中国の極超音速滑空兵器開発

「DF-17」という初めて聞く弾道ミサイルのニュースがあったので、メモ代わりの更新です。
Introducing the DF-17: China's Newly Tested Ballistic Missile Armed With a Hypersonic Glide Vehicle(2017/12/28 The Diplomat)
『ディプロマット』によると、先月1日と15日に内モンゴル自治区・酒泉衛星発射センターにて「DF-17」弾道ミサイルの発射実験が実施されました。

1日の実験では、DF-17の弾頭に極超音速滑空体(HGV)が搭載され、11分間飛翔、水平距離は1,400km。高度は60kmのディプレスド軌道で発射されたそうです。HGVの標的への着弾精度は“数メートル以内”だったとのこと。実験の主目的は、HGVの投射だったようです。

DF-17は、最小エネルギー軌道であれば1,800〜2,500kmの射程を持つ準中距離弾道ミサイル(MRBM)だそうです。短距離弾道ミサイル「DF-16B」をベースにしており、核/非核弾頭を搭載可能で、HGVの代わりに終末機動式再突入体(MaRV)を運搬することもできます。

なお、DF-17は、“HGV運用のための設計で、テストベッドではない”とのこと。極超音速滑空兵器は射程距離が短いことがネックなので、米国でもミニットマン2やミノタウロス4を運搬体として実験していましたが、中国はDF-17をその役目に任命するのでしょうか。

中国のHGVは、2020年までに初期作戦能力(IOC)を獲得する予定です。これは2014年の時点で明らかにされていました。
2014年に発表された米中経済安全保障調査委員会の年次議会報告書によると、中国はWU-14を「次世代の精密攻撃能力のコア・コンポーネント」と位置づけており、2020年までに高速滑空機を、そして2025年までにはスクラムジェット推進極超音速機を配備する計画を持っているとのことです。
中国によるHGVの実験は2014年1月以降、断続的に実施されており、今回で8回目となります(関連過去記事)。

被発見率の高い高高度の弾道軌道を描かず、低高度を飛翔する極超音速滑空兵器は、防御側のリアクションタイムが少なく、既存のレーダー技術にとって対処が難しいものとなります。その一方で弾道ミサイルの再突入体よりも速度が遅いことから、先進的なミサイル防衛に対しては脆弱であると引用記事著者のパンダ氏も指摘しています。


米国の極超音速滑空兵器開発

米国には、CPGS(Conventional Prompt Global Strike:通常兵器型即時全地球攻撃)構想というものがあります。核抑止力の「一部」の代替、もしくは通常戦力と核戦力の「隙間」を埋めるものとして期待され、様々な組織によって数種類の研究・開発が手がけられてきました(CPGS計画関連はこちら)。代表的なものとしては、Falcon HTV-2やX-51Aウェーブライダー計画などがあり、いずれもひとまず終了しています。構想の一環として見た場合、陸軍の「先進型極超音速兵器(AHW)」は順調なので、こちらの方へ技術が活用されるのかもしれません。

奇遇なことに、中国のDF-17によるHGV実験の2日前、海軍戦略システム計画(SSP)において米陸軍のAHW改良版の実験「CPS FE-1」が行われています(USNIニュース)。計画が順調に進めば、オハイオ級SSGNではなく、将来、バージニア級SSGNに搭載されることになるかもしれません。


米国の極超音速滑空兵器対策

米国はHGV自体の開発も中国に先んじて始めていますが、HGV迎撃システムの開発にもすでに着手しています。そのうちの有力な候補が、THAADを改良した「THAAD-ER」です。ER(Extended Range)という名の通り、射程は3倍延伸し、10〜40倍の機動能力向上、迎撃範囲は9〜12倍拡大します。現行THAADが1段式であるのに対し、THAAD-ERは2段式となります。現行THAADの動向とともにTHAAD-ERの今後にも注目しておきたいところです。

ミサイル防衛局は、極超音速滑空兵器対策として、2019年までに既存のセンサー群や地上インフラを増強すべく7,530万ドルを2018年会計年度のHypersonic Defense activitiesとして要求(MDA)しています。