「ミサイル防衛見直し(Missile Defense Review)」がようやく発表されました。2017年中に発表されるかもしれないと見られていましたが、北朝鮮の相次ぐミサイル実験とその後に訪れた米朝接近などの政治的背景もあってか、これまで発表が延期されていたものでした。

ミサイル防衛ならびに弾道ミサイルの脅威に関する現状を俯瞰的に把握する上で端的なテキストとなっているように思いますので、自分用のメモ代わりの更新です。極超音速兵器への言及は想像していたよりもかなり少なかったです。

[PDF] 2019 MISSILE DEFENSE REVIEW, OFFICE OF THE SECRETARY OF DEFENSE, 17 January 2019. 

脅威環境の拡大

米本土への現在の脅威・出現する脅威

米本土ミサイル防衛は、北朝鮮とイランのミサイル能力に対して先進的なコンセプトと技術を追及しなければならない。北朝鮮とは対話の道も進められているが、その脅威は継続している。特にICBMには警戒を怠るべきではない。敵の意図は我々の防衛能力の発達よりも急速に突然その方向を変え得る。

ロシアと中国も先進技術を含めた戦略的攻撃ミサイルシステムの拡大と近代化を進めている。なお、ロシアと中国の核攻撃には核抑止を以って対している。


北朝鮮
  • 北朝鮮は過去10数年にわたり、核開発とミサイル実験を行い挑発してきた。
  • アジア地域での危機や紛争の際、米本土を核攻撃すると脅すことにより、米国は同盟国への支援を手控えるかもしれないと北朝鮮は誤認しているのかもしれない。
  • 2017年9月3日に6度目の強力な核実験を実施。
  • ICBM開発実験も同時に進め、2017年7月28日、新型移動式ICBM「火星14号」の飛行試験を行い、同年11月28日には米国全域を射程に収める能力を持つ「火星15号」の実験も行った。
  • これらの実験の結果、北朝鮮は米本土を核ミサイルで攻撃しうる能力を得た。

イラン
  • イランが地域の覇権国家となるうえで米国は最大の障壁であり、その目的を果たすツールのひとつとしてミサイル能力が挙げられる。
  • イランは中東最大の弾道ミサイル戦力を持つ国家である。米本土へ到達する射程のミサイル開発を含め、様々な射程のミサイル能力の開発・配備をしている。
  • 2017年7月、衛星打ち上げロケット「シムルグ(Simorgh)」の発射に成功。これはイランのICBM開発の一端となるかもしれない。

ロシア
  • 脅威の筆頭は米国とNATOであり、米本土への核攻撃を何度もシミュレートして見せている。
  • 核の先制使用を標榜することで、紛争がロシア有利で始まるのだ、と米国およびNATOに強制できると誤った評価をしている。
  • このロシアの誤った認識は、危険な誤算やエスカレーションの見込みを大きくさせている。
  • 2010年の新戦略兵器削減条約(START)では、ICBM・SLBM・戦略爆撃機の配備数を700基、戦略核弾頭の配備数を1,550発と制限している。しかし、その強力な製造インフラとICBMのペイロードを考慮すれば、ロシアはいつでも弾頭配備数を拡大する能力がある。
  • ロシアの指導者層は、ミサイル防衛システムを突破する極超音速滑空体(HGV)を開発するべきと主張している。

中国
  • インド太平洋地域において米国の地位に取って代わろうとしており、ミサイルはその中で主要な役割を果たしている。
  • 様々な弾道ミサイル開発計画を進めており、中国は世界で最もミサイル開発の活発な国のひとつである。
  • ICBMは75〜100発配備され、それらは移動式であったり、サイロ配備型多弾頭ミサイルであったりする。
  • 4隻の晋級(JIN-class)弾道ミサイル原潜(SSBN)を保有。晋級はそれぞれ12発の新型SLBM「JL-2」を搭載する。
  • 現在、125発の核ミサイルによって米国を潜在的に脅かしている。そのうちのいくつかは多弾頭であり、核戦力は今後増強するだろう。また、MaRVやHGVの開発も進めている。


