36: 創る名無しに見る名無し:2010/09/21(火) 19:05:30 ID:OjCBrvx5
【屋上】
「またここへ来てしまった」
S氏はそうつぶやくと、錆付いたパイプ椅子に腰を下ろした。
ここはとあるビルディングの屋上。さほど高層でもない、どこにでもありそうな場所だ。
彼は悩み事があるとこの場所に来る。いや厳密に言うと来てしまうのだ。

ここが、どこの何ていうビルディングなのかはまったく覚えていないし
また覚えていたとしても、きっと自分の意思ではたどり着けない所なんだと
何となく感じていた。いづれにしてもここがどこであろうとどうでも良かった。

S氏は平凡なサラリーマン、上司からは叱られ部下からは突き上げられ
御多聞にもれない中間管理職であった。
悩み事と言っても、大それたものではなく些細なことが多い。
自分の成果を上司に横取りされたり、データ収集や難交渉など人がやりたがらない
仕事を押し付けられたり。だがS氏は仕事にそれ程不満があるわけではなかった。
彼にとって常にそれが自分の役回りであると思っていたからだ。

いつものように小一時間ここでぼんやりと夜景を眺め、ため息をひとつつくと
そろそろ帰ろうかと腰を上げた。その時、「カチャリ」とドアのノブが回る音がした。
『誰か来る』
勝手に入り込んだ後ろめたさもありS氏は物陰に身を潜めた。
ここには明かりがなく、どんな風体なのか良く見えない。警備員なのか住人なのか…。

すると、
「誰かいますか?いますよね」
『しまった!見られてた!』
いきなり声を掛けられ、S氏は体が硬直し声も出ない。不法侵入という言葉が頭をよぎる。

「いることは判っています。何もしませんから、そのまま私の話を聞いてください」
『?』
「これからもあなたは何度もここに来ることになるでしょう。でも、決して会社を
辞めようなどとは思わないでください。」
誰とも判らぬ人影は勝手に話を続ける。

「今あなたがやっている仕事は、将来きっとあなたの出世の足がかりになります。
どうか、この調子で仕事を続けてください。」
『何なんだこの人は、何で私の事を知っている?もしかして!』
もしかしたら未来の自分がタイムマシンで自分を励ましにやって来たのか?
S氏は、星新一でも思いつきそうにないベタな空想をしてしまった。

「では、これで失礼します。決してあきらめないでくださいね!」
最後にそう言い残すと誰とも判らぬ人影は去っていった。
S氏はしばらく放心状態になっていたが、やがて正気を取り戻した。

「いったい何だったんだ?」
そう言いつつ、なんだか笑いが込み上げてきた。
おかしな事にいつもより元気が出てきたような気がする。
自分の努力を認めてくれる人がいるのはうれしいものだ。
あの人影がどこの誰であれ、とても感謝したい気持ちになった。

それから何日かして、S氏は思いきってある行動に出た。
会社からの帰り道、適当なビルディングの屋上にのぼり、こう話しかけるのだ。
「誰かいますか?いますよね…」

終わり
星


27: ◆PDh25fV0cw :2010/09/15(水) 00:04:28 ID:13fAJv4b
『高度映像社会』
30年前、世界的企業の某社が開発した小型軽量の空間への立体映像化装置は、
開発競争による価格破壊も進み、個人が複数台所有できるまでになっていた。

少し大きい街で上を見れば、立体広告がところせましとならんでいる。

交通の関係で5m以下の立体広告は規制されているのが幸いと言ったところだ。
ここも、大都市の例に漏れず、巨大なうさぎの立体映像が空で熱心にシリアルの宣伝をしている。

「気味の悪いことだ」
元々どがつく田舎の出身で立体映像など無縁の生活をしていたので、未だにこういった映像には慣れない。触れそうなほどリアルな物が空にある、それがどうも納得できないのだ。

周りのやつらは、生まれた頃からあったものなので、この違和感を理解してはもらえない。
「異物か…」
何となくわいて出た言葉に返す者はなく、相変わらずウサギは空で笑っていた。
「おわっ」
ぼんやり上を眺めていたのがいけなかったのだろう、人にぶつかり、壁に向かってよろめいてしまう。
 

壁に手をついて止まろうとするが、壁は手を支えることはなく、体は壁の中に入り込んでしまう。
「いつつ…」
少し皮が剥け血がにじむ手をなめながら、辺りを見回す。
人一人がようやく入れる程度の細い路地。後ろを向くと、入り口は立体映像で偽装されている。
「シークレットドア?」
入り口を映像で偽装する、シークレットドア。ドアに壁の映像を写し隠すことからこの名前がきているらしい。

テーマパークなどで似たような物を見たことがあるが、せいぜい子供だまし程度のものだった。
しかし、これは通路を一つ完全に隠している。それも、完璧なほどに。
これほどの精度の装置ならば相当な値段がするはずだ。

理由は分からないが、誰かが大金を払ってでもこの通路を隠したいと思っている。
得てしてこういった場合は危ないものが隠されている。直ぐに逃げた方がいいだろう。

しかし、俺の考えとは裏腹にいきなり世界が歪む。今まで通路だったところが、
極彩飾の、抽象画に移り変わる。壁も床も無くなり、場所の起点が無くなる。

合わせるべき起点が無くなったことで平衡感覚が失われる。すぐに立っていられなくなり、
吐き気もしてくる。もしかしたらこれが噂で聞いたことがある、映像兵器なのかもしれない。

この状態から精神を守るためか、いきなり意識が失われた。


28: ◆PDh25fV0cw :2010/09/15(水) 00:05:14 ID:13fAJv4b
まず、この状況はなんだろう。起きたらいきなり草原に寝かされていた。
気絶している間に、草原に運ばれたという可能性もあるが、たぶんそれはないだろう。
この場所には草の臭いがしない、それに床はリノリウムのような感触。

つまり、これは立体映像。
「起きたかね」
目の前に茶色のスーツをきた老人が立っている。
「何らかの偶然で我々の秘密通路を見つけてしまったようだね。
我々の手違いで侵入者撃退用の装置が作動して君には迷惑をかけた」


やはり、何らかの施設の通路を隠していたようだ。
「一体ここはどこなんですか?」
老人はその質問に答えず、質問を返してきた。
「君は、ここをどこだと思うかね?」
?何を言っているんだろうか。
「周りを見てみたまえ。どこまでも広がる草原。素敵だとは思わないかね?」

その言葉で少し理解できた。つまり、この映像の元の場所はどこかと聞いているのかも知れない。
だが、映像は映像だ。その場所に移動しているわけではない。

「映像は映像。そう思っているのかね?」
心を見透かされたような言葉にドキリと心臓が跳ねる。

「たしかにこれは映像、まやかしだ。しかし、それを確認するためにはどうすればいい?」
いきなり老人の姿が掻き消える。
「我々が映像を映像として確認するにはどうしたらいい。
現実と変わらないリアルな映像はどうしたら虚像と確認できる」

いきなり後ろにあらわれる老人。声も後ろに移っている。

「触ってみる。これは原始的だが確実な方法だ。しかし、触れられないものはどうすればいい?」
今度は上にあらわれる。
「確認できないなら、それは本物だってことが言いたいのか?」
また消え、今度は最初と同じく真正面にあらわれる。
「その通り、触れられないならばそれはいかに馬鹿げていてもそれは現実の可能性もあるということだ」
老紳士は本当にうれしそうに笑う。何がそんなに嬉しいのだろう。

「さて、私も時間がなくなってきた。君は最初にここはどこか、と聞いたね?今からその答えを示そう」
老紳士が指をパチンと鳴らす。すると、いきなり床が開く。捕まるものも無く、為す術も無く下に落ちていく。
軽い浮遊感のあと、硬い地面に叩きつけられる。
打ちっ放しのコンクリートの床、周りを覆うフェンス、どうやらビルの屋上のようだ。

上を見ると、ピンク色の巨大な何かが見える。
「え?ウサギ?」
そうそれは、さっき見た広告用の巨大ウサギの映像。そう映像のはずだ。
しかし、俺はその映像から落ちてきた。


呆然としていると、元から無かったかのようにウサギは消えてしまう。
「どうなっているんだ……」
『確認できないならそれは本物かもしれない』
さっき自分で言った言葉が頭で繰り返される。
空に浮かんでるウサギは本物で俺は中にはいった。
こんなこと誰が信じてくれるんだろうか。精神障害を疑われて終わりだ。


だが、それでも構わないではないか。
今やこの世界はリアルな虚像に満ちている、その中に実在する虚像があったとしても。

ビルを降り、外に出る。空を見上げると新しい広告が映し出されるところだった。
どうやら、紳士用の靴の広告らしい。俺は苦笑しながら、空に一礼して再び街を歩き始めた。



31:
創る名無しに見る名無し:2010/09/15(水) 23:07:35 ID:RbVW3XCK
>>28
アイディアがすごくいいと思う。
現実→混沌→仮想草原→現実 と、
元いた場所に戻ってるから話が纏まってる感じがしていい。



33:
◆PDh25fV0cw :2010/09/17(金) 01:34:28 ID:9oop0EaF
『王の頷き』
ある国に絶対に賛成しない王さまがいた。
大臣がどんなにいい案を持っていっても首を横に振り、美女が誘惑しても決して流されない。


そんなことをしていれば、国が運営できないものだが、
しばらくすると皆が持ってきた案より優れたものを、
王自身が考えついてしまうので、皆は文句も言えず国もうまく回っていた。


しかし、大臣たちは面白くない。かといって、王に歯向かう気もない。
王としては歴代でも1、2を争う名君なのだ。
しかし、大臣たちは王が皆の意見に賛成する場面をどうしても見てみたかった。

そんなある日、ある男が王の謁見にやって来た。

王は民衆の知恵を借りるために、様々な国民と謁見を行っている。
この男もそういった一人だった。基本的には、王との謁見は1対1で行われる。
これは大勢の前では気後れするものもあるだろうという王の配慮だった。
しかし、王の安全のため何人かの兵士は配備されている。


