2020年01月19日

Il mio primo Bonsai 私の盆栽

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ミラノの盆栽展に、通訳として参加してから、いつの間にかイタリア人盆栽愛好家と知り合うことが多くなり、その人たちを日本の有名な盆栽園へガイドすることも多くなり、あれよあれよという間に、少しだけですが、盆栽の世界を知るようになりました。

はじめて、「イタリアで盆栽」と聞いたとき、何のことかさっぱり分かりませんでした。「盆栽」といえば、「隠居したおじいさんの趣味」、もしくは「お金のかかること」という考えしかなかったので、外国で盆栽が大人気という事実も初めは信じられませんでした。

落ち着いて考えてみれば、ペルージャで大学生生活を送っていた時、週末になると、大聖堂のまわりで「Bonsai」と書かれた小さい鉢植えを売っていました。一緒に住んでいたおじいさん、ジュ―リオさんも、日本がどこにあるのかもさっぱり分からない人でしたが、「Bonsai」のことは知っていたので、イタリアにおける盆栽の知名度の高さは知っていたつもりですが、でも、こんなに盆栽が人気だとはさっぱり知りませんでした。

   佐々木さんから指導を受ける愛さんと私
a1b46845-efeb-4072-a1f5-03955a7c004c皐月盆栽で知られた仙台の佐々木吉美さんが、ミラノのクレスピ盆栽から2回目のゲスト依頼があったときに、私を通訳として連れて行ってくださったのが、わたしと盆栽の出会いです。

佐々木さんの職業は、作庭・造園家で、去年、その功績が高野山から表彰されたすごい人です。

一方で、趣味として40歳の頃からサツキ盆栽を始め、鹿沼さつき大展示会で何度も受賞し、国風展でも幾度となく展示されたサツキ盆栽のスペシャリストです。

サツキ盆栽は、松柏などの一般盆栽とは、手入れの仕方が全くと言っていいほど違うのだそうです。有名な盆栽作家の木村正彦さんが、「同じ菓子職人でも、和菓子職人が洋菓子を作らないのと同じだ」などと、分かりやすく説明してくれたことがあります。

残念ながらイタリアでは、サツキ盆栽の美しさがあまり知られてません。というのも、育て方や管理方法が、他の盆栽とはちょっと違うので、誤った方法で育てて、樹を駄目にしてしまう人が多いからだと思います。それで、「サツキ盆栽は難しい」というネガティブなイメージを持っている人が多いのだということです。

例えば「根洗い」です。
サツキの根は髪の毛のように極細。ずっと放置しておくと、鉢の中で根が固まって、水はけが悪く、肥料の養分も吸い取れず、不健康になって、やがて死んでしまいます。そのため、大きさによりますが、数年ごとに植え替えをする時に、根を徹底的に洗う「根洗い」をする必要があります。

何度か佐々木さんが根洗いするのを通訳したことがありますが、ある程度の大きさの盆栽だと、大人2人でも2~3時間は優にかかるほど。土の一粒も見逃さず、勢いのある水を当てながら徹底的に洗うのです。

「根洗い」のことは知っていても、ここまでするとは思わなったと、デモストレーションに集まるイタリア人が驚きます。他の植物の盆栽と違う、という意味はこんなところにもあります

630dc75e-9cf0-45d3-b9cf-b93efa63cc09佐々木さんは、イタリアで何度も剪定などのデモストレーションをする中で、イタリアをはじめとする外国人愛好家が、日本人以上に盆栽を愛し、学ぼうという熱意があることを知り、海外でも是非、サツキ盆栽の知名度を上げ、広めなければと思ってます。

私は今でも、盆栽のことを語るほど知りませんが、数年前の知識ゼロの時から、佐々木さんに色々教えてもらい、またイタリアで出会う愛好家からもイタリア語の盆栽用語など教えてもらううちに、少しは通訳らしいことが出来るようになりました。

イタリアで、佐々木さんは情熱を込め、集まった愛好家たちに、分かりやすく丁寧に教えます。取り囲むイタリア人も、サツキのスペシャリストに学べるまたとない機会だということで、ギラギラとした真剣なまなざしで、たくさんの質問が飛び交います。ある時は、質問が終わらず、夜中の0時を過ぎた、ということもあったくらいです。

それにしても、通訳するためには、何の分野でも、その背景を知らなくてはなりません。

そういうわけで、佐々木さんに勧められるまま、私も、「鹿沼さつき会仙台支部」に入会し、サツキを数鉢育てるようになりました。

植物を育てるのが元来上手な人を、イタリア語で「avere il pollice verde (緑の親指を持っている)」と言います。英語圏でもそう言うらしいですが、どうやら私は、緑の親指を持ってないようで、気づくと水をあげ忘れていたり、肥料をけちってみたり、暖かくなったのに気を緩ませ、虫だらけにしてみたり、とにかくあまりいい弟子ではありません。

我がサツキたちの具合が悪くなると、佐々木さんのところに緊急入院させてもらいます。数か月後、我が子を迎えに行くと、私の家では息も絶え絶えという状態だったに、緑の葉色がまぶしいばかりに生き生きと生まれ変わるのです。

佐々木さんの家には、我が家にはない、何か良い「気」が漂っているように思えるのですが、毎日、愛情込めて一生懸命樹を育てているからこそ、樹もそれに応えるのでしょう。何というか、盆栽を通して自分の足りない性分を見せてもらている気がします。

盆栽仲間に、愛さんというほぼ同年の美人な女性がいるのですが、愛さんはお仕事が忙しいのに、きちんと盆栽のお手入れもしてメキメキ腕を上げています。愛さんと私は、優等生と劣等生という感じですが、今回、月刊誌「さつき」が、盆栽道に入ったばかりの私達を数年追いかけ取材することになりました。

1f982c3d-40fd-4ee3-aae3-9fbee9657bce鉢は去年の夏、常滑の陶工、中野行山さんのところで作った鉢です。なかなか素敵!と自画自賛してるところです。

盆栽の管理をしっかり実践して、通訳に役立てられられるようがんばりたいです!


norichetta at 16:00│Comments(0) 自分のこと | 通訳ガイド

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