在外米軍と同盟国・友好国への脅威
北朝鮮
  • ミサイルを配備するだけでなく、既存システムのパフォーマンスや能力を向上させている。
  • 2015年以来、北朝鮮全域の夥しい場所から、スカッドやノドン、新型システムなど在アジア米軍、同盟国、友好国を目標とする2ダース以上に及ぶ地域ミサイルを発射してきた。
  • 2017年、5発の弾道ミサイルをほぼ同時に発射、4発が日本海へ着弾した。これらは在日米軍基地攻撃を模したものだとアナウンスされた。
  • 北朝鮮はIRBM実験キャンペーンを通してこれらの戦力を増強してきた。数度の「火星10号(ムスダン)」発射、2017年には「火星12号」が2度日本の上空を飛び越えた。2017年2月にはSLBMの陸上発射型改造版と見られる新型固体燃料準中距離弾道ミサイル「北極星」が発射された。
  • こうした幅広い種類の攻撃ミサイルは、グアムを含む米領土や太平洋の米軍基地、同盟国、友好国を射程に収め、アジアの地域紛争に核兵器を先制使用する上で必要なツールとなる。

イラン
  • 「ファテフ110」級のSRBMや「シャハーブ3」MRBMのような戦力を増強している。ファテフ110は、ペルシャ湾やホルムズ海峡において米国や同盟国の船艇を攻撃しうる対艦弾道ミサイルとしての試験も行っている。
  • 2015年、精密誘導MRBMである「エマード」の発射実験に成功。
  • イランの中距離システムは東欧から南アジアまでを射程に収める。
  • 対地攻撃巡航ミサイル(LACM)「スマール」は、射程2,000kmで航空機や軍用艦を発射プラットフォームとし、地域の脅威となっている。
  • ミサイル能力へのリソースの投資は、中東における覇権争いだけでなくテロリズムや代理戦争にも用いられ、米国や同盟国、友好国を脅かしている。
  • 現在進行中のシリア紛争においてイランはミサイル攻撃を行っている。

ロシア
  • 戦略ミサイル戦力だけでなく、地域を脅かす各種の先進的な核戦力も持っており、ロシアの強制的なエスカレーション戦略や核脅威の決定的要素となっている。
  • 米国や同盟国に対するA2AD戦略を補完するため、地域レベルの射程による次世代型先進弾道ミサイルや巡航ミサイルを開発している。2015年以来、シリアへの長距離精密攻撃を繰り返して先進型巡航ミサイル能力を示している。
  • ロシアはINF条約に違反し、地上発射型中距離巡航ミサイル「SSC-8」を配備している。
  • 現時点では亜音速で飛行するLACMだが、将来それは極超音速に達するだろう。

中国
  • 米軍が地域の同盟国・友好国を支援することを妨害する通常型弾道ミサイル戦力を、軍事力近代化のキー・コンポーネントのひとつとしている。
  • SRBM、MRBM、IRBMの数と能力を増強し、対艦弾道ミサイルの開発まで手掛けている。
  • 地対地、空対地巡航ミサイルやHGV、MaRVも保有している。

役割、政策、戦略

ミサイル防衛の様々な役割
防御
  • 潜在敵国が計算違いを起こし、抑止が失敗した場合、ミサイル防衛が飛来する弾頭数を限定する。
  • 1991年、湾岸戦争においてイラクの通常弾頭スカッドミサイルにより在サウジアラビアの米軍兵舎が攻撃され、27名が死亡した。
  • 敵ミサイルが核弾頭を搭載している場合、ミサイル防衛が最悪の結果を防いだり軽減しうるかもしれない。
  • 今日の米ミサイル防衛は、北朝鮮またはイランによる米本土への弾道ミサイル脅威に対して重要な防御を提供しており、ならず者国家からのミサイル脅威に優勢を維持するよう向上していく。