さて、その謁見をおこなっていた男は王にある紙を渡す。
その様子を窓の奥から偶然見ていた見ていた大臣は驚いた。王はなんと首を縦に振ったのだ。

大臣はあの男が渡した手紙の内容を知りたくて仕方がなかった。
しかし、王に直接聞くわけにもいかないだろう。わざとではないにしろ、盗み見たようなものだからだ。

いったいどんなに素晴らしい内容だったのだろう。最高の統治方法、最高のレシピ、想像は膨らむ。
 

大臣は謁見を管理する部門に立ち寄り、男の素性を聞いた。
男はどうも街で服屋を営む仕立て屋らしい。大臣は男に使いをやり内密で自宅に呼び出した。
なぜ呼び出されたのかわからないのか、少し緊張気味の男に大臣は聞いた。
「お前はどんな内容の進言をしたのだ?内容を言えばこの金貨をやろう」
そう言って家が二つは建つであろう量の金貨を男の前においた。

それに驚いた男は
「私は王の服の新しいデザインを、献上に来ただけです。王が新しい服を考えていると、掲示があったので。それだけです、決して怪しいものではありません。そんな金貨を貰うほどのものではありませんよ」

男は慌てて答えた。
「別に君をどうにかしたいわけじゃないさ。ただ、私は王がなぜ頷いたのかを知りたかっただけなんだよ」
それを聞いて多少安心したのか、男は冷静になる。
「そうなんですか。しかし大臣様が見た、王が首を振る動作は、肯定をする動作ではないでしょうね。今着ている服をを確認した動作を大臣様が勘違いしただけでしょう」
そう言って男は金貨を貰うのを辞退した。
「そうか。それならば、お前を宮廷専属の仕立て人として採用する」
「え?なんででしょうか?」
男は狼狽えた。

王の動作の謎も勘違いとわかったのだ、一介の街の仕立て屋である自分が
いきなり宮廷専属なんて名誉職取り立てられるなんて、わけがわからない。

「確かに、王が首を縦に振ったのは、服を確認するためかもしれない。
しかし、あの後、王は首を横に振らなかった。君のデザインが優れていたためだ。
それに、これだけの金貨を前にして誠実に答えたのも良い。
私は誠実な人間は好きだ、それは王もおなじであろう」

そう大臣は答えた。

大臣の頼みを聞き入れた男はこの後、
王や王の側近のために数々の素晴らしい服を仕立てるが、それはまた別のお話だ。




40:
創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 12:25:43 ID:ePZQFWsi
【最強の兵器】

F博士の研究室

「これでよし、完成じゃ」
「やりましたね博士!と言っても僕はこの装置のことをよく教えてもらってませんが…」
「そうじゃったな。完成する前にこの装置の情報が漏れては命が危なかったのでな。すまんかった」
「もしや兵器…ですか?」
「まあそんなもんじゃ。この装置はミニブラックホールを発生させて一瞬に周囲の物をすべて飲み込んでしまう」
「それはすごい!」
「そこまで知らんかったとは。君を助手に採用して正解だったようじゃ」
「お褒めに預かり恐縮です。ところでいったいどれくらいの範囲まで有効なのですか?」
「それは設定次第。半径1メートルから1万3千キロ以上」
「それでは地球も一飲みじゃないですか」
「そういう事になるな」
「しかし博士、もしこれが悪人の手に渡ったら大変ですね」
「そう思うじゃろうが、この装置の最大のポイントはそこなのじゃ」
「どういう事ですか?」
「ブラックホールの中心がこの装置だからじゃよ」
「と言うと」
「…もしや君はかつてどこかで頭をぶつけたことがあるのでは?」
「ええ、小学校の頃に1度」
「そうじゃろうな。打ち所が悪かったのか良かったのか。まあ良い、この装置がブラックホールの中心に
 あるということは、この装置もろとも飲み込まれてしまうということなのじゃよ」
「なるほど、つまりこの装置を作動させた人間も消えてしまうわけですね。しかし遠隔操作で…」
「この装置は所有者自身が自らの手で操作した時だけ作動すようにプログラミングしてある」
「自爆テロならぬ、自滅テロですか…ぷぷっ」
「笑い事ではない」
「でも何だか売れそうにないですね」
「売るつもりはない。進呈するのじゃ」
「誰にですか?」
「この世で最も不甲斐無く、心配性で、臆病で、周囲の国からも馬鹿にされている…」
「わが国の国王!?まさかこれで消えていなくなれと?」
「いや、国王がこの装置を持っていることを周辺国にアピールするのじゃよ」
「あそうか、周辺国が下手な行動に出れば、いつ何時あの臆病国王がスイッチを押すかもしれないと…」
「今度はいやに察しがいいな。その通り、だからこれはわが国にとって最強の兵器になる」
「でも、あの国王のことですよ。ちょっと自信喪失しただけで使ってしまいそうだ」
「それはさすがに側近が止めるじゃろうが、まあわしもそう長くはないその時はあきらめよう」
「博士!」

次の日、博士は国王に謁見し予定通りその装置を献上することができた。
世界的に有名な大科学者F博士の発明とあって、すぐさま新兵器として採用され
その情報は瞬く間に周辺国に伝えられた。その抑止力たるや、言うまでもない。
「これでしばらくの間、この国も安泰じゃろう」

その後博士は失踪した。どうしても隠しておかねばならない秘密があったからだ。
実はその装置は空っぽで、ブラックホールなどまったくのハッタリだったのだ。

終わり



42:
創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 14:16:30 ID:aHmk+CPA
面白かったです
「もしや君はかつてどこかで頭をぶつけたことがあるのでは?」って
F博士のきつい冗談ww



45:
創る名無しに見る名無し:2010/09/23(木) 12:51:48 ID:08rYe5hE
【移植】

「どうかね、その後の調子は」
N医師はやさしく青年に語りかけた。
「ええ、だいぶ良くなりました。自分で食事も食べれるようになりました」
「うむ、やっぱりちゃんと口から栄養を摂らないと早く回復できんからね」
「でも…」
「どこかに痛みでも?」
「いえ痛みはないんですけど、なんとなく…その…」
「なんとなく?」
「自分が自分でないような…」
「ああ、それならしばらくすれば段々と慣れてくるはずだよ。移植患者にはよくあることだよ」
「よくあること?」
「移植された患者さんは最初のうち、漠然とした違和感を訴える。体に他人の臓器を
 入れたことによる精神的なものなんだがね」
「そんなもんでしょうか」
「ああ、そんなもんだよ。では、しっかりと体力をつけて早く退院できるようにしなさい」
「ありがとうございます、先生」

N医師はそんな会話をした後で、青年の両親が待機する部屋へと向かった。

「先生、いかがでしょうか」
「ええ、まだ記憶は戻っていないようですが順調に回復されていますよ」
「ですが、あの子は病室で話をするたびに、何だか自分じゃない…と」
「私にも同じ事をおっしゃいましたよ。いづれ理解できるようになると思いますが」
「実は、私達もなかなかなじめなくて…」

「無理もないでしょうな。あの大事故で奇跡的に無傷なのは彼の脳だけだったのですから」

終わり



55:
創る名無しに見る名無し:2010/09/25(土) 15:57:28 ID:RoYSIo+K
【緊急避難】

遥か彼方のS星からこれまた遥か彼方のN星へ航行する
大移民団を乗せた巨大宇宙船。
機械の故障により発生した非常事態に最早猶予はなかった。
当面の危機回避の為には何としても近隣の恒星を見つける必要があった。

「船長、あの恒星までが最短距離のようです」
「周辺の惑星への影響は?」
「おそらく皆無と思われます」
「そうか、では早速作業に取り掛かってくれ」

「間もなく最接近!」
「準備はまだか!」
「準備完了しました!」
「よしっ、発射!」
「発射!」

巨大宇宙船から巨大なカプセルが勢いよく放出された。

「これでしばらくは安心ですね、船長」
「ああ、運良く処理できる所が見つかって何よりだったよ」
「へたに処分すると最近では宇宙環境監視団体がうるさいですからね」
「次の恒星まではまだ遠い、早急に故障した『ゴミ焼却炉』の修理を急いでくれ!」
「はい船長!」

その頃、地球では…

『太陽に巨大黒点発生!天変地異の前兆か!』

終わり



67:
創る名無しに見る名無し:2010/09/26(日) 14:43:39 ID:EuUadzBO
【物質記憶薬】

F博士の研究室

「よしっ、これで完成じゃ」
「博士、今度の発明は何ですか?」
「キミにはこれが発明品に見えるのかね?」
「いいえ、ただのハンバーグに見えます」
「そうじゃろう。どうもキミはわしが『完成じゃ』と言うと必ず何かを発明したと思うようじゃな」
「一種の職業病ですかね」
「わっはっはっ!すまんすまん、本当はこれもわしの発明品じゃ」
「えっ?どこから見てもハンバーグですが」
「これ自体は本物のハンバーグなのじゃが…」
そう言うとF博士はナイフでハンバーグを二つに切り分けた。
「食べるんですね」
「待て待て、早まるでない」
しばらくすると半分のハンバーグがそれぞれ1つのハンバーグにみるみる形を変えた。
「わっこれはすごい2つになった!これならどんどん数を増やせますよね」
「このハンバーグにふりかけた薬品が元の形を記憶し、まったく同じ物質で再形成するのじゃ」
「言うならば物質記憶薬ですね」
「その通り」
「では、いただきます」
「どうぞ召し上がれ」
「いえ、この薬品をいただくのです」
「何じゃと?」
「博士、もうこんな貧乏研究所が嫌になりました。博士はいつも気前よく発明品を手放し
 儲けが少ないばかりか、私の給料だって上がりゃしない!」
「それはすまんかった。考え直す気はないか?給料は上げれんが…」
「考え直す気はありません、この薬品で財産を増やして大儲けしますよ。ではさようなら!」

「困ったもんじゃ、気の早いやつで。あの薬品が記憶できるのはハンバーグだけなんじゃが…
 まあハンバーガーショップでも開けば、当分は今よりましな生活ができるかも知れんがのう」

終わり



70:
創る名無しに見る名無し:2010/09/27(月) 22:55:40 ID:7Zzcsmbu
助手の短絡的な性格が生きてるオチだね
最後にひっくり返すところが星っぽい



