Tinker,Tailor,Soldier,Zombie

未公開映画を中心にレビューしていきます。

Regression(2015)

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【あらすじ】

1990年、ミネソタ州の小さな町で、10代の少女が、父親に性的虐待を受けたとして教会へ逃げ込んだ。ただちに父親は警察署に連行され尋問を受けた。
父親は娘に対する暴行の事実を問われ、「やったかもしれない。たぶんやった。でも覚えていない」と言った。

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悪魔崇拝集団の大掛かりな捜査を行っていたFBIのケンナー捜査官が父親の尋問を行ったが、記憶が曖昧でいっこうに埒が明かないので、心理学者を通じて退行催眠による尋問が行われた。脳の奥に閉ざされた強烈な記憶の断片を、催眠によって思い起こさせようというのだ。

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すると、メトロノームの音に合わせて父親の口から驚きの言葉が飛び出た。なんと現役の刑事が関与していると言うのである。実はこの刑事、少女の証言からも関与が疑われていたので、すぐさま逮捕となった。また、少女の証言から、この事件には祖母・父親・刑事を含めた悪魔崇拝集団の黒魔術が絡んでいる可能性が浮上した。

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逮捕された刑事にも退行催眠による尋問が行われたが、結局事件の核心に迫る事はできず、有力な証拠もないため、刑事はすぐに釈放された。
いっこうに捗らない捜査、じわりじわりと忍び寄るカルト集団の影、ケンナー捜査官の精神は徐々に蝕まれていく。果たして、事件の真相は明かされるのだろうか。

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こういう画を見ると必ず「シタデル」を思い浮かべてしまう。


【感想】

90年代の犯罪捜査における社会的問題を題材としたサスペンス。

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イーサン・ホーク×エマ・ワトソン共演の新作サスペンス。
監督は『テシス/次に私が殺される』『オープン・ユア・アイズ』『アザーズ』のアレハンドロ・アメナバール。

1980年代のアメリカでは、悪魔崇拝集団(いわゆるサタニックカルト)絡みの犯罪事件が多発し、FBIによる国家をあげた捜査が行われていたようです。
また80〜90年代には、退行催眠を用いた記憶回復セラピーが流行し、犯罪捜査に用いられることも多かったようです。原題の「Regression」には「回帰」「退行」という意味があります。
現在もヒプノセラピーなど残っているものもありますが、退行催眠による犯罪捜査は、まったく関係のない結果を示しうる非常に危険なものであるとして、否定されてきた背景があります。

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悪魔より怖い悪魔崇拝集団。

本作の舞台となる1990年のアメリカ・ミネソタ州でも、同様の悪魔絡み事件が勃発し、FBI捜査官と心理学者が協力して容疑者に対する退行催眠が実施されます。
しかし、これがかえって捜査の混乱を招き、主人公は進まぬ捜査に対するストレスと、悪魔崇拝集団と思しき人々からの精神圧迫ストレスに苦しみ、次第に精神を壊していきます。

クリストファー・ノーラン監督の初期作『インソムニア』や、ショーン・ペン監督作『プレッジ』など、ある難事件を捜査する主人公が徐々に精神崩壊の極限へと追いつめられていくサスペンスは、正直自分の好みではありません。
本作ではイーサン・ホーク扮する捜査官が精神的に追いつめられていくのですが、事件そのものはあまり面白味がないし、抑揚のある演出や大きなどんでん返しがなく、あまりに淡々としていて退屈に感じてしまいました。
謎多き少女が、エマ・ワトソンである必要性もあまりなかったと思います。
ただし、社会背景を絡めた哀愁漂うクライマックスだけはわりと好みでした。

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この監督、毎回手堅い作品を作る印象ですが、もう一つパンチを効かせてほしいところです。次回作に期待します。
本作の日本公開予定はありませんが、そのうち劇場公開されそうですね。

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え、こんなんも出るの?


【邦題予想コーナー】
①「リグレッション」
②「催眠犯罪捜査FILE」
③「悪魔讃頌/悪魔を愛せよ悪魔に生きる」





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What We Become(2015)

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【あらすじ】

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デンマーク郊外の田舎町。
グスタフは、両親と幼い妹と4人で暮らしている。小さな街なので、近隣の住人とはたいてい顔見知りで仲が良く、おまけに向かいに引っ越してきた一家には可愛い女の子がいるので、人生ってなかなか楽しいものだ。
しかし、このささやかな幸福の日々は、一瞬にして終わりを告げる。

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思えば前兆はあった。
近所の子が青白い表情で嘔吐していたり、夫が死んでいるから見に来てくれと告げた老女の家に、その夫はいなかった。これらはすべて前兆だったのだ。

その夜、突如防護服に身を包んだ男達がやってきて、街は外から隔離された。
住人達には何も知らされず、ただ家から出ないようにとだけ釘を刺された。

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当然ながら住人達は混乱した。
TVのレポーターは謎のウィルスが国内で蔓延していると言った。
まさか自分たちもそのウィルスに感染しているのか?