抑止
  • ミサイル防衛が他の通常戦力や核戦力と共同することで、対米攻撃の抑止戦略および、同盟国・友好国への攻撃に対する拡大抑止に直接的に寄与する。
  • ミサイル防衛は、敵国がミサイル攻撃によって得ようとする政治的・軍事的な目的達成に対する自信を損なわせる。ミサイル防衛によって自身の攻撃計画の有効性について確信を得られないことに加え、米国による反撃の有効性が、敵国に対してミサイル攻撃を自制させる強力な動機付けとなっている。敵の意思決定計算を操作することで、ミサイル防衛は強制と攻撃ツールとしてのミサイルの価値を減じさせ、通常抑止として機能する。
  • 攻撃に対する反応を検討する際、ミサイル防衛は指導者に追加の時間と選択肢をもたらす。それは危機や紛争に対する能力と安定に寄与する。

保証
  • ミサイル防衛は、増大する脅威に直面する同盟国・友好国へ保証を与える役割を果たし、米国と同盟国・友好国との不可分性を強固にしている。
  • ミサイル防衛の配備と協力的なミサイル防衛活動もまた米国の安全保障コミットメントの明示的な意思表示である。
  • ミサイル防衛のような米国のコミットメントへの信頼性によって、独自の核兵器を持たない同盟国・友好国へ保証を与え、核不拡散という目的にも貢献している。

米外交の強化
  • 平時や危機に潜在敵国と関わり合う上で、ミサイル防衛は米国の指導者たちに優位なポジションを用意する。


ミサイル防衛の主要な役割
「米本土ミサイル防衛は、ならず者国家のミサイル脅威に対して優位を保つ」
  • 技術的なトレンドを見ると、ならず者国家のミサイル脅威は米本土攻撃能力獲得へ向かう。こうした脅威への脆弱性は、米国は抵抗する意思が弱いのだという誤認を生ませ、結果的に抑止態勢を損なう。
  • ならず者国家とは、北朝鮮とイランを指す。
  • 今後、ならず者国家のミサイル脅威は米本土へ向かうだけでなくその数と複雑性も拡大する。米国はミサイル防衛開発と配備おいて如何なる制限も拘束も受けない。
  • ミサイル防衛能力は、ならず者国家のミサイル攻撃に対して効果的な防衛を目指して形成される。ロシアや中国の大規模かつ洗練されたICBM能力には核抑止を以って対する。
「ミサイル防衛は在外米軍を防衛し、同盟国・友好国の安全保障を支援する」
  • 在外米軍、同盟国・友好国を防衛し、地域のミサイル脅威に対処することは、欧州、アジア、中東における米国の地域戦略にとって極めて重要な要素である。

ミサイル防衛戦略の要素
統合的ミサイル防衛能力
  • 複雑化するミサイル脅威環境に対し、3つのアプローチがある。
  • (1)敵ミサイルの全飛行フェイズにおいて迎撃するアクティブ・ミサイル防衛。
  • (2)敵ミサイルの潜在的効果を低減するパッシブ・ミサイル防衛。
  • (3)抑止が破綻した場合、敵ミサイルを発射前に破壊する攻撃作戦。
  • 発射前、発射後を問わず、敵ミサイルを探知し、混乱させ、破壊するあらゆる機会の利用を目指す。


宇宙空間の重要性

  • ならず者国家のミサイル脅威が増大するに従い、宇宙空間の利用はミサイル防衛にとって重要となる。宇宙配備センサーによって地理的な制約を受けることなく敵ミサイルの発射を監視、探知、脅威判定、追跡、迎撃、迎撃評価などができる。また、陸上配備センサーと違い、他国と配備上の権利や合意を必要としない。
  • 宇宙配備センサーのユニークな利点と特徴は、宇宙配備迎撃体にも援用できる。例えば、宇宙配備迎撃体は敵ミサイルが最も脆弱な初期ブースト・フェイズ(デコイや欺瞞装置を展開する前に)で交戦する機会を得られるかもしれない。


