無題111

マドレーヌ・オルブライト元国務長官がニューヨークタイムズに投稿した。勿論北朝鮮問題についてである。オルブライト女史ほど、北朝鮮問題の現状を残念に思っている人はアメリカにいないと思う。

オルブライト女史は、200010月に北朝鮮を訪問している。

当時、アメリカと北朝鮮は、北朝鮮がすべてのミサイル輸出をやめ、ミサイル開発、実験、配備も中止する。その見返りに、北朝鮮は外交相手として全面的に認知され、アメリカと日本から多額の援助を得る。そしてクリントン大統領が訪朝するところまで一致していた。

だが、この計画は、クリントンの在職の時間が切れ、ブッシュが大統領になった時、消えた。筆者もよく覚えているが、ブッシュは、北朝鮮との話し合いを完全にストップしてしまった。

一方、オルブライト国務長官は、歴史的な訪朝を行い、金正日とともにスタジアムに姿を見せ、98年に発射されたテポドン1号を描くマスゲームを鑑賞した。このニュースは、アメリカ国内のひんしゅくを買った。しかし、当のオルブライト女史は、彼女の著書の中で、感激した様子を述べている。

その時、金正日は威勢よく、期待に胸を膨らませた様子でオルブライトにこう言ったという。「あれはあのミサイルの最初の発射実験だった。そしてきっと最後になるだろう」と言ったそうである。(Newesweek 200985日)

だが、北朝鮮が示唆したミサイル発射停止の交渉は失敗に終わる。

結局、クリントンの訪朝は実現しなかった。

ブッシュは手のひらを返したように北朝鮮との外交をすべて中断。金政権と交渉することで同政権に正当性を与えるつもりはないことをはっきりさせた。

前出のNewsweekによると、2002年には、ブッシュは共和党上院議員たちとの私的な会話の中で金正日をこう呼んでいる――「夕食の席で駄々をこねる子供」のような、憎たらしい「小人」。こうしたブッシュの金に対する皮肉は、欧米メディアで何度か報道された。

それ以来、米朝関係は最悪の状態が続き、膠着状態に陥ったのであった。

金正日を引き継いだ金正恩は父親に比べはるかに狭量で臆病なのではないかと思われる。一国のリーダーとして向いていない。

また、アメリカもアメリカである。クリントン大統領を引き継いだオバマ大統領は、外交面ではほとんど成果はあげられず、対北朝鮮交渉の進展はなかった。そして、トランプ大統領になるわけだが、アメリカの歴史上、これほど混乱した外交政策はないであろう。

さて、このようなプロセスを歩んできたアメリカと北朝鮮の関係はどうなるのであろうか。

筆者の疑問は、一体全体、アメリカ政府に北朝鮮と真剣に交渉しようという意志あるのかどうか、ということである。

そうであれば、何らかの外交ルートを通じて直接、アメリカ政府は北朝鮮と交渉する考えはあるのか ?

北朝鮮と中国との密接な関係を利用して、習近平にプレシャーをかけてきたが、その効果に限界があることが分かったであろう。

アメリカに具体策がない限り、日本と韓国が迷惑をこうむるだけである。北朝鮮が核兵器搭載の ICBMの完成にはまだ時間がかかるとされている。交渉するのであれば、今がチャンスである。日本政府も真剣にアメリカ政府に直接交渉したほうが良いと思われる。

 

佐藤則男

ニューヨーク



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