Tinker,Tailor,Soldier,Zombie

未公開映画を中心にレビューしていきます。

哭聲/The Wailing(2016)

937b8a1535cb7b936cd04778ce638d35e8c36f05

【あらすじ】

IMG_9318

韓国の平穏な田舎村で、怪事件が起きた。
村の警察官が駆け付けた先には、妻の殺害した夫が白眼を剥いて縁側に座していた。

IMG_9320

事件は立て続けに起きる。
別の家でも、家族を惨殺した女性が白眼を剥き奇声をあげて警官に襲いかかった。
警察の見解としては、野生のキノコによる奇病とのことだったが、村人たちの間ではある男に関する疑惑が持ち上がっていた。

IMG_9319

その男は最近村にやってきた日本人であり、奇妙な事件が立て続けに起きたのは、彼が姿を現してからだという話で持ちきりとなった。現に、山奥でふんどし一丁の日本人が野生の動物を貪り食っていたとの目撃情報も相次いだ。

IMG_9321
身体を張った國村隼。

警察官が日本人の住処に向かうと、そこには闇の儀式の跡が広がり、これまでに異変の起きた村人の写真が壁一面に貼られていたのだ。しかし、さらに衝撃的なものが発見される。警察官の娘の名前が記されたスニーカーである。

IMG_9322
IMG_9333

その日以降、警察官の娘の身体に異変が起きた。
熱発・喘鳴に始まり、奇声をあげたり人格が変わったような言動も見られるように。
困りきった警察官は、大陸で有名なカリスマ霊媒師に助けを求めた。

IMG_9323

ファンキーなカリスマ霊媒師による躍動感あふれる霊媒が行われたが、娘の病状は酷くなるばかり。
娘がこんな大変な目に遭っているのはすべて日本人のせいだ!と、警察官率いる住民たちの一団は武装決起し、日本人の住処を襲撃しようと試みるが…

IMG_9328
ゾンビ出現!

IMG_9331
もう何が何だかわからない!


【感想】

殺人、鬼、悪魔、ゾンビ、幽霊、村八分、霊媒バトル!
あらゆる要素がてんこ盛り、ナ・ホンジン監督新作ホラー!


凄まじい作品でした。まったく感想を書ける気がしません。
容赦なき韓国ノワール映画の中でも一際異彩を放つ『チェイサー』『哀しき獣』のナ・ホンジン監督が、ニ・ホンジンの國村隼を起用して作り上げた摩訶不思議バイオレンスホラーです。

IMG_9337

これほどジャンル区分の難しい作品には覚えがありません。
冒頭では次々と発生する村の怪事件が描かれます。夥しい血液と破壊された亡骸が床に転がる凄惨な現場には、『殺人の追憶』などの韓国クライムサスペンスの雰囲気が立ち込めますが、一つ異なるのは白眼を剥いた殺人者の存在です。白眼を剥いて誰彼構わず周囲の人間に噛みつきかかる姿はゾンビそのもの。
おまけにどんなに頭をカチ割ろうが、鉈を振り下ろそうが致命傷を与えることはできず、ひたすら肉を求めて襲いかかってきます。てか、本当にゾンビじゃん!

IMG_9330
頭破壊しても死なないので、ゾンビよりタチが悪い!

次々とゾンビ化する住人たち。この原因がレイジウィルスよろしくキノコによる奇病なのか、はたまた怪しい日本人の仕業なのか、それ以外の何らかの呪いなのか、結局なんだかわからないまま、映画史上屈指の霊媒バトルというネクストステージに強行突入します。
日本人は悪魔なのか、途中で登場する怪しい女は幽霊なのか、やはりキノコなのか、どんでん返しが繰り返されて最後の最後まで真相がわかりません。

IMG_9334
IMG_9335
誰の仕業なの!?何の仕業なの?キノコの仕業なの?

韓国ノワールに、ゾンビ・悪魔・幽霊の要素が盛り込まれた作品なんて観たことがありません。
小さな集落に魔の手がのびる物語としては、スティーヴン・キング「呪われた町」や、その日本版である小野不由美「屍鬼」と似たような雰囲気がありますが、そこへさらに追加された情報量が多すぎて、自分は今何を観ているのだろうかと、ふとわけがわからなくなってきます。

IMG_9332
劇中人物も観客も、何が何だかわからん!けど面白い!

さて、なにやら凄まじいパワーを秘めた本作において、最もインパクトあるシーンが中盤に登場する霊媒バトルシーンです。

IMG_9325
IMG_9327
韓国代表・カリスマ霊媒師  VS 日本代表・ふんどしの悪魔

『新しき世界』のファン・ジョンミン演じるアグレッシブな霊媒師の演技が凄まじく、『The Fits』のボックスダンスに匹敵するようなトランス霊媒とでも言うべきスペクタクルシーンに圧倒されます。
このシーンは思わず笑ってしまう事必至なのですが、劇中の人物たちはガチでおふざけなしです。韓国映画の面白いところに、どんなに容赦ないクライムノワールであっても、突拍子もないギャグを入れてきたり、突然アクションシーンを挿入したりしてくる予想のつかない奇抜さがありますが、本作もコミカルなシーンと凄惨なシーンが交互にやってきたり、同時にやってきたりするので、本当に何と形容してよいのかわからない気分にさせられます。
ちなみに『チェイサー』『哀しき獣』のような壮絶なチェイスシーンは本作にはありません。あの凄まじいエネルギーは、本作では異なった方面に注ぎ込まれています。

