2007年01月05日

第47話/第10章 それぞれの道(その3)

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 そのころ芳恵は大学で新しい義足の研究に協力していた。マイクロチップで制御するそれは、かなりのレベルに達しており、生来の芳恵の運動神経と努力もあって、普通に歩くことは勿論、多少の小走りまでこなせるようになってきた。

 芳恵はチャンスとばかり、「美奈、あんたずるいよ、自分ばっかり目立ってさ、私もファッションショーに出られるように事務所に言ってよ」と、美奈に迫った。

 芳恵は哲学者か教祖かと思うほど深淵なことを言う割には、「目立つこと」に関しては、呆れるほど貪欲で、子供じみたところがある。もって生まれたこの性格は一生治らないだろう。

 ともあれ、もともと芳恵も一緒にショーに出て欲しかったし、プロダクションもそのつもりでいたので、芳恵の相変わらずの天真爛漫さに美奈が吹き出した。

 それはさておき、プロダクション側は芳恵も車椅子で出そうと考えていたが、芳恵は義足で出る事を主張した。プロダクションは単に芳恵が車椅子ランナーとして有名人だからという理由でそう考えていただけだったので、この芳恵の提案は目から鱗だった。


 芳恵の提案がきっかけで様々なケースの身体障害者に出演の声を掛け、いよいよショーが始まった。

 スポットライトを浴び、美奈が登場し、スルスルとステージに進む様子は、美奈の美貌と相まって、戴冠式の女王のような気品を感じさせるものだった。

 その美しく神々しい姿に会場に静かなどよめきが起こり、湖面に投げられた石の波紋のように、会場の隅々まで伝播していった。あの高校入学式の時と同じだ。

 我に返ったカメラマン達が次々フラッシュを炊く。
 続く他のモデル達も堂々とし、しずしず車椅子で移動する姿は同じく気品を漂わせていた。

 盲目のモデルもいて、彼女は白いミニスカートのスーツで登場した。スラリとした長身がステージに映える。 白いステッキをリズミカルに操り、普通のステージモデルのように、軽やかに中央に進むと、後ろ手に持った白いステッキに、体重を預けるように躰を傾け、格好良くポーズを決めた。

 濃いサングラスが、ものすごくカッコイイ。


 芳恵の番が来た。ステージに登場した芳恵を見た観客は、錯覚を起こした。
「あれ?普通のモデルじゃん」
「おー、ナイスバディ」

 身体障害者のファッションショーと聞いていたのに、普通のモデルも出るのか。
 そう思ってしまうほど、パンツスーツをまとった芳恵には、違和感が無かった。素人モデルのように少しぎこちないが長くスラリとした足で、ステージ上を普通に歩いていたのだ。

 ステージ中央で上着を脱ぐと、ぴったりフィットしたインナーに、鍛え上げた躰と豊かな胸がくっきりと浮かび上がった。化粧のせいか普段のひょうきんな芳恵と違って近寄りがたい程の色香が漂っている。

ちょっとお世辞が入ってるが・・・。

「モデルはあのパラリンピック金メダリストの相原芳恵選手。両足義足、パンツスーツでの登場です」とアナウンスがあり、観客は初めて、これも身体障害者ファッションと気が付き、あの芳恵がモデルと分かると、一斉に拍手がわき起こった。それは割れんばかりでしばらく続いた。




***************************************************こんてにゅうど

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