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訳もわからぬまま自宅監禁され、住人達の不安と怒りも頂点に達しようかという頃、グスタフは向かいの家の主人が防護服の男たちに連行されて、鍵付きのバンに押し込められる現場を目撃した。
女の子にも被害が及ぶのではと考えたグスタフは、親に内緒で外へと飛び出した。

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グスタフは見つからないように防護服の男たちの跡をつけた。彼らは高校の校舎内へと入っていった。そこでは、武装した男達が暴れ狂う住人達を監禁していた。
物音を立てて見つかってしまったグスタフは慌てて現場から走り去ったが、この時住人達を収容したバンのドアが開いたことに気がつかなかった。

なんとか捕まらずに家まで逃げてきたグスタフ。
こっそりと外の様子を見るが、追っ手の姿はない。それどころか、大勢いた防護服集団の気配がいっこうに感じられない。
彼らの代わりに現れたのは、どこかおかしい住人達だった。

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この街では一体何が起きているのか?
我々は一体何に冒されたのか?


【感想】

デンマークからあらわれた、ゾンビを出さないゾンビ映画の傑作!

先日公開された「アイアムアヒーロー」は、ついに世界基準に達した初の和製ゾンビ映画として話題となりましたが、デンマーク初の終末ゾンビ映画である本作は、はるかその上をいく傑作となっていました。
本作は現時点での本年度ゾンビ映画暫定ベスト。大変素晴らしいゾンビ映画でした。

「アイアムアヒーロー」は、謎のウィルス蔓延により、昨日までの日常が突如にして非日常に置き換わる様を描いたパンデミック直後の物語であり、本作の設定もこれとほぼ同様となっています。
しかしこの二作品はアプローチの方向がまったく異なるため、作品の印象はまるで違ったものとなっています。

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デュフッ♡

「アイアムアヒーロー」でパンデミック現場となるのは、東京のある程度の都市部であり、ウィルスに冒されて凶暴化したZQNは、怪しげな言語を喋って身体を捻り回しながら、血眼になって襲撃してきます。生前の習慣が身に付いているというロメロゾンビ風設定もありますが、基本的には「28日後…」以降の疾走バイオレンス系ゾンビの系譜を辿っています。

一方、本作の舞台はデンマーク郊外の田舎町であり、ゾンビ化した住人の基本スタンスは、青白い顔をして内臓を垂らしながら、のらりくらりと襲撃してくるロメロゾンビ風であり、時に早歩きぐらいのスピードで襲ってくるところを見ると、ロメロゾンビ8割・疾走ゾンビ2割といったバランスとなっています。ウィルスパンデミック系の設定で、このゾンビ像は珍しいですね。

また、ゾンビの特徴の一つに炎を苦手とする設定がありますが、本作のゾンビは光に反応して目を奪われます。この設定がクライマックスの幻想シーンを呼び、実に良かったと思います。

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悪魔の墓場っぽい。

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NOTLDっぽい。

こういった設定の違い故に、「アイアムアヒーロー」では混沌極まりない壮絶なパンデミックシーンが展開される一方で、本作では限定された空間内にて静かなパンデミックが展開します。
これは完全に好みにもよりますが、私がゾンビ映画に真に求めるものは、ゴアでもバトルでもアクションでもなく、“不気味さ” と“箱庭感” なので、私としては本作の雰囲気は直球ど真ん中でした。

また、本作の不気味なアプローチとして特に印象的だったのが、あえてゾンビの姿を極限まで登場させない演出です。これについては当然、賛否両論があると思います。
ゴア描写やバトルシーンをメインに押し出したゾンビ映画では、ゾンビを出さないなど愚の骨頂ですが、本作に限ってはこの演出が実に功を奏していたと思います。

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確実に何かがそこにいるけれど、姿が見えない。しかし、確実に侵蝕されている。
こういった不穏で不気味な緊張感を張り巡らせて、観ている側を煽り立て、最後にそのテンションを一気に解放することで、少ないながらにも秀逸なゴア描写が際立ち、いつの間にか増殖していたゾンビの恐怖感が最大限に発揮されます。
やはりゾンビの恐怖の根源は、個人ではなく群れにあると思います。

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田舎町の舞台、パンデミック直後のストーリー、ロメロ寄りのゾンビ像、不気味な雰囲気、応戦には限界があり逃亡する事しかできない住人たち、どれをとっても自分好みのゾンビ映画でした。
私のゾンビ映画ベストである「NOTLD」「悪魔の墓場」「シーバース」「殺戮謝肉祭」「メサイア・オブ・デッド」「ソウルサバイバー」は、いずれもそういった味わいを持つゾンビ映画であり、これらが好きな方は間違いなく楽しめる作品であると断言できます。

最近では、「ゾンビワールドへようこそ」「ゾンビスクール!」「Deathgasm」「Freaks of Nature」と、コメディ系ゾンビ映画の秀作がたくさん登場し、クオリティの高いゾンビ映画が再燃してきている印象ですが、本作のようなシリアスで不気味な傑作ゾンビ映画の登場は本当に喜ばしい事です。これを機にゾンビ映画界の新たな躍進に期待したいところです。

本作の日本公開予定はありません。
地味ではありますが、とても雰囲気の良いゾンビ映画なので、小さなハコでの上映に映える作品かと思います。しかし、DVDスルーの可能性が高そうな気がします。

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古き良きゾンビ映画よ、墓から蘇る時がきた!


