October 09, 2019

クトゥルフTRPG リプレイ小説


この小説はクトゥルフTRPG、珠代ひがらさんにより配布されているシナリオのリプレイ作品です。

『瓶の中の君』
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10859010

以下の内容にはシナリオに関する重大なネタバレを含みます。
また、元のシナリオにはない改変部分も多数存在します。





肌の白い大男が、夜道を歩いていた。
彼は小心者だった、そして警官であった。今日もまたさしたる成果を挙げられず、どこか肩を落としたように一人、街灯の遠い小道を歩いていた。
捜査は難航している、警官としては新任そのものである彼までもが駆り出されるほどに。郊外で発生した連続的な行方不明者の発生、その被害者らに何らかの接点はなく、まるで手掛かりが掴まれないまま何日も経過している。遺体の一つさえ発見されていない事は幸運と言えるのかも知れないが、それは捜査の進展が全くない事を表してもいる。
彼は臆病だった、それだけに弱者の恐怖を理解していた。恐らくは自らの意思に反して失踪した本人、そしてその帰りを待つ家族や友人の心境を深く理解し、誰よりも悲しんでさえいた。力を持たない人の為に警官を志し、教科書に描かれるような正義感そのものを以ってしても成果を出せない事実に向かい合い、足取りを重くしている。
カチャリ、と鳴った腰に目をやる。細い音を立てた警官の象徴、手錠と警棒、そして拳銃。しかし彼の属するイギリス連邦では、一般に警官は銃を携行しない。そのはずが急遽として支給されて防弾チョッキまでもを身に付けるよう命じられ、厳戒態勢に移りつつある事を予想しない形で実感していた。いつもと異なるベルトへの重量が、彼にとっては大きな重責であった。

不意に、遠い声が耳を撫でた気がした。
それがどんな言葉だったか、彼は聞き取ることが出来なかった。しかし響いてくる音に胸が悪くなるような感覚を覚え、何かおかしい、そう思って程なく、意識は霧に包まれるかのように曇っては暗転した。



目を覚ますと、そこは薄暗い一室だった。 夜道であの声を聞いてから何があったのか、全く思い出すことが出来ない。 身体は冷たく埃っぽい床に転がされており、警官としての装備を提げていた腰のベルトは無くなっている。
呆然とはしながらも目を動かす。部屋の中は薄暗いながらもそばに机があり、隅の方に掃除用具入れ、反対側の壁には扉があることが見てとれた。
硬い床に寝かされていた身体を軋ませて起こし、恐る恐ると掃除用具入れに聞き耳を立てる、何の音もしない。静かに開け放ったその中には変哲のない掃除用具があり、身を守ることを発想した彼はモップの柄を手にしていた。誰かが観測していれば、それはさぞ異様な光景に映っただろうか。
ふと、壁に違和感を覚える。壁紙の模様が何かと思ったそれは立体感を有しており、壁の一面が歯車などの機械で覆われている事に気付いた。それは高く上へと向かい、見上げる黒の向こうへと続いている。そしてすぐ右手にはぽっかりとした穴、手のひらほどの歯車が嵌め込まれていたような空洞、更には作動させるものと思しきレバーが据えられていた。

怪訝に思いながらも向き直り、机と相対した彼の目は、予想しないものを捉えていた。机上に置かれた一本の瓶である。
特異であったのはその中身だ。黒い服を着た金髪の男が、20センチそこらの瓶に収まっている。それは人形などには見えず、そして彼もまた大男を唖然とした風に見上げていた。互いに行動を発想できないまま数秒が過ぎ、小人の口は動いた。
「あー……。聞こえるか?」
呆気には取られたまま、こくりと頷く。
「もし何か知っていたら、教えて欲しいんだが」
緊張した面持ちのままに大男は答えた。
「すまない、僕も何だかーー」
「んああ!!」
小人は頭に両手を当ててうずくまり、苦悶の表情を見せる。
「音が変に響く、声を落としてくれないか」
再び頷き、大男は声量を小に語りかけた。
「僕もわからない。道を歩いていて、気がついたらこうだ、帰ろうとしていた事しか覚えていない」
「同じか」
小人はそう腕を組み、細かい表情を曇らせる。
「とにかく何か、悪意をもってこうされているのは間違いないだろう、理由は想像もつかないが」
続けてより一層表情を硬くし、彼は言った。
「助けて欲しい。私をこの瓶から出し、連れ帰ってくれないか。ここから抜け出す……必要があるのは君も同じようだが、そのために協力と礼はさせて貰う。私の生涯をかけたとしても君に感謝を贈る、約束しよう」
大男は謙虚だった、それはおよそ警官として必要以上に。
「お礼なんてそんな……必ず助け出します、僕だって警官なんです」
「それは頼りにしたいな、清掃業者よりマシだ」
そう、手に握られたモップへ目を向けて言う。大男は赤面した。
「これはまあ、その……。メロード ウィズダムです、よろしくお願いします」
「私は……、エリック。エリック アイドルだ」
「アイドル?」
「おかしな名かね?」
目を吊り上げた小人に弁解しようと開いた口、それよりも早くエリックは言った。
「何か来る」
その一言に空気が張る。背筋を凍らせたメロードはさっと瓶を手に取って右に左にきょろつき、何を思ったかドアの横へと張り付いた。そして近付く足音を明確に捉え、彼は息を殺した。
カチャカチャと鍵を外すような音、そして扉が開く。のそりと部屋に踏み出した何かはぴたりと動きを止め、きょろきょろと部屋を見回している様子がドアの向こうからでも読み取れた。そしてそれは慌てたように踵を返し、ドアさえ開け放ったままどこかへ走り去った。

