2019Mar_ftm11
(MDAより画像転載。)

2度目のICBM迎撃実験

GMD(Ground-based Midcourse Defense)の迎撃実験「FTG-11」が行われました。2度目のICBM(大陸間弾道ミサイル:射程5,500km〜)級標的への迎撃実験です。 GBI-LeadとGBI-TrailというGBIを2発撃つ斉射実験としては初の実験となりました。
Homeland Missile Defense System Successfully Intercepts ICBM Target(2019/3/25 ミサイル防衛局)


実験の概要は、マーシャル諸島クワジェリン環礁のロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場(RTS)から発射されたICBM標的に対し、4,000マイル離れたカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から迎撃ミサイル「GBI」がミッドコースの大気圏外で迎撃しました。ICBM×1発に対して迎撃体2発「CE-II」と「CE-IIブロック1」を斉射し、迎撃に成功。なお、 GBIによる迎撃実験としては2017年5月の「FTG-15」に続く成功です。

斉射(salvo)の目的としては、GBI-Leadが標的の破壊を指向し、GBI-Trailが破壊された破片や残りの物体、他の再突入体などの次なる最も脅威となる物(most lethal object)を破壊することを目指しているようです。


GMDとは

GMDの実験頻度は少なく、他のミサイル防衛システムに比べて触れることもあまりないので、今年5月の初のICBM級標的迎撃試験に続き、ここで再度まとめておきたいと思います。自分用のメモ代わりですが、本稿をきっかけに米本土ミサイル防衛システムについても関心を持っていただければ幸いです。

GMDとは、北朝鮮やイランの弾道ミサイル攻撃から米国本土を守るための地上配備型ミサイル防衛システムです。GMDで用いられる迎撃ミサイルは「GBI(Ground Based Interceptor)」といい、3段式固体燃料ロケットです。イランがICBM開発に成功し、固形燃料式ICBMを発射した場合、弾道頂点は高度約1,600km(下図)。GBIはミッドコースでこれを迎撃する設計であるため、射高は2,000kmほどの能力があると見られます。
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(米議会予算局(CBO), Options for Deploying Missile Defenses in Europe, February 2009, p. 9.)

SM-3やTHAAD、PAC-3がそれぞれ異なる役割を担っているように、GBIも担当する相手が決まっています。

GBIの標的はICBMです。それも、米本土へ向かってくるICBMを迎撃します。同じ地上配備型システムのTHAAD、パトリオット・システムなどのような移動発射式ではなく、地下の固定サイロに配備されているために、グアムやハワイへ緊急展開するようなことはできません。

北朝鮮やイランから米本土へ向かう弾道ミサイルは、ICBM級のものしか届きません。GBIは、米本土防衛用・対ICBM専用の迎撃ミサイルなのです。


すでに配備は開始されている

GBIには、「CE-I」と「CE-II」の2種類のEKV(大気圏外迎撃体)があります。「CE-I」は2005〜2010年に5回の実験を行い、そのうち3回が迎撃実験でした。3回の迎撃実験はいずれも成功とされています。ただ、「CE-I」は十分な持続可能性を持たないと評価され、2004〜2005年から「CE-II」の開発が始まりました。「CE-II」の配備は2008年から始まっているのですが、後述するように開発が難航し、開発費も2016年までに20億ドルへと膨らんでしまいました。

これまで、GBIはフォートグリーリー基地(アラスカ)に26基とバンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア)へ4基配備されていました。

KN08_GMDbases
(平壌を中心に正距方位図法で見るフォートグリーリー基地とバンデンバーグ空軍基地の位置。)

2013年3月、北朝鮮の弾道ミサイルの長射程化を受けて、このGBIを14発増やして44発にするという発表があり、2016年末時点で計36発のGBIがサイロに配備中です。
GMD_2017
(CSIS, Missile Defense 2020: Next Steps for Defending the Homeland, April 2017をもとに作成)

2017年末までに残り8発の「CE-IIブロック1」が追加配備される計画です。

他に、東海岸へ最大60発のGBIを配備する計画もあり、新たなGBI設置場所の環境アセスメントがスタートしています。

1997年1月17日の「IFT-1」以降に実施されたGBIの飛行・迎撃実験は34回。そのうち20回が迎撃を含む実験で、成功は12回。今回の実験でICBM迎撃は2/2となりますが、これまでの実験における迎撃率は約60%(2019/3/26時点)と、決して芳しい数字ではありません。 信頼性を得るにはまだ実績が必要となります。
gmd.test


