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筆者は、ほぼ一年前、トランプ大統領を「カオス(混乱)によるマネジメントの大統領」と呼んだ。それは、既成の民主党、共和党の政治思想、社会思想、価値観の違いによる、激しい対立が続き、トランプ大統領は、何も進まない古いワシントン体制をぶっ壊すことを決意していたのであろう。

大統領就任と同時に、国家政策は、バノン戦略補佐官を起用し、白人至上主義と思えるような極端な右寄りの政策を取った。しかし、リベラル派、リベラルメディアの猛反発を浴び、バノン氏は、一年も持たず失脚した。

しかし、筆者は、これこそトランプ大統領の「カオスによるマネジメント」であり、極端な政策で、まず混乱を起こすことが目的だったのではなかろうか?

そうでなければ、だれがこんな愚かな政策を実際にとるであろうか。常識では、考えられない。

トランプ大統領の「ワシントン壊し作戦」は、移民政策、オバマケアの廃止。つまり、医療保険制度の改革などからスタートした。同大統領の移民政策もばかげている。まず不法移民の強制送還をぶち上げたのであるが、不法移民は、880万人もいると言われている。いったいどうやって、隠れ住んでいる不法移民を探し出すのか?もし、探し出したとしても、子供がいれば、子供はアメリカ国籍を持っている。強制送還しようとすれば、親子を切り離さねばならない。こんなことをトランプ大統領は知らないはずはない。

オバマケアもそうである。オバマケアを廃止し、新しい制度を築くことは、簡単ではない。

これらの政策は、ワシントン旧体制のたたっ壊しのためのカオス戦略だったのではないか、と筆者は思うのである。

外交政策もそうである。NAFTA(北米自由貿易条約)、パリ条約の一方的破棄。国連供出金の削減、Israel首都の変更、新たな関税障壁の設定、そして、北朝鮮に対する過激な攻撃表現などを考えると、まずカオスを起こすことが優先し、世界を混乱させることがトランプ大統領の戦略なのではないかと見るのである。

そして、そのようなトランプ大統領のカオス戦略には、人事作戦があったかどうか筆者の興味である。

つまり、これらの政策から、昨年トランプ氏の大統領選のスタッフ、ホワイトハウスのスタッフに犠牲者が出ることが計画されていたのかどうかと言うことである。ご承知のように、多くのトランプ大統領のスタッフが首を切られたり、辞任をしたのであるが、このようなことが計算ずくめで行われてきたのかどうか、筆者は、大変興味を持っている。

トランプ氏は、ビジネスマンであった、政治家ではない。それなりのビジネス方針を個人としてしっかり持っていたはずである。

もし、カオスマネジメントが続くなら、トランプ内閣はどう続くのであろうか。

もし、トランプ氏のカオス戦略が意図的ではなく、このまま、ホワイトハウススタッフが減っていくのであれば、トランプ氏は、ますます孤独になっていくであろう。

トランプ氏は、「世界で最も孤独な男」と思うのである。果たして、そのような孤独な男から、世界平和のために役立つ政策が出てくるのであろうか?

 

佐藤則男

ニューヨーク



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