「結果としては悪くないようだが」
小脇に握り締めた瓶が声を上げる。
「掃除用具入れに隠れる発想はなかったのか?」
「すいません、咄嗟のことで……」
絞り出すように言う彼の背中は、いまだ壁へと凍り付いていた。
「とにかくやり過ごせたな、あの反応から見るに、我々に逃げられたと思ったようだ。また戻って来ないとも限らん、行動は急いだ方がいいだろう」
掃除用具入れにそうしたように、彼はそっと扉の隙間から外の様子を伺った。明るく照らされた廊下、気品のある洋館のような内装を見渡す、掃除も行き届いており整ったその様子を意外に思いながらも、忍ぶように足を踏み出していた。
廊下は突き当りで左へ曲がっており、手前には扉、そして右手の壁には窓が見て取れる。外の様子は暗い、ここに連れられてからそうは時間が経っていないのかも知れない。雑に寝かされていた身体の痛み具合からも、数時間程度の経過だろうと彼は考える。
壁に背をつけて慎重に、恐る恐ると角の向こうを見る。続く廊下にいくつか大小の扉、何かが動く気配は感じられない。すっと頭を戻して大きく、安堵の息をつく。
「瓶が」
ふと見やった左手の瓶、その内容物は頭を抱えていた。
「壁に擦れてゴリゴリ言ってる」
不快な騒音に痛めたのであろう耳を覆い、エリックはうずくまっていた。
「すいません、気をつけます」
「良い。どうやらこの中だと普段より音にやられやすいようだ、この点は君の助けになるかも知れないな。何か聞こえたら知らせるよ、少なくとも、近くには何もいないように思う」
頷くメロード、エリックは続ける。
「我々に逃げられたと思ったのなら、外に出て探しに行ったのかも知れない。一人なのか複数なのか、この館を見るに後者の可能性が高いが、思ったよりも時間の猶予はあると考えてもいいだろう」
「お願いします、協力して助かる方法を探しましょう」
力強く答えるメロードは角を曲がり、すぐ近くの扉へと聞き耳を立てて様子を伺う、何かがいる様子はない。そして一種過剰なほど慎重に扉を開き、倉庫と思しき部屋へ踏み入った。
暗く埃っぽい倉庫、一面に木箱や棚が並び、雑多な道具もがまた点々と置かれている。まずは身を隠すのに不足はなさそうだと、そして何か使えるものはないかと棚を漁り、少々錆びついた鉈を見付けていた。
「モップよりはマシだな」
瓶が言う。メロードは気にする風でもなく鞘付きの鉈をベルトに提げ、頼っていた掃除道具を手放した。
モップを置いたその傍らにふと、磨かれた歯車が置かれている事に気付く。薄く埃の降り積もった箱の上で鉄色に輝くそれに興味を惹かれ、何か使い所があるだろうかとポケットへ収めた。
これまでそうしてきたように、慎重に廊下へと出る。右へ左へ首を回して見渡し、そっと足を踏み出す。180センチを超える体躯の男が縮こまって動くさまを笑う観客は、幸いながら席を外しているようだ。
少し廊下を戻って未知のドアへ張り付き、またも聞き耳を立てる。やはり何も聞こえはしない。瓶が何か言うよりかは早く扉を開き、書庫と思しき部屋を見回していた。
手に提げた瓶を机へ置き、所狭しと並べられた本棚を見渡す。しかしそう言った分野への知識を持たないメロードはどこから手を付けたものか見定められない。いくつか手に取ってはみるが表紙はおろか開いてもなお何が記されているものか理解のしようがなく、熱心に探索を続けながらも表情を曇らせる。
「エリック、そっちからも見てくれませんか」
「少々見辛いが……あの黒いのはどうだ」
皮肉屋は座したまま待ち惚けてはいなかった。細く小さな手で指された、厚みのある黒い一冊。彼は並べられた古書の列からそれを挙げ、言われるがまま手に取ったメロードは即座に違和感を覚える。例えるならば見た目に対して嫌に重みがあるような、言い表し難い胸騒ぎを。
一呼吸を置き、本を開く。古びたそのページには短い文と炭で描いたような絵が記されていた。