ミサイル防衛計画と能力

米本土防衛
現在の態勢
  • 地上配備型ミッドコース防衛(GMD)が限定的なICBMを防衛している。
  • GMDは北朝鮮とイランのようなならず者国家の限定的なICBMに対応するよう設計されているが、米本土に対する弾道ミサイル攻撃であれば場合によってあらゆる場所からの攻撃を防ぐことができる。
  • GMDの迎撃ミサイルは、地上配備型インターセプター(GBI)である。フォートグリーリー基地(アラスカ)に40発とバンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア)へ4基配備。
  • 敵ミサイルの探知、追跡、識別情報は、各地のセンサー群から獲得;コブラ・ディーン・レーダー(アラスカ)、早期警戒レーダー(カリフォルニア、UK、グリーンランド)、前方展開Xバンド・レーダー(日本)、イージスBMD駆逐艦、太平洋の海上配備Xバンド・レーダーなど。
  • 国防総省はさらなるリソースを投資しており、議会はFY2017で4億ドルを認可し、北朝鮮ミサイル能力に対する増強を図っている。
  • FY2018には約140億ドルを米本土および地域ミサイル防衛に配分された。
  • 2017年、GBIの先進型ブースターと大気圏外迎撃体(EKV)の実験に成功。
  • 新型GBIがフォートグリーリーに配備される予定で、2023年初期には44発から64発に増勢される。新型GBIは再設計型迎撃体(RKV)を搭載する。
  • 現在、クリア・エアフォース・ステーション(アラスカ)で建造中のLRDRは、2020年頃に利用可能となるだろう。

地域ミサイル防衛と地域をまたぐミサイル防衛

潜在敵国の攻撃ミサイルや巡航ミサイルを迎撃するために、米国は数多くの地域アクティブ防衛システムを配備している。ミサイル防衛システムは再配置・移動が可能で、必要に応じて場所を変えることができる。センサーやインターセプターも有事には増強し、同盟国・友好国との相互運用性も高い。


THAAD
  • SRBM、MRBM、IRBMを大気圏内または大気圏外のターミナル・フェイズでヒット・トゥ・キルにより迎撃する。
  • 米国は7個中隊を保有しており、1個隊はグアム、もう1個隊は韓国に展開している。
  • THAADのソフトウェアは拡大する新たな脅威に対応するようアップグレードし続けている。
  • 防空ミサイル防衛と将来的脅威に対するエリア防衛の相互運用もできるようにする。

イージス海上配備ミサイル防衛
  • イージス・ウエポン・システム(AWS)は、SM-3とSM-6によって地域ミサイルを迎撃する。
  • 現在、38隻のマルチミッション・イージスBMD艦が太平洋と大西洋に配備されているが、FY2023の終わりまでに60隻となる予定。
  • 日米はSM-3ブロック2Aを共同開発し、MRBMとIRBMに対処能力を持つ。
  • SM-3ブロック2Aは陸上と海上のプラットフォームに統合し、米軍と同盟国・友好国に対する地域脅威をさらにカバーするようになる。
  • AWSアップグレードとともに、SM-3ブロック2Aが米艦隊とNATO弾道ミサイル防衛用に2018年から配備され始める。

イージス・アショア
  • ルーマニアのアショア・サイトは運用中。SM-3を配備し、中東のミサイル脅威からNATO領域を継続的に防衛している。
  • ポーランドにも建設中。
  • アショア・サイトはSM-3ブロック2Aに更新される。

PAC-3
  • 2003年のイラク戦争で実戦証明を獲得。
  • 迎撃ミサイルを同時に数発発射し、SRBMや巡航ミサイルに対処する。
  • 現在、8個大隊(33個中隊)が米国内に、7個大隊(27個中隊)が海外に展開している。
  • 1982年に初期配備が始まった頃からシステムは向上し続け、最新のPAC-3 MSEは強力な機動性、致死性、生残性を誇る。
  • 陸軍は、より低空の防空ミサイル防衛センサーの開発や古いPAC-2ランチャーをアップグレードし、PAC-3やPAC-3 MSEを発射できるようにしている。