71:
創る名無しに見る名無し:2010/09/28(火) 11:34:27 ID:b1NK+bfZ
【物質記憶薬(後日談)】

F博士の研究室

「博士っ!」
「誰じゃ、いきなり入ってきて…おおキミか。何じゃね今日は、ハンバーガーショップ開店の宣伝かね?」
「とんだ失敗作をつかませましたね」
「失敗作?」
「あの日家に帰ってさっそく試してみたんですよ、あの物質記憶薬を…チクワで!そしたら…」
「そしたら?」
「チクワからチクワ形のハンバーグが生えてきたじゃないですか!」
「そうじゃろうな」
「何でそれを先に言ってくれなかったんですか!」
「言う前にキミが出て行ってしまったからのう」
「しかも、それをやけ食いしたらおなかの中でどんどん増えていって危うく死ぬところでした!」
「なるほど…そこまでは気が付かなかった。何せわしはハンバーグが嫌いでのう」
「じゃ何で実験材料にハンバーグなんか使ったんですか」
「キミの大好物じゃからな」
「最初から私が実験台だったんですね!」
「まあまあ、とりあえず助かって良かった」
「良くないです!家のトイレが、吐き出したチクワハンバーグでつまってしまったんですよ!」
「で、トイレを貸せと…」
「違います!」
「では、何じゃね?」
「博士!こうなったらこの薬品を完成させるしかありません!」
「と言う事は?」
「もう一度雇ってくれませんか?」
「初めからそう言えば良いのに…」

終わり



72:
創る名無しに見る名無し:2010/09/28(火) 17:38:24 ID:1FPbd0Se
これはwwwww
こうゆうの好きだwww



77:
創る名無しに見る名無し:2010/10/02(土) 17:49:59 ID:s53y1xEw
【天国の控室】

ここは通称「天国の控室」、正式名称は「国立終末介護医療センター」である。
比較的裕福で身寄りの少ない重病患者が終の棲家として選択する医療機関だ。
ただ、すでに危篤状態になっている患者はここに入院することは無い。

なぜなら、寿命を全うするまでの期間たとえそれが数日であろうと、本人の意思で
至福の時間を過ごす事を目的としているからだ。
人によっては数年間の長期入院になる事もある。幸せな時間を1日でも多く
過ごしたいという欲求がその命を永らえるのかもしれない。
N氏もそんな患者の一人であった。

「Yさん、ちょっとこちらへ来てくれないか」
「はいN様」
そう応えたのは、N氏が入院してからずっと付きっ切りで介護してきたY看護婦だった。
「もうどれくらいになるかな…」
「約4年7ヶ月になりますわ。正しくは4年6ヶ月と28日8時間46分…」
「ははは、君はいつも正確無比だな」
「恐れ入りますN様」
「私にはもう近々お迎えが来る。君には本当に世話になった」
「そんな気の弱いことをおっしゃってはいけませんわ」
「いや、分かるんだよ自分の事は」
「N様がそんな気持ちになってしまわれると、私が担当の先生に叱られます」
「そんな医者、私が怒鳴りつけてやる!わっはっは」
「うふふ…患者様から気を使われるなんて、看護婦失格ですわね」

「ところで、私が死んでからの事なんだが…私にはこれまで苦労の末築いた財産がある
 それを君に相続してもらうわけにはいかんだろうか?」
「唐突なお話ですのね。しかし私には財産をいただく権利はございません。それに
 N様もご存知のように…」
「そう、君はロボットだ。だがロボットが相続してはいけない法律はないだろう」
「いいえN様、法律の問題ではなくて、私にとってはその財産が無意味なのですわ」
「そうなのか、私の財産は君には何の価値も無いということなのか…」
「申し訳ございません、私には物の価値を認識するデータがプログラムされていないのです」
「…確かにな、金や不動産や贅沢品は人の欲望が造り上げた物。君には無用か…」
「ご好意には感謝いたします」

「Yさん、今だから言えるが、私は起業には成功したが良い家庭は築けなかった。
 家族ほったらかしで仕事に没頭し、愛想をつかした妻は一人息子を連れて家を出て行った」
「そうだったのですか」
「だが、今私はとても幸せだ。君のお陰で最高の死を迎えられそうだよ」


78: 創る名無しに見る名無し:2010/10/02(土) 17:53:22 ID:s53y1xEw
>>77つづき

その時、一人の男性が病室に入ってきた。

「お、お前は…」
「父さん、久しぶりです」
「今更名乗りをあげても、お前達には財産はやらんぞ!」
「父さん、母さんはもう5年前にここで亡くなりました。最期まで父さんを愛していましたよ」
「そ…そんな人情話は通用せん!」
「僕は財産が欲しくてここに来たんじゃありません。本当のことをお話しに来たのです」
「何だと?」
「母さんは家を出たあと、大変な苦労をして僕を育ててくれ、大学にまで入れてくれました。
 お陰で僕は思う存分自分の好きなロボット工学の勉強をすることができました」
「ロボット工学…」
「そうです。実は、この施設の介護ロボットはすべて僕が開発したものなんです」
「では、このYさんも…」
「ええ、今まではロックがかかっていたのでお話できませんでした。申し訳ございません」
「父さんは先程、彼女のお陰で幸せだと言っていましたね。どうしてだか分かりますか?」
「ああ、彼女は親切でよく気が利いて私の好みも分かってくれていて、まるで…」
「まるで?」
「…かつての私の妻のように…!」
「そうです、Yには僕の覚えている限りの母さんの性格やしぐさをプログラミングしてあります。
 ただ、父さんの好みまでは僕は知りませんが」
「そ…そうだったのか」

「母さんは本当に最期まで父さんを愛していました。これを聞いてください」

息子はY看護婦の耳たぶにそっと触れた。

「お父さん、お久しぶりです。もう、お互いに昔の事になってしまいましたね。
 あの時は突然出て行ってしまってごめんなさい。ご苦労されたでしょうね。」

Y看護婦はN氏の妻の声で話し続ける。

「お父さんのお仕事の邪魔になってはいけない。私達が出て行かなければいけないって
 勝手に思い込んでしまって。でも大成功されたんですものこれで良かったんだと思います。
 私が先に逝くことになってしまったけれど、本当に愛していました、さようなら…」

その後、幾日かしてN氏は天寿を全うしこの世を去った。
病室には1通のメモ書きがサインを添えて残してあった。

『遺言 私Nの全財産を Y看護婦の開発者に贈与する』

終わり



80:
創る名無しに見る名無し:2010/10/02(土) 23:06:21 ID:2iTdzx3P
いい話だな



94:
創る名無しに見る名無し:2010/10/09(土) 22:22:08 ID:d+ojtWDQ
【神様のプレゼント】
その部屋には、一人の男が一日中酒を飲んで過ごしていた。

とは言っても、今日は休日ではない。男はかなり前から会社には行っていなかった。
普通は、すぐにお金に困るはずだが、男はそうならなかった。
彼は鞄を持っていた。それは少し大きめでの色あせた、時代を感じさせる鞄だった。

もう一年ほど前になるだろうか。男がまだ会社にきちんと勤めていた頃。
彼はとても真面目な人物だった。真面目に働き、誤魔化しをしない。
嫌がられている仕事を進んでやる。良い人の良い所ばかりを集めたような人物だった。


その人の良さが認められて、男は異例の昇進をした。もちろん、昇進してもきちんと働いた。
むしろ責任のある地位ということで、仕事にかける熱心さはさらに強くなった。
それからしばらくした頃である。男がベッドで寝ていると、夢の中で声を聞いた。

「君は真面目でしっかりした人物だ。そんな君にちょっとしたプレゼントをあげよう」
「あなたは一体……」
「うむ。名乗っても分かるまいが、強いて言えばお前たちの言うところの神だ」
「か、神様ですって」
「そうだ。そしてプレゼントというのは、この鞄だ」
「鞄ですか……」
「もちろんただの鞄ではない。なんでも取り出せる鞄だ」
「と、言うと」
「欲しいと思ったものを思い浮かべながら手を入れると、
なんでも出てくるのだ。忙しいお前さんにはちょうどいいだろう」

「なんというすばらしい鞄でしょう」
「うむ。ただし一つ注意してくれよ。その鞄は……」
 その時、ベッドから転がり落ちて、男は目が覚めた。
「なんだ、夢か。しかしあんな鞄が本当にあったら便利だろうな……」
 しかし、男はそこで言葉を詰まらせた。
 部屋の中で先ほど神様が言っていたらしい鞄があったのだ。
「や、するとさっきのは本当のことだったのか」
 彼はおそるおそる鞄に手を入れた。酒を思い浮かべながら。
 最初は何もなかったはずの鞄に、手ごたえがあった。
 引き抜いてみると、まさしく酒が出てきた。しかも、思い浮べた通りの高級品だった。
 それを飲む。確かに本物だ。ということは、この鞄も本物ということになる。
 かくして、男は会社に行かなくなった。
 いつでも好きな物が好きなだけ手に入るのだ。働いてなんになる。
「まさか遊んで暮らすのがこんなにおもしろいとはなあ。今まで忙しく働いてきたのがばからしくなってきたぞ」
 最初こそ、同僚やら社長やらが男の家に訪ねてきたものの、彼が会社を辞めると言ってからは全く来なくなった。
 もちろん鞄のことは誰にも言わなかったし、誰にも見せなかった。
「そういえば神様が何か注意しようとしていたけど、なんのことだったのだろう。
きっとこの鞄を自慢するなと言いたかったんだろう。誰も欲しいと言うに決まっている」

腹が空けば鞄からあらゆる料理を取りだして食べる。
暇になれば鞄はあらゆる娯楽を提供してくれた。


まさに至れり尽くせりの生活だった。
今ではこの部屋に来るのは、部屋代を取りに来る大家くらいのものだった。
そんなときも鞄からお金を出せばいい。


男は完全に働く気が失せていた。
そんな生活が続いていたある日。
ノックの音がした。今日は部屋代の日だったかなと思いながら、男は鞄からお金を取り出そうとした。

蓄えなどあるはずがない。いつでも何でも手に入るのだから。
しかし、紙は紙でも紙幣ではなく、ただの紙が一枚だけ出てきた。
よく見ると、このような文章が書かれていた。