【邦題予想コーナー】
①「ホワット・ウィー・ビカム/侵蝕された町」
②「ゾンビタウン/増殖」
③「デニッシュ・ゾンビ」





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Most Likely to Die(2015)

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【あらすじ】

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明日は高校卒業以来10年ぶりの同窓会。
その前夜祭を楽しむために、9人の若者が久しぶりに集結する予定だった。
しかし、前夜祭会場である山奥の別荘の主と、その彼女の姿が見えない。

久々に再会した面々は、ポーカーで盛り上がったり、前夜祭マジックで早速カップルが誕生したりと、各々楽しんでいたが、ひょんなことから姿を消していた女の子の死体を見つけてびっくり仰天。

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一人、また一人と犠牲者が現れる中、ついに謎の殺人鬼“Graduate”が姿を現した!

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いかにも殺す気満々だ!!

果たして殺人鬼Graduateの正体は誰なのか!
何のために前夜祭メンバーを一掃しようとしているのか!
なぜそんなにも殺す気満々なのか!!

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振り返れば殺す気満々な奴がいる。


【感想】

剃刀角帽で若者の首を刎ねる殺人鬼Graduate、笑撃デビュー!

個人的に「To Die」シリーズと呼んでいるジャンルがあります。
それぞれまったく関係のない作品ですが、本作は、『A Horrible Way to Die/ビューティフル・ダイ』『A Lonely Place to Die/クライムダウン』『I Didn't Come Here to Die』に続く、「To Die」シリーズ第四弾と勝手に位置付けています。

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さて、本作のタイトルでもある「Most Likely to〜」という表記は、卒業アルバムでよくある「〜しそうな奴」「〜になりそうな奴」という各卒業生の特徴紹介として扱われています。
「Most Likely to Eat Everything」や「Most Likely to Break Hearts」など、そんでもって「Most Likely to Die」、つまり「一番死にそうな奴」という称号を受けた人物が、本作でいうところのジェイソン・ボーヒーズでありハリー・ウォーデンであります。

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金田一少年の事件簿みたいで良い人物表示

本作は、久々に再開した若者たち、同窓会の前夜祭、山奥の別荘、因縁の殺人鬼、という定番を持ち寄った実にオールドクラシックなスラッシャーです。
登場人物も、ジョックにチアリーダーにお調子者に黒人にマジメ女子に近所の変態オジさんに、定番のセレクト。

ポイントはやはり殺人鬼のキャラ作り。『スクリーム』のゴーストマスク&ナイフ、『血のバレンタイン』のガスマスク&ツルハシ、『悪魔のいけにえ』の皮仮面&チェーンソー、『13日の金曜日』のホッケーマスク&ナタ、『エルム街の悪夢』のボーダーニット&鈎爪、などなど著名な殺人鬼達の必須項目は、特徴ある衣装と武器。

本作に登場する殺人鬼Guraduateは、角帽を被った卒業生スタイルです。
しかしなんとこの角帽が剃刀となっていて、人間の首を刎ねる事ができるのです!

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動きはスクリームっぽいけど、

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見た目はエルゾンビっぽい。

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剃刀角帽は武器にもなる素晴らしい衣装!

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しかし、メイン武器はカッター!!

卒業生風貌で剃刀角帽を被った殺人鬼、ビジュアルは実に良い感じなのですが、肝心の武器がカッターという安っぽさ!まぁ卒業生らしさはあるといえばありますが…

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そんなツッコミ所満載の殺人鬼Graduateが活躍する本作、途中まではちゃんとスラッシャーしているのですが、クライマックスにさしかかるあたりで一気に手抜き感が現れます。殺人鬼の正体や動機が明かされる重要な場面も非常にあっさり。
その点はちょっと残念でしたが、お菓子を食べながらだら見するのにちょうど良いタイプのスラッシャーとして、わりと気に入っています。

本作の日本公開予定はありません。これは確実にDVDスルー案件でしょう。


【邦題予想コーナー】
①「モスト・ライクリー・トゥ・ダイ/死の同窓会」
②「グラデュエーション/角帽の殺人鬼」
③「ダイ・スクール/殺戮高校同窓会」





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