巡航ミサイルに対する地域アクティブ防衛
  • 地域ミサイル防衛態勢は、拡大する先進的な巡航ミサイルや新たなHGVといった脅威にも柔軟に対応している。巡航ミサイルに対し、海上ではイージス・プラットフォームがSM-2、SM-6、ESSM、CIWSによって迎撃する。
  • 戦闘機はそれぞれAMRAAMやサイドワインダーで撃墜能力を持つ。
  • パトリオット・システムには巡航ミサイル迎撃能力があり、陸軍はさらに曲射弾防護能力(Indirect Fire Protection Capability: IFPC)に巡航ミサイル迎撃能力を獲得させようと開発している。

新興の攻撃的ミサイル脅威と不確実性への備え
既存システムの向上や適応
  • 38隻のマルチミッション・イージスBMD艦が運用中で、FY2023の終わりまでに60隻となる予定。海軍とミサイル防衛局は、10年以内にすべてのイージス駆逐艦にミサイル防衛能力を付与する。
  • SM-3ブロック2Aは地域ミサイル防衛の一部として機能するだけではなく、潜在的には米本土防衛のGBIの“下敷き”としてICBM脅威に対処することも考えられる。つまり、GBIの負担を軽減する能力を持つ。
  • 議会は国防総省にSM-3ブロック2AのICBM標的迎撃能力試験を指示しており、MDAは2020年にこの試験を予定している。
  • 海上配備システムであることから、有事の際の追加配備にも応えられる。SM-3ブロック2Aを搭載した陸上サイトを米国内に建設する可能性もある。

  • 既存の兵器を本土や地域ミサイル防衛用に適応させることも重要。
  • SM-6は対空・ミサイル防衛兵器として開発され、そのように運用されてきたが、戦術攻撃作戦用にも運用される。同様に、既存の情報収集センサー群を攻撃ミサイルの精密追跡に用い、米本土・地域ミサイル防衛アーキテクチャに組み込むかもしれない。

  • F-35のセンサーシステムはブースト中のミサイルの赤外線シグネチャを探知できる。加えて、ミサイルの位置を同定できる。ネットワーク・セントリック・ウォーフェアにおいて情報を共有することもできる。
  • すでに巡航ミサイルを追跡し破壊することが可能で、将来的にはブースト・フェイズにある弾道ミサイルの撃墜能力を持つだけでなく、有事にはホットスポットに急進し、アクティブ防衛能力の強化や攻撃作戦に参加するかもしれない。本報告書発行から6か月以内に、米本土・地域ミサイル防衛も含めてF-35をどのように統合するのが最適かについての報告書をまとめる。

  • 別のオプションとして、ハワイにあるイージス・アショア・ミサイル防衛試験センターを一時的または恒久的に実戦運用し、北朝鮮のミサイルから防衛するよう強化する。これはハワイ強化において短期間での実行可能性が高く、国防総省は検討するだろう。
  • MDAと海軍は、このオプションを緊急稼働計画(Emergency Activation Plan)として、カウアイ島にあるイージス・アショア・サイトを国防長官の決定により30日以内に実戦運用できるよう決定権を与えるというプランについて評価している最中で、本報告書より6か月以内にレポートが発表される。

  • ICBMのデコイや欺瞞装置と交戦するよう設計される多目標迎撃体(MOKV)は、GBIに搭載される次世代のキネティック迎撃体である。
  • GBIの数は限定的だが、MOKVによりGMDシステムのパフォーマンスは向上する。

モバイルシステムの配置換え
  • パトリオット・システムやTHAADシステム、SM-3ブロック2A搭載イージスBMD艦、AN/TPY-2レーダー、SBXは、危機や有事において必要な場所に移動する能力を高めている。
  • 将来は、F-35やブースト・フェイズ防衛システムも加えられるだろう。