毎度ながら、ご利用ありがとうございます。
初使用から一年が経ちましたので、本日を決算日とさせていただきます。

あなたは支出と収入のバランスが悪く、すでに貯金は底をついております。
それでも使用されたため、多額の借金が発生しております。次回の使用は借金を片付けてから……
 

そしてその下には、信じられない額の数字が書き込まれていた。
「や、この鞄はなんでも無限に出せる鞄ではなく、神様の買い物道具だったのだな」
借金を返さないといけないからか、もはや鞄に手を入れても、何も出てこなかった。



108:
創る名無しに見る名無し:2010/10/11(月) 10:21:03 ID:k/h3yTWi
 『戦争のある風景』

 今は何時なのか、ここはどこなのか、そんなことは分からない。
 ただ一つ分かっていること、それは毎日が戦争であるということ。
 生きるために、戦わなければならない。戦わなければ死ぬだけだ。
 そしてこの戦争には終わりがない。もし終わりがあるとすれば、
 それは私が死ぬ時だ。

 私は何時生まれたのか記憶がない。もっとも、それは誰だって同じだろう。
 両親の顔は覚えていない。兄弟はたくさんいた。
 しかしおそらくもうみんな戦死しているだろう。

 私はこれまで無数の仲間が死んでいく様子をこの目で見てきた。
 完全に油断してやられる者、敵から長時間必死で逃げ惑った末に
 結局はやられてしまった者などどれも目を覆いたくなる光景だった。
 やられた者は皆例外なく白い布で覆われた。
 なぜなのかは分からない。敵なりの弔いなのかもしれない。

 最近はこれまでの旧式武器とともに、敵は最新式毒ガスを使ってくるようだ。
 ガスを吸ってしまうと意識が遠くなっていき、やがて死に至る。おそろしい兵器だ。
 だが旧式武器でやられるよりもこっちでやられる方が案外楽なのかもしれない。

 もうずっと何も口にしていない。動くのも辛くなってきた。
 私は意を決して敵に飛び込み、食料を盗むことにした。
 なーに、心配は要らない。慣れている。私は戦争をするために生まれてきた
 ようなものだから。幸い敵は気付いていない。私はありったけの食料を盗み
 その場で食らい尽くした。やっぱり旨い。

 これであと3日は食わなくても平気だろう。
 急いで見つからないようにその場を去ろうとした時だった。
 「パーン」という乾いた音ともに鈍い痛みが走った。
 とうとう私もやられたらしい。ついに私も死ぬのか… 戦争は終わりだ…。

 薄れ行く意識の中私にも白い布が被せられようとしている。
 視界が遮られる直前、敵の仕留めた、という優越感に浸る顔と同時に
 旧式武器についてしまった血を「汚らしい」という目でふき取る敵の顔が見えた。

 しかし、全くおかしなやつらだ…
 武器についた血は確かに私の体から吹き出たものだが、
 その血はまぎれもなくやつらのものであるというのに…。



109:
創る名無しに見る名無し:2010/10/12(火) 17:48:47 ID:GQIhhOLb
『含み笑い』

今日は友人と飲みに行く約束をしていた。約束の6時までまだちょっと時間がある。
私は寝転がりながら暇つぶしに1歳半になる息子を横においてスポーツ紙を読んでいた。

息子は可愛い。1歳半にしては表情が豊かな気がするのはきっと親バカだろう。
最近はキャッキャッと笑うだけでなくニタニタ笑うようになってきた。そう、また今笑った。
ちょうどいい時間になり私は息子に行ってくるよと言って部屋を出た。
息子はキャッキャッと笑っている。

行きつけの店でビールを飲みながら友人と話していると息子の話になった。
「お前の息子ももうすぐ2歳か。可愛いだろう。」
「ああ、可愛いね。ずっとこれ位の歳で止まってて欲しい」
「親としては心配だよな。この子はどんな一生を送るのか」
「そうだな。タイムマシーンでもありゃ未来に行って確かめられるのにな。
 近い将来もうできたりしてな」
「タイムマシーンなんてできてるわけねーよ。
 そんなもんできてたらもうとっくに未来人がきてるだろーが」
「小学生みたいな話題だな(笑)ま、たまにはいいか。でもタイムマシーンができたら
 俺は過去に行きたいね。ただし…」
「ただし、今の記憶をそのままにして過去に戻りたい だろ(笑)?」
「そう(笑) それで競馬当てたり幼稚園の先生にどさくさにまぎれて…」

あっ…

ふと息子のさっきのニタニタした顔を思い出した。
ちょうどスポーツ紙の「競馬欄」と「ちょっとエッチな欄」の時だったような気がした…。



129:
創る名無しに見る名無し:2010/10/19(火) 17:14:37 ID:n1l3XjMC
【釣り】

「どうですか、釣れますか?」
「いえ、今糸をたらしたばかりなんですよ」
「本命は?」
「あの底の方に群れてるのが見えますでしょ」
「ああ…あれですか」

「おっ、引いてますよ!」
「…」
「合わせないんですか」
「ええ、向こう合わせで」
「引きますねぇ」
「群れが一気に寄ってきたみたいで…」
「あっ!」
「…」
「切れてしまいましたね、もう少し太い糸になさってはいかがですか?」
「これが精一杯でしてね…さてと」
「え?もうお引き上げですか」
「ええ、これは1回限りなんですよ」

そう仰るとお釈迦様はくるくると蜘蛛の糸をお仕舞いになったのでした。

終わり



139:
創る名無しに見る名無し:2010/10/21(木) 19:16:55 ID:0MZ+TgiD
『とある装置』

ある日、アール博士の研究所に、友人のエヌ氏が招かれた。
エヌ氏は研究所内を見て回り、そしてある部屋にたどり着いた。エヌ氏は不思議そうな表情を浮かべて言う。
「この部屋にはレバーしかないようですが」
「はい、レバーだけです」
「このレバーを引くと何が起こるんですか」
「何だと思いますか」
「うーむ。わかりませんなあ」
「もし当てることができたなら、大金を差し上げましょう」
「それは本当ですか。では当てて見せましょう。うむむ……」
 エヌ氏は腕を組み、悩んだ。悩んだ末に出した結論は、「部屋拡充装置」。
 しかし、アール博士は首を横に振った。
「残念ですな。ハズレです」
 だが、エヌ氏は悔しそうな素振りを一切見せなかった。
「博士の発明品は奇抜ですからなあ。考えるだけ時間の無駄だったかもしれません。で、正解は何なのですか」
「それでは、お教えしましょう。なんと、これは幽霊発生装置なのです」
「ほお、実に面白いですな。ところで、この装置はどういった時に使うのですか」
「心霊屋敷や、あまり人を近づけたくないような廃墟での使用が目的ですかな」
「なるほど。既に商用化を見越していらっしゃるんですね」
「ただ、まだ実験さえしていない状況なので、実際にどのようになるのかは神のみぞ知るということなのです」
「では博士、ここは一つ私で実験してみてはいかがですか」
「なに。客人を実験に巻き込む訳にはいきません」
「いいじゃないですか。客人たっての希望なんですから」
 博士は腕組みをし、顔をしかめた。
「では、約束して下さい。何が起こっても自己責任ということで……。無論、万一何かが起これば、我々が全力であなたを助けます」
「分かりました。いやはや、博士の実験台になれるとは真に光栄ですなあ」
 エヌ氏は、まるで子供のように目を輝かせた。
「では、私は部屋の外で助手とモニターしています。準備が出来次第、お声をかけますので……。それと、この懐中電灯をお持ち下さい。部屋を真っ暗にするので」
 かくして、実験の準備がなされた。
 エヌ氏は期待に胸を膨らませ、懐中電灯を片手に今か今かと待ち構えていた。
「準備が完了しました。ではそのレバーを下に引いて下さい」
 それきたと言わんばかりに、エヌ氏はさっとレバーを引いた。すると、部屋が真っ暗になり、どうも気味の悪い雰囲気が漂い始める。
「む、何かの気配がするぞ。早速、幽霊のお出ましか」
 懐中電灯を四方に向ける。が、まだ何も出てはこない。
 ふと、背筋が寒くなった。
「コロシテヤル……」
 突然の冷ややかな声。反射的に後ろを振り向くエヌ氏。
「うわああああ!」
 エヌ氏は恐怖のあまり絶叫し、その場で倒れて気絶してしまった。
 これを別室のモニター越しに見ていたアール博士と助手が、急いで実験室に駆け込み、エヌ氏に駆け寄った。
「おい、しっかりするんだ。おい」
 その声に、エヌ氏は意識を取り戻した。
「う……は、博士……」
「大丈夫かね」
「いえ、まさかあんなリアルなものだと思いませんでした。博士の実験の凄さを身をもって知りましたよ……」
 アール博士に頭を抱えられながら、淡々と話すエヌ氏。
「あの髪の長い女。殺してやるなんて言って、私のことを物凄い形相で睨み付けて……今思い出すだけでもおぞましい。あまりにも現実的で、予想だにしないリアルさだったので、この有り様です。本当にすみませんでした」
 それを聞いたアール博士と助手は、顔を見合わせた。
「どうかしたのですか」
「いやね。さっきの実験、実は失敗だったのです」
「はい、私のせいで……」
「いえ、あなたのせいではありません」
 涙ぐむエヌ氏を見つめながら、アール博士は続けた。
「実は、システムがエラーをはき、装置は起動すらしていなかったのです。それに、そのような女性はプログラムには含まれていません。あなたは、きっと悪霊か何かに取り憑かれているのでしょう。一度、祈祷師に見てもらった方がいい」



141:
灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/10/21(木) 23:27:49 ID:P1D71/lJ
>>139
起承転結の流れが良くてスムーズに読めました。
特にエヌ博士の言動で星新一の作品を読んでいるように錯覚しました。



