2003年08月

2003年08月01日

ディスレクシアの研究 IN 英国

はじめまして。
夏休みを利用して現在EDGEでボランティアをしています小山麻紀と申します。
10月からオックスフォード大学(英国)の生理学博士号課程にて、ディスレクシアを研究します。今年の7月までダーラム大学(英国)で認知心理学の“記憶”を専攻していました。卒業論文で“漢字が子供(日本人)の視覚記憶に与える影響”を研究していた際、あらためて母国語である日本語の特殊性に興味をもちました。
さらに、言語・文化によって表れ方の違うディスレクシアが日本でどのように認識されているかを調べたとき、ディスレクシアという言葉・コンセプト自体が日本においてまだ深く研究されていない現実を知りました。

最終的に発達性ディスレクシアの研究を選んだ理由は、この卒業論文の実験のため、去年の夏、日本人の子供達(6-12才)に触れ、子供の持つ多様性そして可能性に新鮮な驚きを感じたことに影響しているかもしれません。
読めないということが子供達に精神的に与えるインパクトは、日本人である私が英語でイギリス人に混ざって読んだり書いたりしている苦労とは比べ物にならないんだろうなーと(単純でごめんなさい…)つくづく思いました。
現在イギリスでは、ディスレクシアの原因について学説が幾つかあります。
そのなかのひとつは、書かれた言葉を音韻的に分析(分解)する能力の欠如がディスレクシアにつながると唱えています。
私が10月から従事するスタイン教授(John Stein)のもとでは、読みに必要な音韻的そして視覚的情報処理能力を神経システムの見地から研究しています(Magnocellular Deficit Theory)。
最近では、ディスレクシアの原因になりうる神経システムの欠陥と遺伝との関連性についても研究を進めています。

ディスレクシアの子供達の症状は様々なようですが、根本的な脳における問題を解明し、早期治療につなげる研究ができたら…と考えています。
まだまだ研究生としても未熟な私ではありますが、EDGEを通じて日本におけるディスレクシアの子供達の現状、それに対する教育のありかた等を学び、学術的だけでなく様々な角度からディスレクシアを理解したいと思っています。
この研究が将来、読むことが大変な子供達から“学習障害”というレッテルをはがすことに少しでも貢献できることを願っています。

文責:小山麻紀

npo_edge at 00:00|PermalinkComments(0) 過去の記録 

NO.33 ソープ展を終えて

マッケンジー・ソープ氏の初来日となった絵画展が無事に終了いたしました。
おかげさまで大勢の方に丸善会場、ホテル・オークラ会場に来場いただきました。
ミセスに載った記事をご覧になって新潟から駆けつけてくださった方や、ディスレクシアのお子さんをもつ方も来てくださり、お目にかかることができたのは大きな喜びでした。
ご協力いただいた団体、ボランティアの方たちにスタッフ一同この場をお借りして、感謝いたします。

熱いメッセージと暖かな人柄に触れた感動の2週間でした。

さて、ソープ氏とディスレクシアにまつわるこぼれ話をいくつか…

1)兄弟もお父さんも、おじいさんもディスレクシアだった!
ご自身がディスレクシアと気が付いたのは自分の息子が小学校に入るときにディスレクシアと判ったときに、そういえば自分も同じような間違えをしていて、同じように大変な思いをしていたから。気が付けば、兄弟も同じだし、お父さんは20になって初めてHANDSという字が書けたそうだし、おじいさんにいたっては生涯で書くことができたのは自分の名前だけだったそうだ。自分はメールもやらないし、文章は全部秘書に口述筆記してもらっているとのこと。

2)漢字は書ける!!来日を記念して作成した画集にサイン会をしていたときに、お客様にお名前を紙に書いてもらい、それを実に芸術的にまねて書いていた。ハネもしっかりと私などよりしっかりした良い字を書いていた。編集責任者の穂奈美なんていう難しい字もしっかりとバランスよくかけていた。平仮名の方がちょっと難しそう。

3)聴覚もしっかりと良い!!!声帯模写が天下一品。
フランス語、ロシア語、中国語、日本の侍、猫、犬、ねずみ、交差する電車などリクエストをするといくらでもやってくれます。いたずらでバスに乗っては子猫のまねをして、バスを止めたこともしばしばあるとか…。私としてはジェスチャー入りの「日本の侍」がお気に入りです。

4)6歳の頃から、無能で役立たずといわれ続け、自分でもそう思っていた。自殺をしようとしたこともある。絵にめぐり合い、日本に来られるような画家になった46歳の今も時々自分が何の役に立たない、ダメな人間だと落ち込みそうになることがある。一人でもそんな気持ちを味わう子どもが少なくなる事を祈って、ソープ・ファウンデーションを立ち上げようと思っている。大人にできることはEDGE(崖っぷち)にいる子ども達が無事に飛び立ち、良い場所に着地できるよう、ほんのちょっとのきっかけつくりをすること。ソープ氏の叔父さんがソープ氏が絵の学校に通えるようにと出してくれた2000円のように。

5)大変日本を気に入られ、毎年のように日本に来て、children on the edge(崖っぷちにいる子ども達)とワークショップをしていきたいと夢を語ってくれました。今回、お会いできなかった地方の方たちにもお会いできればと夢は膨らみます。

6)おまけのお話:ソープ氏のディスレクシアのせいか、こちらの聴覚のせいか、通訳をしながら時々????となることがありました。その中でけっさくな勘違いをひとつおまけでお送りします。「ダライ・ラマから平和を祈念してポップコーンを作れといわれたが、戦争が始まってしまい企画がペンディングになっている。」と聞こえたのですが、通訳者も周りの人も皆頭の中は????実は「ポップコンサート」の間違えでした。

詳しいご報告はニュースレターでいたします。
絵画展で販売していた絵葉書カレンダーホルダー付き(7枚組)1000円+送料、
絵葉書セット(8枚組)600円+送料をお分けします。
info@npo-edge.jpまで

npo_edge at 00:00|PermalinkComments(0) メスタの独り言