新システムの構築
  • GMDは現在の64発を超えるサイズを計画するかもしれない。
  • 米本土のGBI配備サイト(CONUS Intercepter Site: CIS)は、将来イランの能力増強に対抗して追加される可能性がある。国防総省はすでに東海岸での環境影響評価を準備している。
  • キネティック迎撃体または指向性エネルギーによるブースト・フェイズ(再突入体がブースターから切り離される前)迎撃は、成功の可能性を高め、敵の攻撃計画を複雑にするだけでなく、ミッドコースやターミナル・フェイズで必要となる迎撃ミサイルの数量を減らすことにもなる。
  • 高エネルギー・レーザー技術をコンパクトに航空機に搭載できるようになれば、弾道軌道の早期にブースト中のミサイルを破壊できるようになる。空中発射レーザー計画( Airborne Laser Program)における技術を活用しようとしている。
  • MDAは低出力レーザー実証機(Low-Power Laser Demonstrator)を開発中。これは無人機にレーザーを搭載してブースト・フェイズのミサイルを追跡・破壊するプラットフォームである。
  • 本報告書から6か月以内に、MDAはブースト・フェイズ防衛のための宇宙配備インターセプターに関する開発・配備の研究について発表する。
  • 北朝鮮のミサイルに備えて、米本土防衛力強化のためにアジア太平洋地域に新たな陸上配備レーダー建設を始めるかもしれない。
  • 2020年末までに長距離識別レーダー(long-range discrimination radar: LRDR)を配備する。
  • 国防総省は既存のミサイル防衛システムによってHGVなど新たな脅威に対抗する有用性を試験中である。すでにターミナル・フェイズでのHGV迎撃は限定的に成功している。早期警戒と追跡用の新たな能力を開発中である。
  • MDAは本報告書から6か月以内に極超音速脅威に対する迎撃に必要なリソースや試験、人員などに関する計画を発表する。
  • 国防総省は、追跡・識別・ターゲッティングなどの能力を向上させた宇宙配備センサーを開発するよう企画している。これは、弾道ミサイルよりも低空を飛翔し、複雑な機動が可能なHGVのような標的を、より広い範囲でカバーできる能力を必要としている。

ミサイル防衛のための攻撃作戦
  • 抑止と外交が失敗した結果、地域のならず者国家と紛争が発生する場合、敵のミサイルが発射される前に米国はミサイル防衛をサポートするための攻撃作戦(attack operation)を行う。この作戦は、統合ミサイル防衛戦略の一部である。迎撃する敵ミサイルの数を減らすこともアクティブ・ミサイル防衛の効果向上となる。
  • 議会はFY2017とFY2018で対北朝鮮用に7億ドルの予算を付け、北朝鮮の移動発射機の位置特定、ターゲッティング、破壊、そして地域作戦能力向上を図っている。

同盟国・友好国との活動

インド太平洋地域
  • 地域のミサイル脅威に対して日本は最も強力なミサイル防衛パートナーであり、米国と強固に協力している。
  • 現在、日本の多層弾道ミサイル迎撃システムはSM-3、PAC-3、早期警戒レーダー、指揮・統制システムからなる。
  • FY2019であたご型イージス護衛艦にBMD能力が付与される予定で、さらなるイージスBMD艦も建造され、ミサイル防衛能力は拡大する。
  • 2023年を期して、2基のイージス・アショア・システムも配備が進められている。
  • 日本との協力関係は、相互の有益な責任分担(mutually beneficial burden sharing)の例であり、SM-3ブロック2Aの共同開発もしている。
  • 日本は2基のAN/TPY-2 Xバンドレーダーを相互運用するホスト国でもあり、日本と米国が地域ミサイル防衛オペレーションと米本土ミサイル防衛をサポートしあう関係である。

  • 国防総省は韓国と共同し、PAC-2中隊をより先進的なPAC-3システムへアップグレードしている。
  • 将来的な韓国のアクティブ・ミサイル防衛システムが、韓国領土を防衛するうえでどのように米国のシステムとともに運用できるかについて試験中である。
  • 韓国と米国は、それぞれの陸上配備、宇宙配備センサーから得られる警戒情報を共有している。
  • 2017年、米国はPAC-3ユニットの補完として韓国領にTHAAD中隊を配備。これはミサイル攻撃に対する新たなレイヤーを加えることとなった。