『イグ[Yig]』
半人間の蛇たちの父。我らが偉大なる神。
我らと似た顔を持ち、たくましい肉体を誇る。
イグを呼び出せし子ら、イグの救いを得る。

文の下に添えられた、ごく荒い絵を目にしたメロードは強い悪寒を覚える。蛇を擬人化したように歪なその姿、大きく口を開けたさまは言い表し難いほど怪奇そのものに映り、睨みつけられた蛙の如く動けず硬直していた。
「何か落ちたようだが」
瓶からの声にはっと我へ返る。足元には古びた紙切れがひとつ、字の書かれた面を上に佇んでいた。黒の本を閉じて拾い上げ、それを読む。

『瓶型捕縛装置の使用方法』
・瓶の蓋を開ける
・捕縛対象に瓶の口を向ける
・呪文を唱える
・瓶の蓋を閉める
※解除方法は別紙に記載
※捕縛中は瓶を決して割らないこと

「瓶の出かたがある、どこかに」
メロードは目を丸くして言う。呪文などと全く以て非常識な記述を読んでなお、それこそがこの状況を形成した原因そのものであると確信していた。目の前にこうして瓶詰めとされた人間がいるのだ、その事実がこのただ一枚の紙切れ、そして先ほど恐れた蛇の姿に裏付けられていると。それは人間として培った良識や価値観、形成された人格の深く奥底に眠る本能であった。ヒトのみならず世に生きる全ての生命が記憶する恐怖と正気が、彼の眼の内で渦巻く。
「呪文に魔法、か。そんな話は誰よりも私が信じたくないが……」
小人と化した彼は自身と辺りを見渡し、わざとらしい溜息を漏らした。
「誰よりも実感せざるを得ない立場だ」
「僕が助け出します、必ずです」
短い言葉に、皮肉屋は返す言葉を失う。彼が向けたあまりに純真無垢なその瞳に、人間が持つ理性は本能を超越したものなのかと驚愕していた。その感情を彼には悟られまいと発想した時、耳の奥に覚えた違和感。
「何か来る」
メロードははっとしたように扉へ向く、そして息を殺すように耳を澄ます。扉が動かされる気配はない。
「……気のせいかもわからん」
エリックがそう発したと同時、メロードの耳は確かに足音を捉えていた。即座に瓶を手にとって書庫を見渡し、テーブルクロスに深く覆われた机の下へと身を隠す。
少し急いだようなそれは扉を開け放った。書庫へと踏み入って右へ左へと動き、何かを探している様子が姿を見ずとも伝わる。大男はただただ机の下にて縮こまり、一切の姿を観察できないまま怯えていた。足音は本棚の間やその上に至るまでをつぶさに確認して回り、程なくして忙しく書庫の外へと遠ざかる。
「上出来だ。ドアの裏では見付かっていた」
「任せて下さい、見つかりなんてしませんよ」
皮肉を解さずにこやかな表情を向けられ、調子を狂わせられた小人が見せた困惑を彼は察していない。

少々の間を様子見に充て、メロードはそっと書庫を後にした。廊下の角を曲がり、玄関と思しき両開きの扉の前に立つ。この悪夢のような場所から逃げおおせるには、厚いこの扉を突破しなければならない。
必ず生きてここを通る、そう決意した彼の手元でエリックは言った。
「これ、開いてないか?」
メロードは遠くに合わせた目の焦点を絞る。両開きの扉には僅かな隙間があり、月の光が細く差し込んでいた。そっと触れるのみで軽く扉が開き、その向こうには夜闇に包まれた森が深く広がっている。
「連中、我々は既に外に逃げ出したと思ったんだろう、本腰を入れて探してるのはあの森なんじゃないか。屋敷の規模の割には人数がないと思ったが、これで納得が行った」
「なにか見える」
暗い森を見ていたメロードが言う。視線をずらした先には石造りの礼拝堂のようなものがあり、薄い明かりといくつかの人影を捉えていた。フード付きのローブを被ったそれはボウルのようなものを手に、満たした赤いインクのようなもので石壁に何かを描いていた。儀式のようなものを準備しているのかも知れない。
屋敷からは容易に抜け出せる事を知り、しかしメロードは行うべきタスクを理解している。手元の瓶に閉ざされた一人の男を、警官として職務を全うするため救い出さねばならない。再び扉を通って洋館へと踏み入り、また別の部屋へ探索を続ける。
聞き耳を経て侵入したその部屋は、応接間のようであった。背の低い机に革張りの椅子、衣装だんすのような収納も見て取れる。
メロードはまず衣装だんすへと向かい、その内を調べた。ここの者が使っているものだろうか、白いローブが何着も収められており、入って隠れるだけの余裕がある事も見て取れる。
「ここの怪しげな奴らが使ってるものと考えれば、変装するのにも使えそうだが。着ていくと動きにくくなりはしないか」
エリックの言葉に頷いてローブを手に取り、確かに動きを阻害されそうな長さや厚みがある事を認める。しかしあるに越したことはないだろうと悩み、持ち歩くべく肩にかけるかタオルのように首に巻くかと思案する。
「大荷物だ。業者としては引っ越しのほうだったか」
瓶が喋り、腰の鉈がポケットの歯車に触れてかちゃりと乾いた音を立てる。無謀だったろうかと思い直すメロードの手は、ローブの内に何か固形物を感じ取った。ポケットを探って取り出す、それはありふれたライターだった。何かに使えるだろうかと思案した時、ポケットの内側に張り付いたメモのようなものに気付く。