IMG_9324

と、言葉でどんなに説明しようとも、この作品の本質をうまく表現することは不可能です。この異様な作品を知るのは、とにかく体感するしかありません。
本作の日本公開予定は未定ですが、遅くとも来年には公開されるでしょう。
是非その目でしかとご覧になってみてください。とにかく凄いです。


【邦題予想コーナー】
①「哭聲/呪われた村」
②「ザ・ウェイリング/村に潜む魔」
③「鬼」





kokseong_poster2
216809_l





映画レビュー一覧はコチラ





31(2016)

31poster_0

【あらすじ】

IMG_9294
IMG_9292

70年代後半、ハロウィン前夜。
バンで巡業中のサーカス一座が、謎のピエロ軍団の襲撃を受けた。
メンバーの半数はその場でブチ殺され、5人だけが生きたまま拉致された。

IMG_9302
IMG_9303

巨大な廃墟に監禁された5人。
すると誘拐の首謀者と思しき人物が登場し、衝撃の説明がなされた。
これから始まるのは、世にも珍しいハロウィン殺人ゲーム。
5人は廃墟内に解放され、次々と襲い来る刺客たちと闘わなければならない。
タイムリミットは12時間。最後まで生き延びれば無事解放。
てなわけで、対ピエロ軍団バトル・ロワイアルの幕が切って落とされた。

IMG_9305
IMG_9307
IMG_9291
注:ドラゴンヘッドじゃありません。


【感想】

絶対に殺されてはいけないデスゲーム12時!
ガキ使耐久鬼ごっこmeetsハンガーゲーム、ロブ・ゾンビ新作!


『マーダー・ライド・ショー』で「悪魔のいけにえ」への熱烈な愛をもってデビューを果たし、続編『デビルズ・リジェクト』では一変して泣かせる殺人一家の逃亡劇を描き、『ハロウィン』ではオリジナルを敬愛しつつよりバイオレントなマイケル・マイヤーズ像を作り上げ、続編『ハロウィン2』ではホラーの枠を飛び越えて神々の領域をちらつかせ、『ロード・オブ・セイラム』では終末ホラーにホドロフスキー色までブチ込んだ唯一無二の世界観に到達、もはやホラー映画界に必要不可欠となった偉大なる人物ロブ・ゾンビ待望の新作です!

IMG_9301
ついにきた!待ってた!

一作ごとに作風やテーマが様変わりし、神々の領域に近づきかけていたロブ・ゾンビの新作は、ハロウィンの夜を舞台にした意外にも正統派のデスゲームホラーでした。

冒頭、デスゲームに強制参加させられるサーカス一座の面子が登場。
今回はシェリ・ムーン・ゾンビ(嫁)とマルコム・マクダウェルを除いて、お馴染みの面子は登場しません。殺人キチガイピエロとして、ビル・モーズリィ、シド・ヘイグ、ダニー・トレホあたりは適役な感じがしますが、これまでの作品と似通った雰囲気にしたくなかったのか、彼らの不在はちょっと残念な気がしました。
しかし、脇役には相変わらず良い雰囲気の俳優を起用しています。

IMG_9295
健全な表情の歯抜けジジイ。

IMG_9297
悩殺シェリムーン姐さん登場!

IMG_9296
ええ女やな!

IMG_9299
ジジイのチンコをもみしだくシェリムーン姐さん!

IMG_9300
ジジイ昇天!!

さて、肝心のデスゲームの内容ですが、廃墟内の別々の場所に放り出された5人と、彼らを狙う刺客がゲームの舞台となる殺戮箱庭に投入されます。
5人が助かるためには、12時間逃げ回るか、刺客を撃退するしかありません。
しかし、よくよく考えると5対1なので、誘拐されたサーカス一座に有利な状況です。
さすがの刺客も、一挙に5人を殺しきることはできず、撃退されていきますが、次から次へと新たな刺客が投入されます。
ファンファーレが鳴り響くと、新たな刺客が投入、これはガキ使の24時間耐久鬼ごっこで「ハリセン」や「タイキック」と書かれた鬼が現れるのにそっくりです。
まさに「バトル・ロワイアル」「ハンガー・ゲーム」「ガキ使」がミックスされたようなゲーム設定です。