欧州とNATO
  • 米国は、欧州のミサイル防衛に関する段階的向上化構想(European Phased Adaptive Approach: EPAA)の完成に寄与する。
  • EPAAはイランの脅威に対処する3つのフェイズからなる。
  • フェイズ(1)と(2)は、4隻のマルチミッション・イージスBMD艦をスペインのロタに、前方展開AN/TPY-2レーダーをトルコに、SM-3ブロック1B搭載のイージス・アショアをルーマニアに配備する。
  • フェイズ(3)で、ポーランドにイージス・アショアを配備。すでに進行中である。SM-3ブロック2Aを搭載し、準中距離、中距離弾道ミサイルに対処する。

  • EPAAに加えて、NATO同盟国はごく短距離の弾道ミサイルや巡航ミサイルを防衛するための独自の防空・ミサイル防衛システムを配備している。米国はこれらの能力向上のためにインターセプターやセンサー開発に投資し、情報共有や統合を進めている。
  • スペイン、イタリア、ドイツ、オランダは、中東紛争に対応する形でトルコにミサイル防衛システムを配備した。スペインはドイツからパトリオット・システムを獲得している。
  • イージス・アショアのホスト国として、2017年11月にルーマニアはパトリオット・システム獲得にも署名している。
  • 2018年3月、ポーランドもパトリオット・システム獲得のため47億5,000万ドルの合意に署名した。
  • オランダはアップグレード版SMART-Lレーダーを搭載した4隻のフリゲートを保有。
  • デンマークはグリーンランドにあるアップグレード版早期警戒レーダー(UEWR)のホスト国であり、さらにはNATOミサイル防衛能力向上のための海上配備センサー開発に寄与している。
  • 2015年版戦略防衛安全保障見直しにおいて、英国は弾道ミサイル防衛用の地上配備レーダーへ投資することを決め、ミサイル防衛実験に45型駆逐艦を参加させたりしている。
  • フィリングデールズのUEWRは、イランの長距離ミサイルに対する米本土ミサイル防衛のキー・コンポーネントであり、これは英軍が独占的に運用している。
  • フランスとイタリアはSAMP/T防空ミサイル防衛システムを開発し、2013年に配備した。
  • フランスはNATOミサイル防衛に役立つ長距離レーダーの開発を計画している。
  • フランスとイタリアは、イージスのような海上配備型の統合防空システム(PAAMS)を開発した。

  • 2017年10月1日、NATOのサブセットである海上ミサイル防衛フォーラム(Maritime Missile Defense Forum)が多国間合同演習「Formidable Shield 17」を実施。これは、英国が主催した同盟国間の相互運用能力を高めるIAMD環境での実弾演習。参加国は、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、米国である。SM-2、SM-3、ESSMの実弾が発射された。

中東 ―湾岸協力会議(GCC)
  • UAEはパトリオット・システムを補完するためにTHAADシステムも調達。
  • サウジアラビアはTHAADを米国からFMSで調達する交渉中である。既存のPAC-3をアップグレードしている最中でもあり、さらなる防空ミサイル防衛能力を獲得しようとしている。
  • クウェートはPAC-3中隊を獲得中で、カタールも2018年または2019年初頭にはパトリオット・システムを配備するとみられる。
  • UAE、サウジアラビア、クウェートはパトリオット・システムで実戦経験を持ち、成功している。
  • 米中央軍はGCCの防空ミサイル防衛戦力の主力である。

中東 ― イスラエル
  • 米国とイスラエルは強力なミサイル防衛パートナーシップを維持しており、U.S.-Israel Memorandum of Understanding (MOU)を根拠法としてFY2019年からFY2028まで毎年5億ドルをイスラエルのミサイル防衛に投資する。
  • 米国とイスラエルは「ダビデスリング」と「アロー3」の共同開発を継続している。
  • 短距離ロケット・砲・迫撃砲からの防衛システムである「アイアンドーム」計画にも米国は引き続き共同生産支援をする。