『瓶型捕縛装置の解除方法』
・魔法陣を用意する
・四隅に火を灯す
・中央に立つ
・呪文を唱える
・瓶を床に叩きつけて割る
※手順を間違えないように!

「瓶から出る手順だ」
「本当に手段があるとは驚きだ、実行できるのか」
「はい、必要ななものは手に入れています」
握ったライターがロウソクに火を灯すため無くてはならないものだと知り、メロードは自信げに言う。そうしていくらか部屋を見渡し、なにか見逃しはないかと注意深く観察した。
「エリック、そっちは何か見えましたか」
「何も……いや、椅子の下に紙切れが落ちてるな」
期待を胸に、さっと拾い上げて内容を確認する。それはライターを無くしたため見付けたら教えてほしいと言うだけの内容だった。その他には特に目を引かれるものはないと見渡し、部屋を後にする。

続けて踏み入った隣の一室、そこはどうやら寝室らしい。整えられたいくつものベッドがあり、特に目を引かれたのは部屋奥の金庫だった。歩み寄って確認する、三文字の英字によるダイヤル式のロックが据えられている。
鍵に心当たりのないメロードは、そのダイヤルをよくよく観察した。それぞれの文字は『Y』『J』『F』であり、ダイヤルの小傷などから見るに先頭の一文字はほとんど動かされていないらしい。しかしそれだけでは正解に辿り着けないだろう、彼は困惑した。
「ふはっ」
不意に、エリックが笑いを漏らしていた。メロードはただ丸い目を向ける。
「いや、少し前の事を思い出して笑ってしまった。セールスマンをやってるんだがな、社内の管理システムに登録する時、ユーザーネームとパスワードを同一にしてえらく怒られたんだ」
「セールスマンなんですか、悪い意味ではないんですがその……少し意外です」
「この仕事は、口が悪くないとやってられんよ。客と話すよりもその悪口で上司と盛り上がるのが主な仕事だからな」
笑いを返すメロードが振り返った、その部屋の角には何かが乱雑に放置されていた。
見覚えのある黒いベルト、それに繋がれた手錠、警棒、手帳の入ったポーチ、そして拳銃。それは紛れもなく、メロードが警官として携行していた装具の一式であった。
そして怪訝であるのは、それと酷似した装備の一式がもうひとつ置かれている事だ。細部こそ違えど内容に大きな差はない、この状況から考えるにそれはエリックのものと考えるのが自然だろう。
瓶の内の彼は、緊張した面持ちでただ冷や汗を流している。
「エリック? あれは……」
「そうだ、その通りだ、あれは私の装備だ」
ひときわ大きな溜息をつき、彼は白状するように言う。
「君と同じように、捜査の人手不足に駆り出された、万年デスクワーク派で文鎮よりも重いものを持った事のない私でさえな。君を信用していなかった訳じゃない、ただ用心しただけだ。部署内でセールスマンとあだ名を付けられているのは事実だよ、気分を害したのなら詫びよう」
「いえ、僕はそんな……」
「重ねて伝えておきたい、私を手にしてここまで行動してくれている君には感謝している、詫びさせて欲しい」
「気にしないで下さい、僕はただ出来ることをしているだけです」
そう微笑みかけるメロードにエリックは表情を緩ませる。失われた装備を腰へと戻し、もう一人分のベルトをその上から巻きつけて固定した。
「しかし武器になるこんな物をこう無造作に置いておくとは……間の抜けた連中だ。希望が見えてきた気がするよ」
「必ず生きて帰ります、二人で」
そう朗らかに言うメロードは、扉を通るごとの聞き耳を省こうとしない。続けて隣の部屋をそっと開け、そこは掃除の行き届いたキッチンのようであった。流し台に調理器具の数々、冷蔵庫や食器棚が並んでいる。
メロードも適応しつつあるのか、流し台の下に隠れられそうな収納がある事を確認しつつ、冷蔵庫へ歩み寄ってはその内容を確認した。清潔な内部にびっしりと敷き詰められた肉、肉、そして肉。それはぱっと見に鶏肉や豚肉と言った慣れ親しんだものも含まれていたが、いくらか何の肉であるのか検討のつかないものも見受けられる。
丁寧にパック詰めされた肉がひたすらに並ぶのみであると理解し、背後の戸棚へと探索の手を移した。大小様々な皿が並べられたそこに興味を惹かれるものはないか、音を立てないよう探る。
「んん……?」
ふと、エリックは怪訝そうな表情を浮かべている、どこかに目を向けているわけではない、忘れていた何かが思い出させないかのような表情をし、眉間に皺を刻んでいた。
「何かありました?」
そう口にしたメロードの手に、覚えのあるものが触れる。それはカラの瓶であった、表面に黒く奇怪な文字が描かれた。傍らに黒い蓋もが積まれている、それは食器の傍らに十数本も並べられていた。
「これが……」
この全てが使われ、人が収められるのだろうか。メロードは唖然として眺めてしまう。棚に並ぶその全てに小人が詰められ、内部で力なく横たわる姿や声を上げながら拳を叩きつける、あるいはただ俯いて嗚咽する人々の姿を幻視していた。純真無垢な彼の瞳へロウソクの灯のようにささかやな、しかし確実な熱を持った光が揺らぐ。彼はここにきて恐らくは初めて、怒りと言うものを沸き上がらせていた。
「あ!」
被害者の一人、エリックは理解する。思わず声を上げたほどに。
「エリック?」
「いや、関係ない。探索を続けよう」
頭上の疑問符はそのままに、メロードは手にした空き瓶をまじまじと見る、以前よりもどこか張り詰めたような面持ちで。そしてその表面に描かれているのは決して判読不能な文字ではなく、見知った英字そのものを崩したものである事に気付いた。そうして辛うじて読み取れる一文を認める、"ALL FOR YIG"と。
Yig、彼らが信仰する蛇の姿をした何か。それはあくまで人智の知れない"何か"であり、決して彼の信仰する神と同列の存在ではないと否定する。人を食う蛇と人に知性を与えた神を、言葉の上であれ混同する事は許されない。
そして彼は意識せずに発想した。YIG、この三文字には使い所があるのではないかと。
調べ終えたキッチンを足早に去る。更に廊下へ出る扉へ、一枚のメモが貼り付けられている事に気付いた。

