2002年04月

2002年04月19日

NO.5 ディスレクシア=LD(学習障害)?

冬のパラリンピックが開催されています。不自由な部分をあるときは器具であるときは伴走者などの方法で補って活躍しています。その努力は私のようなものには想像を超えるものでしょうが、彼らの競技が終わった後の爽やかな顔はこちらまでも清清しくしてくれます。
パラリンピックはもともとはparaplegics olympicの略でした。
パラプレジックスは下肢麻痺と言う意味でしたが1976年のオリンピックから視覚障害者が参加し、次第に障害の種類が増えました。1985年にパラリンピックのパラの意味はパラプレジックスではなくパラレル(平行して)の意味に変わりました。(参考:毎日新聞14年3月6日「余禄」)

ディスレクシアであったロダンの父が設立したロダンアカデミーは「脳科学とディスレクシア」に関する研究をしている国際的な研究機関です。先日ひょんなことから連絡を取ることが出来、3月8日から10日までつくば市で行われた国際記憶学会にスピーカーとして来日中のロダンアカデミーのルンドバーグ博士にお目にかかりました。

お話の全容は会員にお送りするニュースレターで詳しくお知らせしますがその中で印象的だったことを二つパラリンピックで受けた印象に重ねてご報告します。

ディスレクシア=LD(学習障害)ではない

「ディスレクシアは脳の限定箇所の認知機能の不都合であって知能には何の影響もない。ディスレクシアだから学習に障碍があるのではない。発見が遅れ、その影響で適切な対応を怠った結果学習の障碍(※)になるのである。」とルンドバーグ博士は語ります。
「今ヨーロッパにおけるディスレクシアへの対応は次の三点に焦点が置かれている。

1) Prevention(予防)早期発見をして学ぶプロセスや思考の回路つくりを丁寧に指導することにより

2)Remediation(療育)適切な教育。一人一人の得意、不得意な分野と程度を見極め、それぞれにあった指導を丁寧にすることにより長い目で見れば対費用効果が高い教育が出来る。

3)Compensation(代償、補正)パラリンピックの器具や伴走者に当たる部分。現在英文では音声認識ソフト、テキスト音声化ソフト、などがディスレクシア用に使いやすく開発されて発売されている。

読み書き計算が出来ないことで知識の吸収が難しいのならそれを補う方法を人的、物的に補おうと言うもの。保護者やボランティアが読んであげるのも立派なコンペンセーションである。」と言うお話でした。

常々、私はLDのDは障碍(disability)のDではなく、差異(difference)のDであると思っていました。小さいときから息子の事を見ていて怠けているわけでも学ぶことが出来ないのではなく、他人と回路が違うのであると信じていました。そのことが今科学的に証明されようとしています。脳科学の分野で研究が進みfMRI(ある刺激に対して脳のどの部分が機能をするかを見る方法)が開発されています。近い将来にLD(学習障害)がパラリンピックがそうであったように違う用語に取って代わられることを願ってやみません。

NPO EDGEではdisabilitiesを障碍と表現しています。nuisance と言う意味の「害」ではなくobstacleの意味の「碍」であるとの気持ちを込めています。ご理解ください。

npo_edge at 00:00|PermalinkComments(0) メスタの独り言 

2002年04月01日

NO.4 EDGEの由来−日本語も難しい

研究社の新英和大辞典を紐解くとEDGEと言う単語には鋭い、とがった、境目、そして8番目に強み、優勢という意味があります。
E Extraordinary 特別な
D Developmental Dyslexia 発達性ディスレクシア
G Gifted 才能のある
E Eclectic 取捨選択された
一つ一つのイニシャルには上記の思いを込めました。

日本では学習障害として出来ないことばかりがクローズアップされていますが欧米では読み書きが不得意な分、違う表現方法で能力を発揮しているディスレクシアな人が数多くいます。デザイン、設計、芸術、演劇、映画、音楽、映像、のみならず辣腕(らつわん)弁護士、アイディアあふれる企業家、名宰相といわれる政治家、大きな改革につながるような発明家にも多く見られます。

障害と言う日本の表現に違和感を感じます。ディスレクシアは害なのでしょうか?広辞苑を紐解くと障害と障碍が平行して掲載されています。中国では「碍」と言う字が使われています。工学系では電気の通じない状態の元になるようなオブスタクルを障碍と呼ぶようです。多分「碍」が当用漢字になかったので「害」を使うようになったのでしょうが、言葉から来るイメージがあまりに直接的なので学習が出来ないと理解してしまう方が多いのではないでしょうか?

実際、相談を受けるお母様たちからは「学習障害と言われてこの子の将来が心配でたまらない」「いっそ子の子を道連れに」と言うような声を聞きます。

上記のような事情もあり私たちはEDGEという直接的ではないけれどDX児の特徴を現す名称を選びました。

ところが、先日総会を開催するに当たって、会場に電話で予約を入れたところ、何回も念を押し、当日も先方から確認の電話があったのに会場の案内板には次のように堂々と書いてありました。

[NTO エッチ]!!

点が抜けるだけでとんでもない団体になってしまいました。

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