2003年10月

2003年10月14日

NO.36 ソープ氏ディスレクシア賞受賞

9 月にEDGEが主催したマッケンジー・ソープ氏の絵画展に来てくださった方も多いと思います。息子さんのオーエンが8歳でディスレクシアと診断されその時に自分もディスレクシアだとわかりました。そのソープ氏が英国ディスレクシア・インスティチュートから第21回目のディスレクシア賞を11月18日に受賞しました。

ディスレクシア・インスティチュートは主に教員の研修や私立の学校にディスレクシア教育のコンサルティングをしています。
このディスレクシア賞はディスレクシアの啓発や理解に貢献をした人たちを表彰しようというもので21年前から始まっているそうです。今回の受賞はディスレクシアや自信を失って苦しんでいる子ども達のために数々のチャリティーと理解を進める活動を認められてのものです。ちょうど英国にいた私もご招待を受け参加してまいりました。ブッシュ大統領が訪英中でアメリカ大使館の近くのホテルで行われたので日頃はコンボウしか持たない警官が機関銃を構えている中、ブラックタイの正装の会です。参加者は400名ほどでしょうか?

さて、8時近くになってやっと扉が開きディナーが始まります。銀行の偉い人、政治家、テレビのパーソナリティーや映画俳優のスーザン・ハンプシャーが軽妙に会を進めてゆきます。
皆、何らかの形でディスレクシアと関係があります。息子さんが、本人がディスレクシアと言う人が皆1人1人、ディスレクシアネタの冗談を言って会を盛り上げていきます。
ソープ氏のテーブルでご一緒しましたが絵の題材にもなっている奥様のスーザン、息子のオーエンそして娘さんのクロエ、みんなとても魅力的な家族でした。
ソープ氏はこのような晴れがましい場所は賞でももらわない限り出席はしないと言っていて、息子ともどもノータイでしたが、それでもその場にはふさわしく見えるから不思議です。壇上での挨拶も他の人たちの軽い乗りとは違いちょっと辛口のコメントをしました。

「今朝見たテレビの番組で本当に憂鬱な気分になった。2003年の現在いまだに'toutch'と書いた人を指してウスノロだとコメントをしている人がいた。
私にはそのどこが問題なのかもわからない。そんな私が批判されているような気がした。この協会から奨学金をもらえるのは一部の恵まれたディスレクシアの子で、今日こうやっていてもつらい思いをしている子どもがいくらでもいることを私達は忘れてはいけない。」という内容でした。

インスティチュートでは、この一晩だけで2000万円のチャリティーを集め、奨学金にしているそうです。本場のチャリティー文化に触れた一晩でした。



npo_edge at 04:01|PermalinkComments(0) メスタの独り言 

2003年10月02日

発達障害児支援のためのスクールボランティア養成講座に参加して

初めてこの講座の案内を目にしたときは、正直驚きました。港区がNPOと協働してここまで具体的なことを考えているとは思ってもいなかったからです。港区に限らず、行政は新しいことを始めるには時間がかかると思っていました。学校の中でサポートが必要な子どもたちのために何かお手伝いはできないか考えている人はたくさんいます。しかし、学校の中に実際、ボランティアの方たちが入って何かをするということは、なかなか簡単なことではありません。それを、同じNPOとしてテクノシップさんが先陣を切ったことは、素晴らしく非常に意義のある ことだと思いました。

私自身、エッジの事務局での仕事を通して、ディスレクシアだけでなく、中には他の診断名や特別な困難をもっていたりする子どもたちが多い現実を知りました。わからないことも多く、でも何か子どもたちの手助けをしたいという気持ちがあり、是非この講座を受けてみようと思いました。全4回の講座を受け、基礎知識を学び(その間には教育実習もはいります)、将来的にはスクールボランティアとして支援を求めている子どもたちの手助けをする。これが 実現すれば、とても素晴らしいことだと思いました。

先月、第1回目がありました。80名もの受講生で会場は熱気に包まれていました。講義は発達障害概論を明治学院大学の緒方明子先生、テクノシップの富岡理事長、港区の小中学校の現状を心身障害学級設置校でもある六本木中学校、港南小学校の各校長先生が、熱心に お話してくれました。

文部科学省は、特殊教育が特別支援教育へと名称が変わっただけでなく、これからの特別支援教育の在り方として特別な支援を必要とする個々の子どもたちニーズにあった教育の実現を提言しています。しかし、お話しを聞く限り、現状では慢性的な人手不足、個々のニーズをサポートできるだけの知識や経験をもっている指導者も絶対的に不足していて、予算も少ない。そして、先生方も忙しい。これだけ厳しい状況の中で私達に何ができるのかと考えた時、 今回のような行政とNPOの協働という形は、特別支援教育の充実を図るうえでも重要な役割を果た すことができるのではないかと思います。

学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症など小中学校に在籍する子どもたちへの対応も早急に検討されています。エッジも活動拠点の港区からお手伝いができればと考えています。いろんな問題があり、すぐには無理かもしれませんが、私たちの想いが、行政とNPOとの協働に直接響いていくと感じています。学校の中で困難を抱えている子どもたちが必要なサポートを受けられる環境作りの実現のために自分のできることからお手伝いしたいと 思っています。

文責:伊東穂 奈美

npo_edge at 00:00|PermalinkComments(0) 過去の記録 

NO.35 スウェーデンの場合

スウェーデンの国王も王女もディスレクシアで苦しんでいたことはあまり知られていない。グスタフ国王はご自分の名前もきちんと書けなかったので若い頃は国民から心配の声が上がっていたそうだ。
しかし、その後ディスレクシアであると判明し、今では国民に広く敬愛される国王として知られている。さて、そのようなお国柄であるからスウェーデンにおけるディスレクシアの取り組みは特に進んでいる。
先日参加した「認知・知的障害者の社会参加と情報技術」の国際セミナーではスウェーデン・ハンディキャップインスティチュートの方の講演の中でディスレクシアの人たちと情報技術に関してうらやましい限りの報告があった。
詳しくはhttp://www.dinf.ne.jp/にいずれ掲載されますが、内容で一番印象に残ったものは、子ども達が楽しくパソコンやインターネットを使って色々な感覚を刺激して学ぶことのできるプレイ・ルームが学校とは独立して運営されている話であった。
また、通訳を生業をしている者としてこの会議で興味深かったのが、手話通訳(英語、日本語)、同時通訳(英和)のブース、要約筆記(日本語)をプロジェクタでスクリーンに映すなど、色々な形の障害の方たちにとって参加しやすいよう工夫されていたことである。
JAICAの途上国からの障害者リーダー研修に来日しているグループも参加していたため、これだけの機器と専門家をそろえる必要があったのだ。
しかし、手話通訳や要約筆記は一度通訳がひとつの言語からもう一つの言語に直したものを伝えるのでますます伝言ゲーム的に内容がずれて行ってしまい、ハラハラした。特に手話通訳は英語を日本語に通訳した上で日本語の手話を見て英語の手話に直すので時間もかかり、大変だったことだろう。
これだけIT機器やソフトが進んできてもまだまだ改革の余地はあると感じた一日であった。

npo_edge at 00:00|PermalinkComments(0) ニュースレター