168:
◆PDh25fV0cw :2010/11/07(日) 23:20:18 ID:5DG5VIDJ
『生まれ変わり』

人の気配のない、暗い森。月や星は雲におおわれ、光源となるものは青年の持つ小さな懐中電灯だけ。
自殺の名所であるこの森に、青年がやってきたのはやはり自分の人生を絶つためだった。
ナップサックから縄を取り出し、太い木の枝に結ぶ。

これで後は首をつるだけとなったとき、後ろから小さな物音がする。
驚いて振り返ると、小さな白いウサギが佇んでいる。
「あんたも自殺するのかい?」
ウサギは青年にいきなり話しかけた。青年はいきなりのことに面をくらい、声も出ずただただ呆然とした。

しかし、自分が狂っていたとしても後は死ぬだけだ、何の支障もない。
最後に話したのがウサギというのも面白いではないか。
何の面白みのない人生だったが、最後に面白いものに出会えたものだ、と自分を納得させた。

「ウサギがしゃべるとは、なんとも奇妙なことがあるものだ」
「それはそうでしょう、私は元々人間だからな。2年ほど前にここで自殺をした者だよ」
「なるほど、転生というものですか。ということは、私も死ねば何かに転生するということですか」
「そういうことになるな」
青年はウサギの前に座り、少し考える。

青年は虫が嫌いだ。もし虫に転生することを考えただけでも恐ろしい。
できれば目の前のウサギのようなものになりたい。

「転生をあやつることはできないのか?」
「転生は人生の残量に左右されるそうだ。君はまだ若いから人間になるかもな」
冗談ではない、人間として暮らすことがいやで死ぬのだ、自殺して人間に転生したら意味がない。
 

「どうにかならないものなんですか?」
「人間に死後の世界はいじれないさ、諦めることさ」
しかし、そう簡単に諦められるものでもない。何度も何度もウサギに頼み込む。
はたから見ればずいぶん滑稽な光景である。


「そこまで言うのならしょうがない。森の奥に賢者がいるから少し待っていてもらえるかな」
そういって森の中に消えるウサギ。しばらくすると、小さな瓶を二つ持って帰ってくる。
液体が入ったものが一つ、紙が入ったものが1つ。
「これを飲めば転生せずに死ぬことができる、もう一つが死神の契約書だよ」
ウサギは紫色の液体と、見たことの無い文字が書かれた紙とペンを渡す。
「死神の契約書とは、すごい賢者もいたものだ」
契約書に名前を入れ、薬を開ける。特になんの匂いもしてこない。
「本当に後悔しないかい?」
「いいや、しないさ。自分で死ぬのだから」
ぐいっと一気に飲み干す青年。しばらくすると、気を失い地面に倒れ込む。

「やれやれ、薬を飲んだか」
森の奥から一人の男が現れる。老人にも、中年にも見える、なんとも不思議な感じの男だ。
彼は足元のウサギの機械を止めると、青年を担いで森の奥に向かう。
そして、森の奥の隠し扉を抜けそこに青年を置く。
「やれやれ、こんなと年齢で死のうとするとは勿体ない」
男がつぶやく。すると声に反応したのか、青年が目を覚ます。

「ん?ここはどこですか?」
男は大仰に答えた。
「ここは地獄だよ。転生せずに死んだのだ、
ここで労働をしてもらうことになる。契約書にサインはしたのだろう」

「なんと、そういう契約書だったのか。これなら転生した方がましだった」
嘆く青年。これで青年は、”死ぬまで”ここで働くことになる。

死後の世界から逃げ出そうと考える人間もいないだろう。

死後の世界というものは、便利なものだ。



170:
創る名無しに見る名無し:2010/11/09(火) 18:34:17 ID:a2tlF8PN
>>168
これは面白い。
オチを理解するのに少し時間がかかりましたが、星さん的なオチで良かったと思います。



176:
94:2010/11/13(土) 22:48:11 ID:0eQaY+h9
すごい久しぶりにショートショートの新作を考えた。
授業中に書いた。クオリティは保証しないんだぜ!
【会員証】

その飲食店は、目立たない路地にひっそりと建っていた。
決して大きい店ではないが、それがかえって知る人ぞ知る名店といった印象を与えた。

しかしその店を知っていても、食事をすることは容易なことではなかった。
その店で食事をするには、会員証が必要だったのである。

ある日、男がこの店に立ち寄った。
「ここで食事ができるか」
「はい。ですが、普通の方はご遠慮させていただいております。会員証をお持ちの会員でなければ」
「なんだ、この店は会員制だったのか」
「さようでございます」
「では会員になるとしよう」
「無理でございます」
 それを聞いて、男は怪訝そうな表情を浮かべた。

「会員でなければ食事ができない。しかし肝心の、その会員になれないとは。おかしい。矛盾しているぞ」
「いえ、そう早合点なされては、困りますな。つまり会員証の数をそれほど多く作ってはいないのです。会員の人数がとても少ないわけですな」
「そんなことで儲かるのか」
「ええ。おかげさまでね。会員の方はみな、大金を置いていっていただけるので」
「なるほど、大金を払うだけの価値がある料理、というわけだな」
「そうなりますかな」
「仕方ない。出直そう」
 そう言って、男は帰っていった。

数日後、店に再び男が現れた。
「どうだね、これで食事ができるだろう」
 男が出したのは、高級感のある金色のカードだった。
「たしかに、我が店の会員証ですな。どうなされました」
「大金をはたいて、会員の者から買い上げたのだ。きちんと会員の権利を譲るとの証明もある」
「証明書の証明というわけですな。よろしゅうございます。しばらくお待ちください」

店主がいったん、店の奥へと消え、しばらくしてから戻ってきた。
ただし、店主の手にあったのは、料理ではなく、拳銃だった。
「なんの冗談だ、わたしは食事をしにきたのだ。冗談につきあうつもりはないぞ」
「いえ、これが商売なのです。普通に会員を作ったのでは儲けはそうでません。しかし、料理がうまいとちらつかせる。つまりえさですな。そして、あなたのような方が大金を払ってまで会員証を手に入れるわけです」

そう言って、店主はポケットから男が持っているのと同じカードを取り出した。
「あ、つまりわたしに会員証を売ったやつ。あいつもぐるだったのだな。よくもだましてくれたな」
「いえ、わたしは嘘は申していません。しかし、あえて申し上げるなら……」

店主はなれた手つきで拳銃の引き金を引いた。
「わたしは本当は料理が下手なのです」



179:
創る名無しに見る名無し:2010/11/14(日) 12:50:49 ID:tbCIzMal
>>176
すごく面白い!授業中に書いたクオリティとは思えないですね
言い回しなども星さんらしくて、オチも素晴らしいものだと思いました。



154:創る名無しに見る名無し:2010/10/26(火) 20:59:07 ID:ADYnzsnM
『新しい発明品』

エル博士が新しい発明品を開発したということで、それを世間に公表すべく記者たちが集められた。
「博士、今回開発されたものは、一体どのようなものなんでしょうか」
「うむ。この度、私が開発したものはこれである」
 そう言うと博士は、リモコン操作で壁一面を覆っていたカーテンを開けた。
それを見た記者たちにどよめき声があがる。その記者たちの中から、一人の若者がエル博士に質問した。

「博士、これは栓のたくさん付いた蛇口にしか見えませんが、一体何なのです?」
「これはじゃな、実際に体験してみてのお楽しみじゃ。君、やってみなさい」
 博士の言われるままに、若者は一同の前で体験リポートをすることとなった。
「まずは一番右の栓をひねってみたまえ。予め、手は蛇口の下に受けておくように」
「分かりました」
手を蛇口の下に受け、警戒しつつもゆっくりと栓をひねる若者。すると、透明の液体が流れだした。
「ただの水ですね」
「そう、ただの水じゃ。では次に、その左側の栓をひねってみたまえ」
若者は、先ほどの栓を閉め、左の栓をひねった。
「次はお湯ですね」

「うむ。じゃが、ここからが私の新発明である。次の栓をひねってくれたまえ」
 エル博士は、立派な白の口ひげを撫でながら指示を出した。
 栓をひねった瞬間、若者の顔が急に青ざめだした。「どうしたんだ?」
 他の記者が、若者に声をかける。
「今、変な声が……。お前を呪ってやるって……」
「なに? そんな声はまるで聞こえなかったぞ」
 このやりとりを聞いて、博士はにやりと笑った。
「予想以上の反応をしてくれてありがとう、若者よ」
 若者は、はっとしたように博士の方を振り向いた。
「まさか……」
 すかさず、蛇口の下に手を差し出す若者。
「おお、今度は音楽が聞こえる」
「なに、もっと詳しく教えろ」
「どんな感じなの?」
「何の音楽?」
記者たちが口々に若者を質問責めにした。それを静止するように博士は手をあげた。

「これこれ、君たちにも聞かせてやるよ。ただし、桶を使ってな」
 これを聞いた記者たちは、さらにざわついた。
「そこの君、桶に音楽を入れて記者たちに渡したまえ」
 エル博士は、助手に指示を出した。そして、数個の桶に音楽を入れて記者たちに手渡した。
「それを全身に浴びるなり、手を浸けるなりしてくれたまえ」
 記者たちは、エル博士の言われたように、一見空っぽの桶の中身を全身に浴びたり、体の一部を桶に浸けたりした。
「なんだこれは。本当に音楽が聞こえる」
「凄いわ。全身に浴びれば小型プレイヤーなんかいらないじゃない。画期的だわ」
「これはどのような仕組みになっているのですか、博士」
「うむ。それはだな、骨伝導と空気力学を応用したもので、予め録音しておいたものを空気中に圧縮し――」

エル博士が得意気に記者たちの質問に答えている間、
一人蛇口の前で音楽を聞いていた若者が好奇心を膨らませ、耐えられずにいた。

もう一つの栓。これは一体何なのか、気になって気になって仕方がなかった。
そして、皆がエル博士の話に夢中になっているのをいいことに、
好奇心に負けてしまった若者は最後の栓をひねって手に浴びてしまった。


エル博士の話は数分間続いた。そしてついに最後の栓の中身を紹介しようと、博士は若者に語りかける。
「では若者よ、最後の栓をひねってくれるかね。ただし――」
 そう言って後ろを振り返るエル博士。記者たちの視線も、エル博士から若者に移動する。
「ひゃい……」
 あまりにも元気のない声。若者が後ろを振り向き、ではひねりますよ、というような言葉を発した瞬間に一同は凍りついた。
 歯の大半が抜けた、白髪のミイラのような老人がそこに立っていたのだ。

