2013年08月22日

映画『パシフィック・リム』5

pacific_rim今年最も期待していた作品と言っても過言ではない。『パンズ・ラビリンス』や『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』を手掛けた名監督ギレルモ・デル・トロの最新作にして、そのテーマはなんと怪獣巨大人型ロボットのバトル。しかもロボットは人が乗り込んで動かす仕様ということで、これは明らかに日本のアニメや特撮へのオマージュであり、言わずもがな、僕も大好物だ。

ハリウッドが本気で作る巨大怪獣バトルものなんて、どう考えたって面白い。しかし絶対面白いと思われた企画も、いざ観てみるとうーん…という『アバター』のような例もあるから、早合点はできない。でもやっぱりどう考えても面白そうだよなぁ…と結局最大限の期待を寄せていると、ついに公開日がやってきた。なるべくいい環境で観るべくIMAX3D(吹替版)を予約し、万全の体制で川崎に向かった次第。

…はっきり言ってこれは期待通りすっごい楽しかった!予想以上に高いクオリティで、僕が観たかったものを観ることができた作品だった。

最初に言っておくならば、僕はといえば最高レベルで楽しみまくってしまったこの作品だが、結構「人による」作品であるとも思う。僕なんかはそういうのに慣れすぎているのであまり気づかないくらいだが、そもそも題材の段階から「怪獣と巨大ロボットのバトル」という実はニッチなものな訳で、だからそういうのに全く興味無い人が観ても「うーん」となる可能性は十分ある。

ただ逆に、そういうのにちょっとでも興味がある人なら、本作を一定程度楽しめるのはほぼ保証されているようなもの。だって、かつてよく見た怪獣と巨大ロボットという日本的世界観が、現代ハリウッドの超絶クオリティの映像で、しかも3Dで体験できてしまうというのだから、そんなの楽しく無いはずが無いのである。

そりゃあもちろん、散々観てきたゴジラやガメラの、アナログな特撮世界も大好きだ。着ぐるみや模型ならではの迫力や重厚感も完全肯定するし、もっとああいうのを見たい。しかし、本作にはそれとはまた違った楽しさがある。一言でいうなら、作品世界への直接的な没入感、といったところか。それは、見たことのない世界の体験、という映画の意義の一つともつながるものである。

すなわち、日本製の着ぐるみ特撮は、独特の迫力が楽しめるとはいえ、リアリティの面ではどうしても妥協せざるを得ない。もちろん観客は映画の世界に没入はするが、そこには着ぐるみ特撮をリアルなものとして捉えるという「お約束」的プロセスが介在する。没入は間接的にならざるを得ない。実写ですらないアニメにも、同様のことが言える。

ところが、本作のように、日本の特撮やアニメが描いてきたテーマを、最新CGや巨大セットを駆使したハリウッドの実写映画で表現してしまうと、どうなるか。日本なら特撮で描いていたシーンに、有無を言わさぬリアリティが加わる。よって、より直接的に作品世界に没入することが可能になる。しかも3Dだから、没入感がより促進される。こうして、怪獣や巨大ロボットの世界にまるで自分がそのまま飛び込んだような、今までにない体験をすることができる、というわけだ。ここに、見たことがない世界の体験、という映画というメディアの意義の一つさえしっかりと浮かび上がってくる。「うわあ異世界体験だ!」と映画でここまで喜んだのは、たぶん『インセプション』以来じゃないだろうか。

本作のこの没入感はすさまじいもので、まずなにより映像の密度がすごい。怪獣も巨大ロボット・イェーガーも、彼らが破壊する街並みも、当然CGはふんだんに使っているのだろうけど、さすがILMというか、驚くべき高精細っぷりだ。3Dももちろん没入感の面では大いに役立っていて、特に戦闘シーンで常に何か(雪とか火花とかマリンスノウとか)が舞っているという演出とか、イェーガーのコックピットのあの極彩色のディスプレイが重層的に目の前に迫る感じとか、非常に効果は高い。だから、これら全部ひっくるめて、どうせ観るなら、できるだけ画質が良くてスクリーンがデカい環境で観てもらいたい。つまりはやっぱりIMAX3Dがいちばんおススメということになる。

僕にとっては、この、観たことのない怪獣・ロボットの世界を体験できるというだけでも十分★5つモノであって、ストーリーなどはそれのジャマにならなければ別になんでもオッケー、というくらいなのだけど、本作は設定やストーリーの面でもなかなかに唸らせてくれるからすごい。設定で特に面白かったのが、イェーガーは2人でシンクロしながら操縦しなければならないというもの。最初は、なんだそりゃ、ヱヴァ13号機か?とか思っていたが、互いの感情が共有されるというのがいろいろドラマを生み出すのを目の当たりにすると、ああちゃんと意味がある設定だったんだなぁと感心せざるをえない。

話運びも、非常に僕好みのものでよかった。これは「もっと凝ったストーリーがいい」みたいに好き嫌いが分かれるところかもしれないが、とにかくワクワクに特化したようなお話で、怪獣対ロボットというプロットには大いに合ったものだったと思う。単純ではあるが、ピンチの後に大逆転、といった分かり易くも燃える展開が続き、意外な経歴を持つ隊長とか博士たちなどサブキャラもきっちりと活躍。ストーリー進行も流れるようにスムーズで飽きさせないし、過不足無い感じで好印象だった。また、使える技は事前に説明しておいたほうがいい、という意見を聞いたが、個人的には「えーそんな技も使えるの!」とむしろ興奮してしまった次第。例のあの技のことですけどね。

あと、もう一つ本作には特筆すべきことが。それは、デル・トロ監督が意図的にそうしたとしか思えない、日本サブカルへの目配せの数々だ。これは日本人としては嬉しくないはずがない。例えば、兄弟で怪獣と戦うあのシーンで、怪獣が登場するシチュエーション。漁船ってのがいかにもそれっぽい。また、イェーガー自体が日本のアニメのロボットっぽいのもそうだし、バトルシーンではちゃんと特撮っぽい重厚感を出すような映像演出がなされていたりも。見どころは本当にたくさんあるのだ。

あ、キャストに関しては、日本人以外はあまり知らない方ばっかりだったけど、みんなちゃんとキャラが立っててさすがと感心。菊池凜子もすごい存在感出せててとても良かったと思う。あとなんといっても芦田愛菜ちゃんね。かなり重要な回想シーンで登場するけど、いやはや迫真の演技でした。というかあそこの怪獣の演出がすさまじかった。これがリアル『ガメラ3』か!とか思ったり。ちなみに声優陣が豪華な吹替版も絶品の出来だった。3Dだと字幕追いにくいので吹替もおススメ。

…まあもちろん、大味な方ではあるし、いろいろとツッコミどころもある作品かもしれないけど、個人的にはこうしてどっぷりと作品世界にハマれた時点でもう大満足なわけで。異世界を全身で楽しんでいるうちに、あっという間に終幕を迎えてしまったのだった。喜びの★5つで!それまでかなり期待していて、実際にきちんとその期待に応えてくれる作品と出会えるのは、本当に嬉しいことだと、つくづく思った。しかし本作に関しては、いくらでもあの世界に行きたい願望があるので、ぜひとも続編を期待したいところ。中国でヒットしてるみたいなんで、無いことは無い…よね?

nozan0524 at 19:08│Comments(0)TrackBack(0) 映画 

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