『尖塔機械室の交換部品が届いた、礼拝は鐘を鳴らし次第に行う』

「機械室?」
「最初の部屋だ」
疑問の声に瓶が答える、メロードは目覚めてすぐに壁の歯車を目にしていた事をおぼろげに思い出していた。あれは不気味なカラクリではなく、頭上の鐘を鳴らすためのものだったのだ。ポケットに仕舞った歯車を脚に感じ、パズルピースが揃いつつある事を実感する。
そうして寝室へと移動し、金庫の前へ立つ。ダイヤルをYIGの三文字に動かし、ハンドルを右へ。呆気なく、がたりと音を立ててそれは開け放たれた。
「ああ」
どこか引きつった顔で、エリックがそのさまを眺める。
「私の知能はこいつらと同程度と言う事か……」
「かっ……関係ないですよ」
中に収められていた書類の束、その隙間に異質な羊皮紙を見出す。手に取った奇妙な文字列から瞬時に理解する、それは呪文だと。瓶に囚われた人間を救い出す要素が、残り一つまで揃ったのだ。
「後は魔法陣だ」
メロードは頷き、玄関の向かいに見た大きな扉へ向かう。装飾の施されたそれは何か儀式を行う場所に相違ないだろう。中の様子を探るべく聞き耳を立てるため、屈んで体重をかけた足をずるりと滑らせた。
ゴン!と大きな音が洋館中に響き渡る。そして厚い扉の向こうから複数の足音が近寄る気配を耳に、視界に星を散らすメロードは行動を起こせない。
「今すぐに逃げろ!!」
怒号にも似たエリックの声に我へ返る。脚をもつれさせながら扉が開けられるより早く脱し、応接間へと滑り込んだ。何かどこかに隠れ場所が、と目を回しながらもローブが並べられた衣装だんすへ収まった。間もなくして部屋の扉が開けられ、荒い足音がふたつ入り込む。そして彼は隙間からその姿を目にしていた。