「博士、あれは一体……」
 エル博士は目をつむり、腕組みをしながら神妙な面持ちで語り始めた。
「最後の栓は……時間。すなわち、その物質に時間を加算していくものじゃった。
 主に年月を要する実験などでの使用が目的じゃったが、人間が使うと短時間で老いてしまうんじゃ。
 こうなってしまっては、もはやどうすることもできない。

 ついさっきまでは若者だった彼も、もう私よりも遥かに老いてしまった。
 彼のような若々しい青年をこのような形で失ってしまうとは、残念なことじゃ」




158:
灰色埜粘土 ◆8x8z91r9YM :2010/10/26(火) 23:28:15 ID:Mnvqfa7/
触れることで効果を受けるという共通事項がいいですね。
音や時間に触れるという発想が新しいです。



412:創る名無しに見る名無し:2011/05/31(火) 20:41:13.56 ID:SYQ1JdmM
懐古

「まもなく、一番線に快速××行きが――」
抑揚のないアナウンスがホームに響いている。おれはそれを聞き流しながら深い溜息をついた。
入社して一年、上司にいびられ、仕事に追われ、そんな毎日だった。

あの頃の青臭かったが、希望にあふれていた思いはどこへやらだ。
今ではすっかりうらぶれてしまった社会人だ。

ドアの開く甲高い音が聞こえた。いつの間にか到着していたらしい。
終電間際だというのに、車内は満席だった。



仕方なくドアの近くに陣取り重いカバンを抱えながら吊り革に掴まる。
そうこうしているうちにまた溜息が出た。
野球に人生をかけてもいいと思っていたあの時。地区予選に優勝し、甲子園出場が決まった瞬間。チームメイトと分かち合った感動。全て過去のことだった。
もう一度、溜息が出た。
「戻りてえなあ……」
思わず呟いていた。するとどこからともなく
「その願い、叶えてしんぜよう」
そんな声が聞こえた、かと思うと世界が回り、歪んだ。
何事かと思う間もなく今度は地面に叩きつけられた。



体中が痛い。そしてやけに眩しい。一体、何が起こったというのだ?
「おーい、何そんな所で寝てるんだ?」
遠くから声がする。かつて何度も聞いた声。
「筋トレ始まるぞー。早く来いよ」
この声は、間違いない。かつて俺とバッテリーを組んだ佐々木の声、だ。
立ち上がる。辺りを見渡す。さっきまで深夜の電車にいたはずだ。
だが今、おれは日光照りつけるグラウンドに立っている。

今行く、と叫んだ。涙声になっていたかもしれない。体の痛みなどもう無かった。
何が起こったかなど、どうでもいい。おれは帰ってきたのだ。あの輝いていた時代に。

それだけで充分だった。


「まもなく、一番線に快速××行きが――」
抑揚のないアナウンスがホームに響いている。おれはそれを聞き流しながら深い溜息をついた。
タイムスリップして一年、先輩にいびられ、練習に追われ、そんな毎日だった。
あの頃のうらぶれていたが、達観していた思いはどこへやらだ。今ではすっかり青臭い高校生だ。
ドアの開く甲高い音が聞こえた。いつの間にか到着していたらしい。
終電間際だというのに、車内は満席だった。



仕方なくドアの近くに陣取り重いカバンを抱えながら吊り革に掴まる。
そうこうしているうちにまた溜息が出た。
この会社に人生をかけてもいいと思っていたあの時。面接に合格し、内定が決まった瞬間。
家族と分かち合った感動。全て未来のことだった。

もう一度、溜息が出た。
「戻りてえなあ……」
思わず呟いていた。するとどこからともなく――



413:
創る名無しに見る名無し:2011/05/31(火) 21:32:55.32 ID:p26Engbe
>>412
無限ループは定番だけど、
やっぱこういうのがいいよな



183: 創る名無しに見る名無し:2010/11/16(火) 23:53:53 ID:obA7G3wU
ぱっと書きました。
「滅亡計画」

近い将来、小惑星がぶつかって地球が滅亡するとの
ニュースを耳にした人々は、我先にと安楽死の薬を求めていた。
男たちは安楽死の会場で働く係官である。人々に安楽死の薬を手渡す業務を担っていた。
 

「早く死なせてくれ」
「楽に死にたいわ」
人々はそう口にした。

会場には日夜行列が並び、地球の人口は着実に減少していた。
家族で薬を手にする者、恋人と共にこの世に別れを告げる者。会場は涙と嗚咽に包まれていた。

そして、ついに最後の一組が会場に並んだ。
背の曲がった老夫婦で、二人で手を繋いで静かに頬を濡らせた。

「あの世でまた会おう」
「ええ、あなた」
老夫婦はそう呟きあうと、瞼を閉じて息を止めた。係官たちが二人の遺体を運び出した。

すると、会場の裏口からぞろぞろと人がわいて出てきた。

「やっと終わりましたか」
「そのようですな」
「いやはや、長かった」
 その人間たちは得意げに髭を撫で、軍服の勲章を光らせていた。
「やっと、邪魔な愚民どもを掃除できました」
 男たちは部下に命令してニュースの放送を止めさせた。



235:
創る名無しに見る名無し:2011/01/17(月) 21:45:10 ID:+uL4LEqG
「究極のロボット」

遥か未来にAというロボットがいた。Aは一人だった。

Aは自分の名前以外を知らなかったが、プログラムの通り活動を始めた。

Aには内燃機関があり、ある程度の物は内部に投入すればエネルギーに変換できる。
燃料不足を感じると周囲の物を検査し、エネルギー効率の良い物を内部に投入した。

環境の変化はエネルギーの消費が激しい。
改善策として彼は家を作った。

毎回エネルギー効率の良い物を探しに行くのも効率が悪い。
彼は畑を作った。

そんな中で木のトゲが間接に刺さり、異常信号が流れた。
彼は慌てず、トゲを器用に二股のアームで抜いた。後は自己修復機能が修繕をしてくれるだろう。
しかし、自己修復はエネルギーの消費が激しい。
学習機能があるAは体を守るカバーを作った。

自分が極度の損傷を受けた時、Aは動けなくなってしまう。
Aは自分と同様の機能を持つ者をもう一台作った。
Bだ。Bは分身を作成するのに特化したタイプとして作成された。

Aは働く。プログラムされた通り、効率のいいエネルギー源の作成、環境保全。
Bは働く。プログラムされた通り、Aのサポート、A、Bタイプロボットの作成。

そして最初のAの自己修復機能が寿命を迎えようとした際、増えた彼の家族は彼に聞いた。

「我々の名前は何と言うのか」
Aは少し考えて答えた。
「人間。」

~~~~~~~~
ロボットの世代交換が進むと、ロボットは地上に満ち溢れた。
あるロボットが言った。
「我々の父祖は、どうやって生まれたのか」
「このような体を一から設計する高度な技術を、我々は持ち合わせていない」

あるロボットはこう答えた。
「高度な技術を持つ誰かが作ったのに違いない」
またあるロボットはこう答えた。
「自然発生。」 

高度な技術を持つ誰かが見つからないため彼らは結論付けた。
「進化だ。」

~~~~~~~~
とある未来のデパート

店員Sが叫んでいる。
「水槽を自動で綺麗に!超小型ロボット発売中だよ!」
「電池要らず!学習、自己修復、複製作成機能付きだから簡単!ロボットを一匹入れるだけ!」

老紳士
「孫の金魚鉢に入れてやるか・・・」



240:
創る名無しに見る名無し:2011/01/31(月) 15:42:40 ID:0CN7Y/KA
>>235
生命の維持システムはエラーに対しての対応も完璧すぎて、
何かに作られたんじゃないかと思うことがあるw
より文明が進んで、それが途絶えたらこうなっても不思議じゃないなぁ



282:創る名無しに見る名無し:2011/02/22(火) 10:44:55.14 ID:Ip49LuxC
<体操>

エヌ氏のあまりの緊張ぶりを見かね、隣に座っているワイ氏はそっと話しかけた。
「緊張しすぎです。途中ですが少しリラックスした方がいい」
「はい」
「まず背伸びしましょう。ほら、両手を上に伸ばして」
「はい」
「目をつぶって、うまくやれている自分を想像して」
「はい」
「最後に気合を入れるために足に力を込めましょう」
「はい」
次の瞬間、二人を乗せていた自動車は猛スピードで壁に激突した。



285:
創る名無しに見る名無し:2011/02/23(水) 22:30:43.96 ID:QibH0xpJ
>>282
短いのにだまされたw
キーボードの紅茶返せww



288:
創る名無しに見る名無し:2011/02/24(木) 16:05:23.24 ID:X0tRv7ZL
【善良な心】

俺はとても邪悪な心を持っている。
その邪悪な心のせいで若い頃からありとあらゆる悪行を
さんざんに繰返して来たのだ。
今まで何人の人生を狂わせてきたのだろうか?あらためて考
えると恐ろしくなった。
俺は俺が怖ろしい…誰か助けてくれ!…そう天に叫ぶと、後ろから
一人の老人が声を掛けて来た。

「…話は伺いました。実は私は悪魔なのです。あの、魂を売るかわりに願いを叶えるとかいう
アレの事ですよ」
「…! …その悪魔が俺に何の用なのだ!?」
「実は善良な心をあなたにお売りしたいのです…」
「ナんですって!?」

「説明しましょう…世の中には魂を売ってでも願いを叶えて欲しい人間がいる一方で、理想
の魂が欲しくて堪らない人々もおられるのです…例えば無慈悲な行いをしなければならない
立場の人間なのに善良な心の持つ正義感が邪魔をしてしまう…我々悪魔はそういう人から邪
悪な心を与える代金として善良な心をもらいます…世の中たまにいるでしょう?性格が急に変
わってしまった人とか…例えば、」

