新型極超音速滑空飛翔体「星空2号」

中国航天科技集団公司の航天空気動力研究院が3日、極超音速飛翔体「星空2号」の飛行試験に成功しました。「星空2号」は初めて耳にするものだったのでメモ代わりの更新です。


星空2
新浪網より画像転載。)

中国成功测试乘波体高超音速飞行器:为国内首款(2018/8/3 新浪網)
当該実験では、「星空2号」がブースターロケットによって打ち上げられ、分離した後に高度30kmに達し、マッハ5.5〜6で約400秒以上飛翔しました。

報道によると、「星空2号」は“乘波体”(ウェーブライダー)とのことですので、弾頭にウェーブライダー形状の飛翔体が搭載されていると思われます。実際、“星空-2乘波体高超音速滑翔飞行器不同于中国已服役的东风-ZF高超音速滑翔飞行器,前者类似美国的X-51A”(2018/8/5 新浪網)とも報じられている通り、米国の極超音速機「X51Aウェーブライダー」と類似したものであり、従来中国が開発してきた極超音速滑空体(HGV:hypersonic glide vehicle)「DF-ZF(WU-14)」とは異なるようです。DF-ZFはマッハ10で機動しているので、今回の「星空2号」とは速度だけでみてもかなり違いがあります。

「星空2号」は、昨年12月に飛行試験に成功した「DF-17」とも異なります。DF-17の実験では、弾頭にHGVが搭載され、11分間飛翔、水平距離は1,400km。高度はディプレスド軌道で発射されて60kmでした。

中国では他にも、米国が開発していたDCR(Dual Combusion Ramjet)式巡航ミサイル「Hyfly」(1997年開発開始、1999年開発中止)を真似た「凌雲1号(Lingyun-1)」という巡航ミサイルが国防科学技術大学で研究開発中です(参考:Dirg_rocketdyne、中国の極超音速スクラムジェットミサイル・中国版Hyfly ミサイル:Lingyun-1(凌雲1), Chinese hypersonic scramjet missile, Chinese Hyfly missile : Lingyun-1 hypersonic missile、ORBIT SEALS、2018/7/21.)。「星空2号」とは開発元が違いますし形状も異なるようですが、人民解放軍のスクラムジェットエンジンによる極超音速兵器開発プロジェクトにおいて実験結果などが共有されているかもしれません。


中国が進める極超音速滑空兵器開発

中国では極超音速飛行体の開発計画に研究開発投資が続けられています。空気吸入式超音速燃焼ラムジェット(スクラムジェット)エンジン技術を採用し、研究投資の対象として先進型耐熱素材、レーダーや赤外線識別減少(例:ステルス)技術、MEMS(微小電気機械素子及びその創製技術のこと)、自律制御システムの開発などへも集中しています。2020年までにブースト極超音速滑空ミサイル能力を、2025年までに極超音速スクラムジェット推進巡航体を配備するよう研究を進めており([PDF] 2014米中経済安全保障調査委員会年次報告書)、「星空2号」もその一環のひとつと考えられます。

HGVは被発見率の高い高高度の弾道軌道を描かず低高度を飛翔するため、防御側のリアクションタイムが少なく、既存のレーダー技術にとって対処が難しいものとなります。「星空2号」も“乘波体高超音速滑翔飞行器”と伝えられる通りウェーブライダー極超音速滑空飛翔体ですから、敵の防空システムを速度と機動力で突破することを目指しています。その一方で、弾道ミサイルの再突入体よりもはるかに速度が遅いことから、先進的なミサイル防衛に対しては脆弱であるとの指摘もされています(Ankit Panda、Introducing the DF-17: China's Newly Tested Ballistic Missile Armed With a Hypersonic Glide Vehicle、The Diplomat、2017/12/28.)。


米国の極超音速滑空兵器開発

オバマ大統領が「核兵器なき世界」構想を打ち出し、2010年4月に発表した「核戦力態勢見直し」はそれに沿う内容となりました。その中で、核弾頭を搭載しないCPGS(Conventional Prompt Global Strike:通常兵器型即時全地球攻撃)による抑止力維持を図る新戦略が発表されました。これは、地球上のあらゆる場所を通常兵器で1時間以内に攻撃できる能力をもつというものでした。核抑止力の「一部」の代替、もしくは通常戦力と核戦力の「隙間」を埋めるものとして期待され、様々な組織によって数種類の研究・開発が手がけられてきました(CPGS計画関連はこちら)。代表的なものとしては、Falcon HTV-2や先述のX-51Aウェーブライダー計画などがあり、いずれもひとまず終了しています。

米中の極超音速兵器の運用構想の違いや彼我のミサイル防衛能力の差、相次ぐ実験失敗などの理由から、米国は極超音速兵器の研究開発に積極的ではありませんでした。しかし、昨年米軍は陸海空三軍による共同開発に合意し、2020〜21年には試験を開始すると発表しました(Military services to work together to speed hypersonic weapon development、Stars and Stripes、2018/7/25.)。米国の極超音速兵器開発の進捗状況に注目しておきたいところです。


米国の極超音速滑空兵器対策

米国はHGV自体の開発も始めていますが、HGV迎撃システムの開発にもすでに着手しています。そのうちの有力な候補が、THAADを改良した「THAAD-ER」です。ER(Extended Range)という名の通り、射程は3倍延伸し、10〜40倍の機動能力向上、迎撃範囲は9〜12倍拡大します。現行THAADが1段式であるのに対し、THAAD-ERは2段式となります。

米ミサイル防衛局はHGV対策として、2019年までに既存のセンサー群や地上インフラを増強すべく7,530万ドルを2018年会計年度のHypersonic Defense activitiesとして要求(MDA)しています。