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トランプ大統領はきっとやる。退廃しているワシントンを改革し、ワシントンを国民の役に立つワシントンにする。そして、ワシントンをよく働く効率的なワシントンにするだろう。トランプならそれができる」という保守層の人たちが多い。リベラルの多いニューヨーク市であるが、筆者の周りには、なぜか保守層が多いのである。彼らは「オバマは何もやらなかった。オバマが何もやらなかった8年間に、アメリカの力は地に落ちた」と言う。

 

筆者の行きつけのレストランである「ニアリーズ」て知り合ったヘレンもそうである。60歳を過ぎた女性である。もともとはブロードウエー・ミュージカルの俳優であったが、それを辞め弁護士になった女性である。筆者が「民間企業だけしか知らないトランプはワシントンで難しい壁にぶつかるであろう。政府の仕事を全くやったことがないのであるから」と言うと「私はそうは思わない。トランプは立派にその仕事をやると思う。なぜならば、有能な人材を閣僚に配置している。そして、トランプはマネジメント能力がある。私はちっとも心配はしていない」というのである。

 

筆者は、この見方には賛成できない。たとえ、トランプがいかなる天才であっても売り上げと利益を最大にすることを目指すビジネス企業と、予算が与えられそれを消化しなければならない政府機関との違いは歴然としている。

 

例として比較するのは、誠におこがましいが、筆者が民間企業から、国際連合に移った時そうであった。事務総長になるコーフィー・アナンの下で働いていたが、勤務して23週間経たところで、「国連の予算を3割ほど削れると思う。それは人件費である」と得意になって進言したら、「ここはそういうところではない。予算として成立したものは、使わなければならない。また、予算が足りなければ、国連の分配規則に応じ、加盟国に振り分ければよい」と聞かされ、唖然としたことがある。

 

大きなビジネスで、巨額の金を扱って、猛烈なビジネスをし、巨額の金を儲けたり、損をしたりしたトランプがリーダーで、アメリカという巨大な行政組織を切り回すのは容易なことではないであろう。第一、企業組織のように簡単に首にできない。

 

閣僚にビリネアーを揃え、そうそうたる「大金持ち内閣」を造ったがすでに考え方の食い違いが生じている。

 

このようなことをヘレンに話し、第一、トランプの前に議会が立ちふさがる。たとえ、共和党が上院、下院で多数を占めていても、共和党がトランプ支持で一致していない。トランプは、まず自分の党の反対派に立ち向かわなければならない、ことを挙げると、共和党の熱心な支持者であるヘレンは、自分の主張を緩めた。

 

そして、マスメディアの話題に入った。「メディアの92パーセントがリベラルである。どうしてメディアがそんなにリベラルになったのであろうか」と質問してきた。

 

筆者は、大学のジャーナリズムスクールがほとんどリベラルであることを挙げた。ヘレンは、同調はしたが、大きな疑問は消えないようであった。

 

筆者は、このような話をこのNeary’sでよくするのであるが、アメリカ人の政治意識の高さには、感心する。このヘレンは、ブロードウエイスターだったのである。

 

これまで、Neary’sで口論になったことは一度もない。それは、アメリカ人には、「他人の意見は、違うもの。それは、尊敬しなければならない」と言う意識が強く働いているからだと思う。

 

 

佐藤則男

ニューヨーク