それはローブを着込んでこそいたが、明確に人間ではなかった。手足こそ生やしているものの緑色の鱗に覆われ、金色の眼を輝かせながらチロチロと舌を出しているそれは人間の形を真似た蛇そのものだった。右へ左へと向けられている三日月のように細い瞳孔に捉えられた気がし、思わず声を上げてしまいそうなほどの恐怖に呑まれる。
人外を眼にしたのみで吹き出す、理由を解せない恐怖。直視してはならないと理解はしている、しかし見開いてしまった瞼は意志に反して閉じる機能を忘れ、額を伝う汗を感じながらも怯えている事しか出来ない。如何に崇高な正義感と職務への意識を以ってしてもか弱い人間である以上、逃れようのない恐怖が確かに存在していた。
それらが探索を終えてメロードらに気付かないまま過ぎ去ったと理解したのは、数分が経過してからの事であった。狭い衣装だんすから整った生活空間へ身を出す、一見は気品さえ感じる部屋があれの住まう空間だと思うだけで酷く歪んでいた。
「鐘だ」
手元で考え込んでいたエリックが言う。
「足音からするとしばらくうろついていたようだが、大体があの大部屋に戻ったらしい。鐘を鳴らし次第に礼拝が始まると言うのが本当なら、外に見えたあの礼拝堂のような所に集まるはずだ。その隙に行動するしかない、恐らくあの部屋が最後の鍵だ」
警官らしいとでも言うべき、理路整然とした言葉にメロードは我へ返る。この館に渦巻くあれらを嫌悪するのであれば、対抗する行動へと移さねばならない。警官の職務として、或いは一人の人間としてであれ。

ホールに反響する自らの足音にも構わず、メロードは駆け出す。自らが囚われていた最初の部屋へと戻り、薄暗い部屋を見上げて壁面の機械を一瞥した。握り締めた歯車を窪みへ押し込み、躊躇わずにレバーを引く。
建物を振動させるほど鳴り響く鐘の音に、幼い日を思い起こしていた。家族に連れられて向かった日曜日の礼拝、雲ひとつない青空と純白の教会、辺りに広がる花畑の彩りを、何気ない日常の幸福とそれらを守っていた大人達を。
それは僕自身だ、と薄暗く埃の積もった部屋へと焦点を戻し、エリックと共に耳を澄ます。ドアの開く音といくつもの足音、それは確実に玄関から外へ向かって屋敷から遠ざかっている。
「今だ」
メロードは足早に向かう、先ほど頭を打ち付けたその扉へと。臆する事もなく堂々と開け放ち、その部屋にはまさしく予想した通りに祭事の様相が、赤に描かれた魔法陣とその周囲にロウソクが並べられている。
「ああ、よし、これだな」
そう声を出した手の瓶を強く握る。そしてどう言う訳か内部の彼は、これまでの如何なる状況よりも緊迫した表情を見せていた。手早くロウソクへ火を灯し、その中心点に立つ。
「いいぞ、ひと思いにやってくれ」
掲げるように振り上げた瓶、その内にある彼が今にも泣き出しそうな表情をしている事に、メロードが気付く由はない。
頭の内に根差した文字列を口にする。それは冒涜的な、人の理に反する異質な文言。魔法陣が薄く輝き始め、これが機能していると確信する。
「うおおおおおおおおお!!」
「ふあああああああああ!!」
意を決して足元へと放たれた瓶、見知ったそれと同様に音を立てて砕け散る。同時に強い光が、太陽が足元へ落ちたかのような閃光が四つの眼を白に染め、部屋中を焼くように照らす。そして一筋の風が吹き抜けた時、エリックは石畳に倒れていた。彼が収められる以前の、人間大の姿で。
「ああ」
呆気とした顔で両手を、全身を見回しながら言う。
「服も一緒に戻ってくれてよかった」
「早く逃げよう!」
腰に回していた装具を渡し、二人は扉へ向かう。あとは化け物の根城から抜け出すだけだと、行く先を大きく開いた。

その向こうには金色の眼をした、ヒトを真似た蛇が4つ、驚いたように立ち竦んでいる。
メロードは硬直し、足を止めてしまう、睨み付けられて石と化したかのように。得体の知れない、打ち倒せたものかどうか予測しえないそれと目を合わせてしまい、腰の拳銃を手に取る事さえ発想できない。恐怖に呑まれる、その現象に耐性を得るにはまだ若すぎた。
「メロードと言ったか。君は救ってくれた」
背後でガチャリと音がする、聞いたことはあるが聞き慣れてはいない金属音。そこでは目を細めたエリックが、異様に手慣れた手付きで銃を装填、薬室に込められた実弾を確認して安全装置を下げていた。
「今度は俺の番だ」