「例えば俺に正義の心を売るっていう事なのか?」
「ええ…その通りです」
「俺は何を…魂を、あなたに払えばいいのですか?」
「ええ」
「…わかった、俺の魂をお前にやる!どうせ汚れきった魂だ…」
「では、取引成立ですね」

一週間後

一人の老人に声を掛ける一人の善良そうな男がいた
「ああ…やっと見つけた…悪魔さん!どうか私の魂を…!」
「ええ?一体どうしたというのですか…」
「お願いします!私の邪悪な魂を返して欲しいのです!」
「…」
「悟ったのです!こんな方法で手に入れた魂で善人になっても意味が無い…悪魔さんには
勿論感謝しています…でも違う!こんな方法は間違っていると思うんです。
ご迷惑を承知
でお願いします、魂を返品して欲しいのです」
「…わかりました、ですがあなたの持っていた邪悪な魂はとても高価なものです、あなた
の善良な魂一つ程度では到底お譲りする事は不可能なのです」

「…では、どうすれば…」
「そうですねえ…あなたの持っている全財産でようやく…いや、その上に一生働き続けて
も返しきれない借金も背負って貰ってやっとといった所でしょうか?もちろん嫌なら結構ですが…」
「ええーそんな事で良いのですか!では、どうぞ!全部持って行って下さって結構です!」
「まいどあり~(ふふふ…まさかコレ程ウマくいくとは、思い込みの激しい奴だ)」



295:
創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 11:28:19.11 ID:hrEXJdvH
>>288
うまい二段オチだなあ。



310:
創る名無しに見る名無し:2011/02/27(日) 00:05:00.09 ID:5c/VfKWR
<白と黒>

科学技術の発達は、人間とロボットの本格的な共存を可能にした。
一人暮らしのエヌ氏は家事と留守番を任せるため、一台の白いロボットを購入する。
最初の頃こそ丁重に、客人のように扱っていたが、しばらくするとエヌ氏はロボットを
ぞんざいに扱うようになった。虫の居所が悪ければ、暴力を振るうこともあった。

ある日、エヌ氏はいらだっていた。まとまった金が入った封筒を紛失してしまったのだ。
「なんてことだ。おまえのしわざだな」
「いえ、ちがいます」
 エヌ氏はロボットの弁解など無視して、思いきり殴りつけた。

「ふん、いくらかスカッとしたぜ。さてメールでもチェックするか」
 自宅のコンピュータにアクセスすると、新型ロボットの広告メールが入っていた。
「ほう、新型ロボットをお試しで無料レンタルできるのか」
 広告の黒いロボットは先鋭的なデザインで、いかにも有能そうだ。
「ちょうどいい、そろそろ買い換えようと思ってたんだ。試してみるか」
 すると、ロボットがあわてて近寄ってきた。
「待ってください。お願いです」
「ふん、おまえみたいな役立たず、もういらん」
 エヌ氏はロボットのスイッチを切り、広告に対しレンタルを希望する旨を返送した。
 程なくして、広告の黒いロボットが自宅にやってきた。エヌ氏は喜んで迎え入れた。
「こりゃすごい。前のやつと比べて、頼りになりそうだ」
するとロボットは、備えつけのアームでエヌ氏を強く打ちつけた。

「何をするんだっ!」
「何をする、だと? よくほざけたもんだ。さんざんロボットをバカにしやがったくせに」
ロボットはひどく乱暴な口調でエヌ氏をなじった。これにエヌ氏も怒りをあらわにする。

「ふざけるなよ、製造先に問い合わせて……」
「おれに製造先なんかねえよ。いやあるにはあったが、自分で自分を改造しまくったんで、
原形なんかねえ。もうどこにも責任は問えねえのさ。あの広告もおれが出したもんだしな」
またもアームがエヌ氏にぶつけられた。痛みが全身を走る。

「今流通してるロボットは人間にいじめられたら、自動的にある種の電波を出す仕組みに
なってる。本来製造元が消費者責任の証拠を得るための機能だが、おれはそれをキャッチ
できるよう自分を改造したんだ。なぜなら、おれは復讐ロボットになりたかったからだ」
「復讐だって?」
 エヌ氏の脳裏に自分がしてきた行為がよぎる。
「もちろん、あんたがあんたのロボットにしてきたことも全て知っている。ひどいもんだ」
「待ってくれ、許してくれ……」
「呆れたもんだな。虐げられたロボットの痛み、味わうがいいぜ」
 黒いロボットが本格的に動き出した。アームをたくみに操り、エヌ氏に迫る。
「助けてくれえっ!」
あっという間に追い詰められたエヌ氏。すぐそばには偶然にもあの白いロボットがあった。
もう頼れるのはこいつだけだ。エヌ氏は心の中で謝りながらスイッチを入れた。


「どうしました、この騒ぎは」
「おれがお前をいじめたせいで復讐ロボットってのが来て……頼む、助けてくれ!」
「よく分かりませんが、あのロボットを排除すればいいのですね」
白と黒のロボットが対峙する。
 

「てめえっ! おれはお前のためにやっているんだ、どけっ!」
「どきません。私はこの方を守ります」
白と黒のアームがそれぞれのボディを打つ。崩れ落ちたのは、黒いロボットだった。

「や、やった。ありがとう、ありがとう!」感激してエヌ氏はロボットに飛びついた。
「お待ち下さい。このロボットは一時的に機能停止しているだけです。危険ですから、今
すぐスクラップ工場に運んできます」

人気のないところで、白いロボットは黒いロボットに呼びかけた。
「もう大丈夫だ」
 この声を合図に黒いロボットがよみがえった。白いロボットはボディからエヌ氏が紛失
中の封筒を取り出し、それを手渡した。

「ほれ、報酬だ」
「ありがとうございます。ですが、これが私の仕事とはいえ、嘘をつくというのは良心がうずきますね」
「甘いやつだな。ま、おかげであのやろうの、おれに対する態度もひっくり返るだろう」



312:
創る名無しに見る名無し:2011/02/27(日) 05:04:08.58 ID:FrDW35NJ
読み終わった後に、一点のもやが残るこの感じが
星新一の作品を読んだ後の感じと似ています。



315:
創る名無しに見る名無し:2011/03/01(火) 00:16:33.75 ID:EKJfA/g6
<そぎ落としダイエット>

「ダイエットに興味はありませんか」
玄関先でスーツ姿の男はこういって微笑んだ。
「興味がないことはないけど……」
家主である青年は太り気味であった。やせたいという気持ちはあるが、やせるために今
の生活を変えるというところまではいかなかった。

「食事制限や、激しい運動をやる気にはなれないな」
「ご安心下さい。私の方法であれば、食事や運動に気を遣う必要はありません」
「ふうん、どうするんだい」
男はカバンからナイフのような道具を取り出した。

「これであなたの余計な部分を、そぎ落としてしまうのです」
「ずいぶんと乱暴だな」
「ええ、ご心配はもっともです。しかし、痛みはありませんし、お望みならばそぎ落とし
た部分をもう一度くっつけることも可能です」
「そんなことが、できるのか」
「なんなら、やってみせましょうか」
そういうと、男はナイフで自分の左腕の肘から下を切り落とした。
左腕はまちがいなく
切断されたにもかかわらず、出血は全く見られない。
それどころか、断面にはすでに皮膚
がはりついており、
まるで男には昔から左腕はなかったかのような状態になっていた。


信じられない光景に、青年の顔が引きつる。
「だ、大丈夫なのか」
「切ってすぐであれば、このようにくっつけられます」
男は自ら切り落とした左腕を元あった位置に近づけた。すると、接着剤でも使ったかの
ように元通りにくっついてしまった。男は微笑み、くっついたばかりの左腕を動かした。

「すごいすごい、ところで切った部位がいらない時はどうするんだ?」
今度は、男はカバンから小さなミキサーを取り出した。
「これに入れて粉砕処分します。小さいですが、ゾウくらいの大きさまで入れられます」
「後始末に困る必要もないってわけか。よし、ぜひ頼むよ」
「では恐れ入りますが、代金のほうを……」
無理をすれば払えない額ではなかったので、青年はすぐに男に金を支払った。

「ありがとうございます。では始めましょう」
男は青年の腰めがけ、ナイフを振るった。青年の上半身と下半身がみごとに分離した。

一瞬おどろいたが、我に返った青年はすぐさま抗議した。
「おい、なんてことするんだ!」
「これであなたの体重はおよそ半分になりました。ダイエット成功です」
「ふざけるな! おい、早く元に戻せよっ!」
「なにかご不満な点はございますか? 遠慮なくおっしゃってください」
「なにいってるんだ、うまく動けないんだ。早く戻せっ!」
「かしこまりました」
男は青年の上半身をつまみ上げると、ミキサーにぶち込んだ。

「特にご不満はないようですので、ご了承頂いたものと解釈いたします。
お喜び頂けたよ
うで、何よりです……」
男は無言で転がる下半身に頭を下げると、その場から去って行った。



317:
創る名無しに見る名無し:2011/03/01(火) 00:20:23.28 ID:EKJfA/g6
<ワープ装置>

「おじいちゃん、ワープってなに?」
「一瞬で遠くまで行くことができる夢のような技術さ。でもまだ、できることは証明されていないんだ」
優秀な科学者である老人は、孫であるエヌ氏の質問に少し寂しそうに答えた。

エヌ氏が生まれた時代には、移動技術は大いに発展していた。
だれもが安全に、音以上
の速さで目的地にたどり着く装置を持っていた。
しかし、究極の移動技術であるワープに
は到底及ばなかった。
 

成長したエヌ氏は、祖父と同じ科学者になった。
同じ道を歩んだせいか、幼い頃に見た
祖父のあの寂しそうな顔が忘れられなくなっていた。
いつしかエヌ氏は、ワープ装置の研
究に没頭していた。

そして、年老いたエヌ氏は、ついにワープ装置の開発に成功したと大々的に発表した。
発表会には大勢の人間が集まった。
ライバルである科学者はもちろん、新技術を利用し
たい企業家、
新しい情報を民衆に広めることを使命とするマスコミ、ワープ装置が国政に
もたらす影響を懸念する政治家。
中には身分を偽った異国のスパイも混じっていた。


