大手宝石鑑定会社「全国宝石学協会」(全宝協、東京都台東区)が、業界の基準よりダイヤモンドを甘く鑑定していた疑いが毎日新聞の報道で明らかになった15日、全宝協鑑定のダイヤを扱う大手百貨店や宝石店は、価値をかさ上げしたとされる期間中に仕入れたダイヤの在庫確認や事実把握など対応に追われた。ある宝石商は「業界が信用されなくなるかも」と深刻に受けとめ、消費者からは「何を信じればいいのか」と不安や戸惑いの声が聞かれた。

 全国に10店舗を展開する大手百貨店「三越」は全宝協の鑑定書付きダイヤの納品を受けている。広報担当者は「大変驚いている」と話し、全宝協に事実関係の説明を求めていることを明らかにした。

 同様に全宝協と取引している大手百貨店「高島屋」は報道を受け、全国18店舗の宝石仕入れ担当者に事実関係の確認を指示した。広報・IR室の担当者は「調査中ではっきりとしたことは申し上げられない」と語った。

 全国展開する宝飾品販売会社「ジュエリーツツミ」(本社・埼玉県蕨市)は、全宝協を含め数社に鑑定を依頼している。担当者は「かさ上げ鑑定の事実確認中で、まだ何も答えられない。今のところ客からの苦情は寄せられていないが、各店舗でどう対応するか検討中」と困惑した様子で話した。

 一方、東京と埼玉に店舗を展開する別の宝石販売会社の担当者は「かさ上げされていたとされる期間のダイヤは扱っていない。新聞報道で初めて知り、寝耳に水だ。1年半ほど前まで行われていたようだが、なぜ今になって発覚したのだろう」といぶかしがった。【松谷譲二、八田浩輔】

 ◇「許せない」

 東京・銀座の三越の4階宝石フロアには、全宝協の鑑定書で「約5カラット、カラー『G』」とされたダイヤモンドの指輪が、50万4000円で売られていた。

 所用で上京し「ちゃんとしたものを買いたいので店をのぞいた」という札幌市の会社員女性(53)は、かさ上げ鑑定問題について「初めて知った。本当なら許せない」と驚いた様子。「私たちでは価値は決められない。もし自分の持っているダイヤが鑑定より低い価値のものだったら、がっかり。どんな仕事でも誠実にやらないと、いつか痛い目を見ると思う」と話した。

 横浜市西区の百貨店でダイヤの指輪を修理に出していた女性(45)は「微妙な差など消費者は分からない。鑑定書が違うとなると何を信じればいいのか。ダイヤのような宝石を買うのは一生で何回もない。きちんとした基準でやってほしい」と困惑した表情。川崎市の会社員女性(28)も「どれがきちんと鑑定されたダイヤか自分たちでは調べようもない。不安です」と話した。【浅野翔太郎、松倉佑輔】

 ◇「夢あざむいた」宝石店主戸惑い

 「消費者への裏切りだ」。長年、同社と取引していた福岡の宝石商は、業界全体が不信の目を向けられることを懸念している。25年間宝石店を営んできた60代の男性は「鑑定会社が付けるグレード(ダイヤの価値)に基づいて売り買いしてきた。結果的に消費者をだましてしまった」と戸惑いを隠さない。

 男性は宝石店開店後は宝石の鑑定をほぼすべて全宝協に依頼してきた。「カラーグレードのわずかな違いは、プロでもなかなか判別しにくい。鑑定を信じて疑うことなどなかった」と語る。

 宝石販売業はバブル崩壊後、全国的に低迷が続いている。男性の店も最盛期4億円以上あった年間売り上げが10分の1以下まで減ったという。

 売り上げの約半分がダイヤだ。かさ上げが行われたとされる07年2月~08年10月に鑑定を依頼し、売れ残っている商品が複数ある。顧客から再鑑定や返品を求められる事態も予想される。「額は想像がつかないが、大変な被害になる」と、表情を曇らせた。

 訪れる半数以上は婚約、結婚指輪を買うカップル。「多少無理をしてでも彼らは『永遠』や『夢』を信じてダイヤを買う。それをあざむく結果になった」。そう言って男性は肩を落とした。【阿部周一】

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