mhgUXzxpUUixJvl8xM1wCmA7

































言葉を終えると同時、握られた拳銃から立て続けに閃光が走る。
先頭の一匹に三つ、赤い花が咲く。両の肺と心臓を銃弾に穿たれたそれはヒトと同じ赤い血を吹き出し、自らに何が起こったかさえ理解せず崩れ落ちた。更に隣の一匹へ続けざまに撃つ、驚愕したように動きを止めたその眉間を貫き、ただの一撃で肉の塊へと変えた。
「エリック、デスクワーク派じゃ……」
「撃て、メロード!」
はっとしたように銃を構え、その間にも彼は撃ち続ける。対する蛇も金切り声を上げて突進していた、数発の銃弾を受けてよろめくが、鋭い牙を剥き出しに迫るその姿は直視さえ憚られるほどの凄味を有していた。
メロードは振り絞るようにトリガーを引く、放たれた閃光は命中して血しぶきを散らすが止めるには至らない、大口を開いたまま最も近いエリックへと、異形は襲い掛かった。
「エリック!」
半歩身を引き、既に反応している。バクンと音を立てて閉じられた口、それは残像を捉えるのみであった。そして噛みつきに失敗したと理解した直後の頭、その脳天へ重い肘が打ち付けられる。ごしゃりと何かが砕けるような振動が響き、倒れ伏して一切の動きを止める。すかさず拳銃を構えて三連射、直前に迫り視界を埋めていた赤黒い口腔を押し戻し、それは仰向けに倒れて大理石を血に染める。
続けて息をつく間もなく、左手の通路から二匹の新手が姿を表す。流れるように銃を構え直したエリックは叫んだ。
「正面は空いた、行け!」
メロードは目を見開いた。手の銃を強く軋むほど握る、震えを消すためではない。
「僕だって警官だ、ここで戦わなきゃいけない!」
それを撃つ。初弾こそ窓ガラスへ逸れて火花を上げたが、続く二発は蛇の胴を打ち倒していた。
「良い意気だ、新米!」
更に撃ち、敵の肉を抉る。しかし距離が近い、銃撃によろめきながらもおよそ人ではあり得ない勢いで迫り、鉤爪を振り下ろした。
動きを読んでいたエリックは最小限の動作で躱す、そして身体を交差させた敵へ振り向きざまに射撃、突っ伏したそれが動く様子はない。
「出るぞ!」
駆け出しながら再装填を終え、二人は重い扉を蹴り開けた。
遠く広がる夜闇の深い森、そしてそのすぐ手前に金の目が六つ、蛇の頭が三つ立ち塞がっている。
「ここにも……!」
「外に出て探してた奴らだ、銃声で戻って来た!」
二人は続けざまに撃つ。しかし夜闇を縫って迫る人型の蛇は巧みに銃撃を掻い潜り、一匹がエリックの肩口へと食い付いた。
「エリック!」
叫ぶ、その声が通り抜けるよりも早く、彼は表情さえ変えず振り解く。返すように膝と肘を上下から打ち付け、それは鱗に覆われた顔中から血を吹き出して絶命。
押し寄せる次を撃つ、しかし命中弾を送り込めない。それは夜の暗さや機敏な敵の動きだけでなく、抑え切れない手元の狂いが銃口を震わせていた。
「怪我をして……」
「来るぞ!」
メロードは向き直り、迫る影を闇雲に撃つ。それは外縁に当たり鱗片と血を散らすが勢いを押し返せはしない、それの持つ牙が彼の胴から脇腹にかけてを襲った。
見た目から連想した以上の強い圧迫感に唸る、万力に噛み付かれたような強烈な衝撃が鈍痛となって走る。全力を振り絞るように抵抗、まるで押し退けられたものではないと悪寒を走らせた。
しかしあの牙が臓器にまで貫いているような痛みはない、防弾着の装備を忘れ去っていた事をメロードが気付いた時、牙を突き立てるそれの無防備な脇を閃光が立て続けに抉る。零距離で打ち込んだエリックの反撃、心臓を失ったそれは顎の力を緩ませ、力なく沈黙。
最後の一匹、すかさず射撃するエリックの銃は二発を放ったのみで動作を止める、弾薬が尽きたのだ。
「メロード、撃て!」
金色の眼と赤黒い口腔、鋭い牙が迫る。照準器の向こう、自身でも驚くほど冷静に、粘りつく時が進む速度を落とすような感覚に狙いを澄ます。傍で共に闘った彼の姿勢、目線、息遣いを思い起こすように、軽く絞った引き金。
雷光の如き発砲炎に醜悪な怪物が照らされ、自らを襲うべく開かれた口の中央、寸分の狂いなく送り込まれた弾丸が頚椎を破砕した。立ちはだかった蛇の最後の一匹が倒れる、その成果にメロードは唖然としてさえいた。