新型迎撃体を2種類開発中

  • RKV:再設計型迎撃体
    現在、ミサイル防衛局(MDA)と迎撃体設計担当のレイセオンではRedesigned Kill Vehicle(RKV:再設計型迎撃体)を開発中です。RKVはEKVの信頼性、維持管理性、生産性、価格の手頃さなどの向上が図られています。

    また、より充実した状況判断データ獲得のために、目標探知・識別、オンデマンド通信能力の強化もRKV開発に盛り込まれています。MDAでは、2018年に最初の発射試験を、2019年には最初の迎撃試験を予定しているようです。

    RKV全製造数から実験分を引いた35基が2027年までに配備完了する計画で、44発のGBIの内訳は「RKV」×35+「CE-IIブロック1」×9となります。

  • MOKV:多目標迎撃体
    複数の標的ミサイルが斉射された場合、従来は1発の標的に対し1発のEKV(とブースター)が対応していました。しかし、標的が多弾頭であったりデコイ(おとり)を搭載してある場合に迎撃側の消耗が大きいことから、現在単弾頭であるブースターに複数の迎撃体を搭載して迎撃しようという構想です。

    すでに研究・開発が着手しており、少なくとも2030年までに配備可能な迎撃体の製造が始まるとの見込みです。


今後の展開

GMD_2017_evolution
(CSIS, Missile Defense 2020: Next Steps for Defending the Homeland, April 2017をもとに作成)

EHD期
44発のGBIが配備されます。内訳は「CE-I」×20、「CE-II」×16、「CE-IIブロック1」×8。
迎撃を含まないRKVの飛行試験も予定しています。

RHD期
「RKV」の開発/配備がその中心となります。
もうひとつは、ブースターの開発です。現行のC1、C2ブースターは3段式で長距離射程に限定しています。しかしshoot-look-shootドクトリンを採用するうえでは射程を柔軟に選択可能であるべきで、MDAはブースターを2段式にしたり3段目をshut offする機能を検討しています。
2027年中期までに、「RKV」搭載C3ブースター×35発+「CE-IIブロック1」搭載C2ブースター×9発が配備されます。
3回の迎撃実験が予定されており、そのうちの2回は「RKV」を搭載した2段式/3段式選択可能型ブースターを使用します。最後の迎撃実験では、「RKV」と「CE-IIブロック1」の斉射を含みます。

AHD期
「MOKV」の開発がその中心となります。
2022〜2027年にMDAは1年に1回のペースで2段式/3段式選択可能型ブースターを使用した実験を行う予定です。


予想される開発面での問題

オバマ政権下でいくつかのGMD開発計画がとん挫したように、資金問題で進行中のプログラムが縮小したり中止したりといったことは十分に考えられます。

また、現在のプログラムにおいても、2017年〜2020年の間にGBIの数が減ってしまうという問題があります。というのも、2017年までに44発のGBIが配備予定ですが、RKV製造が始まる2020年まで追加調達の予定がなく、実験で使用されたり老朽化などによる撤去を考慮すると、2022年には40発に目減りしてしまうとされています。

さらに、2020年にはRKVの配備が始まりますが、「C2ブースター」の配備は2022年からで、新鋭のRKVを信頼性に問題のある「C1ブースター」に2年間搭載しなければならないという問題もあります。





【参照資料】





【GMDに関する過去記事】
(2012年05月17日) GBIの今後: ICBM迎撃実験は2015年か?
(2013年01月27日) ミサイル防衛:ICBMから米本土を守るGMDの実験が成功
(2013年03月16日) 北朝鮮のKN-08迎撃のためにアメリカがGBIを追加配備
(2013年07月06日) 米本土ミサイル防衛:GMDの迎撃試験は失敗
(2013年07月12日) GBIの迎撃試験「FTG-07」失敗の原因はブースター切り離しか
(2014年05月02日) 米本土ミサイル防衛:GMDの現状と今後の予定
(2014年06月23日) 米本土ミサイル防衛:GMDによる迎撃実験「FTG-06b」が成功
(2014年08月15日) 米本土ミサイル防衛:GBIの米東部配備へ環境アセス開始 
(2016年01月29日) 米本土ミサイル防衛:GMDの飛行実験(DACS性能試験)が成功
(2017年05月31日)初のICBM迎撃実験に成功:米本土ミサイル防衛(GMD)とは