Donald_Trump_August_19,_2015_(cropped)

今回の大統領選挙は、ほぼ完璧な形で、ドナルド・トランプなる人物にハイジャックされてしまったのではないか、と見るのは、筆者だけだろうか。

 

現在の世論調査では、全く、五分五分。勢いを得たトランプが有利なのではないか、という見方さえ出ている。

 

ここまで、41年間にわあり、アメリカで生活し、本能的に特別な興味を持って大統領選挙をウオッチしてきた筆者にとり、これだけ、トランプのアメリカの国民がデマゴーグに基づいた異常なアメリカ観に洗脳され、扇動されていることは、驚嘆に値する。ただ驚くのみである。

 

アメリカ国民、特に、ホワイトブルーカラー層がこのレベルまで、トランプの間違った世界観、我流にスーパーインポーズされた客観的世界のゆがめられた世界観に洗脳されるとは、アメリカの一般大衆は、まだまだ「自分の国」しか知らない現状に驚く。

 

今、筆者は、日本に来ているが、トランプの理解している日本、及び、日本人観は、とんでもないものである。いや、理解しているのにかかわらず、わざとわからないふりをして、自国の選挙民に日本を「自国を守らない国」「核兵器を持つべき国」「アメリカ駐留軍にもっと金を出さなければならない国」「貿易の不均衡を生んでいる国」などと唱え、アメリカ国民の愛国心を煽り、大統領選挙に勝つために利用しているのかもしれない。

 

トランプは、外交政策に関し、自分の見方を示す。しかし、記者の質問には、一切≪直接答えない≫のである。質問の焦点を「外す」のである。そして、わざと前に言ったことと矛盾していることを述べ、混乱させ、「自分がわからないこと」「知らないこと」「勉強していないこと」弱点を隠すのである。

 

トランプが質問に答えているとき、「By the way」(ところで)を連発するが、この瞬間、質問を変え、逃げるのである。日本に皆さんも、トランプがしゃべる時、この瞬間に注目していただきたい。

 

このような意味でのごまかしは、「先天的嘘つき」と言ってもよいのではないかと思う。

 

そして、極め付きは、悪いことは、すべて、オバマ大統領、ヒラリー・クリントンのせいにすることである。これは、ほぼデマゴーグに基づくと言っても過言ではない。このデマゴーグの論理のプレゼンテーションが実にうまいのである。

 

昨日筆者を怒らせたのは、NBCテレビの番組で「プーチンは、オバマより優れている」と言うような発言をしたことである。トランプは、それでもアメリカ国民なのである。自分の国の大統領をよその国の大統領よりも劣る、と言う発言は、次期大統領選候補として、たとえ、反対政党の候補でも、筆者は、許すことはできない。いくら意見は異なり、世界観は異なっても、自分の国の大統領である。尊敬と敬意を払うことは、国民としての義務である。

 

いったい、プーチンのどこがオバマより優れているというのであろうか?

 

筆者は、このような道では、トランプなる人物は、まさに扇動行為の天才ではないか、と思うのである。

 

アメリカの大統領選挙は、トランプなる人物にハイジャックされてしまったという印象が強い。そして、アメリカ国民の世界認識は、まだまだ不足していると思う。アメリカは、もはや、世界のリーダーとして不適格なのではないかとさえ思う。トランプが言うように、「世界を自分たちの意図で動かされる」とでも思っているのであろうか。

 

アメリカ国民が、トランプを大統領に選んだ瞬間、世界が、アメリカの選挙民に「みくだりはん」をつけることを知らないのであろうか。

 

佐藤則男

ニューヨーク