IMG_9304
刺客1:チビチャップリン a.k.a Sick-Head

IMG_9306
刺客2:チェーンソー兄弟 a.k.a Schizo-Head & Psycho-Head

IMG_9309
IMG_9308
刺客3:変態バカップル a.k.a Death-Head & Sex-Head

IMG_9312
刺客4:ジョーカー意識してるラスボス a.k.a Doom-Head

こんな感じのいかにもマッドなピエロ集団が次々と投入される中で、サーカス一座側は1人また1人と命を落としていき、次第に数の有利はなくなっていきます。
少年漫画のようなデスゲーム展開は厨二心をくすぐるのですが、肝心の死に様は敵味方どちらも通常の枠を超えず、ファンタスティックな人体破壊描写は意外にも少なかったのが残念でした。
バトルシーンにはアップが多用され、カットは短く切られてカメラが大きく揺れるため、何が起きているのかわかりにくく、そのうえ折角の人体破壊は画面の外で起きてしまっているので、盛大なる切株を期待して観るとだいぶ消化不良な出来となってしまいます。
また、せっかく見た目には個性ある刺客が登場するのに、それぞれの武器や殺し方・死に様にまったく個性がないので、結局キャラが薄っぺらで、あるべき個性が帳消しになってしまっているのが残念でした。

IMG_9310
絶対に殺されてはいけない個性24時!

「デビルズ・リジェクト」のOPでも使われた静止画止めの演出法を盛り込みつつ、嫌悪感漂う廃墟の中で厨二デスゲームが開催される展開はとても魅力的なのですが、登場キャラの個性と殺しのインパクトが、良く言えば水準レベル、悪く言えば水準レベルという物足りなさ。好きか嫌いかと言われたら間違いなく好きなんだけど、どうしても過去作と比べてしまうと物足りないというのが正直な感想です。

IMG_9315
IMG_9313
IMG_9314
ロブ・ゾンビよ、あなたはどこへ向かうのか。

ロブ・ゾンビの次なる新作は未定のようですが、ホラーではない作品をいくつか構想されているようです。アレクサンドル・アジャ監督のように、徐々にホラー界から抜けていってしまうのでしょうか。いろいろ試したいことはあるのでしょうが、ファンとしてはひたすらホラーを突き詰めてほしい気持ちが正直なところです。

本作は10月22日より「31/サーティーワン」の邦題で日本公開が決定しています。
みなさんの感想はいかがでしょうか?





31-Poster
rob-zombie-31-poster
31-Rob-Zombie
cfb2885d0d926fec0f38180989cd858f
31_finish_27x40_teaser_digital_01
31_finish_27x40_04
31_finish_27x40_03
31-poster-2
31_finish_27x40_02






映画レビュー一覧はコチラ






APT 3D(2014)

apartment-3D

【あらすじ】

仕事を求めてLAからNYに越してきたベンとエリン。
都会に建つ小さなアパートでの生活が始まった。

IMG_9274
IMG_9281

エリンは都会生活になかなか馴染むことができない。
仕事もないので、その辺をジョギングしたり、家でぼうっとブログを書いたりしながら過ごしていた。
越して早々に、ちょっと変わった隣人からの挨拶があり、なかば強引に家でディナーを共にすることに。それ以降、ジョギングしていると隣人が後をつけてきたり、部屋の壁の奥から変な音が聞こえてきたりするので、エリンは隣人が自分をストーキングしていると感じ始める。

IMG_9279
IMG_9280
デヘヘ〜、待ってヨ〜♡

IMG_9275
隣人キモいし、暇。

しかし、隣人のストーキングなんかよりもよっぽど深刻な事態が起きていた。
壁の奥から聞こえる変な音は、隣人の仕業ではなかった。
なんと、別次元の宇宙人が関与していたのだ!二人は彼方より狙われていたのだ!

IMG_9283
IMG_9289
ああ!モルダー妹!


【感想】

79分間中79分何も起きない、戸別訪問侵略SFスリラー。

あまり感想を書くことが見つかりませんが、79分間の上映時間のうち、全編を通して大きなことが一つも起きず、ただ変な騒音に悩まされるカップルの姿が描かれるだけの作品でした。
まったくオススメできないので、ちょっとネタバレ気味で書きますのでご注意を。

IMG_9288

四六時中聞こえる変な音の正体は、宇宙人(正式には未来人)からの発信音だったわけで、音だけでなく楽曲も鳴り響くのですが、それが宇宙人由来の劇中楽曲なのか、映画としてのBGMなのかがわかりにくいという弱点があります。

IMG_9277
空に光るUFOらしき光。

IMG_9273
部屋を飛び交うシャボン玉みたいな泡。

IMG_9282
突然催した水色のゲロ。

IMG_9287
部屋に登場した光の玉。

IMG_9286
隣人は政府の監視人だった。

IMG_9285
注:ネズミゾンビではありません。夢オチです。

ストーカー隣人が政府の人間だったのは笑えましたが、それ以外は本当に地味。
地味すぎて盛り上がる場面は一つもありません。
ラヴクラフト風にじわじわ戸別侵略される雰囲気を描きたかったのかもしれませんが、さすがにもうちょっと抑揚をつけた恐怖演出がほしかったです。
「ダークスカイズ」のようなアグレッシブな戸別侵略映画を期待すると大きく肩透かしを食らいますので、ご注意ください。

本作の日本公開予定はありません。これはDVDスルーが関の山でしょう。


【邦題予想コーナー】
①「アパートメント/狙われた新居」
②「アナザー・ディメンション/異次元からの音」
③「プラン無いん?フロム・アウタースペース」








映画レビュー一覧はコチラ