「走れ!振り返るな!」
声が彼を導く、両足に血流を送り込んで地を蹴る。真夜中の密林へ踏み入ってひた走り、月の明かりだけを頼りにただ前へ進む。再びあの怪物が現れるのではないかと怯える事さえなく、ただその手から逃れる事を脈打つ頭で思考していた。慌ただしい足音がふたつ、倒木を飛び越え石を蹴飛ばしながら黒の森をざわめかせていた。
十分、何十分か走り続けただろうか。破裂しそうな心音に干上がった喉、感覚を麻痺させた脚の重さを感じた時、前方にそれを見た。舗装されてこそいないが獣道と言ったそれとは異なる、確実に人の手が入ったであろう道路へ辿り着いたのだ。
「エリック、道だ!」
メロードは背後の彼へ振り返る。しかしそこには、ただ日の出を待つ森が静寂とともに佇んでいるのみ。メロードは目を丸く、呆気に取られていた。
「エリック?」
目を向けはしなかったが、軽やかな足音がすぐ背後に続いていた、それは何度も確認し記憶していた。彼を置いてきたり、道を違えて離れ離れになるとは考えられない。
「エリック!」
熱気が伝わるほどの距離に、彼は今この瞬間まで存在していた。目に映るものが信じられずに周囲を見回し続ける、それは蛇人間や魔法など人智を超えたものを目にしてなお、今この時が最も不可解な場面に違いなく感じていた、不条理だとさえ。
「エリック……」
立ち竦み、言葉を失う。それは来た道を戻り、再びあの洋館へ戻るべきか思い悩むほどであった。そうして目にした道筋に確信する、やはりこの場所まで確実に行動を共にしていた筈だ。
メロードは思案した。彼は近郊で同じ捜査に就く警官だと言っていた、ならば署へ戻るとともにその安否を確認するのは容易なのではないか。不意にはぐれてしまったのかどうかはわからないが、驚くほどの実力を有していた彼の事だ、必ず逃げおおせているには違いないだろう。そう思いながらも森を見渡し続け、澄ました耳は虫の歌声に撫でられるのみ。
そうすべきだと決意し、彼は自らの署への帰途を急いだ。



「信じられん」
強面の上司が、メロードに毒づいていた。眉間の皺は岩石に走る亀裂のよう、その顔が眺めていた紙束、メロードがひと晩かけて書き上げた報告書はぱさりと机上へ落とされていた。
「全く理解し得ん事だ、馬鹿馬鹿しくさえある。全ての検査結果に異常がなかったとは思えんほどだ」
「重ねて申し上げた通り、エリックと言う……」
「それが言いたかった。君はその名前を聞いて何も思わなかったのかね、エリックアイドルと。我らイングランドが世界に誇るコメディアンの名じゃないか、偽名だとは疑いもしなかったのか?」
長々と言う上司の言葉は、この一言で締め括られていた。
「そのような名の警官はいかなる登記をもってしても、イングランドに存在しない」
背後でからかうように、その芸人が歌っていたらしい曲を口ずさむ同僚に憤りを覚えつつも、メロードは動揺を隠せない。そしてわずかに思い出していた、彼が名乗る時の少しなにか詰まったような物言いを。しかし互いに呼びあった名が偽りのものであると、そのような事実はあまりに受け入れがたいものであった。

肩を落とすように、夜の街を通り抜けて自宅への帰途につく。
目に映る全てが歪んでいるかのようだ、あれほど帰るのだと意気込んで苦難を突破した先の人の世が、捏ね上げた作り物のようにいびつで薄っぺらく、今にも割れて砕けてしまいそうだ。
そして彼は青ざめた。静まり返った自宅のシャワールームで、牙に圧迫された胴を目に硬直していた。右の脇腹、防弾着によって保護されていたはずのそこにはほんの僅かな刺し傷と、そこから赤黒く広がる放射状の変色が広がっていたのである。血管を伝って染め上げられたようなそれは余りに禍々しく、決してあの出来事が夢や妄想の類ではないことを雄弁に語っている。
すぐさま、彼は医療機関にて受診した。しかしそれは何らかの外傷や毒物などによるものではなく、医療や科学と言ったもので説明しえない何かである事が判明した、つまるところは何もわからないと言われただけであった。
そうして彼は何かに蝕まれている感覚に苛まれる。ほんの僅かにではあるが右腕に痺れを覚え、日数を経るにつれてそれは確実なものへ悪化する。ペンを取る事さえもままならなくなり、彼は恐怖した、全身がこうなるのではないかと。同僚の面々からは励まされつつも、彼は日に日に憔悴した。誰にも認められぬ一夜の記憶と、身体を蝕む痕跡に。



ある日目覚めた彼は、ベッドから起き上がる身の重さを実感していた。もはや警官として休職すべきだと決心し、脚を擦るように玄関へ向かう。そして雑多なチラシが詰め込まれたポストに、宛名も何も記されていない、落ち着いた色合いの手紙を見付けていた。
紙の束と共に捨てようとしていたそれを手に取り、封を切る。中には一枚の古ぼけた紙と、ごく短い文が記されていた。

『遅くなってすまない、相棒。
 礼を贈る。』

読み終えて目を上げた先に、便箋から虹色の蝶が舞い上がった。ひらひらと漂うそれはそっと右腕に止まって姿を消し、そして全身を蝕んでいた重荷は嘘のように消え去っていた。

便箋を手にしたまま、彼は佇む。
目の先には朝の活気を現しつつある、晴れたロンドンの町並みが続いていた。


nozomi_d at 02:24コメント(0)小説  この記事をクリップ!

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
Counter

アクセスカウンター



Twitter
livedoor Readerに登録
RSS
livedoor Blog(ブログ)