火星15の技術的現状分析
『38 North』が、北朝鮮の新型ICBM「火星15」に関して現時点で得られる情報を端的にまとめています。メモ代わりの更新。The New Hwasong-15 ICBM: A Significant Improvement That May be Ready as Early as 2018(38 North)
- 火星15は火星14の改良型ではない。
- 2段式液体燃料ICBMである。
- 第1段目は一組のエンジンを2つの燃焼室で共有する構成で、旧ソ連のRD-251エンジンに酷似しており、リフトオフ時の合計推力は約80トンとみられる。
- 火星15の総重量は40〜50トン。
- 第2段目の構成は不明。火星14よりも50%多い推進剤を含んでいると考えられる。
- 米本土のあらゆる地点へ1トンのペイロードを運搬できる。
- 北朝鮮は700kg以下の核弾頭をほぼ開発済みである。
- 姿勢制御機構も北朝鮮の他のミサイルに比べてより効率的でシンプルなものになっているのが特徴的だ。
- 火星12と14は、第1段目の制御を行う際、主燃焼室に平行に設置された4つの小型エンジンを用いる。火星15では、メインエンジンにそれぞれジンバルを取り付け、排気ガスの方向を一つの次元に再配する機構にしている。
- 第2段目の姿勢制御機構はほとんど分かっていないが、旧ソ連のR-27ミサイルに由来する4つの小型エンジンが搭載されている可能性が強い。
- 宇宙空間でのペイロードの速度および姿勢の最終修正のためのポスト・ブースト制御システムを搭載しているかもしれない。
- 米本土ミサイル防衛システム(GMD)に対抗するための単純なデコイを搭載しうるが、当該試験にデコイが含まれていたとは考えづらい。
- 火星15の登場は、北朝鮮の対米攻撃能力の著しい向上を意味する。
- 今後どのくらいの試験を実施するかについては指導層が決めることだが、少なくとも1、2回の通常軌道での試験が必要である。
- 追加の飛翔試験では、再突入体の信頼性を確立しなければならない。
- 火星15の信頼性を確保できないようなら、今後4〜6か月の間に2、3回の発射試験が行われるかもしれない。
火星15の技術的向上が素人ながら理解できる内容です。
"火星15は米本土のあらゆる地点へ1トンのペイロードを運搬できる。北朝鮮は700kg以下の核弾頭をほぼ開発済みである"という部分については、火星15の登場によって「核の小型化」がすでに大きな課題ではなくなったことを示しています(注:引用記事著者である国際戦略研究所(IISS)のマイケル・エレマン氏は、11/29の記事で火星15がニューヨークを攻撃するにはペイロードが約350kgでないとならないともしています。ただし、根拠は火星14のペイロードを推定したジョン・シリング氏の 記事(2017/8/1)ですので、最新の当該引用記事において評価が変わったのかもしれません)。
弾道ミサイルの専門家であるミドルベリー国際大学院モントレー校/Arms Control Wonkのジェフリー・ルイス氏もそうした考えのようです。In case he didn’t notice, the Hwasong-15 is so big that the warhead wouldn’t need to be miniaturized. https://t.co/QcM5CSx1YB
— Jeffrey Lewis (@ArmsControlWonk) 2017年11月30日
「核の小型化」がどこまで進んでいるかの実証的な裏付けは難しいところですが、「再突入体の信頼性」が残された最後の課題となりつつあるのは確かなようです。
火星15の戦略的意味
技術的進歩の一方で、"戦略的見地から見ると火星15はゲームチェンジャーではない"というのが、新アメリカ安全保障センター(CNAS)アジア太平洋安全保障プログラムのミラ・ラップホッパー女史の見解です。火星15が危険なものではない、というのではありません。"北朝鮮は2006年以降、米国と当該地域の同盟国を核戦力による脅威にさらしてきており、米本土全域を射程に収めるのは時間の問題だった"というのが、その理由です。
America Is Not Going to Denuclearize North Korea(The Atlantic)ラップホッパー氏によると、"北朝鮮は、自らの核戦力が米国を脅かすほど洗練されたものになるまで継続する。それは核戦争を始めたいがためではなく、米国を抑止したいからだ"と、北朝鮮の核及びミサイル開発の意図を指摘しています。私個人としてもこの点は完全に同意するものです。
さらに同氏は、トランプ政権が北朝鮮に対して軍事行動を起こすというメッセージを発していることを批判し、"北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル取得を阻止する機会は何年も前に過ぎ去っていて取り返しがつかない。米国は抑止と封じ込め戦略を採用するべきである。それによって同盟国に保証を与え、核拡散を防ぎ、北朝鮮の核・ミサイル開発を制限する外交窓口を開く"と提言しています。
"北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル取得を阻止する機会は何年も前に過ぎ去っていて取り返しがつかない"というのは、その通りだと思います。すでに核を保有した北朝鮮にそれを自主的に放棄させる道は閉ざされており、かの国の体制を軍事的アプローチで完全に壊滅させるか、核保有国・北朝鮮を国際秩序に組み込んで暴発しないように「抑止と封じ込め」を行うしか選択肢はないでしょう。このあたりはリスク受容度の評価基準によって考え方が分かれるところだと思いますが、オバマ政権下での「戦略的忍耐」という対北朝鮮政策の結果に対し、米国はじめ関係各国が回答を迫られるところに来ているのは確かで、火星15の登場はその決断をさらに急き立てるものとなるかもしれません。