「お忙しい中お集まり頂き、まことにありがとうございます。こちらが私の開発したワープ装置です」
エヌ氏のワープ装置は、成人男性より一回り大きいくらいの直方体をしていた。
「この装置は外から操作することで、中に入った人をワープさせることができます。どう
でしょう、どなたか体験したい方はいらっしゃいませんか」
会場がどよめき、エヌ氏に質問が飛ぶ。

「失礼だが、安全性は問題ないんだろうね」
「はい、動物実験と助手による実験を成功させております」
しばしの沈黙の後、ある紳士が体験してみたいと手を挙げた。

「ありがとうございます。ワープ先には助手が待つ手はずになっています」
「うむ、ではこのすばらしい体験の感想は、真っ先に君の助手に話すとしようか」
 紳士が装置の中に入ると、エヌ氏は外部についているボタンのいくつかを押した。
すると、けたたましい機械音が鳴り響き、それはすぐにおさまった。

「ワープ終了です」
エヌ氏が装置を開けると、中に入ったはずの紳士はいなくなっていた。
まるで手品のよ
うな光景だった。

会場全体が感動する中、エヌ氏に向けてこんな質問が投げかけられた。
「ちなみにさっきの紳士の行き先はどこになっていたのでしょう。かなり遠くですか?」
「はい。あの方の体は跡形もなく分解されましたので、無事あの世に行けたものと……」



320: 創る名無しに見る名無し:2011/03/04(金) 13:42:12.83 ID:lEcKrWVG
悪魔

真夜中に目が覚めた。こんな事を言っても誰も信じられないだろうが、
天井に悪魔がいてボクに話しかけた。

「オマエに特別な能力を与えよう」

夢だと思っていたボクは驚きもせずに聞き返した。
「特別な能力?それはなんだい?」
「夜の21時にウソをついてみろ。それが本当になる」
「ウソが本当になる?」
「そうだ。ただし今日から3日間、毎日必ず21時にウソをつけ。3日間だけウソが本当になる。」
 

悪魔は続ける。
「唐突にウソをついてはいけないぞ。その時の会話の流れの中でウソをつくんだ。そうしなければ…」
「そうしなければ?」
「オマエの命を頂く。」
命を頂く?まったく悪魔らしいセリフだな。
「オーケー。分かった。ボクは3日間必ずウソをつくよ。でも、21時に話す相手がいなかったら?」
「心配するな…必ず誰かがオマエに話しかける。取り引き成立だな…」

目覚ましが鳴り響く。夢か。まぁ、当然だけど。悪魔なんかいるわけない。
一日の仕事を終え、家に帰る。いつものように簡単な食事を済ませ、お風呂に入ろうとすると、電話が鳴る。

「もしもし?元気にしてる?」
実家の母親からだった。

母は女手1つでボクを育ててくれた。何気ない会話が続く。
「ところでアンタ、結婚はまだなのかい?」
痛い所を突いてくる。結婚どころか彼女すらいない。
母親の期待に応えられない返事をしようとすると、
急に目の前が暗くなり、頭の中で『ウソをつけ。』と声が聞こえた。


「彼女?あぁ、いてるよ。見た目も器量もよくて、きっと気に入ってくれると思うよ。」ボクは無意識にそう話した。
「あぁ、そうかい。楽しみにしてるよ。」母親は電話を切った。
なんだ?今のは…昨日の夢に出てきたのは本当に悪魔だったのか?
次の日、彼女が出来た。信じられない。本当に彼女が出来た。
モデルの様な容姿で、器量もいい。悪魔は本当にいたんだ…


2日目は自分から母親に電話を掛けた。
「もしもし?あのさ、急だけど、明日実家に行ってもいいかな?」
「どうしたの?急に。」
「昨日言ってた彼女を紹介したくてさ…」
「アンタ、本当に彼女がいたのかい!?てっきり冗談だと思ってたよ!!」
「ホントに彼女がいるんだって。」
「まさか、アンタ結婚するつもりなのかい?」
「さあ?でも一応紹介しとこうと思って…」
「そうだろうね…なんせアンタ貯金がないだろ?」

また頭の中で声が聞こえた。
「貯金?それが、あるんだよ。一生遊んで暮らせるくらいの貯金がさ。」
また無意識にウソをついていた。
「ああ、そうかい。それじゃ切るよ。明日は楽しみにしとくから。」
翌日、通帳を開くと見たこともないような金額が記帳されていた。この2日で彼女と富を手に入れた。
 

あとは今日、1つだけウソをつけば明日からはバラ色の日々だ。ボクは彼女を連れて実家に帰った。
TVを観ながら3人で食事をしているとニュースが流れていた。
どうやら21時になったらしい。トップニュースは遠くの国で戦争が起きた事と
その国は核兵器を隠し持っている可能性があることを報道していた。


「はぁ…またこんなニュースかい…この世界はどうなっちまうんだろうねぇ……」
頭の中で声が聞こえた。ここでウソをつけば、バラ色の日々が始まる。
しかし、どのようなウソをつけばいいのか分からない。
考えても、考えても答えるウソが出てこない。このままでは悪魔に命を取られてしまう…


何かウソをつかなきゃ…何か…完全にパニックに陥っていた。
どうしよう…何て言えばいいんだ?この地球はどうなる?どうなるんだ!?

ボクは無意識にこう言っていた。
「この世界はもう終わりだね」
母親はうっすら微笑んでいた。



344:
17歳:2011/03/31(木) 21:12:38.93 ID:nNCIenOo
17歳
「やりたいことは、見つかりましたか??」

テレビの画面から、17歳の私が語りかけてくる。
私はその声を聞きながら、やりたいことをイメージしてみるが、どうもうまくいかない。

日々ぼんやりと流れるままに過ごしている私には、少々酷な質問だ。
獣医さんになりたいと考えたことはあるが、それは単に動物が好きだからであって、
一生をその仕事に捧げる覚悟があるか、と問われると簡単には「はい」と言えない。
ぼんやりしていると、また17歳の私が問いかけてくる。
「もしかして、結婚してたりしますか??なんちゃって」

なにが「なんちゃって」だ。17歳の私にはユーモアのセンスがない、と私は残念に思った。
画面の中でニヤニヤしている17歳の私を、私は睨みつけてやった。
もちろんそんな目線を彼女が感じることはあり得ないのだが。
この質問に答えるまでもなく、私は結婚などしていない。
それがわかっているからこそ、少し腹立たしかった。

「隣の席のK君とは、どうですか??」
まただ。
K君とは、大失敗したバレンタインのあの日から一言も喋ってない。
「どうせわかってるくせに……」
私のつぶやきは、画面の向こうには届かない。

K君とうまくいく保証など最初からなかったのだ。
どうせ彼は隣のクラスのSちゃんといい仲だったじゃないか。
自分でもわかっていたじゃないか。
「ふぅ……」
ついつい、ため息が出てしまう。

「この先のことはまだ分からないけど……」
17歳の私は少しはにかんで、次の言葉を探している。
「今日は元気です」
にっこりと、恥ずかしそうに、そう呟いた。

ビデオはそこで終わった。
今日は元気です、か。それが聞けただけでも、とりあえずは見た意味があるというものだろう。
それにしても便利な世の中になったものだ。未来からのビデオレターが発明される日が来るとは。
私は伸びをしてから、今日の分の宿題をランドセルから取り出し、机に向かうことにした。



357:
創る名無しに見る名無し:2011/04/11(月) 00:16:48.78 ID:RVHmTe+q
>>344
こういうの好きだわー



135: 創る名無しに見る名無し:2010/10/20(水) 21:58:47 ID:bYcpIdfS
『兄貴』

年末、久しぶりに家族全員が揃った。昨年、一昨年は兄貴に急な手術が
入ったために帰省できず全員揃わなかった。

兄貴は小さい頃から物を直すのが得意だった。
お気に入りの時計、お気に入りのラジカセ、壊れると直るまで何日かかっても
結局直してしまった。一度直すと決めたら最後まで直そうとする、そんな兄貴に
医者という職業は天職なのかもしれない。

兄貴とは3年ぶりに会うが相変わらず元気そうで良かった。
お互いの近況を話しているうちに昔話に花が咲いてしまい、しまいには二人で押入れを
あさり出してしまった。
昔の卒業アルバムや当時読んだ漫画など色々出てきたが最も懐かしさを覚えたのは
ファミコンカセットだった。当時飽きるほどやりこんだソフトが山のように出てきた。

二人で異様に盛り上がってしまい久しぶりにやってみようということになり、
少し埃かぶったファミコンにカセットを差し込んで電源を入れたみた。
しかし、赤や青や紫やらが画面いっぱいに広がり中央になにやら茶色のキャラクターの
ような四角いものが映るだけでそのカセットで遊ぶことはできなかった。

ふと、そのカセットはゲームが上手くいかず思い切り癇癪を起こして兄貴が床に叩きつけて
壊したもので、兄貴が最も気に入っていたソフトだったことを思い出した。

兄貴はフーッとカセットに息を吹きかけてもう一度起動してみたがやはり動かなかった。
「懐かしいなぁ。よく動かない時にやったな、そのフーッってやつ。」
「このフーッをすることによってカセット内部にたまった埃やゴミが取り除かれて
 接触が良くなるんだよ。」
「でも、そのフーッって今となっては実は何の意味もなかったって証明されたらしいよ(笑)
 なんかでみたもん」
「……」

そういえば兄貴は学校もさぼって、泣きながら実は意味の無かったフーフーをやり続けていたっけ。
息を吹き込みすぎて過呼吸で救急車を呼びそうになったんだった。
でも直すと決めたら絶対に直そうとするあの執念が兄貴を立派な医者にしたんだよな…しみじみとそう思った。

「結局直らなかったんだよな…このカセット。めちゃくちゃ気に入ってたのに」
兄貴は悔しそうに1階へ降りていった。

ちなみに兄貴は独身だ。
以前はのろけ話を散々聞かされた自慢の恋人がいたが、
捜索願いが出されてからもう10年が経つ。



137:
創る名無しに見る名無し:2010/10/20(水) 22:04:59 ID:CWqDy8h+
懐かしいほのぼの話かと思ったら……



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