command systems detected and tracked what we assess was a North Korean missile launch at 7:55 a.m. KST. The launch of a medium- or intermediate-range ballistic missile occurred near the northwestern city of Kusŏng.

準中距離〜中距離弾道ミサイルとなると、射程1,000〜5,500kmと幅広く、はっきりとしたことは分からん、ということのようです。

ノドン、ムスダンの変種または新型ICBMをロフテッド軌道で発射したか、燃料調節によって日本列島上空を通過しないよう飛距離を抑えたのかもしれません。発射された弾道ミサイルが多段式であれば、北朝鮮は国内(陸地)にブースターを切り離したのでしょうか。

今回は高度1,000+kmのロフテッド軌道での発射ではないようですが、中距離弾道ミサイル〜ICBM級のロフテッド軌道対策となる迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」の実験が今月成功したばかりです。SM-3ブロック2Aは、射高が2,000kmを超えるという資料もあるほどの能力です。

【過去記事】SM‐3ブロック2Aが初の迎撃試験に成功:ブロック2Aが持つ2つの意

政治的なタイミングとしても、安倍首相が訪米中で、かつトランプ新政権下で北朝鮮政策レビューが始まったところです。ただし、北朝鮮としてはそれに合わせて撃ってきた側面はあるでしょうし、そもそも彼らは核抑止力を確立するまでミサイル開発を止める気はないでしょう。

ICBMと推定されていた謎の弾道ミサイルは2発準備されているとの話でしたので、まだICBM級ミサイルの発射実験が続く危険性は強いと思われます。


【2017/2/12 23:40追記】

専門家による興味深い指摘を見つけました。
国際戦略研究所(IISS)のマーク・フィッツパトリック氏によると、500km飛翔した今回のミサイルは、KN-14(KN-08改良型)の一段目ブースターと合致しているとのこと。『38North』の記事で示されているKN-14の一段目は着水距離は明示されていないものの、確かに日本海に落ちていますね。

KN-14trajectory
(Michael Elleman, Can the US Prevent North Korea from Testing an ICBM?, 38North, 27 January 2017より転載。)

同氏は、"であるなら、ICBM開発は次の段階に進んだ"としています。

このツイートを受けて、モントレー国際大学院/Arms Control Wonkのジェフリー・ルイス氏は以下のようにツイートしています。

なるほど。KN-14の一段目と同じ軌道でかつ陸上配備型KN-11とも一致する、と。

12日23時現在、今回のミサイルは「ムスダン改良型」との見方が韓国軍などから出てきていますが、この二人はムスダン改良型というよりも、ICBM技術の試験であったと考えているようです。

ムスダン改良型がICBM級という可能性もあるのでしょうか?う〜ん。



【過去記事でノドン、ムスダンについて】